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19 ミルワールの館・Ⅱ
しおりを挟むブランとジョーヌは窓一つない、壁の燭台に明かりが点った石畳の何もない部屋の中に居た。
「何もないわね」
「でも、この部屋だけ何か…」
部屋の扉の外に歩み寄ってくる足音が聞こえる。
「やっぱりほって置いてはくれないようね」
扉に斜めに切り込みが入り、扉が二つに分かれた。
「扉を開けることすら忘れたようね」
ノワールは足を部屋に一歩、踏み入れて動きを止める。すると踏み込んだ敷石が黒に染まった。
その敷石を皮切りに蜘蛛の巣のように黒い敷石が広がり、ブランとジョーヌの目前で止まった。
「やっぱりこの部屋は他と違うみたいね」
ブランはアリスの力を使い、剣を出すと足元の敷石が白に染まる。
「何、何か、変…」
ブランは力を使ったことに違和感を感じていると白に染まった敷石の表面が剥がれ、銀色の光がブランを包み、その姿が消えた。
ジョーヌは消えたブランに動じず、まだ部屋の入り口にいるノワールを見た。するとノワールの瞳に瞬いていた炎が消え、突然、前のめりに倒れた。そして、ジョーヌの瞳から生気が消えた。
「対なる駒は止まり、白き闇へと消え、黒き光に倒れた」
ジョーヌは倒れたノワールに近付いて跪くと手首の裾口から十字架を模した短剣を取り出して振り上げた。
ジョーヌは短剣を振り下ろしたが背中の寸前で止め、ノワールの身体に触れた。
「違う……これはオートマタ」
ジョーヌの瞳に生気が戻った。
「わ、私、何を?」
慌てて短剣を仕舞い、立ち上がるとノワールは黒い炎を上げてあっという間に跡形もなく昇華した。
「糸が切れたか、もう少し遊べるかと思ったが」
ミルワールの玄関広間中央には、朱く錆び付いた色をした髪と鱗のような肌を持った男が立っていた。
「本物の到着か」
ミルワールの館、入り口から肩に腹這いの猫の人形を乗せたノワールが入ってきた。
「此処に本当にあるのかしら」
ノワールは誰もいない玄関広間を見回した。
「他に誰か来ているようだにゃ」
肩に乗せている猫の人形が喋った。
「分かるの?」
「そこの床、微かに血の匂いがするにゃ」
ノワールは下を見ると掠れた赤い血の跡が残る床があった。
「まだ新しい赤い血」
ノワールは床を指先で撫でると血痕を消すように指の跡が残った。
「赤い血ってことはあの」
「多分、そうだにゃ」
「だったら此処であの時の借りを…」
ノワールは不適な笑みを見せたがすぐに止めた。
「…でも、血があるってことは他にもいるってことね」
そう思っているとノワールの前に瞳に赤い炎が瞬くルージュが現れ、斧を振り下ろしてきた。
ノワールは振り下ろされた斧を躱すと斧は床を砕いた。
「またいきなりなご挨拶ね」
ノワールは大鎌をだそうと構えたが出せなかった。
「何で出ないの?」
そうこうしているうちに再びルージュが斧を何度も振り下ろす、ノワールはそれを躱しながらも何度も試していく。
「この中じゃ、力は使えないみたいだにゃ」
「そんなのこれだけ試せばわかるわよ!でもなんでこいつは力を使えるのよ!」
「今は、逃げるしかないにゃ」
「逃げるって言っても…」
ノワールは階段の踊り場まで来ていた。そこへルージュが斧に赤い炎纏わせて大きく振り下ろすと階段を半壊させた。
「全く何も出来ないなんてもどかしいわ…」
ノワールは残った二階に繋がる左側の階段にしがみつきながら言った。そして、ノワールはすぐに立ち上がり、二階へと上ると奥へと逃げた。
ルージュはそれ追おうと一歩、踏み出すがすぐに動きを止めた。
「やっぱりこの中では王の力を使っても動きにくいか」
朱く錆び付いた色をした髪と鱗のような肌を持った男が右側二階に居た。
その様子を右側二階の奥へと通じる通路の陰からジョーヌが覗っていた。
「…王の力?」
朱く錆び付いた色をした髪と鱗のような肌を持った男は手で空を切る素振りを見せるとルージュが膝から崩れるように倒れた。そして、ノワールのオートマタと同じようにルージュは赤い炎を上げて昇華した。
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