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新米騎士来たる
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翌日朝食の席には昨日の騒動など無かったかのようにエドが同席していた。
そしてなんだろう…。僕もオスビーも何が…という訳ではないのだが揃いも揃って何かが引っかかって…妙な焦りを感じていた。
「エドヴィン、書き写しはどれくらい進んだ」
「昨日の分で最上段を半分写し終えたところです」
「オスビー…」
「うむ。私の命を持ち全修道士にバルデルス像の古代文字書き写しを優先させよう」
こうして何度も見直し確認しながら一週間ほどで写しを終え、今は地上でそれらを古い順に並べ替え(上の段からってことね)エドを含めた全員で解読を進めているところだ。
「オスヴァルト様。都度報告申し上げた方がよいでしょうか?」
「いや。ある程度進んだところでまとめて聞かせてもらおう」
「畏まりました」
当分エドは解読に専念するため、僕はウル様に頼まれ空き時間には出来る限り調薬を手伝っている。
ここでいう調薬とは予防薬だけじゃなく、神殿やアゴラの救護室に保管しておく常備薬も含んでいるのだが、やりがいのあるこの仕事をウル様はわりと気に入っているみたいだ。(パン屋はウル様も母さんも趣味みたいなものなんだよね)
けど二人だとうっかりしゃべり倒して時間が過ぎてしまうのだけが玉にきずってね。
そうこうしている間にも神子、王妃の仕事はあるわけで…
「ウーリ。明日はホーフェン領から新米騎士たちがやってくる。同席してくれるな」
「ユストゥスも居るんでしょ?」
「もちろんだ」
このひよこ騎馬隊は何しに来るかというと、最低限の準備が整ったということで王オスヴァルトへ騎士の誓いをたてにやってくるのである。
彼らはホーフェンの地で訓練を受けているが決してホーフェンの騎士ではない。新たなる王の剣であり国の盾だ。当然その誓いはオスヴァルトに捧げられる。
「ユストゥスもう平気かな…」
「ふふ、エミルのことか?何度か手紙を寄こしたが…彼が心配していたのはエドと仲良くやっているかということだったよ」
「へー…、健気だねぇ…」ホロリ
「ユストゥスは嫡子としての心構えを幼少期より身につけている。覚悟が違う」
おぉっと!聞き捨てならないな。
「…エドヴィンも後継教育は受けてたけど…?」
それもホーフェン家は男爵位でリンデンはあれでも伯爵位。嫡男教育ならリンデンの方が熱心でもおかしくないはずだけど?
「教育を担うのは当主夫人。ホーフェンの夫人は私の母だ。わかるだろう?」
スン「納得」
現リンデン夫人であるドロテア夫人は温和だがやや過保護よりの事なかれ主義。
対してゾフィー夫人は知的で気丈な厳しく誇り高き女性。勝敗は決まった。
けど、あのドロテア夫人がああいった性格だったからこそ、エドはのびのびと学術にのめり込めたのだから怪我の功名、ってことで。
そして翌日。
「兄上!お久し振りでございます」
「うむ。およそ一年ぶりか…」
「ようやく成長した私をお見せ出来ると、この日を楽しみにして参りました」
おっ?自信家だねぇ…
「ユストゥス」
「神子ウルリッヒ様。ご健勝でしょうか」
「おかげさまで」
ここで補足だが、神子と王妃殿下、二つの敬称がある場合(滅多にない)、普通なら王妃殿下が上にくるものだが、このアードラスヘルムにおいては当然〝癒しの神子”の方が上である。
だって神の代理だし!
ということで、僕が「王妃様」と呼ばれることは非常に少ない。ハッキリいうとほぼ皆無だ。
みんな最上級の敬意を込め「神子様」と呼ぶ。これどうでもいい情報ね。
「ウルリッヒ様、あの…」
「エミルでしょ?あの…聞いてると思うけどエミルはその…」
「エドウィンと婚約したのですよね。存じております」
「そっか…待ってて。今呼んであげる」
「では出来ましたらエドも一緒に」
おや?潔いなぁ…
「…わかった」
エドとエミル、二人を前にしたユストゥスはポケットから小さな包みを取り出した。
収められていたのは二つのテントウ虫。それは小さな銀細工。
テントウ虫はこのアードラスヘルムにおいて幸運を運ぶ虫と言われている。これはユストゥスから二人に贈る婚約の祝いだ。
「…銀のピンブローチ…ユストゥスありがとう」
「エミル…君の幸せを私はいつでも願っている。そしてエドは信頼に足る男だ」
「ユストゥス…」
「ユストゥス、あなたを失望させることはありません。安心してください」
「分かっているさエドヴィン」
がっつりハグ。男同士の熱い友情…泣けるねぇ…
その後新米騎士たちは神殿へと向かい、祭壇に置かれた剣と共に真っ白な衣装に身を包み一晩ここで祈りを捧げることになる。儀式は既に始まっているのだ。
祭壇に置かれた剣だが…これは彼らの私物ではない。
宰相ラインハルトはこの日のために腕の良い鍛冶師を一人、弟子ごとこのサンクトリウムへと招聘していた。
そしてこの日のために何本もの質の良い剣を作らせていた。
オスビーの実直さを表したかのような飾り気のない、けれどずっしりとした頑強な剣。アードラスヘルム国の騎士叙勲式では王より剣が手渡される。
翌日、早朝からそれは始まる。
彼らは王を前に改めて祈りを捧げる。神の御前で王と教会への忠誠、そして騎士道の順守を誓うのだ。
それを受け神官長は並んだ剣に祝福を授ける。そして…
これはこのサンクトリウムの特別な措置、神官長の祈りに続いて〝癒しの神子”からも祈りが授けられる。
剣の柄にちいさく埋め込まれたアメシスト。この祈りが役に立つかどうかは分からないけど、何があってもこの石が彼らを護るように、そんな願いを込めて。
「この剣に恥じぬ騎士となれ」
「必ずや」
「真理を守り神に仕えるすべての民の守護者たれ」
「決して怯まず、決して諦めず、いかなる敵であっても勇敢に戦うと誓います」
オスヴァルトの宣誓に新米騎士たちは跪き、その肩が剣で叩かれると儀式は終わり。
彼らはこれから都市民を招いた劇場で、あの御前試合のような騎馬試合を行う事になる。
市民にとっては余興のようなものだが本人たちは必死だ。王の前で見苦しい姿は見せられない。
特に王を兄に持つユストゥスの重圧は半端ないだろう。
「ウルリッヒ様。これをユストゥスに渡して」
手渡されたのはウル様の…エミルの作った剣飾り。柄頭につけるタッセルだ。
儀式中の彼らにエミルは近づけない。声をかけられるのは限られた人だけ。だから僕に頼んでいるんだろう。
「昨日徹夜で作ったの。がんばって、って」
「うん伝えとく。勇気百倍だと思うよ」
騎馬試合の結果?
聞くまでもないよね。
そしてなんだろう…。僕もオスビーも何が…という訳ではないのだが揃いも揃って何かが引っかかって…妙な焦りを感じていた。
「エドヴィン、書き写しはどれくらい進んだ」
「昨日の分で最上段を半分写し終えたところです」
「オスビー…」
「うむ。私の命を持ち全修道士にバルデルス像の古代文字書き写しを優先させよう」
こうして何度も見直し確認しながら一週間ほどで写しを終え、今は地上でそれらを古い順に並べ替え(上の段からってことね)エドを含めた全員で解読を進めているところだ。
「オスヴァルト様。都度報告申し上げた方がよいでしょうか?」
「いや。ある程度進んだところでまとめて聞かせてもらおう」
「畏まりました」
当分エドは解読に専念するため、僕はウル様に頼まれ空き時間には出来る限り調薬を手伝っている。
ここでいう調薬とは予防薬だけじゃなく、神殿やアゴラの救護室に保管しておく常備薬も含んでいるのだが、やりがいのあるこの仕事をウル様はわりと気に入っているみたいだ。(パン屋はウル様も母さんも趣味みたいなものなんだよね)
けど二人だとうっかりしゃべり倒して時間が過ぎてしまうのだけが玉にきずってね。
そうこうしている間にも神子、王妃の仕事はあるわけで…
「ウーリ。明日はホーフェン領から新米騎士たちがやってくる。同席してくれるな」
「ユストゥスも居るんでしょ?」
「もちろんだ」
このひよこ騎馬隊は何しに来るかというと、最低限の準備が整ったということで王オスヴァルトへ騎士の誓いをたてにやってくるのである。
彼らはホーフェンの地で訓練を受けているが決してホーフェンの騎士ではない。新たなる王の剣であり国の盾だ。当然その誓いはオスヴァルトに捧げられる。
「ユストゥスもう平気かな…」
「ふふ、エミルのことか?何度か手紙を寄こしたが…彼が心配していたのはエドと仲良くやっているかということだったよ」
「へー…、健気だねぇ…」ホロリ
「ユストゥスは嫡子としての心構えを幼少期より身につけている。覚悟が違う」
おぉっと!聞き捨てならないな。
「…エドヴィンも後継教育は受けてたけど…?」
それもホーフェン家は男爵位でリンデンはあれでも伯爵位。嫡男教育ならリンデンの方が熱心でもおかしくないはずだけど?
「教育を担うのは当主夫人。ホーフェンの夫人は私の母だ。わかるだろう?」
スン「納得」
現リンデン夫人であるドロテア夫人は温和だがやや過保護よりの事なかれ主義。
対してゾフィー夫人は知的で気丈な厳しく誇り高き女性。勝敗は決まった。
けど、あのドロテア夫人がああいった性格だったからこそ、エドはのびのびと学術にのめり込めたのだから怪我の功名、ってことで。
そして翌日。
「兄上!お久し振りでございます」
「うむ。およそ一年ぶりか…」
「ようやく成長した私をお見せ出来ると、この日を楽しみにして参りました」
おっ?自信家だねぇ…
「ユストゥス」
「神子ウルリッヒ様。ご健勝でしょうか」
「おかげさまで」
ここで補足だが、神子と王妃殿下、二つの敬称がある場合(滅多にない)、普通なら王妃殿下が上にくるものだが、このアードラスヘルムにおいては当然〝癒しの神子”の方が上である。
だって神の代理だし!
ということで、僕が「王妃様」と呼ばれることは非常に少ない。ハッキリいうとほぼ皆無だ。
みんな最上級の敬意を込め「神子様」と呼ぶ。これどうでもいい情報ね。
「ウルリッヒ様、あの…」
「エミルでしょ?あの…聞いてると思うけどエミルはその…」
「エドウィンと婚約したのですよね。存じております」
「そっか…待ってて。今呼んであげる」
「では出来ましたらエドも一緒に」
おや?潔いなぁ…
「…わかった」
エドとエミル、二人を前にしたユストゥスはポケットから小さな包みを取り出した。
収められていたのは二つのテントウ虫。それは小さな銀細工。
テントウ虫はこのアードラスヘルムにおいて幸運を運ぶ虫と言われている。これはユストゥスから二人に贈る婚約の祝いだ。
「…銀のピンブローチ…ユストゥスありがとう」
「エミル…君の幸せを私はいつでも願っている。そしてエドは信頼に足る男だ」
「ユストゥス…」
「ユストゥス、あなたを失望させることはありません。安心してください」
「分かっているさエドヴィン」
がっつりハグ。男同士の熱い友情…泣けるねぇ…
その後新米騎士たちは神殿へと向かい、祭壇に置かれた剣と共に真っ白な衣装に身を包み一晩ここで祈りを捧げることになる。儀式は既に始まっているのだ。
祭壇に置かれた剣だが…これは彼らの私物ではない。
宰相ラインハルトはこの日のために腕の良い鍛冶師を一人、弟子ごとこのサンクトリウムへと招聘していた。
そしてこの日のために何本もの質の良い剣を作らせていた。
オスビーの実直さを表したかのような飾り気のない、けれどずっしりとした頑強な剣。アードラスヘルム国の騎士叙勲式では王より剣が手渡される。
翌日、早朝からそれは始まる。
彼らは王を前に改めて祈りを捧げる。神の御前で王と教会への忠誠、そして騎士道の順守を誓うのだ。
それを受け神官長は並んだ剣に祝福を授ける。そして…
これはこのサンクトリウムの特別な措置、神官長の祈りに続いて〝癒しの神子”からも祈りが授けられる。
剣の柄にちいさく埋め込まれたアメシスト。この祈りが役に立つかどうかは分からないけど、何があってもこの石が彼らを護るように、そんな願いを込めて。
「この剣に恥じぬ騎士となれ」
「必ずや」
「真理を守り神に仕えるすべての民の守護者たれ」
「決して怯まず、決して諦めず、いかなる敵であっても勇敢に戦うと誓います」
オスヴァルトの宣誓に新米騎士たちは跪き、その肩が剣で叩かれると儀式は終わり。
彼らはこれから都市民を招いた劇場で、あの御前試合のような騎馬試合を行う事になる。
市民にとっては余興のようなものだが本人たちは必死だ。王の前で見苦しい姿は見せられない。
特に王を兄に持つユストゥスの重圧は半端ないだろう。
「ウルリッヒ様。これをユストゥスに渡して」
手渡されたのはウル様の…エミルの作った剣飾り。柄頭につけるタッセルだ。
儀式中の彼らにエミルは近づけない。声をかけられるのは限られた人だけ。だから僕に頼んでいるんだろう。
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