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第五章
しおりを挟むフェイ、レイナ、リーシュの三人が部屋から出ると外にはレイがいた。
「お話したいことが…」
「どうしたんですか?」
「フィーに私が母親だとゆうことを黙っていてもらえませんか」
「えっ!?この人がフィーちゃん母親だったんすか!」
「うん、でもどうしてですか?」
リーシュの言葉に頷き、レイに理由を訊ねた。
「折をみて私から話をしたいので」
「わかりました」
「いいんすか?」
「しょうがないよ、親子のことなんだからさ」
「そうだよ、リーシュ」
「うっうん」
リーシュは二人に言われて気圧される。
「じゃあ、フィーちゃんとはお別れなんだね」
「そうなるかな」
そこへフィーがやって来た。
「みんな!」
「フィーちゃん、俺たちは出発するよ」
「だからここでお別れっす」
「えぇ~お別れなのぉ~」
フィーは目を潤ませた。
「大丈夫、きっとまた会えるから」
「うん…」
「これからはここにいるレイさんが一緒にいてくれるから」
「わかった」
フィーはフェイ、リーシュ、レイナに手を振り、三人も手を振り返しながら教会を出た。
三人は宿の部屋から荷物を取りに一階に降りて来ていた。
三人が階段を降りてくると裏からカウンターへと老人が出てきた。
「おじいさん、良かった無事だったんすね」
リーシュがカウンターにいる老人に話し掛ける。
「すまなかったな…もう立つのか?」
「うん」
「そうか、宿代はそこにでも置いておいてくれ」
老人はそう言うと後ろを向いて裏へと歩みを進める。
「じゃあ、気を付けてな」
老人は去り際にそう言い残した。
リーシュは無言のまま感慨深く老人を見送る。そんなリーシュを横目にフェイはカウンターに硬貨を数枚置く。
「リーシュ、行くぞ」
フェイはリーシュの肩に軽く手を置いて声を掛けるとリーシュは無言で頷く。そして、レイナ、リーシュと先に宿を出る。
フェイはふと何かを感じ振り返ると裏への出入口の向こうに一つの青白い球が何処かへ消えるのが見えた。
フェイは向き直り、少し俯いた後に顔を上げて宿を出た。
「ここから馬車が出てるんっすよね」
「たぶん、小さかったからあまりよく覚えてないな」
「あそこにいる人に聞いてみよう」
フェイは指で示す方には一人の男が居た。
「ここが馬車乗り場ですよね」
「そうだよ」
「いつ来るかわかりますか?」
「君達、馬車に乗るのかい?」
「はい」
「そうか…残念だが二、三日前から行き来していないだよ。一本しかない山道で崖崩れがあってね」
「そんなぁ~」
「他に道はないっすか?」
「あるにはあるんだが…」
男はあまり気乗りしないような口調で言う。
「どうしたんですか?」
「山の向こうに繋がる洞窟があるんだが、そこは昔から幽霊が出ると言われていて町の者も誰も近付きしない場所なんだ」
「幽霊っ!?」
リーシュは裏返ったような声をあげる。
「あぁそこを抜ければ港町に簡単に出られるだがな」
「どうする?フェイ」
「そこしか道がないなら行こう」
「ででも幽霊っすよ」
「あれ、リーシュ怖いのかぁ~?」
「誰がそんなことないっすよよ」
「声が震えてるよ」
「き、気のせいっすよ」
強がるリーシュを見て、レイナとフェイは笑った。
「それでその洞窟の場所はどこなんですか?」
「本当に行くのか?」
「はい」
「何があっても俺は知らんぞ…」
男はそう言うと続けて場所を教える。
「…洞窟は教会の東にある雑木林の中さ、気をつけて行きな」
三人は男に礼を言い、その洞窟に向かった。
叫びの洞窟~亡霊達の晩餐~
フェイ達、三人が洞窟の前に着いた。
「来てみるとちょっと不気味だな」
洞窟の入口は人が叫び声をあげたような形をした口を開けている。そこへ冷たい風が三人の背後から洞窟へと吹き抜ける。
三人は背筋をひんやりとした手に撫でられた感覚を感じ、怖気に背筋が凍る。
そして、再び冷たい風が吹き抜ける。今度は先程よりも強く吹き抜けて、三人は洞窟の中へと吸い込まれた。
三人はうっすらとした光の中、目を覚ますと三人の周りを取り囲むように黄色く光る触手のようなものがクネクネと動いていた。
「きゃ…」
フェイは叫び声をあげようとしたレイナの口を押さえた。
「レイナ、静かに」
フェイは口許に人差し指を当てて小声で言った。
フェイの言葉にレイナが頷くとフェイはレイナの口から手を離した。
フェイ達は小声で話し始めた。
「一体なんっすかこれ?」
「奴等はグワール」
グレネリスが答える。
「グワール?」
「そうじゃ。どうやら奴等はこっちには気付いていないようじゃな」
「これで気付いてないって」
「気付いておったら我らはもう生きてはおらぬよ」
黄色く光る触手は洞窟の奥へと消えて行き、暗闇に包まれた。
フェイは一呼吸置くと腕輪に火を点した。
「何やら何かを探していたようだが」
「やっぱり他の道探さないっすか?」
「他に何処があるんだよ。それに戻るにしても此処が何処かもわからない」
三人は洞窟の奥、グワールが消えた方へと足を進めた。
奥はジメジメと湿っていて静寂に包まれているが時偶、鍾乳石から落ちる水滴が水溜まりに落ちて幻想的な音の波紋が洞窟内に反響する。
「何か聞こえる」
反響する音に混ざって声のようなものが聞こえてくる。
「本当だ」
「何処から聞こえるかわかんないっすね」
フェイ達はその声を気にしながらも奥へと進んで行く。すると暫くして少し開けた場所に出た。
その場所の中心には光に照らされた岩が山積みになっていおり、洞窟の天井を見上げると崩れた跡と亀裂から光が筋のように差し込んできている。
「綺麗ね」
差し込む光の中に無数の小さな何かが輝いている。
「なんなんすかね」
「わからないけど今は先へ進もう」
「先って言っても何処にも進めそうな所はないっすよ」
「どうするの?」
「少し調べてみよう」
フェイは崩れ落ちた岩を、リーシュとレイナは周囲の壁を調べ始めた。
「リーシュ、レイナ」
暫くしてフェイは二人を呼ぶ。
「何か発見したっすか?」
「ここを見て」
フェイは崩れ落ちた岩の間を指差した。
「あな?でもなんの」
「この岩を退かしてみれば解るっすよ」
「退かすったてどうやって?」
「それは……」
「なにも考えずに言ったみたいね」
「まぁそこはみんなで考えればいいじゃないっすか」
「しょうがないやるか、グレネリス」
「何をじゃ」
フェイはグレネリスの言葉に拍子抜けした。
「話を聞いてなかったのか?この岩を退かそうって話、だから炎斬で退かそうと」
「そうか、だがあまり強い力を加えるとあの天井が崩落しかねんぞ」
「分かってる、そこは何とか加減してみるよ」
フェイはエレメンタルブレードを構えて集中する。
『ほう、制御することも身に付けつつあるか』
フェイは炎斬を放つ、朱い刃が岩に直撃して辺りに砂埃が立ち込めた。
砂埃が晴れると山積みの岩の一部だけが綺麗になくなっており、地面に小さな穴があらわになっていた。
「岩は無くなったけど何の穴かわからないな」
フェイは穴が何処まで深いかエレメンタルブレードを突き刺してるみるとブレードがスーッと入ってゆき、刀身がスッポリ入った。そして、カチッと音が聞こえた。
「何か音がしたっすね」
地面に刺さるエレメンタルブレードから縦横無尽に広がるように光の線が地面を走った。
「なにが起きてるの?」
「わからない」
洞窟内が振動して壁に次々と亀裂が走っていき、壁ががらがらと崩れて壁のしたから碧い水晶の壁が現れた。
そして、縦横無尽に走った線が壁からエレメンタルブレードの刺さっている所へと収束する。
「すごいっすね~」
「うん」
「あぁ…」
地面の一部が下がり地下へ続く階段が出来たすると光の中に在った無数に輝く何かが下へと流れ込んでいったがフェイ達は気付いていなかった。
フェイはエレメンタルブレードを抜き三人は地下へ降りて行った。
降りた先には放棄された坑道があり、埃と蜘蛛の糸の被ったトロッコが在った。
「これ、動くっすかね」
リーシュはトロッコを調べ始めた。
「どうだろうな」
フェイはそう言うと近くに在った机を見ると机の上には埃を被ったランプと筒状に巻かれた古ぼけた革があった。
「これは使えそうだ」
腕輪の炎を使い、ランプに火を点した。
「これはなにかな?」
筒状に巻かれた古ぼけた革を開くと坑道の地図らしきもの描かれている。
「二人ともこれを見て」
リーシュとレイナはフェイの広げる古ぼけた革に描かれた地図を見た。
「これ、この坑道の地図?」
「多分ね」
フェイは地図上のある部分に指を差した。
「ここにゼルゼ、そこにはシルスって書いてあるからね」
「じゃあ、そこにあるトロッコを使えばすぐに着くっすね」
「使えるの?」
「調べて見たけど問題なかったすよ」
「じゃあ、行こう」
フェイ達はトロッコに乗るとレバーを動かしてブレーキを外した。するとトロッコはゆっくりとレールを進み始めた。
トロッコは徐々にスピードを増していくとトロッコの前面にあるライトが光も増していき、前方の状況を照らし出す。
「なんか速くない?」
「これじゃあ、カーブが来た時に曲がれない。リーシュ少しブレーキをかけて」
「分かったっす」
リーシュはブレーキレバーを引くとトロッコのスピードは徐々に落ちていく。
「これなら大丈夫そうね」
突然、ガキンっと音が聴こえた。
「あっ…」
ブレーキをかけ続けているリーシュの方から聞こえた。
「リーシュ、今の音って……」
フェイとレイナはリーシュの方を見ると折れたブレーキレバーを持ったリーシュが苦笑いする。
「ははは、外れたっす」
気まずい雰囲気が流れる中、トロッコは徐々にスピードを増していく。
「どっどうするするすか」
「どうするってさっきちゃんと調べたんじゃないのか!?」
二人は言い合いを始めた。
「二人ともそんなこと言ってる場合じゃないよ!前!」
レイナが二人の間に割って入り、前を示す。
途切れたレールが遠くに見える。
「やばいっす」
フェイは何かを発見した。
「あそこにレールの切り替えレバーがある」
途切れたレールの近くに分岐点があり、切り替えレバーはその手前にあった。
「リーシュ!あれを何とかして狙えるか?」
「狙えるけど矢じゃ軽すぎてレバーを動かすまでの力はないっすよ」
「じゃあ、外れたレバーを飛ばすってことはできない?」
「できると思うけど狙いが定まるか…でもやってみるっすよ」
リーシュは外れたブレーキレバーをボーガンにセットし切り替えレバーに狙いを付けた。
『よし、もう少し…あと少し……今だ』
リーシュは速度と距離を計りながら狙いを定め放った…。
ブレーキレバーは回転しながら飛んでいき、見事切り替えレバーに当たった。
切り替えレバーは当たった衝撃で動いたが後少しで切り替わるというところで止まった。
「くそ!もうすぐ分岐点に着く」
その時、突然、坑道全体が振動し地震が起こった。
「くっこんなときに…」
三人はトロッコにしがみつく。
切り替えレバーは振動で徐々に元の位置へと動いていく。
「天井が崩れそうっす」
天井から岩が落ち、切り替えレバーに当たりギリギリの所でレールが切り替わった。
トロッコは無事、崖の底に落ちる事なく走って行くが後方からドドドンッという音が聴こえ、地震が止まる。
「ふぅ~危なかったっすね」
「でも逆方向に来ちゃったな」
三人で地図を見た。
「本当ね。今、向かっている方向だとフラビナルって言うところに繋がってるみたい」
「しょうがないか、もう戻れそうもないし…」
フェイは後方を気にしながら言った。
「…まずはここから出る事を優先しよう」
「そうっすね」
三人が話をしているとトロッコのスピードが徐々に落ち始めた。そして、突然、急ブレーキが掛かる。
「どうしたんだろう?」
「今頃、ブレーキが利いたみたいっすね」
リーシュは急ブレーキでぶつけたのか頭を擦りながら言った。
三人はトロッコから降り、調べてみた。
「…ダメっすね、ブレーキがレールに食い込んでるっす」
レールの表面がささくれのように捲れ上がり、レールにただ押し当てるようなブレーキが捲れ上がったレールの隙間に潜り込んできっちりと噛み合うようになっている。
「確かにダメだね」
三人がトロッコの下を覗き込んでいると声が聞こえた。
「こんな所に人が来るとは珍しいな」
三人は声の方向を見ると光る石の付いた杖を持った老人がいた。
「何十年振りになるかのぉ~さっきの大きな音はお前達か?」
「僕たちってゆうか坑道全体が揺れて天井が崩れたんです」
「そうか、しかしわしはそんな揺れは感じなかったがのぉ~」
老人は顎を手で撫でながら首を傾げる。
「あの聞きたいことがあるんですけど」
「なんじゃ?」
「港町シルスに行きたいんですけど何処か行ける道を知りませんか?」
「シルス?聞かん町の名前じゃな…ここから近い町となるとフラビナルじゃがわしもそこに住んでおる」
『じゃあ、この地図は…ひとまず』
「リーシュ、レイナ」
フェイは二人に呼び掛けた。
「ひとまずフラビナルって町に行こうと思うんだけど」
「いいと思うっすよ」
「だって他に進めるとこもないみたいだしその町にいけばシルスに行く道が見つかるかもしれないものね」
「すいません、おじいさんフラビナルまで案内してもらってもいいですか?」
「構わんよ、こっちじゃついてきなさい」
老人は歩き始め、三人もその後に続いた。
暫くしてフェイ達、三人は町に着いた。
そこはドーム状にくり抜かれた場所で上の方に光り輝くものがあり、町全体を照らしている。
「坑道の奥にこんなものがあるなんて驚きっすね」
「うん、どうやって掘ったのかな」
「ここはわしらの祖先が来る前から在ったんじゃが、誰が何のために造ったのかもわからん」
フェイはドーム状の壁に触れる。
壁は温かく艶があり滑らかだった。
「温かい…」
「それは壁中に地熱で温められた水脈が通っておるからじゃよ」
「なんかすごい町っすね」
「スチュアート、こいつらは?」
老人に話し掛ける声が聞こえた。
「これはゲルヴ様」
老人は黒い長髪の眼鏡を掛けた男に頭を垂れる。
「この方々は坑道が崩れて通行出来なくなり困っていたので連れて来た次第じゃ」
「困るなぁ勝手に部外者を町に入れてもらっては」
「君達は何処へ行こうとしていたのだね」
「港町シルスです」
「聞かん名の町だな…まぁいい、こいつらは私が預かる」
「分かりました」
「君達、着いてきたまえ」
フェイ達はゲルヴの後に着いて行くと大きな屋敷へ着いた。
三人は屋敷の一室に通された。
「座りたまえ」
言われる通りフェイ達は近くにあった三人掛の椅子に座った。
「君達にはすぐにでも出ていってもらいたいところだが、もう夜になる屋敷に泊まるがいい」
「ありがとうございます」
「礼などいらん、こちらとしては今すぐにでも出ていってもらいたいのだからな」
部屋の扉を叩く音が聴こえ、扉が開いた。
「失礼します、お部屋ご用意が出来ました」
女の使用人が一礼して入ってきた。
「あとは頼んだぞ」
「はい。それではお客様、部屋までご案内しますのでこちらへ」
フェイ達は席を立ち、使用人の後について部屋を出た。
「こちらの部屋をお使い下さい」
そういうと使用人は一言付け加えた。
「あと夜は決して屋敷から出ないで下さい。それでは失礼します」
使用人は扉を閉めた。
「なんか変っすね」
「うん、屋敷から出ないでなんて変よね」
「今は言う通りにしよう」
「どうしたんっすか?いつもなら真っ先に行動するのに」
「気になることが幾つかあって」
「気になること?」
「なんっすか?」
「この町に入って違和感があってさこれだけ大きな町なのに全く人気ないし、建物や道も妙に綺麗過ぎるからさ」
「確かに」
レイナは窓から外を眺める。
「うん、でもそれだけじゃないんだ」
「他にもあるんっすか」
「うん、それは夜になってみれば分かると思う」
町中に鐘の音が十三回鳴った。
鐘が鳴り終わると町中を照らしていた光が消えていく。そして、町の明かりが灯っていき、部屋の明かりが灯った。
そこへ部屋の扉を叩く音が聞こえ扉が開いた。
「失礼します。お食事のご用意が出来ましたので呼びに参りました」
フェイ達は使用人の後について部屋を出る。
使用人の後についてフェイ達は廊下を歩く。
「貴女はここには長くいるんですか?」
「えぇ、十年程になります」
「長いっすね」
「ここで働いているのは貴女だけなの?」
「はい、屋敷の全てを任されております」
「一人この大きな屋敷をっすか!」
「はい」
「一つ聞いてもいいですか?」
「なんでしょう?」
「どうして屋敷の外へ出てはいけないですか?」
「申し訳ございません、私の口から申し上げることはできません、直接ゲルヴ様にお聞きになって下さい…」
そこで食事を行う、広間に着いた。
使用人は扉を開け、フェイ達三人を中へと促す。
「すごいっすね」
広間には長机いっぱいに並べ料理がある。
「これも貴女が一人で?」
「はい、どうぞ御席へとお座り下さい」
「ゲルヴっていう人いないね」
「ゲルヴ様はいつも自室でお食べになりますので」
「そうなんっすか」
「それではごゆっくり」
フェイ達は席に着き、食事を取った。
「はぁ~食った食ったぁ~お腹いっぱいっす」
「食い過ぎたな」
「うん、凄く美味しいかったからね」
「さてと腹も膨れたし屋敷の散策といこうか」
フェイ達は広間を出て廊下を歩いていると少し開いた扉の隙間から光が漏れている部屋があった。
三人はその部屋の近くまで行くと中から話し声が聞こえてきた。
誰かと会話しているようだが相手の声は聞こえず、独り言のように聞こえる。
扉の隙間から部屋の中を覗くとそこにはゲルヴの姿があった。
「事は順調に進んでいます」
「………」
「あの三人は明日直ぐにでも出て行きますのでご安心下さい」
「………」
「はい、全てはヴァルキリア様の為に」
『ヴァルキリア!?』
「どうやら奴の支配下のものらしいな」
「どうするんっすか?」
「気付かれないうちに部屋へ戻ろう」
フェイの言葉にレイナはそっと後ずさる。すると廊下にあった台座にぶつかった。
台座に乗せてある壺がグラグラと揺れて地面に落ちて砕ける音を響かせる。
「誰だ!」
ゲルヴは部屋の扉を勢いよく開け放ち、廊下を睨むとそこには割れた壺が地面に散乱している。
「奴ら」
「………」
「後はこちらで処理します」
フェイ達は部屋へと着いた。
「何の目的でこの町を」
「まずはこの建物から出た方がよかろう」
「そうだね、立ち聞きしていたのがバレただろうし」
「ごめんね」
「大丈夫、気にするなって」
「誰か来るみたいっすよ」
「みんな隠れろ」
三人はそれぞれ別々の場所に隠れた。
そこへゲルヴが扉を勢いよく開けると部屋の中を睨み、部屋へと踏み入る。
「ちっいないか…まだ外へは出てないようだが」
使用人が現れ、部屋に入ってきた。
「ゲルヴ様、どうなさったんですか?」
「奴らが逃げたお前も早く捜せ!見つけたらわかっているな…」
「はい」
ゲルヴは部屋から出て行った。
「いるのは分かっています」
「…」
「仕方がないですね」
使用人はポケットから懐中時計を取り出しつまみを捻る。
時計の文字盤が光り、使用人の背中に純白の羽根が現れ、衣服も変容する。
「天使クロノスが命じる隠されし者をあらわし給え」
部屋にあった家具は消え、隠れていたフェイ達は露になった。
「何が起きたの!?」
「分からないけど見つかったのは確かだ」
リーシュはボーガンを取り出し構えた。
「警戒は不要、危害を加えるつもりはありません」
「貴女は一体…?」
「コイツはクロノスじゃ」
「知ってるの?グレネリス」
「グレネリス?グレネリスってあのグレネリス?久し振りね、いつ振り」
「ひよっこ天使がこんな所でなにをしてるんじゃ?」
「なっ!失礼なもう立派な天使になってます!」
「ほう、それで?」
「私はこの町に異変が起きてるから調査として送られたの」
「そうゆうことでしたか」
声の方をみるとゲルヴが居た。
「ゲルヴ!どうして?」
「私が気付いてないとでも?ずっと監視はしていたのですよ」
「なんですって!……なんてねそんなこと百も承知よ」
「だったらこれもご存知かな、天使殿」
ゲルヴは部屋の壁にある燭台を下に引いた。すると四人を囲むように格子が降り閉じ込められた。
「これじゃ何処にもいけない」
「大丈夫」
クロノスはフェイ達に小声で言い、続けて呟くように呪文を唱えると床に魔法陣が広がった。
「ここは私に任せて早く逃げるのよ、あと青い炎には気をつけて」
「ちょっ…」
フェイは言葉を発しようとしたが身体が浮き上がり、部屋からフェイ、リーシュ、レイナの三人の姿が消えた。
「これでよしっと」
「余計な真似を」
三人を追いかけようと振り返るゲルヴをクロノスが呼び止める。
「待ちなさいよ、私を置いてどこへいくつもり?」
「お前の相手はそいつだ」
床から六体の鎧が浮き上がるように出てきた。
「こんなの直ぐに」
クロノスは呪文を唱えたが何も起こらなかった。
「どうして?」
「そんなことは自分で考えるんだな」
ゲルヴはそう言い残し、立ち去って行った。
「いてて…ここは?」
「屋敷の外みたいっすよ」
「まったく急なんだから」
「君達…いい加減どいてくれないか」
三人は白いローブを身に付けた男の上に重なる様に覆い被さっており、三人は急いで立ち上がり謝った。
「あの貴方は?」
「聞いてないのか?アイツまさか何も説明せずに転移させたのか?」
「アイツってクロノスさんのことですか?」
「そうそう、俺が町の外へ案内する手筈なんだ」
「そうなんっすか」
四人は町の外へ向かう為に動き始めた。
「名前はまだだったな、そうだな…」
白いローブの男は少し考え込み、名前を言う。
「俺の名はキューレ」
町の中は真っ暗でその暗闇を青い炎がいくつも漂っている。
「あれはなんっすか」
「魂だよ、囚われのね」
「囚われ?」
「そう、魂だけを仮の肉体に入れて動いている人形を囚われと言わずになんというのか、俺は聞きたいね」
「それはどういう?」
「それはっと…」
キューレは三人の動きを手で制して建物の陰からこれから移動する先を覗き込む。
「…全く足止めも碌に出来ないのか…」
そこには青い炎を引き連れたゲルヴがいた。
「奴らを捜せ!まだ近くにいるはずだ」
その時、隠れている四人の背後がぼんやりと明るくなる。
そこには青い炎が漂っていた。
「きゃっ」
青い炎の中には無数の骸が何か訴えるような姿が見える。
フェイは咄嗟にエレメンタルブレードで振り払うと青い炎は距離を置くようにゆらゆらと後退る。
「そんな所にいたか」
ゲルヴが四人の隠れる場所に視線を向ける。
「ここは俺に任せて君達は先に行きな」
「でも…」
「いいから」
キューレは手で空を払い除けるように動かす。
三人は背後の青い炎を避けて近くの細い路地に入る。
「出てきたらどうだ?」
キューレは建物の陰から歩み出る。
「これはこれはどうしてここに?」
「こっちもこっちの理由で動いていてね。あの子達のことは後はこっちでやるから例の件を進めてくれ」
キューレはゲルヴと親しげに話す。
「あとあれを借りるよ」
青い炎を指差し言った。
「分かりました」
ゲルヴはすんなり立ち去った。
「どこへ行っても青い炎がいるっす」
「これじゃどうやって町の外へ行けば」
「ねぇ あそこに人が居るわ」
「あの人は…」
「スチュアートさんっす」
スチュアートは青い炎に囲まれていた。
「助けなきゃ」
フェイはエレメンタルブレードで青い炎を払い退ける。
「大丈夫ですか?」
「……あぁ、すまないな」
払い退けられた青い炎は自らを燃やすかのように勢いを増す。そこへ他の青い炎達が集まり、炎が膨れ上がっていく。
そして、地面が盛り上がり、骨の手が突き出した。
青い炎が地面から突き出した骨の手に燃え移ると骨の手は地面に手を突き立て、地面から虚ろな目に青い炎を宿した髑髏が姿を露わす。
青い炎を纏う骸骨は両手を地面に突き、地面から這い出る。
フィアスカルは骨で出来た車輪のようなものを両手に構えて襲い掛かって来た。
回転させながら振り下ろされる骨の車輪をフェイはすぐさまエレメンタルブレードの刃で弾くと骸の車輪の一部分に紅い火が燈った。
「ここは任せて二人はスチュアートさん連れて町の外へ」
「わかったっす」
「さぁ、スチュアートさん」
二人はスチュアートを連れて町の外へと向かった。
「さっさと決めるぞ、グレネリス」
エレメンタルブレードとオーブが輝き、剣が双剣へと変化した。
フェイは双剣でフィアスカルに次々と攻撃していくが全て骨の車輪で防がれた。
ふと気が付いたフィアスカルが防ぐばかりでほとんど攻撃してこないに、例え攻撃して来たとしても自分にではなくエレメンタルブレードに向けてだった。
フィアスカルの持つ骨の車輪を見ると最初の状態と変わっており、骨の車輪の外周に飛び出ている尖った物の先に紅い火が灯っている。それも一ヵ所だけでなく他の突端にも灯っていり。
「なんだあれ」
「こちらの攻撃を受ける度に増えているように思うが」
「どんな意味があるんだ」
「どんな意味があるかしらんが気をつけろ あと一つで全てが灯る」
フィアスカルは両手の骨の車輪を投げてきた。
フェイはそれを上手く躱し、フィアスカルへと向かってエレメンタルブレードを下方から振り上げる。
イケるっと思った瞬間、骨の車輪はフィアスカルの手元に戻り、二つの車輪に防がれた。。
そして、最後の一つに火が灯る。
「さぁ、これからどうなるか」
キューレは高い建物の屋根からその様子を見下ろしていた。
フィアスカルはエレメンタルブレードを押し返し、フェイを後方へと押し退けると両手を広げてカタカタと上顎と下顎を打ち鳴らす。
一頻り打ち鳴らすと動きを止め、下顎が外れたように開け放たれる。
両腕が機械的に動き、突端に全てに紅い火が灯った二つの骨の車輪を向かい合うように合わせた。するとフィアスカルの身体を纏っていた青い炎は消え、糸が切れた操り人形のように崩れ落ち、重なり合う骨の車輪だけが宙に残された。
「なんだ何も起きないじゃないか」
「いや、来るぞ」
「えっ」
「危ない!」
翼を広げたクロノスが滑空するように飛んで現れ、勢いのままフェイを抱えて飛び上がる。
「これからってところで…」
キューレは嘆くと建物から飛び降りた。
クロノスがフェイを抱えて飛んだ直後、重なり合う骨の車輪から炎が噴き出した。
噴き出した炎はドーム状の天井へとぶつかり火柱になり、時が止まったよう動きを止める。
「ありがとう、クロノスさん」
「いいのよ」
「すいませんがあそこに降ろしてもらえませんか?」
フェイの示す場所にはレイナとリーシュがいた。
「分かったわ」
フェイを抱えたクロノスはレイナとリーシュのいる町外れに降り立った。
地面に着地するとクロノスの翼は消えた。
「無事でよかったっす」
「クロノスさんのおかげでなんとかね」
「クロノスさんって本当に天使だったんですね」
「ほんとにって信じてなかったの?」
クロノスは苦笑いする。
「すいません」
「いいのよ、私も修業不足ってことかな」
「そうゆうことじゃな」
「なんですって」
「自分でゆうたことじゃろ」
「ひとに言われるとなんか…」
「そこまでにしたらどうだ?レイファ」
フェイ達の会話に割って入るように声が聞こえた。
「えっ!?どうして私の名前を?」
声の方を見るとスチュアートが歩み出る。
「まったくわしだ」
スチュアートの持っている杖の石が光り、白き衣を纏う、神々しい姿に変化した。
「エロ爺」
「ラファエロだ!」
「…どうしてここへ?」
スチュアートともとい、ラファエロは体裁取り繕うように咳ばらいをする。
「フェルセルクがここに現れたと情報が入ってな」
「兄さんが?じゃあ、これをやったのは」
クロノスは停止する火柱を見た。
「おそらくな」
「あの…」
「あっ!この方はエロっじゃなくて大天使ラファエロ……様です」
「その間はなんじゃ」
敬称までの微妙な時間に突っ込む。
フェイ達は軽く頭を下げて挨拶をした。
「やはり面白い逸材じゃな、うむ」
ラファエロはフェイをまじまじと見て感嘆し頷く。
「レイファ、この子達について行きなさい」
「はい …ってえぇ~いきなり何を」
「僕は構いませんが」
「俺もっす」
「私もいいですよ」
「ほら、問題ないようだから行きなさい」
「って君達、いいの?いきなり現れた正体不明…ではないけど、あやしいとは思わないの」
「ん~あやしいとは思いますけど悪い人には見えないので」
『確かに悪い人ではないんだけど…』
クロノスは考えながらラファエロを見遣り、フェイ達に視線を移す。
『この子達はもう少し他人に対して疑うということを覚えた方が……これは私がついてた方がいいかもしれないな』
「は~、分かりました」
クロノスはため息をつき、了承する。
「わしはよる所があるでな…そうじゃトールは造っておいたぞ使いなさい」
ラファエロはそうクロノスに言い残し、立ち去った。
『トール?』
「トールってなんっすか?」
「それはね、私達の移動手段よ。天力によって距離は変わるけど瞬間的に異なる場所へと行けるの」
クロノスはトールの場所を感覚で察知するとフェイ達を引き連れてトールのある場所に向かった。
「これがトール?」
レイナが地面にある光が溢れている円形の輪を示す。
「そうよ、さぁ入った入った」
まず最初にクロノスが円の中に入り、三人を招く。
四人全員が円の中に入ると円形の輪が内側へと収縮してそれと共に四人の姿が消えた…。
着いた先はトロッコの分岐点で通れなかった途切れたレールの向こう側だった。
「すごいほんとに別の場所に着いたよ」
「ここは分岐の途切れたレールの先?」
フェイは後ろを見るとそこは崖で向こう側に崩落があった場所が見える。
「こっちに上に登る階段があるっすよ」
「じゃあ、早速行ってみましょう」
クロノスは先陣をきって階段に踏み出す。
「全くそうゆう呑気な所は変わってないの」
「ん?何か言った?」
「いや、何もいっとらん」
四人は上へ続く階段を登って行く。
階段を登りきると大小様々な岩が点在する広い場所に出る。
「なにあれ!?」
「まずいな」
そこには触手の赤いグワールが居た。
そして、フェイ達に気付き複数の触手を素早く伸ばしてきた。
「隠れろ!」
グレネリスが咄嗟に言葉を発すると四人はすぐに岩陰に隠れたが赤い触手は岩を溶解し四人は露になった。
「一旦戻ろう!」
フェイ達四人は登ってきた階段を急いで降りる。
「あれがグワール初めて見たわ」
「どうするんっすか?あれじゃ進めないっすよ」
「痛っ」
「レイナどうした?」
「ちょっと腕をくじいただけ」
「見せてみ」
フェイは傷を見て、鞄の中から水と包帯を出し傷口を水で洗い流してから包帯を巻いた。
「ありがとう」
「うん」
「グワールは怒りに満ちておった」
「何で怒ってたんすか?」
「さぁな、大事な何かを盗られたのかもしらんな」
「大事な何か……!?」
クロノスは何かを思い出した。
「確か天上構文図書の記述にこうあるわ…グワール、翡翠の瞳を護りし魔獣」
「翡翠の瞳?」
「翡翠の瞳についての記述は探したんだけどその本だけ誰かに持ち出されたようなの」
「それが無くてあぁなっているってことは倒して通るしかないか」
「倒すったってあの触手は岩を溶かすほどっすよ」
「それはやってみないと分からないよ」
「どうやら追って来たみたいね」
階段から溶解する音と蠢く音がする。
「グレネリスとっびきり強い炎出せるか?」
「出来るが何をする気じゃ?」
「出来るならいいんだ、合図するからよろしく」
階段から先に触手だけが伸びてきた。
フェイはエレメンタルブレードで触手を切り落とした。切られた触手は蒸発するかのように消滅し、そして、グワールの雄叫びが聞こえる。
「グレネリス」
フェイは階段の正面に立ち、腕輪を構える。
腕輪の朱いオーブから階段に向かって業火の如く大量の炎を放たれる。すると生き物の焼ける臭いがしてきて、階段の上から何か落ちてきた。
「これは教会での」
「あの石じゃな」
フェイは落ちてきた正八面体の石を拾うと光りオーブへ入っていった。
「いまのなんだったの?」
「分からないけどなんだか不思議な力を持っている石だよ」
『今の石はたしか…いえ、まさかね』
クロノスはオーブに消えた石に心当たりがあるように思案する。
「とにかくこれでやっと通れるっすね」
四人は階段を再び上っていくと途中で黒い煤が残っている場所があり、そこを通り過ぎ階段を登りきる。
「全くあっさりと倒してくれちゃって」
「お前は!フェイク」
「やぁ、また会ったね」
「ここで何を!?」
「ちょっとこれをね」
「それは?」
「翡翠の瞳」
突然、フェイの背後からドサッという音がして振り返るとレイナが倒れていた。
「レイナ!?」
フェイは倒れているレイナを抱えた。
「ひどい熱だ。お前レイナに何をした!?」
フェイクに向かって言い放つ。
「何もしてないさ、でもそれは多分グワールの毒だ」
「グワールの毒?」
「あとは自分達で頑張んな」
フェイクは立ち去ろうと振り返った。
「待つっす」
リーシュはボーガンを構える。
「毒のことを知ってることを話すっす」
「いやだと言ったらどうする?」
「撃つ」
「そうですか」
そう言いフェイクは歩き始めた。
「待つっす!」
リーシュはボーガンを放った。
矢はフェイクへ向かって飛んで行くがカードが現れ、カードに突き刺さる。
そのカードは壁のように広がり、フェイクの姿を隠れるまで広がると崩れて地面に散乱した。
カードが崩れた向こうにはもうフェイクの姿はなかった。
「逃がしたっす!」
「それより早くここを出て町へ」
フェイはレイナを背中に担ぎ、フェイとリーシュは奥へ進んだ。
クロノスは二人の後に続くとカードの散乱した場所を通る時、何かに気付いた。
「これって…」
一枚のカードを拾い上げて懐に仕舞う。そして、フェイ達は外へ出た。
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