孤高の教師

chandeme

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帰ってきた田辺翔一

生と死の乱

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生と死の授業。



田辺「これより生と死の授業を始めたいと思います。突然ですが先生は毎日死にたいと考えています。誰か助けてください。」


井田「た、助けてって言われてもなぁ...なぁ坂井..」


坂井「そ、そうね...私たちでよければ悩みくらいなら聞くわ..」


田辺「うむ。悩みはないがただ死にたいと考えている。時に澤...君は生きていて死にたいと考えたことはあるかな?」


澤「わたし..ですか?中学校のときにいじめにあっていて...そのときに毎日死にたいと思っていて...でも卒業してからは思わないですよ。そんなことくらいで死ななくてよかったと思ってます。」


田辺「なるほど。貴重なエピソードありがとう。いまの話聞いて先生すこしブルーになっちゃった。聞いたことを少し後悔してる。」


井田「で先生はなんで死にたいと思うの?」


田辺「それなんだがな...井田よ...我々は必ず死ぬ運命にあるな。誰でも。なのに人は生まれ生きる。なぜだ。なんの意味がある。必ず死ぬのに...だぞ。私達人間はここで一体なにをしているのだ。答えろ。」


井田「ま、まてよ...いきなりなんだよ...坂井パス。」


坂井「パスしないでよ..そんなパスできるような軽いテーマじゃないわ...私にだってわからないけど、しいていうなら、死があるからこそ人生を謳歌しようとするんじゃないかしら?生きてる間に悔いの残らないよう生をまっとうしようとする...といったところじゃない..?」


澤「うん。坂井さん、私もその意見に賛同するわ。私も同じです。」


田辺「さすがだ坂井。伊達に私と互角で張り合ってきた生徒ではないな。あっぱれだよ...坂井朋子。朋美か。すまん間違えた。」


坂井「...そこで名前間違えないでよ..でも褒めてくれて嬉しいわ。すこしでも生きようと思ってくれたかしら??」


田辺「ならん。0だ。」


中田「はい!先生!」


田辺「どうした田中。喋っていいぞ。」


中田「朝ごはんのケチャップが口にまだついてました!」


田辺「ここがアメリカなら撃たれてるぞ。いいか。ではその人生の謳歌とはなんだ。なんらかのカタチで結果を残すことか?行きたかった大学に行く。金を稼ぐ。女と遊ぶ。夢を叶える。仕事で結果を出す。なにをするにせよ最後に全て死の川に流されてしまう。何もこの世に残すことはできない。なにを感じるにせよ全て刹那的に流されてしまう。そこで話しは振り出しに戻る。私たち人間はここで一体何をしているのかと。」


坂井「ちょっとまってよ..確かにその通りだけれど..でも死ぬなんて先生も私たちもまだまだ先...それまでにやりたいことをやるのが人生だわ..。」


澤「そうですよ...先生は哲学的だから少し難しく考えちゃうかもしれないですけど...もっと気楽に生きてもいいと思いますよ...?こんどなにかおいしいものでも食べにいきましょうよ!」


田辺「くぅ...すまない澤...先生は今涙以外のものは何も出てこない..」


井田「泣くなよ~。ところでさぁ先生。人って死んだらどうなるの?」


田辺「なぜそれを生きている私に聞くのだ...。わかるはずがなかろう。お前はインド人に向かってフランス革命とはなんですかと聞くのか?」


井田「いいじゃーん。インド人だって知ってるかもしんねーじゃん。フランス革命。」


田辺「井田よ...死んだらどうなるのか、あるいは明日がどうなるのかなど考えるのはやめなさい。死に向き合うとは死んだらどうなのか考えることではない。今を生きることが死と向きあうということだ。未来の夢や目標のために生きてはならない。友達のために生きるのもやめなさい。好きな人のために生きるのもやめなさい。そんなもの捨てたらいい。生徒諸君。今を生きろ。今日の授業はこれで以上です。それでは失礼する。」



これにて生と死の授業は
幕を閉じたのでした。
めでたしめでたし。
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