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酔っ払い(藍華) 。
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「私、こないだ間違えてお酒飲むところだったんよねー」
先日、愛華の姉の雨ちゃんが東京で結婚式を挙げた際、出されたお酒をジュースと勘違いして飲みかけた、という話を愛華から直接聞いた。
何故疑わずに飲もうとしてしまったのか疑問だが、飲まずに吐き出したと聞いて安心した。もし飲んでしまっていたら……と思うとゾッとする。
俺が愛華の側にいる限り、絶対彼女にお酒を飲ませないようにしようと、その時に固く心に誓った。
……それなのに。
「みっちー、キスしよう?」
再び事故が起きてしまった。しかも今回は最悪な事に、かなりの量を飲んでいる。
俺が料理に使う為に買ってきた赤ワインを、ぶどうジュースと間違えて飲んでしまったらしい。瓶に入ったぶどうジュースなんて聞いた事が無いのに、何故彼女は間違えたんだろうか……バカ過ぎて溜息しか出ない。
「なんでそんなに酔ってるの?いつもより声のトーン高いし、ちょっと寝たら」
「キスしてくれたら寝るー」
ダメだ、何を言っても無駄だ。
普段は絶対に出さない甘ったるい声と、少し火照った頬と、飲んで暑くなってきたとか言いながら中途半端に脱いだ所為で乱れた服。
愛華の全てが、俺の理性を破壊しにきている。
「本当にキスしたいの?」
「うん!」
明るい声で嬉しそうに頷く彼女。ああもう可愛すぎる。元々色っぽい雰囲気があるとは思っていたけど、もしかしたらキャバ嬢より色気があるかもしれない。
此処は、さり気なく断った方が良いのだろうか。でも、俺も男だし。せっかく好きな女に誘われてるんだから、それに乗りたい気持ちも結構ある。
「……分かった。そんなにキスしてほしいならいいよ、してあげる。でもその代わり、襲ってもいい?」
「えっ?」
さぁ、これでどうだ。
……本音を言うと、断ってほしい気持ちの方が少しだけ強い。だって、今の愛華は酔っているから、本心で俺を受け入れてくれる訳じゃない。
心の底から愛している人を抱く時に、相手からの愛を感じられなかったら、惨めな思いをするだけだ。
「愛華、酔ったフリなら今すぐ辞めて」
冷たく突き放してしまえば、少しは頭が冷えるだろうか。色々考えたところで、愛華にどんな反応があるかは全く検討がつかないが。
「……ぃよ」
「え?」
小さく消え入りそうな声が、愛華の口からこぼれた。
「酔ったフリなんかじゃないよっ!」
彼女の涙声と、全身に伝わってきた体重と、体同士がぶつかる衝撃波。
ダブルベッドに押し倒された俺は、愛華の下で身動きが取れなくなってしまった。
「ちょ、何してんの」
「……キスしてほしいのに、襲ってほしいのに、構ってほしいのに、いつもいつも冷たくされてて悲しいの、気づいてる?」
え、そうなの?
初耳だし、そんな乙女心知る訳も無い。
「取り敢えず落ち着いて……一旦離れよう?」
「期待してた私がバカだった。絶対に離さないから」
ああ、これはまた嫌な予感がしてきた。愛華って、スイッチが入った瞬間が分かりやすいよ。
……今夜は寝られそうにないな。
先日、愛華の姉の雨ちゃんが東京で結婚式を挙げた際、出されたお酒をジュースと勘違いして飲みかけた、という話を愛華から直接聞いた。
何故疑わずに飲もうとしてしまったのか疑問だが、飲まずに吐き出したと聞いて安心した。もし飲んでしまっていたら……と思うとゾッとする。
俺が愛華の側にいる限り、絶対彼女にお酒を飲ませないようにしようと、その時に固く心に誓った。
……それなのに。
「みっちー、キスしよう?」
再び事故が起きてしまった。しかも今回は最悪な事に、かなりの量を飲んでいる。
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「なんでそんなに酔ってるの?いつもより声のトーン高いし、ちょっと寝たら」
「キスしてくれたら寝るー」
ダメだ、何を言っても無駄だ。
普段は絶対に出さない甘ったるい声と、少し火照った頬と、飲んで暑くなってきたとか言いながら中途半端に脱いだ所為で乱れた服。
愛華の全てが、俺の理性を破壊しにきている。
「本当にキスしたいの?」
「うん!」
明るい声で嬉しそうに頷く彼女。ああもう可愛すぎる。元々色っぽい雰囲気があるとは思っていたけど、もしかしたらキャバ嬢より色気があるかもしれない。
此処は、さり気なく断った方が良いのだろうか。でも、俺も男だし。せっかく好きな女に誘われてるんだから、それに乗りたい気持ちも結構ある。
「……分かった。そんなにキスしてほしいならいいよ、してあげる。でもその代わり、襲ってもいい?」
「えっ?」
さぁ、これでどうだ。
……本音を言うと、断ってほしい気持ちの方が少しだけ強い。だって、今の愛華は酔っているから、本心で俺を受け入れてくれる訳じゃない。
心の底から愛している人を抱く時に、相手からの愛を感じられなかったら、惨めな思いをするだけだ。
「愛華、酔ったフリなら今すぐ辞めて」
冷たく突き放してしまえば、少しは頭が冷えるだろうか。色々考えたところで、愛華にどんな反応があるかは全く検討がつかないが。
「……ぃよ」
「え?」
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「ちょ、何してんの」
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え、そうなの?
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「期待してた私がバカだった。絶対に離さないから」
ああ、これはまた嫌な予感がしてきた。愛華って、スイッチが入った瞬間が分かりやすいよ。
……今夜は寝られそうにないな。
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