友達以上、恋人未満の旦那様

ふくりあ

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#17

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どうしよう、みっちーのダンスが上手すぎてついていけない。

「ダンスがお上手なのですね?」

「ええ。父に厳しく教え込まれたので(笑)」

私のアドリブを見事に交わすあたり、みっちーには俳優の才能があると思うんだよね。

暫く踊ったあと、私はみっちーから手を離して俯いた。ダメだカッコ良すぎて見てられない。今すぐ舞台から降りたい。みっちーが眩し過ぎる。

「……少し疲れてしまったわ。バルコニーで話しませんか?」

「良いですよ。ワインを取ってきますね」

「ありがとうございます……」

ワイン?……何を持ってくるんだろうか。ワイングラスにいれた、ぶどうジュースとか?

小道具担当が龍だったから、あんまりちゃんと確認してなかったんだよなぁ。こんな事なら真面目に準備しとくべきだったわ。

「はい、どうぞ召し上がってください」

みっちーが持ってきたグラスの中身は、明らかに真っ赤なワイン。え、これガチ系なの?

召し上がれと言われたからには、飲まなきゃダメなのかな……でも、本当にワインだったら困る。

チラッとみっちーの方を見ると、一口飲んでニコッと微笑んだ。なんだ、よくできたジュースか。じゃあ安心して飲めるな。

私も一口飲もうとワイングラスに口をつけると、強いアルコールが一気に脳を刺激した。え、これもしかして、本物のワイン!?

「……ワインを飲んだのは初めてなので、なんだか不思議な感覚です」

「そうなんですか。お味はどうです?」

「とても……美味しいです」

嘘。めっちゃ苦い。ぶどうの甘みが強いけど、渋みもなかなか強い。気持ち悪くて吐きそう。こんな状態で劇をやるなんて、絶対無理に決まってる。

「良かった。そうだ、また今度会いませんか?」

その後、劇は滞りなく続いていったんだろうけれど、私の記憶はそこで途切れてしまっていた。
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