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西の恋心
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気を回したエドとオスビーが居ない二人っきりの部屋。
そこで僕から東の一部始終を聞いたウル様はとても神妙な顔をしていた。
僕がリンデンの旦那様に告げた言葉を聞いても少しうつむき加減に一言、「それでいい」とだけ言った。
ただ、帰路の馬車道に旦那様が顔を見せたことを告げると静かに目を瞑って僕に背を向けた。
「お父様が見送りに…。そう…」
「何を思いながら馬車を見てたのかな…?」
「…バカだよね、王妃の父になれたのに…」
それらは僕に話しかけると言うのでもなく、まるで独り言のように小さな呟きだったけど…
「お父様にとって僕は踏みにじられる自分の象徴だった…。「過去の汚点」そう言ってオスヴァルト様を憎んだ王妃殿下と同じだね…。ふふ…そこに居るだけで疎まれる、僕にもオスヴァルト様にもどうにもできないことなのにね…」
「ウル様…」
それだけは天を仰ぐようにはっきりとした声で言い切った。なんだか笑ってたような気がする。
けどそれは決して自虐でも皮肉でもなく…僕には吹っ切った。そんな風に聞こえた。
その証拠に、
「でも良かった。お父様が間に合って…」
「間に合って…?」
見送りに?いや、違うって。
「エドヴィンを奪われた、…って…逆恨みしたっておかしくなかったもの。王妃殿下のように真っ黒な心になってもおかしくなかった」
「まあ…でも旦那様は神経質ですけど悪人じゃないですよ?」
むしろあの気の小ささは道を逸れることこそ怖がると見た。
社交界から〝ナンナーの嫁をもらった果報者”と言われるのを嫌い、立派な当主として認められたくてしょうがなかった旦那様は人一倍紳士であろうとしていた。あくまで旦那様なりに…の話しだけどね。
「…悪い心に囚われて天罰がくだる姿はみたくなかったかも。うふふ、神子ウルリッヒの天罰だけど」
ここ笑っていいとこだろうか?振り返ったウル様は曇りの無い笑顔だ。けどここで言うウルリッヒが僕を指しているのは間違いない。
「オスヴァルト様が説得してくださったおかげだね。その見送りはきっとナンナーという重い枷への決別なんだよ」
「ごもっともです」
「それなら僕ももう僅かに残ったお父様への思慕とは決別しなくちゃ…ね?」
「そうですよ!ウル様はもうエミルなんですから!」
旦那様がエドヴィンの決意で救われたように、ウル様もまたエドの愛によって救われたのなら、リンデン家の救世主とはまさにエドヴィン!彼にはあとで何か良いものあげておこう。
それはそれとして…これだけは聞いておかねばなるまい!
「ってことでウル様、話しは変るけどエドとどうなってるの?ユストゥスとは?」
「えっ?あ、あの…」カァァァ「な、何言いだすの…」
「ユストゥスから告られたの?何て言われたの?いつから?どう思ってるの?」
すっかり気分はお茶会に集う若き令嬢である。けどゴシップキングである僕にこれを見過ごせとは無理があるでしょうが!
「そ、その…何も言われてないけど…花を一輪。今の気持ちだって…」
「花…なんの?」
「ピンクのポピー…」
その意味するところは…『恋の予感』
「き、キザ!」
いや、貴族なんてこんなもんだけど!
「そんなこと言わないの。ユ、ユストゥスはその…頼りがいがあって素敵な子だよ」
「素敵ね…、じゃエドは?」
「エドは…」モジモジ
「好きなんでしょ?」
「エドはエミルとは違う形の…もう一人の理解者だよ…優しくてずっと側に寄り添ってくれる。けど…」
「けど何?少なくとも意識してるよね?」ウズウズ
「だって…」
「だって何?隠さなくてもいいのに。いつも良い雰囲気じゃない」ニヤニヤ
うっすらと頬を染めて両手の指先をコチョコチョするウル様のしぐさはどう考えたって乙女でしょ!
「だって僕たち本当は兄弟で…」
「なんだそのこと。前世軸じゃない」
「なのにいいのかなって…」
「今他人だから全く問題無し」グッ!
いっちゃえいっちゃえ!
「そ、そんなことよりエミルってば!また無茶をして!びっくりしたよもう!何があったか聞いた時は…」
「うっ!あ、あれは僕が無茶したっていうよりフォルスト候が無茶したって言ったほうが…」
むしろフォルスト候の方がいくら切羽詰まってたからってあまりにもヒドイって!あの計画はどう考えても無茶だったって!
「オスビーにもそれほど叱られなかったし」
「…少しは叱られたんでしょ?」
「まあ…少ーしね」
どこかで狙わせてそれを証拠に糾弾することは二人で決めてたわけで。……ただ急遽独断で狙いを僕に絞らせたから、まあその辺りでね。
「でもそのおかげで思った以上に早く事が進んだんだよ?結果良ければすべてよしってことで」
「…じゃぁこれからはもう無茶しないって約束して」
「シナイヨー」
ホッ「良かった…」
これでよし。
コンコン
ノックと共にやって来たのは噂の人物。一組の主従だ。
「話しは終わったかい」
「あ、うん」
心配そうにこちらを見るエドは、僕がひとつ頷くとホッと息を吐きウル様の横に歩み寄った。
上気した顔でエドを見上げるウル様。
まあ…自分のために後継の地位さえ捨ててここにきたって考えたら…ウル様のこの顔も納得だよ。
ユストゥス君…気の毒だけど君の恋は儚そうだよ…
そこで僕から東の一部始終を聞いたウル様はとても神妙な顔をしていた。
僕がリンデンの旦那様に告げた言葉を聞いても少しうつむき加減に一言、「それでいい」とだけ言った。
ただ、帰路の馬車道に旦那様が顔を見せたことを告げると静かに目を瞑って僕に背を向けた。
「お父様が見送りに…。そう…」
「何を思いながら馬車を見てたのかな…?」
「…バカだよね、王妃の父になれたのに…」
それらは僕に話しかけると言うのでもなく、まるで独り言のように小さな呟きだったけど…
「お父様にとって僕は踏みにじられる自分の象徴だった…。「過去の汚点」そう言ってオスヴァルト様を憎んだ王妃殿下と同じだね…。ふふ…そこに居るだけで疎まれる、僕にもオスヴァルト様にもどうにもできないことなのにね…」
「ウル様…」
それだけは天を仰ぐようにはっきりとした声で言い切った。なんだか笑ってたような気がする。
けどそれは決して自虐でも皮肉でもなく…僕には吹っ切った。そんな風に聞こえた。
その証拠に、
「でも良かった。お父様が間に合って…」
「間に合って…?」
見送りに?いや、違うって。
「エドヴィンを奪われた、…って…逆恨みしたっておかしくなかったもの。王妃殿下のように真っ黒な心になってもおかしくなかった」
「まあ…でも旦那様は神経質ですけど悪人じゃないですよ?」
むしろあの気の小ささは道を逸れることこそ怖がると見た。
社交界から〝ナンナーの嫁をもらった果報者”と言われるのを嫌い、立派な当主として認められたくてしょうがなかった旦那様は人一倍紳士であろうとしていた。あくまで旦那様なりに…の話しだけどね。
「…悪い心に囚われて天罰がくだる姿はみたくなかったかも。うふふ、神子ウルリッヒの天罰だけど」
ここ笑っていいとこだろうか?振り返ったウル様は曇りの無い笑顔だ。けどここで言うウルリッヒが僕を指しているのは間違いない。
「オスヴァルト様が説得してくださったおかげだね。その見送りはきっとナンナーという重い枷への決別なんだよ」
「ごもっともです」
「それなら僕ももう僅かに残ったお父様への思慕とは決別しなくちゃ…ね?」
「そうですよ!ウル様はもうエミルなんですから!」
旦那様がエドヴィンの決意で救われたように、ウル様もまたエドの愛によって救われたのなら、リンデン家の救世主とはまさにエドヴィン!彼にはあとで何か良いものあげておこう。
それはそれとして…これだけは聞いておかねばなるまい!
「ってことでウル様、話しは変るけどエドとどうなってるの?ユストゥスとは?」
「えっ?あ、あの…」カァァァ「な、何言いだすの…」
「ユストゥスから告られたの?何て言われたの?いつから?どう思ってるの?」
すっかり気分はお茶会に集う若き令嬢である。けどゴシップキングである僕にこれを見過ごせとは無理があるでしょうが!
「そ、その…何も言われてないけど…花を一輪。今の気持ちだって…」
「花…なんの?」
「ピンクのポピー…」
その意味するところは…『恋の予感』
「き、キザ!」
いや、貴族なんてこんなもんだけど!
「そんなこと言わないの。ユ、ユストゥスはその…頼りがいがあって素敵な子だよ」
「素敵ね…、じゃエドは?」
「エドは…」モジモジ
「好きなんでしょ?」
「エドはエミルとは違う形の…もう一人の理解者だよ…優しくてずっと側に寄り添ってくれる。けど…」
「けど何?少なくとも意識してるよね?」ウズウズ
「だって…」
「だって何?隠さなくてもいいのに。いつも良い雰囲気じゃない」ニヤニヤ
うっすらと頬を染めて両手の指先をコチョコチョするウル様のしぐさはどう考えたって乙女でしょ!
「だって僕たち本当は兄弟で…」
「なんだそのこと。前世軸じゃない」
「なのにいいのかなって…」
「今他人だから全く問題無し」グッ!
いっちゃえいっちゃえ!
「そ、そんなことよりエミルってば!また無茶をして!びっくりしたよもう!何があったか聞いた時は…」
「うっ!あ、あれは僕が無茶したっていうよりフォルスト候が無茶したって言ったほうが…」
むしろフォルスト候の方がいくら切羽詰まってたからってあまりにもヒドイって!あの計画はどう考えても無茶だったって!
「オスビーにもそれほど叱られなかったし」
「…少しは叱られたんでしょ?」
「まあ…少ーしね」
どこかで狙わせてそれを証拠に糾弾することは二人で決めてたわけで。……ただ急遽独断で狙いを僕に絞らせたから、まあその辺りでね。
「でもそのおかげで思った以上に早く事が進んだんだよ?結果良ければすべてよしってことで」
「…じゃぁこれからはもう無茶しないって約束して」
「シナイヨー」
ホッ「良かった…」
これでよし。
コンコン
ノックと共にやって来たのは噂の人物。一組の主従だ。
「話しは終わったかい」
「あ、うん」
心配そうにこちらを見るエドは、僕がひとつ頷くとホッと息を吐きウル様の横に歩み寄った。
上気した顔でエドを見上げるウル様。
まあ…自分のために後継の地位さえ捨ててここにきたって考えたら…ウル様のこの顔も納得だよ。
ユストゥス君…気の毒だけど君の恋は儚そうだよ…
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