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化かし合い
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「ウルリッヒ、ずいぶんと子供じみた悪ふざけをするじゃないか」
約束もないのに勢いこんでやって来たのは愛しの婚約者、アルトゥールだ。
墓所で起きた一連の出来事を、すべてウルリッヒの意地悪、そう結論付けたエマニエルはさっそくアルトゥールに泣きついたようだ。
「なんの話ですか?」
「…っ!エマニエルに対する墓所での下劣な行為のことだ!」
「下劣…?」
人の命を軽々しく奪おうとしている下劣な人間が僕に下劣だって?面白い!その下劣勝負乗った!
「バカ言っちゃいけませんよ。あんなの本気の半分もだしてないのに」
「何?」
「手加減してあげたんですよ?あれでもかなり」
もっと下劣な仕掛けいっぱいあったのに…
「ウルリッヒいい加減にしたまえ!君は神子の立場をなんだと思っている!」
「でもぉ~、僕ぅ~、エマニエルとはもっと仲良くしたいと思っててぇ~、そのためのきっかけになればと思って計画したのにぃ~、ダメでした?」キュルルン
「っ!」
こう言っておけば、僕をエマニエルに依存させたいアルトゥールは何も言えまい。
「だからといって他にやり方があるだろう…、可哀想に…エマニエルはひどく怯えていたのだよ…」
「んー…、殿下とエマニエルってただの同級生ですよね?」
「も、もちろんそうだ!」
「そこまで心配するのって違和感しかない。殿下エマニエルが好きなんですか?」
尋常じゃなく泳ぐ川底のガラス玉のような碧眼。サファイアじゃないのは輝きが濁っているからだ。
「ば、ばかなことを言うんじゃない!」
「エマニエルー!エマニエルー!」
秒でやってくるエマニエル。きっと笑い者にするつもりでドア前に張り付いていたのだろう。
「なんでしょうウルリッヒ様」
「良かったね。殿下エマニエルが大好きだって」スン「彼、僕の婚約者だけど」
ニコ「そんなことあるわけないじゃないですか!ねえ殿下?」
「そうだとも!これは尊い友情だ」
エマニエルはすまして否定するが、その眼はほんのり満足げだ。
「じゃあ目の前でハッキリ言ってください」
「ああいいとも。私の好きなのは君だよウルリッヒ」
「そうじゃなく」
「え?」
「世界で一番美しいのは君だウルリッヒ、エマニエルなんか足元にも及ばないって」
「そ、そのような下品な物言いはどうだろうか…」
「じゃエマニエルなんか好きじゃないって言って」
「私は友人としてエマニエルに好意を持っている。言えないよ」
「ふーん、友人ね…じゃあ今後なにがあろうと友人でしかないエマニエルは後宮に向かえないって神に誓って。ここ神殿だし」
ヒク「そこまでする必要があるかい、ウルリッヒ…」
「逆に聞きますけど、そこまでしちゃいけない理由がありますか?」
ワナワナ「すまない、火急の用を思い出した。失礼するよ」
ズカズカズカ…バタン!
はいさようなら。
良かったねエマニエル。アルトゥールは例え嘘でも二人の愛を否定出来ないってさ。
さて、その後のエマニエルは大変慎重に僕と接している。舐めてはかかれない相手と認識を改めたのだろう。
「そういえばウルリッヒ様…」
「なにエマニエル」
「ご生家のリンデン伯爵家ですが」
「うん」
「少々困ったお立場にあられるようですよ」
なるほど。今度はこうきたか。
「と言うと?」
「なんでもウルリッヒ様が癒しのご依頼を減らされたことでナンナー家から抗議があったそうですよ」
「へー」
そのナンナー家に苦情を入れたのは王妃か王子だろうけど。王様?王様は自分の不利益以外、基本小事に口は挟まない。
「へーって…、お父上がお困りなのですよ!」
「そうだね」
「…あ、あなたは家門の名誉が損なわれても良いのですか!」
「僕はね、家と個人は切り離して考えるべきだと常々思ってたんだ。子供の手柄に乗っかるなんて父親として情けないと思わない?」
「お家がおとり潰しになっても同じことが言えますか?」
これはあれだ、暗に言うこときなきゃお前の家を潰してやる!って言ってんのかな?
「人はいつか死ぬし形あるものはいつか壊れる。お家だってなんの努力もしないで安泰なんて得りえない。そうなったらなったで仕方ありませんね」シレ
「あ、あなたに親子の情はないのですか…」
「どうせ僕は先に死ぬから関係ないかな~」
「くっ…!」
カッカッカッ…バタン!
はいさようなら。
こうなってくると、そろそろ奴らは僕を排除する新たな方法を検討しだすだろう。
そしてその方法は…
実をいうと、すでに僕によってエマニエルにはヒントを与えている。
例えばこんな風に。
「どうも寒気がする…困ったな…風邪かな…」
「いいではないですか。どうせ自己再生で治るのですから」
「でもぉ…、自己再生って病気の治癒だけは生命力減るんだよね」
「え?」
僕はもっともらしく説明した。神の奇跡による再生の力。その源は神子の生命力。通常自分自身の再生において、どれ程の大怪我だろうと生命力は再生の後そのまま吸収還元されるのに、病だけは還元されないのだと。
「今までの神子はそのようなこと一言も仰っていませんでしたが…」
「僕は初めての傍系男神子だから…穢れなき少女じゃないから神様の加護が少ないのかも」
「確かに…」
…その「確かに…」はどの部分にかかるのかな?
まあいいや。全部ウソだし。怪我も病も生命力は吸収還元されてまーす!当たり前じゃん!自分の一部なのに!
「だから嫌だったんだよね。やたらと病人に会うの」
「…もしかしてそのためですか?奇跡の行使に対して条件を引き上げられたのは…」
おっ?勝手に深読みしてくれたよ?智謀に長けるのも考え物だね。
「そう。殿下のお願いをお断りしたのもね」
ここでネタばらし…みたいな顔。ウソだけど。
「ないしょだよ。こんなこと知られたら「神子でありながら自分の命を惜しんで助かる命を見捨てるのか!」って神官長に叱られちゃう」
冷静に考えれば色々理屈が破綻しているとは思うのだが、神子と言っても所詮十三歳。子供の感情論と片付けたのだろう。
「わかりました。この件は僕の胸に納めておきますね…」
ってな感じで、エマニエルは何かを思案しながら部屋を出て行った。
ここで重要なのは外傷は別にしたことだ。再生力枯渇のために連続で暴漢に襲われる…とかまっぴらだしね。
さて、僕の狙いを教えてやろう。何を隠そうそれは…
役立たずの不完全神子として、快適な生活が約束されたこの王城を追い出され、病の巣窟と呼ばれる西の神殿に収監される事だ!
彼らは選択するしかない。
このまま細々とした奇跡を享受しながら、僕が正式な妃となる十六を唇をかんで迎えるか…それともほんの数年不便に目を瞑り、自己再生を乱発した挙句僕がくたばり新たな神子が発現するよう、早期入れ替えの可能性に全てを賭けるか…
けれど僕が自由を手に入れられるチャンスは、あるとしたらそこしかない。
待っててウルリッヒ様。僕は再会を諦めてない!
約束もないのに勢いこんでやって来たのは愛しの婚約者、アルトゥールだ。
墓所で起きた一連の出来事を、すべてウルリッヒの意地悪、そう結論付けたエマニエルはさっそくアルトゥールに泣きついたようだ。
「なんの話ですか?」
「…っ!エマニエルに対する墓所での下劣な行為のことだ!」
「下劣…?」
人の命を軽々しく奪おうとしている下劣な人間が僕に下劣だって?面白い!その下劣勝負乗った!
「バカ言っちゃいけませんよ。あんなの本気の半分もだしてないのに」
「何?」
「手加減してあげたんですよ?あれでもかなり」
もっと下劣な仕掛けいっぱいあったのに…
「ウルリッヒいい加減にしたまえ!君は神子の立場をなんだと思っている!」
「でもぉ~、僕ぅ~、エマニエルとはもっと仲良くしたいと思っててぇ~、そのためのきっかけになればと思って計画したのにぃ~、ダメでした?」キュルルン
「っ!」
こう言っておけば、僕をエマニエルに依存させたいアルトゥールは何も言えまい。
「だからといって他にやり方があるだろう…、可哀想に…エマニエルはひどく怯えていたのだよ…」
「んー…、殿下とエマニエルってただの同級生ですよね?」
「も、もちろんそうだ!」
「そこまで心配するのって違和感しかない。殿下エマニエルが好きなんですか?」
尋常じゃなく泳ぐ川底のガラス玉のような碧眼。サファイアじゃないのは輝きが濁っているからだ。
「ば、ばかなことを言うんじゃない!」
「エマニエルー!エマニエルー!」
秒でやってくるエマニエル。きっと笑い者にするつもりでドア前に張り付いていたのだろう。
「なんでしょうウルリッヒ様」
「良かったね。殿下エマニエルが大好きだって」スン「彼、僕の婚約者だけど」
ニコ「そんなことあるわけないじゃないですか!ねえ殿下?」
「そうだとも!これは尊い友情だ」
エマニエルはすまして否定するが、その眼はほんのり満足げだ。
「じゃあ目の前でハッキリ言ってください」
「ああいいとも。私の好きなのは君だよウルリッヒ」
「そうじゃなく」
「え?」
「世界で一番美しいのは君だウルリッヒ、エマニエルなんか足元にも及ばないって」
「そ、そのような下品な物言いはどうだろうか…」
「じゃエマニエルなんか好きじゃないって言って」
「私は友人としてエマニエルに好意を持っている。言えないよ」
「ふーん、友人ね…じゃあ今後なにがあろうと友人でしかないエマニエルは後宮に向かえないって神に誓って。ここ神殿だし」
ヒク「そこまでする必要があるかい、ウルリッヒ…」
「逆に聞きますけど、そこまでしちゃいけない理由がありますか?」
ワナワナ「すまない、火急の用を思い出した。失礼するよ」
ズカズカズカ…バタン!
はいさようなら。
良かったねエマニエル。アルトゥールは例え嘘でも二人の愛を否定出来ないってさ。
さて、その後のエマニエルは大変慎重に僕と接している。舐めてはかかれない相手と認識を改めたのだろう。
「そういえばウルリッヒ様…」
「なにエマニエル」
「ご生家のリンデン伯爵家ですが」
「うん」
「少々困ったお立場にあられるようですよ」
なるほど。今度はこうきたか。
「と言うと?」
「なんでもウルリッヒ様が癒しのご依頼を減らされたことでナンナー家から抗議があったそうですよ」
「へー」
そのナンナー家に苦情を入れたのは王妃か王子だろうけど。王様?王様は自分の不利益以外、基本小事に口は挟まない。
「へーって…、お父上がお困りなのですよ!」
「そうだね」
「…あ、あなたは家門の名誉が損なわれても良いのですか!」
「僕はね、家と個人は切り離して考えるべきだと常々思ってたんだ。子供の手柄に乗っかるなんて父親として情けないと思わない?」
「お家がおとり潰しになっても同じことが言えますか?」
これはあれだ、暗に言うこときなきゃお前の家を潰してやる!って言ってんのかな?
「人はいつか死ぬし形あるものはいつか壊れる。お家だってなんの努力もしないで安泰なんて得りえない。そうなったらなったで仕方ありませんね」シレ
「あ、あなたに親子の情はないのですか…」
「どうせ僕は先に死ぬから関係ないかな~」
「くっ…!」
カッカッカッ…バタン!
はいさようなら。
こうなってくると、そろそろ奴らは僕を排除する新たな方法を検討しだすだろう。
そしてその方法は…
実をいうと、すでに僕によってエマニエルにはヒントを与えている。
例えばこんな風に。
「どうも寒気がする…困ったな…風邪かな…」
「いいではないですか。どうせ自己再生で治るのですから」
「でもぉ…、自己再生って病気の治癒だけは生命力減るんだよね」
「え?」
僕はもっともらしく説明した。神の奇跡による再生の力。その源は神子の生命力。通常自分自身の再生において、どれ程の大怪我だろうと生命力は再生の後そのまま吸収還元されるのに、病だけは還元されないのだと。
「今までの神子はそのようなこと一言も仰っていませんでしたが…」
「僕は初めての傍系男神子だから…穢れなき少女じゃないから神様の加護が少ないのかも」
「確かに…」
…その「確かに…」はどの部分にかかるのかな?
まあいいや。全部ウソだし。怪我も病も生命力は吸収還元されてまーす!当たり前じゃん!自分の一部なのに!
「だから嫌だったんだよね。やたらと病人に会うの」
「…もしかしてそのためですか?奇跡の行使に対して条件を引き上げられたのは…」
おっ?勝手に深読みしてくれたよ?智謀に長けるのも考え物だね。
「そう。殿下のお願いをお断りしたのもね」
ここでネタばらし…みたいな顔。ウソだけど。
「ないしょだよ。こんなこと知られたら「神子でありながら自分の命を惜しんで助かる命を見捨てるのか!」って神官長に叱られちゃう」
冷静に考えれば色々理屈が破綻しているとは思うのだが、神子と言っても所詮十三歳。子供の感情論と片付けたのだろう。
「わかりました。この件は僕の胸に納めておきますね…」
ってな感じで、エマニエルは何かを思案しながら部屋を出て行った。
ここで重要なのは外傷は別にしたことだ。再生力枯渇のために連続で暴漢に襲われる…とかまっぴらだしね。
さて、僕の狙いを教えてやろう。何を隠そうそれは…
役立たずの不完全神子として、快適な生活が約束されたこの王城を追い出され、病の巣窟と呼ばれる西の神殿に収監される事だ!
彼らは選択するしかない。
このまま細々とした奇跡を享受しながら、僕が正式な妃となる十六を唇をかんで迎えるか…それともほんの数年不便に目を瞑り、自己再生を乱発した挙句僕がくたばり新たな神子が発現するよう、早期入れ替えの可能性に全てを賭けるか…
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