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長いプロローグ ③
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そもそもウルリッヒ様は生まれてすぐに母親を亡くすという、聞くも涙語るも涙な身の上だけに、ナニーたちから相当甘やかされてお育ちになっている。
ウルリッヒ様は当時すでに自分のお願いは何でも聞いてもらえるものだと考えていた。
そこへ降って沸いた神子の大役。短命という不利益付きとは言え、ウルリッヒ様の要望はますますなんでも叶えられた。
「どうせ僕はリンデンの息子としては何の期待もされない身だもの。二十か二十五か、皴が増えたと嘆くより前にあの世行き。どうせ死ぬなら好きなようにする!」
「ごもっともです」
僕に何が言えるだろう。僕に出来るのはウルリッヒ様を見守り支えることだけ。
王城の敷地の中に建てられた豪華な神殿。そこには神子のための広く快適な居室と、身を清めるための泉、癒しの儀式をおこなうための清浄にして厳かな聖堂がある。
ウルリッヒ様は神殿に入ると、先ず真っ先に「動物だけは僕が神子であることなど気にも留めない」そう口にされ、裏庭に二頭のロバ、リスやウサギ、アヒルなどの小動物をたくさん持ち込み一斉に放された。
そして神殿内では、貴族たちからの貢ぎ物にペルシア猫、マルチーズ犬といった高価な愛玩動物を指定され、「つぎはシャムネコが良い」「パピヨンの番が欲しい」と言ってはどんどん増やしていかれた。
気がつけば神殿内ではすっかり犬猫が我が物顔。毛のある動物を嫌う神官長、副神官は併設の別棟に居を移された。
また「どうせ今しか食べられないのだから」そう仰り、高価な砂糖や希少なチョコレイトを使った甘いお菓子を毎日ご所望になった。
神殿で下働きをする修道士から「お菓子ばかりでは身体に悪うございます」と咎められれば、「どうせ僕の健康なんて僕のものじゃないからどうでもいい」とその口を閉じさせてしまった。
果てはご機嫌伺いにやってくる貴族たちに「神殿は真っ白だから面白くない」と、お布施である貢ぎ物に『宝石』をご指定なさり、それらを無造作に壁の飾りつけとして使われる始末。
それでもウルリッヒ様を止められるものは居ない。だって彼は〝癒しの力”を持つこの世の唯一無二。
〝癒し”を施す以外は自由にお過ごしになるウルリッヒ様は、好きな時間に起き好きな時間に眠り、すっかりちいさな暴君だ。
時々同じ敷地にある王城へ出向いては、大臣や衛兵相手に城内を案内しろだの宝物庫を見せろだの、只人には決して口に出来ないような我儘を披露してお戻りになる。
禁欲的だった過去の神子とは対照的にやりたい放題のウルリッヒ様。
実際のところ、本当にそれらを欲していたか、と言われればそうではなく、やり場のない怒りを、大人たちに無理難題を言うことで主張していらしたんだと僕は思ってる。
そんな生活を数年続けたウルリッヒ様が望まれた最大のわがまま。それは…第一王子アルトゥール殿下との結婚。
なんでも紋様の儀式の際、ショックからよろめいたウルリッヒ様を優しく抱き留めてくださったのが、側近くにお座りになられていた美少年、当時十五になられるアルトゥール殿下だったのだとか。
以来ウルリッヒ様は城内でアルトゥール様をお見掛けする事だけを楽しみにしていたのだ。日々の彩とでも言うか。
そしてもうじき十三歳の誕生日をお迎えになるころ、ついにその大それた望みを口にされたのだ。
「どうせ正式な婚姻は十六になるまで出来ないのだし、結婚したってその後何年生きられるかもわからないもの。いいじゃない婚約くらい、いいじゃない夢みたって…」
僕はウルリッヒ様の忠実なお世話係。たとえどれ程思うところあっても異は唱えない。
あの日「エミルも一緒に!」そう言い張って、ただの世話係だった下級使用人、それも子供の僕をこの神殿までお連れくださった恩、決して忘れない。
神殿勤め、それはこの国において王宮勤めに並ぶ栄誉職。
神殿で寝起きするためには神殿に聖なる職が必要になる。現在僕は〝神子ウルリッヒ様専用世話係”という名の、れっきとした神殿末端職だ。
それでもお屋敷に残った両親は大層喜んでくれた。
そのうえウルリッヒ様はお給金の無い僕に「これはエミルの年金代り」と、神殿に来てから毎月、白い豚を模した陶器の中に貴族からもらった宝石を一つお入れくださる。
「いいことエミル。僕に何かあればこれを持ってここを出るんだよ」
「ウル様…そんなこと仰らないでください」
「その日はいつ来るか分からないもの。いいね、これは君のもの、覚えておいて」
「はい…」
その晩僕は神殿裏にある、小山から流れる小さな滝に身を浸した。初冬の凍えるほど寒い滝つぼの水は、心からの祈りを届けるにはもってこいだと思えた。
神様…死と再生の神バルデルスさま、どうか、どうかお願いです。この優しく悲しい憐れな人にどうか一筋の慈悲をお与え下さい。どうか…どうか…
僕の祈りが通じたのだろうか?
王はウルリッヒ様のわがままを聞き入れた。後で聞いた話では、王は笑いながら「どうせ早逝するのだから構わない」そう言われたという話だ。それもひどい話だが、ウルリッヒ様がお喜びならそれでいい…
これに納得していなかったのが王妃様だ。
「わたくしの大事な一人息子アルトゥールの妻になどと…いくら神子とはいえ、伯爵家の息子ごときがなんと弁え知らずな!」
納得していなかったのはアルトゥール殿下も同じことだ。当時殿下は十八歳、貴族学院へ通っていた国一番の人気を誇る美青年アルトゥール殿下には学院内に恋人が居たのだ。
その相手こそが冒頭に出たエマニエルだ!
「アルトゥール様!僕を愛していると仰ったじゃありませんか!」
「父上の命では仕方がない」
「僕はしがない男爵家の息子…所詮神子様には敵わないのですね…」
「馬鹿なエマニエル!神子と言ったところで子供ではないか!私の愛は君だけのものだ!」
「神子…そうだ!いい考えがある!」
といった会話があったとか無かったとか。
ともかく、激高した王妃様が婚約式に臨むウルリッヒ様をどんな顔で見つめていたか…ちびりそうなほど恐ろしかったのでその話は割愛しよう。
ウルリッヒ様は当時すでに自分のお願いは何でも聞いてもらえるものだと考えていた。
そこへ降って沸いた神子の大役。短命という不利益付きとは言え、ウルリッヒ様の要望はますますなんでも叶えられた。
「どうせ僕はリンデンの息子としては何の期待もされない身だもの。二十か二十五か、皴が増えたと嘆くより前にあの世行き。どうせ死ぬなら好きなようにする!」
「ごもっともです」
僕に何が言えるだろう。僕に出来るのはウルリッヒ様を見守り支えることだけ。
王城の敷地の中に建てられた豪華な神殿。そこには神子のための広く快適な居室と、身を清めるための泉、癒しの儀式をおこなうための清浄にして厳かな聖堂がある。
ウルリッヒ様は神殿に入ると、先ず真っ先に「動物だけは僕が神子であることなど気にも留めない」そう口にされ、裏庭に二頭のロバ、リスやウサギ、アヒルなどの小動物をたくさん持ち込み一斉に放された。
そして神殿内では、貴族たちからの貢ぎ物にペルシア猫、マルチーズ犬といった高価な愛玩動物を指定され、「つぎはシャムネコが良い」「パピヨンの番が欲しい」と言ってはどんどん増やしていかれた。
気がつけば神殿内ではすっかり犬猫が我が物顔。毛のある動物を嫌う神官長、副神官は併設の別棟に居を移された。
また「どうせ今しか食べられないのだから」そう仰り、高価な砂糖や希少なチョコレイトを使った甘いお菓子を毎日ご所望になった。
神殿で下働きをする修道士から「お菓子ばかりでは身体に悪うございます」と咎められれば、「どうせ僕の健康なんて僕のものじゃないからどうでもいい」とその口を閉じさせてしまった。
果てはご機嫌伺いにやってくる貴族たちに「神殿は真っ白だから面白くない」と、お布施である貢ぎ物に『宝石』をご指定なさり、それらを無造作に壁の飾りつけとして使われる始末。
それでもウルリッヒ様を止められるものは居ない。だって彼は〝癒しの力”を持つこの世の唯一無二。
〝癒し”を施す以外は自由にお過ごしになるウルリッヒ様は、好きな時間に起き好きな時間に眠り、すっかりちいさな暴君だ。
時々同じ敷地にある王城へ出向いては、大臣や衛兵相手に城内を案内しろだの宝物庫を見せろだの、只人には決して口に出来ないような我儘を披露してお戻りになる。
禁欲的だった過去の神子とは対照的にやりたい放題のウルリッヒ様。
実際のところ、本当にそれらを欲していたか、と言われればそうではなく、やり場のない怒りを、大人たちに無理難題を言うことで主張していらしたんだと僕は思ってる。
そんな生活を数年続けたウルリッヒ様が望まれた最大のわがまま。それは…第一王子アルトゥール殿下との結婚。
なんでも紋様の儀式の際、ショックからよろめいたウルリッヒ様を優しく抱き留めてくださったのが、側近くにお座りになられていた美少年、当時十五になられるアルトゥール殿下だったのだとか。
以来ウルリッヒ様は城内でアルトゥール様をお見掛けする事だけを楽しみにしていたのだ。日々の彩とでも言うか。
そしてもうじき十三歳の誕生日をお迎えになるころ、ついにその大それた望みを口にされたのだ。
「どうせ正式な婚姻は十六になるまで出来ないのだし、結婚したってその後何年生きられるかもわからないもの。いいじゃない婚約くらい、いいじゃない夢みたって…」
僕はウルリッヒ様の忠実なお世話係。たとえどれ程思うところあっても異は唱えない。
あの日「エミルも一緒に!」そう言い張って、ただの世話係だった下級使用人、それも子供の僕をこの神殿までお連れくださった恩、決して忘れない。
神殿勤め、それはこの国において王宮勤めに並ぶ栄誉職。
神殿で寝起きするためには神殿に聖なる職が必要になる。現在僕は〝神子ウルリッヒ様専用世話係”という名の、れっきとした神殿末端職だ。
それでもお屋敷に残った両親は大層喜んでくれた。
そのうえウルリッヒ様はお給金の無い僕に「これはエミルの年金代り」と、神殿に来てから毎月、白い豚を模した陶器の中に貴族からもらった宝石を一つお入れくださる。
「いいことエミル。僕に何かあればこれを持ってここを出るんだよ」
「ウル様…そんなこと仰らないでください」
「その日はいつ来るか分からないもの。いいね、これは君のもの、覚えておいて」
「はい…」
その晩僕は神殿裏にある、小山から流れる小さな滝に身を浸した。初冬の凍えるほど寒い滝つぼの水は、心からの祈りを届けるにはもってこいだと思えた。
神様…死と再生の神バルデルスさま、どうか、どうかお願いです。この優しく悲しい憐れな人にどうか一筋の慈悲をお与え下さい。どうか…どうか…
僕の祈りが通じたのだろうか?
王はウルリッヒ様のわがままを聞き入れた。後で聞いた話では、王は笑いながら「どうせ早逝するのだから構わない」そう言われたという話だ。それもひどい話だが、ウルリッヒ様がお喜びならそれでいい…
これに納得していなかったのが王妃様だ。
「わたくしの大事な一人息子アルトゥールの妻になどと…いくら神子とはいえ、伯爵家の息子ごときがなんと弁え知らずな!」
納得していなかったのはアルトゥール殿下も同じことだ。当時殿下は十八歳、貴族学院へ通っていた国一番の人気を誇る美青年アルトゥール殿下には学院内に恋人が居たのだ。
その相手こそが冒頭に出たエマニエルだ!
「アルトゥール様!僕を愛していると仰ったじゃありませんか!」
「父上の命では仕方がない」
「僕はしがない男爵家の息子…所詮神子様には敵わないのですね…」
「馬鹿なエマニエル!神子と言ったところで子供ではないか!私の愛は君だけのものだ!」
「神子…そうだ!いい考えがある!」
といった会話があったとか無かったとか。
ともかく、激高した王妃様が婚約式に臨むウルリッヒ様をどんな顔で見つめていたか…ちびりそうなほど恐ろしかったのでその話は割愛しよう。
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