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アゴラの宴
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大勢の人々が僕を取り囲む。
口々に告げられる祝福の言葉。
ここはアゴラの中央。これは僕の婚礼と誕生、その両方を祝う庶民の宴だ。
劇場では僕の弟子を名乗る修道士たちが、いつの間にか劇化されていた僕とフォルスト候の対立を演じている。
そしてまた音楽堂でも修道女たちが神への賛美を美しい歌声にのせて響かせている。
ここに居るのは都市民及び、神殿部に入れなかった貴族位を持たない来賓の従者たち。
オスビーは大変気安い王様だけど、ブリッタ様の教育もあって貴族社会の秩序は尊重している。
なのでこうして僕がアゴラに下りるのは市井の人々と近しくありたいと願うオスビーの代わりでもある。
…後付けだけどね…
「ウルリッヒ様!おめでとうございます!」
「しかし本当によろしいのですか?王妃たるお方が晩餐の場に居なくとも…」
「いいの。僕は王妃である前に〝癒しの神子”だから」
王城に居た頃、今は亡き一部の貴族たちは神子との接見を高貴なるものの特権、と思っていた節がある。が、神は万人を見守る存在。神子が神の使いであるなら神子は市井に居てこそ意義があるってものだろう。
「下手に立食晩餐会なんか参加したら恒例行事になるでしょ?こういうことは最初が肝心だからね」キッパリ
僕は無理しない。
王城神殿の晩餐会はあくまでオスビーの盾として参加しただけ。食事とはもっと気楽に楽しむものだ。
ほら、今みたいに。
今日のエドは王たるオスビーに付きっきり。なのでこれはウル様と二人っきりの誕生会だ。
アゴラには食べきれないほどの振舞い飯が用意されている。
これらはこの日のために手配した各地から集まった飲食店によるもの。
彼らは出店という形で美味しそうなおつまみを店の軒先に広げている。お代はぜーんぶ宮廷持ち。
神殿部の厨房は二日連続の晩餐準備で手いっぱいだし、外注によって手間を省き、かつ今後の出店にもつなげる、一粒で二度オイシイ試みである。
僕が居る切り株のテーブルにもお料理が所狭しと並べられている。
「エミルのパンは?」
「今日は無理。ずっと式のお手伝いしてたから」
「そっか。そうだね」
「すごくきれいだったよ、ウルリッヒ様」
「ありがとう。あの刺繍すごく嬉しかった。エミルの時は僕が衣装に刺繍するね」
「うん…うん…」
ほんのり赤く染まる頬。
乙女なウル様のお式にはお花をいっぱい飾ってあげよう。花びらの向こうで微笑むウル様はきっと世界一幸せな花嫁になる。
待ちどおしいな。僕はそんなウル様をいつか見たいと願って…あの日王城神殿の小さな滝に祈りを捧げたんだから…
「さっさと食べて劇場行こう!」
「うん!すごく楽しみ!」
この式典に合わせ劇場の修復は急ピッチで進められた。
今までも独演のような催しは行われていたが、ちゃんとした劇はこれが初披露になる。それもこれも人が増えたから。人が多ければやれることが多くなる。
人のいない暮らしは平和だけど退屈、増えすぎると揉め事が増える。その加減は実に難しい。これからオスビーが振るう采配に期待大だ!
「はい、揚げたお芋ね。これ持って」
「食べながら見るの?」
「おじさんたちは飲みながら見てるよ」
「あっ!あの小柄な人がウルリッヒ様の役かな?」
「じゃあ向こうのデカい人がフォルスト候か」
会議室での丁々発止。ウル様は小さく「やっちゃえエミル!」とつぶやいている。ウル様ってば…
また悪漢に囲まれるオスビーのシーンでは怖がるかと思いきや、…こぶしを握り締めている。ウル様ってば…
そしてクライマックス。
倉庫のボヤと山火事は合体して倉庫の大火事に脚色された。
はためく緋色の布地が炎の代わりだろう。その炎を掻き分けて現れる僕とフォルスト候を剣で倒し(そんなことしていない)両手を広げ僕を迎え入れるオスビー。
神子と王子の抱擁に観客席からは拍手がわきあがる。
「わぁぁ…」ウットリ…
目をキラキラさせながら二人の抱擁を見つめるウル様。本当にこの人ってば…
「すごくすっごく楽しかった。明日も来ようかな」
エドと一緒に。その言葉はそう続くんだろう。お邪魔虫が割り込まなきゃいいけど。
念願の観劇には大満足していただけたようだ。
「さ、もう行こうかな。オスビーを救出しなきゃ」
「そ、そうだね…」
何故そこでウル様が赤くなる。恥ずかしいからホント止めて欲しい…
口々に告げられる祝福の言葉。
ここはアゴラの中央。これは僕の婚礼と誕生、その両方を祝う庶民の宴だ。
劇場では僕の弟子を名乗る修道士たちが、いつの間にか劇化されていた僕とフォルスト候の対立を演じている。
そしてまた音楽堂でも修道女たちが神への賛美を美しい歌声にのせて響かせている。
ここに居るのは都市民及び、神殿部に入れなかった貴族位を持たない来賓の従者たち。
オスビーは大変気安い王様だけど、ブリッタ様の教育もあって貴族社会の秩序は尊重している。
なのでこうして僕がアゴラに下りるのは市井の人々と近しくありたいと願うオスビーの代わりでもある。
…後付けだけどね…
「ウルリッヒ様!おめでとうございます!」
「しかし本当によろしいのですか?王妃たるお方が晩餐の場に居なくとも…」
「いいの。僕は王妃である前に〝癒しの神子”だから」
王城に居た頃、今は亡き一部の貴族たちは神子との接見を高貴なるものの特権、と思っていた節がある。が、神は万人を見守る存在。神子が神の使いであるなら神子は市井に居てこそ意義があるってものだろう。
「下手に立食晩餐会なんか参加したら恒例行事になるでしょ?こういうことは最初が肝心だからね」キッパリ
僕は無理しない。
王城神殿の晩餐会はあくまでオスビーの盾として参加しただけ。食事とはもっと気楽に楽しむものだ。
ほら、今みたいに。
今日のエドは王たるオスビーに付きっきり。なのでこれはウル様と二人っきりの誕生会だ。
アゴラには食べきれないほどの振舞い飯が用意されている。
これらはこの日のために手配した各地から集まった飲食店によるもの。
彼らは出店という形で美味しそうなおつまみを店の軒先に広げている。お代はぜーんぶ宮廷持ち。
神殿部の厨房は二日連続の晩餐準備で手いっぱいだし、外注によって手間を省き、かつ今後の出店にもつなげる、一粒で二度オイシイ試みである。
僕が居る切り株のテーブルにもお料理が所狭しと並べられている。
「エミルのパンは?」
「今日は無理。ずっと式のお手伝いしてたから」
「そっか。そうだね」
「すごくきれいだったよ、ウルリッヒ様」
「ありがとう。あの刺繍すごく嬉しかった。エミルの時は僕が衣装に刺繍するね」
「うん…うん…」
ほんのり赤く染まる頬。
乙女なウル様のお式にはお花をいっぱい飾ってあげよう。花びらの向こうで微笑むウル様はきっと世界一幸せな花嫁になる。
待ちどおしいな。僕はそんなウル様をいつか見たいと願って…あの日王城神殿の小さな滝に祈りを捧げたんだから…
「さっさと食べて劇場行こう!」
「うん!すごく楽しみ!」
この式典に合わせ劇場の修復は急ピッチで進められた。
今までも独演のような催しは行われていたが、ちゃんとした劇はこれが初披露になる。それもこれも人が増えたから。人が多ければやれることが多くなる。
人のいない暮らしは平和だけど退屈、増えすぎると揉め事が増える。その加減は実に難しい。これからオスビーが振るう采配に期待大だ!
「はい、揚げたお芋ね。これ持って」
「食べながら見るの?」
「おじさんたちは飲みながら見てるよ」
「あっ!あの小柄な人がウルリッヒ様の役かな?」
「じゃあ向こうのデカい人がフォルスト候か」
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そしてクライマックス。
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はためく緋色の布地が炎の代わりだろう。その炎を掻き分けて現れる僕とフォルスト候を剣で倒し(そんなことしていない)両手を広げ僕を迎え入れるオスビー。
神子と王子の抱擁に観客席からは拍手がわきあがる。
「わぁぁ…」ウットリ…
目をキラキラさせながら二人の抱擁を見つめるウル様。本当にこの人ってば…
「すごくすっごく楽しかった。明日も来ようかな」
エドと一緒に。その言葉はそう続くんだろう。お邪魔虫が割り込まなきゃいいけど。
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