少女のままで

chandeme

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三章 記憶

ヒメムラサキ

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神奈川県の港南区におばあちゃんのお墓がある。私とお母さんは市営バスに揺られながらおばあちゃんが眠るお墓に向かった。

「次は日野公園墓地前に停車します。」







おばあちゃんのことは好きだった。
おばあちゃんが亡くなったのは私が7歳のとき。

幼稚園のときおもちゃの指輪を買ってもらった。

私が大きくなったらその指輪で結婚式に出るんだなんて本気で言っていたことを今でも憶えている。

あいにくその指輪で結婚する相手はまだみつかってないけど..

いつもお墓参りにいくときその光景を思い出す。


ふとバスの外に目をやると窓から一輪の花が見えた。


ヒメムラサキ...

紫の花びらが綺麗なお花。

花言葉ではたしか忘れないで
私のことを忘れないで。


おばあちゃんがそう言ってるような気がした。

忘れるもなにも...


小さかったときに亡くなったからか
人が死ぬっていう実感が湧かなかったし
おばあちゃんが亡くなったことで泣いたことなんて私は一度もない。

いまでも私を見守ってくれていると思ってる。







死んだらどこへ行くの
おばあちゃん。

誰かが言っていた
光になると

光になって溶けてゆく。


どこかへ還るんだろう。
カラダもココロも。

記憶も捨てるんだろう。

そうすればもう思い出さなくてもいい。悲しかったことも楽しかった思い出も。

大好きな人も大っ嫌いな人も

何もかも忘れることができる。

どうせ何十年もしたら誰も生きていないなら
みんないなくなってしまうなら


いまの悩みなんて
いまの迷いなんて

ひとつひとつの選択も全てが砂つぶのような大きさでしかない。


だからこそ

私を忘れないで。

いつか忘れられてしまうから。
私も忘れてしまう。

だってほら、もう半分くらい
忘れている。

もう恋しいと思わなくなっている。
どんどんあの人を思い出さなくなっている。私は少しずつ夢から醒めていっている。

だから忘れないでよ。
私の声を。
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