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暗闇に蠢く
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奴らが出て行ってからどれくらいの時間がたっただろう?
馬の背に乗っていた時間も相当だったし、墓所から通算すればかなりのものだ。
夕方?夜?昼じゃなさそうなことはなんとなく体感でわかる。
ビ、ビリビリビリ…
針金も重ねればそこそこの強度だ。狭い袋の中での作業は困難を極めたが、それでも麻袋はついに白旗をあげた。
「ぷはっ!麻袋越しじゃやっぱ息苦しいな…」
袋から出た僕が最初にしたのは新鮮な空気を思いっきり吸い込むことだ。
打撲もたんこぶも再生されている僕に身体の損傷はない。
明かり一つ入らないここは本物の暗闇。それは逆に内部の明かりも漏れないことを意味している。
幸い麻とは着火材に最適な素材。僕は破いたほつれ目から少し解すと火打石を打ち始めた。
「深呼吸が出来るってことは空気はあるってことだ。つけ!つけ!」
カッ!カッ!ポッ…
「!」フー…フー…「ついた…」
ろうそくに火を灯すと、先ずは地下室の様子を確認する。
積み上がった木箱…
うん?これは…
「…ランスのブレード…ハルバードのブレードもある…」
なるほど。王城から持ち出した武器をここで溜め込んでるのか…
「革まで…」
革は防具などにも使われるものだが、採取に限りある以上小国ではやっぱり重宝される。目ざといな…
「ん?なんだこれ」ペロ「こ、胡椒…!」
胡椒だと?はっ!もしかして本命はこの胡椒か!
保存料にも薬の資材にもなる稀少な香辛料、それが胡椒だ。
神殿では調薬のため常に一定の備蓄を維持しているが…それでも木箱一箱なんてあり得ない。せいぜい小さな引き出し一つ分くらい。それほど貴重な素材だ。
遥か彼方西方の大国から特別な経路で運ばれてくる胡椒…。その価値はなんと!金や銀にも匹敵すると言われている。
「確かに軍にも遠征用の備蓄割り当てがあるって聞いたことあるけど…」
こんな大量の割り当てあるか?遠征用にしちゃ多すぎるだろ。
つまりこれには何らかの不正な操作があったとしか考えられない!
「なるほど…。これなら大きな恩が売れる。小国程度ならどうとだって出来る恩を…」
だけどこれらは鍛冶場で管理する武器類とわけが違う。王城の備蓄保管庫なんて兵や武官の立ち入るような場所じゃない。
これには帳簿に携わる文官、もしくは高位の大臣に仕える上級使用人が関わっているはずだ。
「王妃の私兵に可能とは思えない…」
けどこれでハッキリした。
ここはフォルスト侯の弟が管理している投資の商会。その倉庫で間違いない
だけどこの国では大きな交易をおこなう商会には監査が入る。
だからヤバイ品目だけはいつ何が起きてもバレないように、こうして人目を盗み地下に隠しているんだろう。
「けどなんか腑に落ちない…」
フォルスト候は北の辺境伯に及ばないまでもなかなかの軍師だ。だけどそれは戦術という意味においてであって、彼は商売人でじゃない。そのフォルスト候がこんな手の込んだこと考えつくだろうか?まだ強奪とかのほうがしっくりくる。
じゃあフォルスト領か弟のいる子爵領の家令が参謀?
いいや。いくら辣腕な家令といっても一介の使用人が王城から財を掠めとる…なんてこと考えるはずがない!
もしも見つかれば問答無用、あの冷酷な王ならその場で斬り捨てる!
誰か王宮のかなり上の方にフォルスト侯を唆した知恵者が居る…
待てよ…
背後で暗躍する知恵者…
王宮の上に顔の効く…
「ま、まさ、か…」
投資の商会を立ち上げたのは二年前…
二年前、それはアルトゥールと婚約した神子を排除すべく、エマニエルが王城に入り浸り始めた頃じゃないか!
僕はこの誘拐にエマニエルの声を聞き、てっきり庇護を求めたエマニエルが王妃の父にすりよったのだと思ったけど…
「もしかして二年前からとっくに繋がってたのか…」
なんか読めてきた。
武器の横流しは以前から行われていたことだ。
これはフォルスト侯の立場を利用したほんの小遣い稼ぎに過ぎないだろう。そもそも鍛冶師の労力から考えて多量の横流しは不可能だろうし。
けどこの胡椒は見逃せる量を越えている…。これは西方の大国から取り寄せる時点で水増ししていると考えた方がいい。
王子の恋人として王妃に紹介されたエマニエル。
エマニエルの家は領地を持たない官吏貴族。けど仕えている上位貴族もこれといって目立たない、序列の低い伯爵家だ。
何故知ってるかって?神殿に勤める際、紹介状を持参しているからね。僕は元雇用主だ。
エマニエルはいつだって後ろ楯を欲しがっていた。
顔繋ぎの言い出しっぺがエマニエルなのか王妃なのかはたまたアルトゥールなのか、それはわからない。
けどフォルスト侯に取り入るため、武器の横流しを知ったエマニエルは「もっといい策がある」とでも言ってこの計画を匂わせたんだ。武器より儲かり他国に恩を売れる商材を。
ここの要点は匂わせる、ってとこね。あくまで首謀者にはならない。それがエマニエルの処世術だ。
お、恐るべき頭脳…
今更ながら、エマニエルとアルトゥールの王朝にならなくて本当に良かった…。よくやった自分!
さて、フォルスト候がオスビーを狙う前にここを抜け出したいところだが、どこに扉があるかもわからないこんな地下からどうやって逃げ出すか。
実は僕にしか出来ない脱出法がひとつある。
危険極まりないため気乗りはしないが…この際仕方ない。
ろうそくを灯していた時、細い煙が一定の方向に流れていくのを僕は確認している。
多分そこが空気の取り込み口で、そこは外部に繋がっていて、もっと大量の白煙を奴らに届けるはずだ。
この建物の外に居るだろう見張りに!
僕の考え…もうわかったかな?
全部消し炭にしてやる!
僕も含めてだけど…
馬の背に乗っていた時間も相当だったし、墓所から通算すればかなりのものだ。
夕方?夜?昼じゃなさそうなことはなんとなく体感でわかる。
ビ、ビリビリビリ…
針金も重ねればそこそこの強度だ。狭い袋の中での作業は困難を極めたが、それでも麻袋はついに白旗をあげた。
「ぷはっ!麻袋越しじゃやっぱ息苦しいな…」
袋から出た僕が最初にしたのは新鮮な空気を思いっきり吸い込むことだ。
打撲もたんこぶも再生されている僕に身体の損傷はない。
明かり一つ入らないここは本物の暗闇。それは逆に内部の明かりも漏れないことを意味している。
幸い麻とは着火材に最適な素材。僕は破いたほつれ目から少し解すと火打石を打ち始めた。
「深呼吸が出来るってことは空気はあるってことだ。つけ!つけ!」
カッ!カッ!ポッ…
「!」フー…フー…「ついた…」
ろうそくに火を灯すと、先ずは地下室の様子を確認する。
積み上がった木箱…
うん?これは…
「…ランスのブレード…ハルバードのブレードもある…」
なるほど。王城から持ち出した武器をここで溜め込んでるのか…
「革まで…」
革は防具などにも使われるものだが、採取に限りある以上小国ではやっぱり重宝される。目ざといな…
「ん?なんだこれ」ペロ「こ、胡椒…!」
胡椒だと?はっ!もしかして本命はこの胡椒か!
保存料にも薬の資材にもなる稀少な香辛料、それが胡椒だ。
神殿では調薬のため常に一定の備蓄を維持しているが…それでも木箱一箱なんてあり得ない。せいぜい小さな引き出し一つ分くらい。それほど貴重な素材だ。
遥か彼方西方の大国から特別な経路で運ばれてくる胡椒…。その価値はなんと!金や銀にも匹敵すると言われている。
「確かに軍にも遠征用の備蓄割り当てがあるって聞いたことあるけど…」
こんな大量の割り当てあるか?遠征用にしちゃ多すぎるだろ。
つまりこれには何らかの不正な操作があったとしか考えられない!
「なるほど…。これなら大きな恩が売れる。小国程度ならどうとだって出来る恩を…」
だけどこれらは鍛冶場で管理する武器類とわけが違う。王城の備蓄保管庫なんて兵や武官の立ち入るような場所じゃない。
これには帳簿に携わる文官、もしくは高位の大臣に仕える上級使用人が関わっているはずだ。
「王妃の私兵に可能とは思えない…」
けどこれでハッキリした。
ここはフォルスト侯の弟が管理している投資の商会。その倉庫で間違いない
だけどこの国では大きな交易をおこなう商会には監査が入る。
だからヤバイ品目だけはいつ何が起きてもバレないように、こうして人目を盗み地下に隠しているんだろう。
「けどなんか腑に落ちない…」
フォルスト候は北の辺境伯に及ばないまでもなかなかの軍師だ。だけどそれは戦術という意味においてであって、彼は商売人でじゃない。そのフォルスト候がこんな手の込んだこと考えつくだろうか?まだ強奪とかのほうがしっくりくる。
じゃあフォルスト領か弟のいる子爵領の家令が参謀?
いいや。いくら辣腕な家令といっても一介の使用人が王城から財を掠めとる…なんてこと考えるはずがない!
もしも見つかれば問答無用、あの冷酷な王ならその場で斬り捨てる!
誰か王宮のかなり上の方にフォルスト侯を唆した知恵者が居る…
待てよ…
背後で暗躍する知恵者…
王宮の上に顔の効く…
「ま、まさ、か…」
投資の商会を立ち上げたのは二年前…
二年前、それはアルトゥールと婚約した神子を排除すべく、エマニエルが王城に入り浸り始めた頃じゃないか!
僕はこの誘拐にエマニエルの声を聞き、てっきり庇護を求めたエマニエルが王妃の父にすりよったのだと思ったけど…
「もしかして二年前からとっくに繋がってたのか…」
なんか読めてきた。
武器の横流しは以前から行われていたことだ。
これはフォルスト侯の立場を利用したほんの小遣い稼ぎに過ぎないだろう。そもそも鍛冶師の労力から考えて多量の横流しは不可能だろうし。
けどこの胡椒は見逃せる量を越えている…。これは西方の大国から取り寄せる時点で水増ししていると考えた方がいい。
王子の恋人として王妃に紹介されたエマニエル。
エマニエルの家は領地を持たない官吏貴族。けど仕えている上位貴族もこれといって目立たない、序列の低い伯爵家だ。
何故知ってるかって?神殿に勤める際、紹介状を持参しているからね。僕は元雇用主だ。
エマニエルはいつだって後ろ楯を欲しがっていた。
顔繋ぎの言い出しっぺがエマニエルなのか王妃なのかはたまたアルトゥールなのか、それはわからない。
けどフォルスト侯に取り入るため、武器の横流しを知ったエマニエルは「もっといい策がある」とでも言ってこの計画を匂わせたんだ。武器より儲かり他国に恩を売れる商材を。
ここの要点は匂わせる、ってとこね。あくまで首謀者にはならない。それがエマニエルの処世術だ。
お、恐るべき頭脳…
今更ながら、エマニエルとアルトゥールの王朝にならなくて本当に良かった…。よくやった自分!
さて、フォルスト候がオスビーを狙う前にここを抜け出したいところだが、どこに扉があるかもわからないこんな地下からどうやって逃げ出すか。
実は僕にしか出来ない脱出法がひとつある。
危険極まりないため気乗りはしないが…この際仕方ない。
ろうそくを灯していた時、細い煙が一定の方向に流れていくのを僕は確認している。
多分そこが空気の取り込み口で、そこは外部に繋がっていて、もっと大量の白煙を奴らに届けるはずだ。
この建物の外に居るだろう見張りに!
僕の考え…もうわかったかな?
全部消し炭にしてやる!
僕も含めてだけど…
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