少女のままで

chandeme

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三章 記憶

墓参り

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墓石に水をかけてスポンジで丁寧にこすり汚れを落とした後お線香に火をつけて私とお母さんは手を合わせた。


しばらくの間静けさが続いた。しばらくしてからお母さんが口を開いた。



「お母さん、おばあちゃんと大人になってからよく口げんかしてたから。ひどいこともたくさん言ったし...お母さんそのことは今でも少し後悔してるの。」

「うん。憶えてるよ。私、まだ小さかったけど...電話でもお母さんとおばあちゃん、よくケンカしてたよね。けど、おばあちゃんはそのこと気にしてないと思うよ。」

「でもおばあちゃんの容態がだんだん悪くなってからはケンカなんてしなくなったけど..おばあちゃんね、どんどん穏やかになってったの。それで私にある時、生きてる間には何もしなくていいのかもね、って、急に言ってきたの。病室で。」

「...何もしなくていい?なにもしなくていいってなに。」

「私もなんでおばあちゃんがそんなこというのかわからなかったんだけど。でももっと楽に生きていいんだって意味だと思うの。ただ息して生きてるだけでいいって。おばあちゃん、生きてる間になんかすごく悩んでる人だったから。」

「楽に?おばあちゃん楽に生きてなかったのかな。」

「それを口にしたのはほんと亡くなる直前だったから。なにかを悟ったんじゃないの。口からポロっと出た言葉がそれだったの。ただ息して生きてるだけで人は立派なのかもねって。」

「うん...そうだといいけど。」





私はおばあちゃんのことをなにも知らない。


もしも今も生きていてくれるなら
たくさん
相談したいことあった。

人生の大先輩のおばあちゃんならきっと私のことをわかってくれるはずだった。

私は息をしているだけでいいんだ。



私とお母さんはおばあちゃんのいるお墓をあとにした。




やらなきゃいけないことなんてほんとはないんだ。

悩みなんてほったらかしてしまえばいい。

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