孤高の教師

帰ってきた田辺翔一

猫の乱

猫の授業。



田辺「それではこれより猫の授業を始めたいと思います。唐突ですが先生は子供のころ猫に噛まれたことがあります。以上です。質問のある生徒は放課後校舎裏にきてください。」


井田「猫って噛むのか..？ひっかくっていうイメージならあるけど..よっぽど嫌なことしたんだな..」


田辺「ときに坂井...君は猫と犬だったらどちらを選ぶかな..？」


坂井「わたしは断然猫を選ぶわ..うちにも猫を2匹飼っているもの。」


澤「わたしは犬派です！とても従順なのがかわいいです！」


田辺「素晴らしいですね。ちなみに先生は犬アレルギーです。猫という生き物はですね、非常に気まぐれな性格でして...」


坂井「そうね..ただ猫の種類によって性格は全然違うわ..」


田辺「先生は子供の頃ふと猫にちくわを食べさせようと思いたちました。なのでうちの冷蔵庫からちくわを出して近所の野良猫たちにあげようとしたんです。ところが彼らはまったく興味を示さないどころか私を見下すような白い目で見てきたのです。そこでわたしは腹がたち執拗にちくわを猫の顔まで近づけたのです。結果猫に噛まれました。」


坂井「猫にだって好き嫌いはあるわ...無理やりたべさせようとするなんて..少しは猫の気持ちも考えるべきだわ..」


田辺「坂井。それはつまり噛まれたわたしの指のことなど心配せずどこのどいつかもわからん野良猫をかばうというのか..いい度胸だな...歯を食いしばれ坂井！」


澤「まずいわ..先生怒らせちゃったみたいよ..ビンタする気だわ...坂井さん謝って！」


坂井「い、意味がわからないわ...わたしは正論を言ったまでよ...謝らないわ。」


田辺「坂井！どうすれば猫に好かれるのか方法を私に教えなさい！」


井田「結局ただ猫に好かれたいだけじゃん。」


中田「はい！先生！」


田辺「お前には聞いていないが何の用だ！田中！」


中田「昨日家出したおばあちゃんがついに帰ってきました！」


田辺「歳を考えろ。いいか。俺は猫の考えていることがわからない..よって猫とわかりあうことができない。坂井。彼らはいつも何を考えている。」


坂井「...逆になんで猫がなに考えてるのか私が知ってると思ったのか聞きたいくらいだけど..まぁしいていうなら、しつこくしてはダメよ。しつこくしたら嫌われちゃうわ。」


井田「そうだよせんせー。それは人間もおなじだよ。」


澤「でも先生は善意で猫にチクワをたべさせようとしたのよ..たとえ食べなくてもチクワは先生の思いやりだわ..」


田辺「そもそもなにがいけなかった。しつこくした事か。それともチクワがいけなかったのか。それとも猫に興味を持ってしまった私の煩悩か。どれだ。」


坂井「猫に興味をもつのは煩悩でもなんでもないわ。ただ...猫に限らずだけど..好かれたい気持ちが強すぎるとかえって嫌われてしまうものよ..だから自分の欲求はほどほどにあまり我を張りすぎないのがベストな付き合い方だと思うわ。」


田辺「坂井。誰が深いい話をして先生を納得させろと言った。そんなセリフは聞きたくなかった。しかし今の話しは素晴らしい。パーフェクトだ。お前の通信簿だけオール5にしてやる。明日から学校こなくていいぞ。」


井田「えー？そんなのずりーよー！！」


坂井「？？ありがとう..でも学校には通うわ..お母さんが心配するもの。」


澤「私も先生に褒められたいのにー...」


田辺「はっはっはっはっ。おのれが気持ちのいい思いをしたいがために人から好かれようと奮闘する..しかし欲張れば欲張るほど名誉というのは遠ざかっていってしまうもの..それがこの世のことわり...人も猫も同じかな。では私は失礼する。」



これにて猫の乱は無事
幕を閉じたのでした。
めでたしめでたし。