ShiningHeart

シオン

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第九章

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~???~

「おかえり…」

薬品や香料が入り交じった匂いが漂う薄暗い部屋の中、大人一人入る位の透明な容器があり、中は液体で満たされいて眠るセリウスが安置されている。

「愚かなだなキルティング、せっかく与えてやったのにこの程度の出来とは…」

嘆きと落胆したような声で言った。

「やはり、君は僕の手で完成させなければな」

透明な容器に頬を付けて愛しい者を見るような表情で言った。

~???~

「私はいつまで此処にいればいいの?解放してくれたことには感謝してるけど、こう退屈じゃ死んじゃうわ」

獣と人を掛け合わせたような姿の女、霊獣ベルデは退屈をもて余していた。

「クックックッ……それは失礼したね、君の血と私が持っているキマイオスの羽の化石を使って面白いものを造っているところですよ、もう少し待って頂けると有り難い」

「へぇ~それは面白そうね」

「博士、準備は整いましたよ」

黒のローブを着た黒髪の男、ビーゼルスがキルティングに言った。

「では始めるか、クックックッ…」

キルティングは楽しいのだろうが表情は見るからに怪しく。
セットされた機械でベルデの血をキマイオスの羽の化石に数滴落とすと三つの神具からエネルギーを照射する。

照射されたエネルギーの光で容器の中が見えなくなる。

「実に素晴らしい皆、見たまえこの創造の光を!」

突然、三つの神具と容器に亀裂が入った。

「そんな馬鹿な!神具にヒビだと…有り得ん!」

計器類が振り切れ、機具の隙間から蒸気が吹き出し辺りに充ちていく。

「博士、危険です離れてください、シュラフ!」


いつの間にかビーゼルスの傍に黒い鹿のような生き物がおり身構える。すると神具が砕け、容器が割れた。

「神具が…まさかコピーか!奴め騙しおったな!」

割れた容器の中から何か出てきたが溢れた蒸気ではっきりとは確認できない。
神具が砕けたことによって機械が緊急停止し蒸気が止まり徐々に晴れていく。

「子供!?」

そこには裸の少年が立っていた。
少年の肌は黒く、紅い瞳が輝いていて背中にはスティグマが刻まれている。

「まぁ、いいコピーだとしても…クックックッ…こうして完成させることが出来たのだ」

「ほんとに面白いものが見れたけど、その子が使えるか私が試してあげるわ」

ベルデはそう言い終えると共に針の様に細いものを数本、少年に投げた。
針は真っ直ぐ少年に向かって飛んでいくが何かに阻まれ少年の鼻先で止まって落ちた。

「ふ~ん、こんなのはどうかしら?」

ベルデの手が電子を帯び、何かを放とうとした瞬間にビーゼルスに腕を掴まれた。

「どうゆうつもり?」

「失礼、だがよく見てください」

ベルデは周囲を見回して見ると目に見えないほどの細い線が幾つも張り巡らされている。

ベルデはまだ電子を帯びている手から張り巡らされた線に雷撃を放つと線を伝い、全体像が露になった。

「いつの間にこんなもの…」

「素晴らしい、さすが私が作り上げただけはある」

張り巡らされた線と雷撃は一瞬、羽根の姿がちらつき消えた。

「…誰?」

少年は問う。

「私は君を造った者だ」

「僕を…造った者…主…」

「そうだ、クリフォト」

「クリフォト…」

少年はキルティングの言葉を復唱する。

「ビーゼルス、彼に纏う物を」

「分かりました」

ビーゼルスは少年を連れ、その場を去った。

「それで私はまた死にそうな程の退屈な時間か」

「そうだな、良い退屈凌ぎがある」

キルティングは机の資料の山から一つの資料を取るとベルデに渡した。

「そいつに伝言を頼めるかな」

ベルデは資料を見た。

「たしかに退屈凌ぎになりそうね、いいわよ」

「伝えた後は君の好きにして構わない」

「そうするわ」

空間が裂け、ベルデは暗闇へと消えた。



冥界~魂を喰らう霧~

崩壊したデア城から遠く離れた場所。クレイル、ルナ、レルク、ワグの四人は拓けた崖の上にいた。

「アメリア高原、かなり離れた所まで来ましたね」

「急ぎで離れたからな仕方ないだろう」

『レルクが元の姿に戻っていますね』

クレイルのレルクを見る視線に気付いてルナは言う。

「覚醒後、直ぐの闘いで力を消耗したのだ」

ルナは地面に座りうなだれるワグを見た。

「あれは大丈夫なのか?」

「そうですね、見兼ねて思わず連れてきましたがどうしましょう」

そうしてるとレルクの意識が戻った。

「うぅ………」

「気が付きましたか?」

「私は一体…(確か私の地下室で…)」

「何があったか教えてやろうか?」

「いえ、大丈夫です…」

レルクの内に精霊キマイオス時の記憶が流れ込む。

「私の中で眠っていた者が覚醒めたのでしょう?」

レルクは記憶に整理がつき思い出したかのように言った。

「あぁ」

「それでこれからどうしますか?」

「私が闘ったあの者達が何者なのか調べる必要があると思いますが…」

「その意見には私も同感です」

「それに…これは私の推測ですが、セレディナス様の居場所も彼等が知っているかと」

「では、あそこでウジムシの如く意気消沈している奴に聞くのが早いだろう」

「それは…(仕方ないでしょうね、大切な人を奪われたのですから)」

ルナはワグに近付いて言い放つ。

「まだ死した訳ではなかろう!だったらその手で奪い返せ!」

ルナの言葉に身体が少し動き反応を見せた。

「…俺は妹なしでは…」

「はは~ん、分かったぞぉ~おぬしシスコンというやつだなぁ」

「ちがっ…」

ワグは振り向きながら言い返しが言葉に詰まった。
なぜなら振り向いた先にはニヤリと笑うルナがいたからだ。

「まだそんな元気があるではないか」

「くっ…(くそぉ!何をしているんだ、俺はまだ何もしていないというのに諦めて…)」

「この場から離れた方がいい」

ルナは何かを感じそう言うと辺りが暗くなる。

「いえ、もう遅いみたいですよ」

クレイルも何か嫌な気配を感じて周囲に気を張ると高原に生えている植物が次々と萎れていく。



四人を囲むように黒紫色の霧が現れ、不気味な獣の姿へと変わった。
獣の身体の一部には様々な髑髏の仮面を一つ身に着けているがどれも何故かひび割れている。

クレイルは武器を構えようとしたが武器は無かった。

「此処へ来るまでに落としてしまいましたか」

「少し力を使うぞ」

ルナはレルクの胸の前で引き出すように手を動かすと光の球が抜け出る。

光の球は剣へと変わり、それをクレイルに渡した。

「これを使うといい」

「これは?」

「プリシラ」

「わかりました」

クレイルはプリシラを構え、肩に割れた仮面を着けた獣がまだ座り込んでいたワグを見つけて襲い掛かる。

「いつまでそこにいるんです!」

クレイルはワグにそう言い、肩に割れた仮面を着けた獣に向かってプリシラを振り抜くと、獣はプリシラの刃を歯で挟み口で受け止めた。

「クソッ!」

ワグは背中に携えている黒い大刀を掴み、プリシラを口で受け止めている肩に割れた仮面を着けた獣へ黒い大刀を突き刺した。
獣は叫び声を上げると黒紫色の霧に戻り、その後を追うように他の獣達も霧に戻る。すると黒紫色の霧は消えた。

「ルナ様、今のは…」

「アーデルリンガー(しかし、何故あ奴が普段なら愚者の森の奥深くで外界とは関わりを持たぬというのに…)」

ルナは先ほどの獣達の名称を言い、心に思った。

「すまない、助けられたな」

ワグは何も言わずに黒い大刀を仕舞う。

「これをお返しします」

クレイルはルナにプリシラを差し出した。

「それは所持していて構わない」

「良いのですか?」

「武器がなければ不便であろう?」

「分かりました」

クレイルは素直に受け取った。

「それで先程の者達は何だか分かりますか?」

「愚者の森の住人、アーデルリンガー」

「愚者の森?」

「此処から見える森がそうだ」

アメリア高原の崖下に深い森が広がっているのが見える。

「此処から降りましょう、此処にいたらまた彼達が来るわよ」

ルナはそう言い、高原から降りる為一人そそくさと森とは反対方向へ歩いていった。
レルクとクレイルはルナの後をすぐに追い、ルナと共に歩く。一方、ワグはそこから少し離れて歩いていく。



王宮ルシファール~国王執務室~

執務室に国王代理バルディ、側近メリル、王宮騎士団長ラズゥールがいた。
バルディが書類に目を通していると突然、衛兵が入ってきた。

「陛下!」

「突然、なに?ノックもせずに」

メリルが叱咤する。

「失礼しました、急いでいましたもので」

「それで何があったの?」

「北方司令部よりメルテクスにて住人の集団石化が発生との報告が入りました」

「なに!?北方で何が?」

バルディは執務机に手を突いて乗り出す。

「メルテクスと言えばアメリア高原の麓町、確かあそこはタクリ公爵の領地だったな」

「ラズゥール、神官一名を連れ、メルテクスへ向かってくれ」

「分かった」

「恐れ多いのですが、王宮騎士団長自ら出向くなど…先日の事件や負傷のこともありますゆえ」

「ん~確かに…」

「傷ならもう何ともない、それに何か起きても副官のラトに任せておけば対処できるからだ」

「そうか、では向かってくれ」

ラズゥールは執務室から立ち去った。

「全く王宮騎士団長ともあろう人が」

「そう言うな。メリル、国王代理の僕が決めたんだ逆らうのか?」

バルディはメリルを睨むように言った。

「そうではありませんが私は自らの意見を陛下に進言をしたまでで」

メリルは慌てて弁解をした。

「冗談だよ、だが北方で何が起きているのか…」

バルディはそう言いながら椅子から立ち上がり扉の方へ向かって行く。

「待って下さい何処へ行かれるつもりですか?」

バルディが扉の取っ手に手を掛けようとした瞬間に言われた。

「いや、ちょっと…」

バルディがそう言うと扉の鍵が締まる。

「今日こそは溜まっている執務を処理していただきますよ」

メリルはバルディの肩を掴み、執務机まで引っ張っていく。



ラズゥールはある部屋の扉を叩いた。

「リベル、いるか?」

扉が開いて法衣に身を包む、頭の左右に渦巻いた角を持つ女性が現れた。

「ラズゥール様どうしたんです?」

「今から北方司令部に向かう着いてこい」

「そんな事を急に言われましても…」

リベルは困り顔して言った。

「これは国王代理からの勅命だ」

「分かりました…(はぁ…上級神官になって早々、北方に向かえなんて…)」

二人は身仕度を整え、北方司令部に繋がる部屋へ向かう途中、副官であるラトに出会った。

「団長、何処かへ行かれるのですか?」

「これから任務で北方司令部に向かうところだ」

「メルテクスのことですね?」

「あぁ、だから後は頼んだぞ」

「分かりました、お気を付けて」

ラズゥールとリベルは北方司令部に繋がる部屋に向かった。
中はケルベルの間より多少、大きいが同じように何もない部屋で違うと言えば四隅に方位を象徴する絵が飾られている。

「準備はいいですか?」

「いいぞ」

ラズゥールとリベルは北を象徴する絵の前に立つとリベルが呪文を言う。

「ルペネート」

二人は部屋から消えた。



冥界~アメリア高原~

クレイル達は山を降りる途中、何度もアーデルリンガーに襲われた。

「次から次へと…」

「気をつけてください、来ます」

レルクは全員に警戒するように言うと黒紫色の霧が発生しアーデルリンガーが現れた。
その瞬間にワグが黒い大刀でアーデルリンガーを蹴散らした。

「もう吹っ切れているようだな(自暴自棄になってるようにも見えなくもないが…)」

ルナがそう思っていると返事が返ってきた。

「あぁ、あんたには感謝してるが俺は行く」
ワグは一人でどこかへ行こうとしたところをルナが止めた。

「まあ、待て」

「なんだ?」

「感謝してるというならば私の手伝いをしてもらおうか、案ずるなそれがお前の力にもなろう」

「俺の力に?」

「お前の妹をさらっていった輩は私を狙っているようだからな」

「………」

ワグは少し考えて答える。

「…分かった」

再び、四人は麓へと歩き出す。アーデルリンガーの出現頻度は麓に近付くにつれて減っていった。

辺りは日も暮れて薄暗くなってきた。

「奴らはもう出て来ないようですからあそこに見える町で一休みしましょう」

クレイルは前にぼんやりとした灯りが見える町を指して言った。

「ん…そうだな」

ルナは何かを感じ取り、表情が曇った。

四人は繁栄の町、メルテクスと書かれた木製の町の入り口を通り抜けた。

「これが繁栄の町…です…か…」

町の至る所に人の形をした石がある異様な光景にクレイルは町の謳い文句に疑問を抱く。

「全くそのようには見えないですね」

レルクはクレイルの気持ちを代弁するように言う。

「魂無きただの器となっているっと言った所でしょうか」

「強制的に魂を引き剥がされたのだろう」

ルナは人の形をした石に触れて言った。

「この町から立ち去った方がいい、もう町は朽ちる…」

一人の青年が四人の目の前に現れた。

「(生きてる人がいたんですね)何があったんですか?」

レルクは青年に聞いた。

「早く立ち去れ…」

そう言い青年は何処かへ行ってしまった。

「妙ですね」

「気付いたようだな」

「はい、あの青年も魂がないですね」

「ん?早く何処かに隠れろ!」

クレイル、レルク、ワグはルナの言う通り、建物の陰に隠れた。



冥界~北方司令部~

ラズゥールとリベルの二人は北方司令部に着いた。

着いた部屋は王宮と同じように何もない部屋の四隅に方位を象徴する絵が飾られている。

「ここが北方司令部?」

「この部屋は全ての司令部共通だからな」

二人は部屋から出ると一人の兵士が声を掛けてきた。

「お待ちしておりました、こちらへ」

二人は兵士に案内されるままついていくとある扉の前で止まり、兵士は大きな声ではきはきと言った。

「失礼します!」

扉を開けた。

「大佐、お連れしました」

「分かった」

ラズゥールとリベルは部屋に入ると兵士は部屋の扉を閉め、立ち去った。
部屋の中には短髪で丸眼鏡を掛けた痩せた男が重厚な机で執筆をしている、その隣には鼻筋を斜めに走る傷を顔に持つ女が立っている。

「中央も大変だというのにわざわざ御足労して頂いてすまない。俺はグレン・タルヒム、役職は大佐をやっている」

「それで事件の詳細は?」

ラズゥールは早々に訊ねる。

「詳細は派兵した部下から聞いてくれ、現地には此処にいるネフィル少佐が案内してくれる」

「着いてこい」

ネフィルはそう言い、扉へ向かう。

「まぁ、無愛想だが気にしないでくれ」

ネフィルはその言葉が聞こえたのか振り返りグレンを睨む、リベルはその目の鋭さにビクッと背筋が伸びる。

ネフィルは扉の方に向きを直り、扉を開けて出ていく。

「はぁ、恐かったぁ…」

リベルはホッとして心の声が漏れる。

「行くぞ、リベル」

「は、はい」

ラズゥールとリベルの二人は部屋を出た。

「後は任せたよ、ネフィル」

グレンは立ち上がり、吹雪でガタガタと揺れる窓から外を見てそう呟いた。

ネフィルは何も言わずに北方司令部の正面口まで歩いてきた。

「これを着ろ」

ネフィルは二人に厚手のコートを投げ渡し早々とコートを着て扉を開けた。
その瞬間、建物内に冷たい風が雪と共に流れ込み、ラズゥールとリベルの二人は急いでコートに袖を通し前を閉めて三人は北方司令部を出た。



冥界~カウリア雪原~

視界不良の吹雪の中、ネフィルは一心不乱に突き進んで行く。

「凄い女だな」

「そうですね、私にはとても」

ネフィルが突然、足を止め、ラズゥールとリベルがネフィルに追い付くと吹雪の止んだ場所に出た。

「なんだ此処は?」

「…」

ネフィルは拳銃を抜き、ラズゥールとリベルの方に銃口を向けた。

「何のつもりだ!」

ネフィルは何も答えず拳銃の引き金を引いた。
鳴り響く銃声の後、苦しむ声がラズゥールとリベルの後ろから聞こえた。
二人は振り向くと額に風穴の開いた全身白い毛に覆われた怪物エブリルが口を開けたまま死んでいる。

「気をつけろ、部下であれば放っておくところだが、二度目ない」

そう言ってまた歩き出した。

「どうやら助けてくれたみたいですね」

リベルはホッとした。

「あぁ、そうだな…」

二人も歩き出すとすぐにまた吹雪の中に入った。

「何なんでしょうか、雪が降ったり止んだりと」

「気になるならネフィル少佐に聞いたらどうだ?」

「それはちょっと…」

「また吹雪を出るぞ」

「はい」

二人は気構えてまた吹雪が止んだ場所に入る。
そこにはネフィルが二丁の拳銃を持ち、前進しながら動き回る羽虫のように小さな怪物ギーギーを一度も外さず次々、撃ち抜いていく。

「うわ、こっちにも来た!」

ラズゥールは剣を抜き、リベルは身構えた。

「バーフェス」

リベルは向かって来るギーギーに炎を放ち焼き払った。

「旋風剣技一ノ型、凩」

ラズゥールは剣を回転させ巻き込んで倒していく、三人は吹雪の止む場所のギーギーを全て殲滅させた。

「王宮に仕えるだけあって、腕は持っているようだな」

二丁拳銃を仕舞いながら言った。

「貴女ほどではありませんが」

「当たり前だ、温室育ちの貴君らより劣っていては腹立たしい」

「反貴族体制か、残念だが私はこれでも東方北部の貧しい村の出だ」

「そうか、それはすまなかったな…」

ネフィルはそう言いまた歩き出した。

「あっあぁ…」

ラズゥールは素直に謝罪するネフィルに驚く。

『東方北部…レイベンフェルドか…住人は全て死んだと聞いていたが生存者がいたとはな』

「どうしたんでしょうか」

「さぁな」

二人もネフィルの後に続き歩き出し、三人は三度吹雪の中に入ると吹雪は少しずつ弱まっていき、雲の透き間から日の光りが照り出した。

「やっと吹雪がおさまりましたね」

「あそこに見えるのがメルテクスだ」

遠くに霧がかる町が見えた、町の周辺はさっきまでの吹雪の跡や動く影一つ無い。



冥界~繁栄の町~

三人は何事も無くメルテクスの正門に着いた。

「ネフィル少佐」

正門にいた兵士が敬礼する。

「それで生存者は?」

「これは少佐、ようやくお出ましかね」

声の主は割って入り、嫌味ったらしく言った。

「ちっ!」

聞こえないほど小さく舌打ちした。

「タクリ公爵、よくご無事で(しぶとい)」

ネフィルは態度は大きいが小柄で小肥りの男性に向かって言う。

「それで少佐、そこの二人は誰なんだね」

「王宮の騎士団長と神官です」

「なんと王宮の方々か、どうぞ、我が邸宅にて状況説明を。少佐、君も来るかね」

「私は結構。二人を案内しただけで直ぐに司令部に戻る」

「そうかね、ではお二人はこちらに」

リベルはタクリ公爵についていき、ラズゥールもそれに続き一歩踏み出そうとした時、背後からネフィルの声が聞こえた。

「公爵には気を付けろ」

ラズゥールは振り返るとネフィルはもう背中を見せて何処かへ歩き出していた。

ラズゥールは黙って向きを直り、リベルとタクリ公爵を追う。

タクリ公爵に案内されて二人はと大きな屋敷の前に着いた。

「お帰りなさいませ、タクリ様」

門番の兵士が出迎える。

「どうです?我が邸宅は中々のものでしょう」

タクリ公爵は自慢たらしく言う。

「はぁ~」

「ささぁ、中へ」

兵士が邸宅の扉を開け、中へ入るとタクリはラズゥールとリベルの二人をゴシック調の内装の部屋に案内し、三人掛けの椅子へと促す。

「どうですかな、中も大したものでしょう」

『自慢ばかりで面倒な人』

リベルは作り笑顔をしたままうんざりに思う。

「この屋敷にはこだわったもので……」

タクリは一人で邸宅の自慢を始めた。

「失礼します」

右目に眼帯、身体の至るところに包帯を巻いたメイドが入ってきて、紅茶とお菓子を置いた。

ラズゥールは自分の前に置かれたそれを一瞥して鼻をひくつかせる。

仕事を終えたメイドは一礼して出ていった。

「そろそろ詳細を聞かせていただけませんか?」

「そうでしたな、とっその前に一ついいですかな」

「なんです?」

「王宮へ帰っていただけますか?」

タクリは今まで話していた表情から一変、鋭い眼光で言った。

「できない」

ラズゥールはキッパリと断る。

「そうですか、では仕方がありませんね」

二人が座っていた椅子の床が抜け、椅子ごと真っ逆さまに落ちていき、床は元通りに戻った。

「グレンの差し金か、余計なことを今度はしくじるな」

部屋の前の廊下に立っているさっきのメイドに向かって言った。

「はい、マスター」

メイドは何処かへ向かった。



クレイル、レルク、ワグ、ルナの四人は建物の陰に隠れていると大蛇が身体をうねりながら現れた。
大蛇はクレイル達が隠れている場所に近付くと動きを止め、尻尾で建物を破壊した。

四人は破片と一緒に弾き飛ばされた。

「…動物的感は鋭いですね」

瓦礫を退かしプリシラを手に取った。

大蛇はクレイルに気付いて、牙を剥き襲い掛かってきた。
クレイルはプリシラを盾にして受け流し、身体を切り付けると大蛇は直ぐさま身を引いてクレイルを威嚇した。

「これだから野蛮な生き物は…」

「大丈夫ですか?」

レルクは手を差し出すとルナはその手を取り立ち上がる。

「あぁ、心配ない」

「嘗めた真似を」

ワグは剣の形状のデスヴァルクを構え、大蛇に向かって突きを放った。
デスヴァルクは大蛇の右目を捉え、大蛇は苦痛の叫び声を上げて頭を捩るとデスヴァルクを引き抜ける。
そして、大蛇は石化した人を薙ぎ倒しながら逃げていった。

「もしや今の蛇がこの石化を引き起こしている根源でしょうか?」

「違う」

ルナは地面落ちている銀色の大蛇の血を見て言った。

「あれは単なる使い魔に過ぎない、この状況を起こしているのは、あれの創者が要因(だが一介の創者に魂を抜き取るなど、よもやこうも早く…)」

「創者?」

「クリエスターという滅びた血族の器を創り出す者のことをいいます」

クレイルの疑問にレルクが答えた。

「そいつが私の力のカケラを持っているようだ」

「では、その力を使って…」

「察しがいいな、恐らく」

四人は大蛇の傷口から流れ落ちた血の跡を追った。



冥界~権力者の館~

「いきなりでしたね」

リベルの力で三人掛け椅子は縦穴をゆっくりと降下していく。

「それだけ俺達が邪魔だったようだな」

二人は底まで着いた。

「酷い…」

リベルは袖口で鼻を覆う。

そこには生き物の死体が山になっていて、腐敗臭を放っていた。

「ほとんどが喰いちぎられている…」

「あなた方もすぐにそうなります」

「貴女はさっきのメイド」

先程、上で紅茶とお菓子を出したメイドが現れた。

するとメイドの足が膨張し、靴やニーソックが裂けて肌が鱗状に変わっていくと脚が一つに合わさる。そして、蛇の胴から尻尾に変わった。

「通りでさっき血生臭いニオイがしてたわけだ」

ラズゥールは素早く剣を抜いて構える。

「そこの亡き骸と同じ末路へと旋律にのせて誘ってあげます」

蛇はまだ人である姿の上半身で両手を広げて口から音波を響かせた。

「貸してください」

リベルはラズゥールの剣を奪った。

「リベル、何をする!?」

「見ていれば解ります…移し変わりし共鳴、モルフォース」

そう言い、ラズゥールの剣を地面に突き刺した。
すると音波を響かせる蛇を囲むように地面に線が走り円を作ると線上にパイプのように芯が空洞の棒が幾つも迫り上がってきた。

蛇は高音と低音の波を同時に発すると棒が振え始めた。

『どうして…』

「これはどうなっている」

「音は振動、だからあの棒を使って供振させれば防げます」

『こんなもの更に強く響かせて』

蛇はより強く声を響かせた。

「強くなればなるほど増幅して自滅する」

すると蛇はよろめき地面に這いつくばった。

「目の前が……(これじゃ創者様に顔向けが出来ない…)」

音波が消えたことで共振は収まり、リベルの展開した冥力も消えて静まり返る。

「やっぱ創者様の言う通り」

「言う通り」

二人の子供の声が聞こえた。

「ディオス・クロイ…」

髪の色が真ん中で白と黒で別れた対称的な双子が姿を見せる。

「またしっぱ~い」

「しっぱい」

「待ってディオス・クロイ」

「ダメだよ」

「そうそうダメダメ」

ディオスは這いつくばる蛇の背中から手を突き刺して何かを引き抜いた。そして、引き抜いた手には魂のような物があり、ディオスはそれを半分齧るとクロイに渡し、クロイは残りの半分を食べた。

二人が蛇の魂を食べ切ると蛇の身体は砂となり崩れ去った。

「美味しいね」

「ですぅ」

「仲間になんて…」

「仲間じゃない」

「じゃないよ」

「クロイ、この人達で遊んであげようよ」

「そうだね、ディオス」

「どっちからいく?」

「ディオスからでいいよ」

「うん」

ディオスがクロイの手を掴むとクロイの姿が剣に変わった。

「逝くよ」

ディオスは剣となったクロイを手に二人へと襲い掛かる。
ラズゥールは地面に刺さる自分の剣を掴み、ディオスの振り掛かってきた剣で受け止めた。

「俺達の攻撃はここからだよ」

ディオスは次々と剣となったクロイを打ち込んでいく。

リベルはディオスがラズゥールに意識がいっている間に冥力を使った。

「アブソリュート・ゼロ」

リベルは氷の矢をディオスに向かって放ったがディオスに僅かのところで気付かれた。
今度はディオスが剣の姿へと変わり、クロイは元の姿に戻る。そして、剣となったディオスを手に氷の矢を躱した。

「惜しかったね、当たったら危なかったよ」

クロイの後方の壁一面に氷が張り付いている。

「二人とも剣に姿が変わるのか、面白い身体をしているみたいだがこれを躱せるか?」

ラズゥールは剣の握る腕を少し捻る様に後方に一直線に伸ばして構える。

「回転剣技ニノ型、流迅」

剣先を後方から勢い良く前へ突き出した。すると剣から渦巻く風が螺旋を描くように流れ出てディオス・クロイに向かって行く。
ディオス・クロイは掠める位の所で避けたが渦巻く風に身体が引き寄せられ、氷の張り付いた壁へとディオス・クロイはぶつけられた。
そして、その衝撃で壁に張り付いた氷は砕け、ディオスは剣の姿から元の姿に戻るとディオスとクロイは地面に倒れた。

「今のは効いた」

「効いた効いた」

ディオスとクロイの二人はそう言いながら立ち上がると鋼の弦を叩いたような音が一つ響いた。

「創者様!」

二人は光球となりどこかへ消えた。



冥界~権力者の館~

「ここへ入ったようだな」

屋敷へ続く血の跡を見て言った。

「ここだけ、町の中に比べて空気が澄んでいますね」

「あれがあるからだろうな」

「コアのカケラですか?」

「あぁ」

四人は館の中に入ると中はゴシック調の造りになっており、可笑しな模様が壁や床、天井で蛍光塗料のようなもので描かれている。

「何なんでしょうか?」

レルクは誰に聞くでもなく口にするとルナが答える。

「館全体に侵入者用のトラップが発動している」

ルナは描かれている模様から発せられる力を感じ取る。

「トラップですか、どのような仕掛けが施されているのやら…カケラは何処にあるのでしょうか?」

「この通路の奥にカケラの気配を感じるが他に別の力を感じる」

「それが創者というわけですか?」

「恐らくな、まずはトラップを処理する」

「処理出来るのですか?」

「これくらい今の私でも造作もない、プリシラを貸してくれ」

クレイルはプリシラをルナに渡した。

「我が前に阻むもの、全て拒みて路と成せ」

ルナはプリシラの剣先を通路の奥に向けて言うと剣が光り、周囲が見えなくなった。
光りが消えると通路の壁は真っ白に染まっており、奥にくすんだ色をした扉があった。

「はぁ…はぁ…(しまった…吸収系のトラップがあったか…)」

「大丈夫ですか?」

「…大丈夫だ(私が見誤るとは…)」

ルナはレルクにそう言い、クレイルにプリシラを返した。

「ハーフスピット」

クレイルはルナのプリシラを返す際に腕を掴み、そう呟くとルナの乱れた呼吸が収まる。

『自らの力を分け与える魔法か』

ルナはクレイルの方を見るとクレイルは微笑んだ。

「さぁ、行きましょう」

四人は奥の扉へ向かった。

扉を開けるとその先には一本の木があり、その木は普通の木と違い、枝につける葉の形が全て文字となっている。そして、その言の葉の中に何かが光っている。

「誰だ!」

「貴女が創者ですか?」

クレイルが問う先には鼻筋を斜めに走る傷を顔に持つ女がいた。

「創者?何の事だ?」

「違うようですね、では貴女は誰です?」

「………」

女の返事はなかった。

「おい、ここに倒れているのが創者じゃないのか?」

ワグはクレイルに言った。

ワグの言う方をみると頭から血を流して倒れている男がいた。

「貴女がこれを?」

「そうだ」

「やれやれ、今日は客人が多い」

男の声が聞こえ、倒れている男は液状化して消えた。

「消したのは偽者」

「残念だったな、ネフィル少佐」

声の主が姿を現す、それはタクリ公爵だった。

「ならば、また消すまで」

ネフィルは二丁の拳銃を抜き、躊躇なくタクリに向かって引き金を引く。だが、銃弾は突然現れた一本の剣に阻まれた。

剣は人の姿へと変わった。

「大丈夫ですか?」

「ですかぁ?」

ネフィルの銃弾を阻んだのはディオスとクロイだった。

「事は済んだか?」

「はい」

「それが偽りの生命か」

「ほぅ、これを知っているのか」

「…」

「何故知っているかは想像がつく…いいことを教えてやろう」

「お前のような者に教わることなどない」

「まぁ、聞け。この町の住人の命を奪った者は私ではない、君をここに送り込んだグレンなのだよ」

「そんな戯れ事」

「ぶれないか、芯が強いな」

「やはり嘘」

「それはどうかな?…」

タクリは含み笑いをして、クレイル達に話し掛けた。

「それで君達は何者だね?」

その問いにルナが言う。

「コア・フラグメントを返して貰おう」

「君達は…ん?」

タクリはルナの顔見て、言葉半ばに何かに気付いた。

「これはこれは、器、自らが来るとは」

「それを理解しているならば返して貰おうか?」

「二つ返事で、了承するとでもお思いか?」

「では仕方ありませんね、私の性分に合いませんが力付くで渡していただくしかありませんね」

クレイルはプリシラを構えた。

「やれやれ…」

タクリは言の葉の木に立て掛けてあった杖を引き寄せて掴むと杖の頭の部分が開いた。すると木の言の葉が杖へと吸い込まれていき、言の葉の中にあった光っていたものが露になる。そして、最後に光るものが杖へと吸い込まれて杖は閉じる。

「ディオスクロイ、手加減いらん!あれで一気に片を付けろ」

「はい」

タクリは杖の先をコツッと床につけるとタクリの前に硝子管が床から突き出し、硝子管が割れて中から身体の一部が機械化された者が現れた。

「ディオス、クロイ…」

身体の一部が機械化された者が言った。

「おはよう」

「はよはよ~パンネル」

「久しぶりに遊べる」

「あれが玩具?」

「そうだよ~」

「行く」

ディオスとクロイは剣に姿を変え、パンネルは二本の剣を掴むと颯爽と構えた。

「これは骨が折れそうな相手ですね」

クレイルは双振りの剣を構えるパンネルを見て呟くとワグがクレイルの横へと並び、黒い大刀を構えた。

「心強いですね、来ます」

パンネルはディオス・クロイを二人向かって振り下ろした。

クレイルはそれを躱し、ワグは黒い大刀で受け止めた。

「久しぶりの外は愉しめそうな玩具がいるな」

パンネルは大きく口を開けると口の中で光が集束していき、光は放たれた。

放たれた光はレルクとルナの横を掠めて壁に大きな風穴をあけた。

「今のは何なんです…あんなものまともに受けたら一たまりありませんね」

「久しぶりだと、加減と制御が難しい」

クレイルは一旦、後ろに退いた。

「今のは驚いたが剣圧は対したことはないな」

ワグは剣を受け止めたままパンネルを挑発する。

「玩具の癖に生意気」

パンネルはもう片方の剣をワグに振り下ろした。
ワグは受け止めている方の剣を床へと受け流し、振り下ろされた剣を避けた。

「ディオス、クロイ、一つに。遊びは辞め、こいつ生意気だから一気にやる」

パンネルが剣同士を重ねると剣が一つになり、大剣となった。

「やっと本気を出すってことか?」

パンネルはワグに向かって大剣を振り下ろすと同時にパンネルの機械化された部分がキュィーンっと音立てる。

ワグは振り下ろされた大剣が思いの他速かった為、大剣を受け止めずに躱した。

すると大剣は床にぶつかり、床を深く掘削した。

「俺も少し力を出さなければいけないな」

ワグは黒い大刀を床に突き刺した。

「デスヴァルク、行くぞ」

デスヴァルクはバラバラに分裂しワグの身体の各部に装着されていく。
出来上がった姿は上半身を主体とした鎧の姿であり、ワグはデスヴァルクに覆われた拳同士をぶつけた。

「よし」

パンネルはそんな事を気にもせず、振り下ろした大剣をワグに向かってそのまま横に振り抜いた。

ワグはそれを軽く躱して大剣の腹を上から殴り叩き落とすと透かさずパンネルの懐に入り込んだ。そして、腹部へと拳を叩き込み、パンネルを突き飛ばした。

「いてて…」

ディオスとクロイは元の姿に戻っていた。

「マズイ」

「何がぁ?」

クロイはディオスが見ている方向を見ると壁に打ち付けられ、熱を上げるパンネルがいた。

「……玩具の癖に、玩具の癖に、玩具の癖に…」

パンネルはぶつぶつと呟きながら起き上がった。

「あぁ、なったら止めれないよ」

「うん」

「創者様の後を追おう」

ディオスとクロイは誰にも気付かれないように部屋から出た。

「…玩具の分際で!!俺にぃぃ~!」

パンネルの身体の機械化部分から細い雷針が突き出し、パンネルは大きく口を開けると光が集束して天に向かって光を放つ。
今度は光が拡散して自らの身体から突き出る雷針に集まり、パンネルの身体に電気が帯びた。

「あの光の正体は圧縮した電気だったようですね」

クレイルはパンネルを様相を観察しながら言う。

パンネルは両の拳で床を殴った。すると床を砕きながら雷撃がワグの元へと走っていく。

ワグは防ごうと腕を前で交差した。そこに雷撃が直撃するが身体が少し後ろに押されただけでワグは平気な顔をしている。

「こんなもの…」

腕に装着している黒い鎧の表面で電気が弾ける。

「腕が…」

「今なら」

クレイルは素早くパンネルへ駆け出すとパンネルはすぐにそれに気付いて雷撃を放った。
それに対してクレイルは向かってくる雷撃の先にいるパンネルを目掛けてプリシラをやり投げの如く投げた。

プリシラが雷撃と接触すると雷撃がプリシラに引き寄せられて反転し、電気を纏うプリシラがパンネルに向かって飛んでいく。

「エクティビア」

クレイルはその状況を確認しつつ、魔法を発動させるとパンネルの頭上から水が流れ落ち、パンネルをずぶ濡れにした。
そこへ雷撃を帯びたプリシラが飛んできて、パンネルの胸へと突き刺さった瞬間にパンネルの身体に付着した水が弾け、パンネルの内部に大量の電流が流れ込んだ。

「ぐぅああぁぁ…」

パンネルに内包された電流がプリシラを伝い、逆流して一気に空気中に放電する。

著しくエネルギーが失われたことで機能不全を起こしたパンネルはガクッと床に跪く。



ネフィルは館の地下洞窟でタクリを追い詰めた。

「動くな!」

ネフィルはタクリの背中に銃を突き付けて言った。

「やはり追ってきか」

「よくやった、ネフィル」

声の方を見ると短髪で丸眼鏡を掛けた痩せた男がいた。

「大佐!?」

「少佐、銃を」

ネフィルはもう一丁の銃を投げ渡した。

「ありがとう、そして…」

グレンはそう言い、すぐに引き金を引いた。

「大佐…どうして…」

ネフィルは倒れた。

「お前がここに来るとは話が違うではないか、どうなって…」

グレンはタクリに銃口を向けた。

「おいおい、何の真似だ」

グレンは何も答えず、タクリの額を撃ち貫いた。

倒れたタクリに歩み寄るとタクリの手に握られた杖を奪い取る。

「主の元へと還れ」

杖の頭の部分が開き、光るものがひゅるりと出るとふわふわと何処かへ飛んでいった。



パンネルは憤慨していた。

「…玩具如きにぃぃぃもう遊びは終わりだ」

パンネルの身体から線が延び出ると葉のない木の幹に突き刺す。

「全て消してやる!」

木の枝先に電気を帯びた光の球が灯っていく。

パンネルは口を大きく開くと枝先に灯っている電気を帯びた光の球が集束していき、光の球体を造る。

電気を帯びた光の球が集まるにつれて光の球体の大きさが増していく。そして、更に先程、パンネルの体内から放電された空気中の電気も集まっていき、見る見るうちに巨大化していく。

「マズイ、こんな物を放たれてはこの館は疎か町ごと消えて…」

「喰らえ」

光の球体は一瞬で小さく収縮し、放たれた………。

そして、辺りは強い閃光で見えなくなる。



リベルとラズゥールは出口のない穴の底から脱出を図っていた。

「ラズゥールさん、どうやって此処から出ますか?落ちて来た穴は高すぎて力を使ってもとても…それに」

「あぁ、もう穴は閉じているだろうからな」

二人は真っ暗な縦穴を見上げる。

「他にも出口があるだろう」

「…理由を聞いても?」

「此処を造った時の出入り口があるだろう?」

ラズゥールはそう言って壁を調べ始めた。

『それだと落ちて来た穴が出入り口ってゆう可能性があると思うけど…』

そう思いながらリベルも床や壁を調べているとラズゥールが調べながら他の可能性を言う。

「あとあの蛇女が此処へ入ってきた入口もあるだろう?」

「あぁ、それもそうですね」

リベルは納得という風に呟くとラズゥールが何かを見つける。

「ここに脆そうな壁がある」

リベルはラズゥールのいるところに向かうと少し崩れかけた壁がある。

「どうやって崩すんですか?」

「まかせろ」

ラズゥールは剣で思いっきり壁を突いたが何も起きなかった。

「あの…ラズゥールさん…?」

ラズゥールが剣を収めた瞬間、壁が崩れた。

「何か言ったか?」

「いえ、何でもないです」

二人は崩れた壁に入ると一本の坑道の途中に出た。

「どちらに行きます?」

リベルがラズゥールに聞いた後に銃声が遠くで児玉した。

「こっちだ」

ラズゥールは右の方に走り、リベルもその後に続いた。

「どうしてこっちの方向だと?」

「耳は良い方だからな」

そして、また銃声が聞こえた。

「近い」

二人は急ぐと少し開けた場所に出た。そこはもう整えられた坑道ではなくごつごつとした岩肌が並ぶ洞窟だった。

その場所で二人は誰かが倒れているのを発見した。

「公爵はもう…少佐の方はどうですか?」

倒れていたのはタクリ公爵とネフィル少佐だった。

「脈が弱いがまだ息はある、早く治療を」

リベルは冥力を使い、治療を始めるとそこへ洞窟全体を揺るがす地響きが鳴り響いた。

「なんだこの振動は?」

その時、北部の町メルテクスのある館から閃光が走り、光が町全体を飲み込んだ。
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