115 / 138
南西に向けて
しおりを挟む
さて、サンクトリウムの戦いが一応の終わりを迎えたからといって、南西を含めた全ての争いが終わったわけではない。
と言っても北の辺境に関しては今も昔も丸投げだし、万が一の救援は東の王城から派兵される。
つまり問題は南西!
危機を脱し目を覚ましたオスビーは僕の服を見て眉をひそめた。
「…何度も斬られたのだな…」
傷は塞がっても服は塞がらない。ましてオスビーは〝どれほど再生されようと痛覚があること”を知っている。
「言わないで。僕は神子だけど王の伴侶でもあるからね。これはオスビーの戦いじゃない。僕たち二人の戦いだよ」
「…君の想いに水を差すのは無粋か…」
気を取り直したオスビーはすぐさま新たな指示を出す。
「ウーリすまない。君を酷使するが許してくれるか」
「望むところだよ!」
「急ぎ南西に向かって欲しい」
「初めからそのつもり!」
「私も行きたいのはやまやまなのだが…」
「予断を許さぬ中で王が城を動いてはなりません!」
「これ以上の無茶はお止めください!そのために我々臣下がいるのですから!」
一同猛反対。
「オスビー大丈夫だって。僕は爆弾以上にお役立ちだってもう分かったよね」ドヤ
「…ああ。まさか癒しを武器にするとは…恐れ入ったよ」
ふっ、僕は今も昔も持てる全てを状況の打開に全振りする男だ。
「神は君のその機転こそを期待して神子に選んだのだろうな」
「そうかな?そうかも」
僕もそう思う。
僕はその日のうちに残った重傷者を全て癒やした。
そして回復させたカーステン、ユリアンたちの兵団を率い明朝、南西領へと向かうことになる。
その日の夜半に到着した使者。伝えられたのは膠着した南西の戦況。
アードラスヘルム、皇国を含むこの近隣諸国では十分な視界を確保出来ない夜間の戦闘を条約として禁止している。(味方までうっかりやっちゃうからね)
急げば戦況は大きく変わってはいないはずだ。
捕虜が言うには皇国兵の主力は南西行きの船。
ここサンクトリウムに送られた自分達とは比べ物にもならない強者揃いだとか。
「一両日中に俺たちを解放に来る。お前たちの天下もそれまでだ!」
ムカッ「舐められたもんだな…」
ポン ドサリ
「ああ!ガスパルしっかりしろ!」
神子の前に武力など無意味!まだ学習しないのか、この筋肉ゴリラ!
「ウーリ、再生力の無駄使いはよせ」
「ごめん。ムカついてつい…」
「すべては読み通りだ。奴らの思い通りにはならぬよ」
そのために南西にはこの入り江の数倍もの、それも皇国との実戦経験をもつクリストフにより訓練された正規軍を送り込んだのだから。
爆弾も十分送ってあるし…善戦していると信じたい…!
「さて、捕えた皇国兵をどうするか。ここは年中温暖な西領内だが…」
「このまま鎖で縛って野ざらしでもいいんじゃない?頑丈そうだし」
鳥の糞でも降ればいいのに!
人格者オスビーは仮の収容場所として材木小屋に捕虜を押し込めている。(もったいない…)
けれど木製の小屋ではこのゴリラたち相手では耐久力に不安が残る。
そこで西領中央部のグラーツ子爵領へ送ることにしたようだ。
乾燥地帯でもあるグラーツ領は硝石の他にも銅などの鉱物を採掘している。
そのため砂漠地帯に幾つもの石造りで頑丈な採掘小屋を保有している。捕虜の収容にはもってこいだ。
そして北の状況を鑑みながらその後の扱いを決めるみたい。
「ではカーステン。私は今から二時間ほど仮眠をとる。誰も部屋に近づけるな」
「承知しました」
仮眠後オスビーは夜を徹して待機するのだろう。南西からどんな要請があってもすぐに動けるように。
…と思ったら。
ベッドに入ったとたんツ…と引かれる腕。
「ウーリ。こんな時に不謹慎ではあるのだが…」
「え?まさか…ウソでしょ…」
「すまない。だが万全を期したい。万が一にも途中で枯渇など起こしては事だ」
「や、大丈夫だと…」
「言い切れるか。どれ程の怪我人が居るかもわからぬのに」
ま、まあ武器代わりにも使ってるし…そう考えれば確かに必要っちゃ必要だけど…
…生命力の補充…
だからってねぇ?この状況下で?
不謹慎極まりないよ!!!
「あー!!!」
…二時間の仮眠を一時間に減らしオスビーは執務棟へ戻って行った。
「しかし元気だな…ああ、するたび回復するんだった…」
体力の無限ループ。良いんだか悪いんだか。
そして翌日まだ陽が明けきらぬ中、オスビーの命を受けたブルクハルトの馬に乗って南西を目指す。
「ウルリッヒ様、私たちは馬を変えながら休みなく一足先の到着を目指します。よろしいか」
「問題ないよ!」
背中にはウル様が持たせてくれたフカフカのパンがある。手綱を握らない僕にはそれを食べる余裕がある。
だから一刻も早く到着したい。だって南西にはユストゥスがいるんだから!
馬を変えての早駆けは、一日の距離を半日に縮めた。着いたのは夕刻、折しも休戦に入る時間だ。
「フランケン男爵!騎士クリストフはどこ!」
「神子様、我はここに!」
「状況は!」
「悲観するような状況ではないかと」
「じゃあこんな新兵ばかりでも五分五分で戦えてるんだね?」
「これも先んじて備えあればこそ」
「こちらの犠牲は…」
「さてどこまでを犠牲と言いましょうか。重傷者は多い。ですがほとんどの者が神子様を信じかろうじて命だけは繋いでおります」
くっ…!安心していいのか悔しんでいいのか…
「遅くなってごめん…」
「神子様、希望あればこそ皆無謀な特攻を押し留まったのです。皇国相手に死者が出ぬなど通常考えられぬ事。十分意味はありましたぞ」
「ありがと…猶予の無い重傷者を教えて…」
「皆待ちかねております。こちらへ」
「そうだ、ユストゥスは」
「無傷…とは言えぬのですが無事でございます」
フー…「その言葉があれば今は十分」
負傷者を集めた救護用の小屋のなかにユストゥスはいた。右肩から左わき腹にかけての大きな傷は見るも痛々しい…
「このような姿をお見せすることになるとは…情けない…」
「騎士の負傷は民を護った名誉の負傷だよ!誇っていい!」
ユストゥスは「重傷者を先に」と僕の癒しを受けなかった。こういうところがこの兄弟の美点であり損なところだ。
「じゃあこれをあげる」
「エミルのパンですね…」
「ユストゥスが平民だったらきっとエドに負けてなかった。カッコいいよ!」
「ふふ。そう願いたいものです」
さあ!あとは最強不死身昏倒武器、神子ウルリッヒ様に任せておけ!
と言っても北の辺境に関しては今も昔も丸投げだし、万が一の救援は東の王城から派兵される。
つまり問題は南西!
危機を脱し目を覚ましたオスビーは僕の服を見て眉をひそめた。
「…何度も斬られたのだな…」
傷は塞がっても服は塞がらない。ましてオスビーは〝どれほど再生されようと痛覚があること”を知っている。
「言わないで。僕は神子だけど王の伴侶でもあるからね。これはオスビーの戦いじゃない。僕たち二人の戦いだよ」
「…君の想いに水を差すのは無粋か…」
気を取り直したオスビーはすぐさま新たな指示を出す。
「ウーリすまない。君を酷使するが許してくれるか」
「望むところだよ!」
「急ぎ南西に向かって欲しい」
「初めからそのつもり!」
「私も行きたいのはやまやまなのだが…」
「予断を許さぬ中で王が城を動いてはなりません!」
「これ以上の無茶はお止めください!そのために我々臣下がいるのですから!」
一同猛反対。
「オスビー大丈夫だって。僕は爆弾以上にお役立ちだってもう分かったよね」ドヤ
「…ああ。まさか癒しを武器にするとは…恐れ入ったよ」
ふっ、僕は今も昔も持てる全てを状況の打開に全振りする男だ。
「神は君のその機転こそを期待して神子に選んだのだろうな」
「そうかな?そうかも」
僕もそう思う。
僕はその日のうちに残った重傷者を全て癒やした。
そして回復させたカーステン、ユリアンたちの兵団を率い明朝、南西領へと向かうことになる。
その日の夜半に到着した使者。伝えられたのは膠着した南西の戦況。
アードラスヘルム、皇国を含むこの近隣諸国では十分な視界を確保出来ない夜間の戦闘を条約として禁止している。(味方までうっかりやっちゃうからね)
急げば戦況は大きく変わってはいないはずだ。
捕虜が言うには皇国兵の主力は南西行きの船。
ここサンクトリウムに送られた自分達とは比べ物にもならない強者揃いだとか。
「一両日中に俺たちを解放に来る。お前たちの天下もそれまでだ!」
ムカッ「舐められたもんだな…」
ポン ドサリ
「ああ!ガスパルしっかりしろ!」
神子の前に武力など無意味!まだ学習しないのか、この筋肉ゴリラ!
「ウーリ、再生力の無駄使いはよせ」
「ごめん。ムカついてつい…」
「すべては読み通りだ。奴らの思い通りにはならぬよ」
そのために南西にはこの入り江の数倍もの、それも皇国との実戦経験をもつクリストフにより訓練された正規軍を送り込んだのだから。
爆弾も十分送ってあるし…善戦していると信じたい…!
「さて、捕えた皇国兵をどうするか。ここは年中温暖な西領内だが…」
「このまま鎖で縛って野ざらしでもいいんじゃない?頑丈そうだし」
鳥の糞でも降ればいいのに!
人格者オスビーは仮の収容場所として材木小屋に捕虜を押し込めている。(もったいない…)
けれど木製の小屋ではこのゴリラたち相手では耐久力に不安が残る。
そこで西領中央部のグラーツ子爵領へ送ることにしたようだ。
乾燥地帯でもあるグラーツ領は硝石の他にも銅などの鉱物を採掘している。
そのため砂漠地帯に幾つもの石造りで頑丈な採掘小屋を保有している。捕虜の収容にはもってこいだ。
そして北の状況を鑑みながらその後の扱いを決めるみたい。
「ではカーステン。私は今から二時間ほど仮眠をとる。誰も部屋に近づけるな」
「承知しました」
仮眠後オスビーは夜を徹して待機するのだろう。南西からどんな要請があってもすぐに動けるように。
…と思ったら。
ベッドに入ったとたんツ…と引かれる腕。
「ウーリ。こんな時に不謹慎ではあるのだが…」
「え?まさか…ウソでしょ…」
「すまない。だが万全を期したい。万が一にも途中で枯渇など起こしては事だ」
「や、大丈夫だと…」
「言い切れるか。どれ程の怪我人が居るかもわからぬのに」
ま、まあ武器代わりにも使ってるし…そう考えれば確かに必要っちゃ必要だけど…
…生命力の補充…
だからってねぇ?この状況下で?
不謹慎極まりないよ!!!
「あー!!!」
…二時間の仮眠を一時間に減らしオスビーは執務棟へ戻って行った。
「しかし元気だな…ああ、するたび回復するんだった…」
体力の無限ループ。良いんだか悪いんだか。
そして翌日まだ陽が明けきらぬ中、オスビーの命を受けたブルクハルトの馬に乗って南西を目指す。
「ウルリッヒ様、私たちは馬を変えながら休みなく一足先の到着を目指します。よろしいか」
「問題ないよ!」
背中にはウル様が持たせてくれたフカフカのパンがある。手綱を握らない僕にはそれを食べる余裕がある。
だから一刻も早く到着したい。だって南西にはユストゥスがいるんだから!
馬を変えての早駆けは、一日の距離を半日に縮めた。着いたのは夕刻、折しも休戦に入る時間だ。
「フランケン男爵!騎士クリストフはどこ!」
「神子様、我はここに!」
「状況は!」
「悲観するような状況ではないかと」
「じゃあこんな新兵ばかりでも五分五分で戦えてるんだね?」
「これも先んじて備えあればこそ」
「こちらの犠牲は…」
「さてどこまでを犠牲と言いましょうか。重傷者は多い。ですがほとんどの者が神子様を信じかろうじて命だけは繋いでおります」
くっ…!安心していいのか悔しんでいいのか…
「遅くなってごめん…」
「神子様、希望あればこそ皆無謀な特攻を押し留まったのです。皇国相手に死者が出ぬなど通常考えられぬ事。十分意味はありましたぞ」
「ありがと…猶予の無い重傷者を教えて…」
「皆待ちかねております。こちらへ」
「そうだ、ユストゥスは」
「無傷…とは言えぬのですが無事でございます」
フー…「その言葉があれば今は十分」
負傷者を集めた救護用の小屋のなかにユストゥスはいた。右肩から左わき腹にかけての大きな傷は見るも痛々しい…
「このような姿をお見せすることになるとは…情けない…」
「騎士の負傷は民を護った名誉の負傷だよ!誇っていい!」
ユストゥスは「重傷者を先に」と僕の癒しを受けなかった。こういうところがこの兄弟の美点であり損なところだ。
「じゃあこれをあげる」
「エミルのパンですね…」
「ユストゥスが平民だったらきっとエドに負けてなかった。カッコいいよ!」
「ふふ。そう願いたいものです」
さあ!あとは最強不死身昏倒武器、神子ウルリッヒ様に任せておけ!
431
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
魔力ゼロのポーション屋手伝い
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
15歳で測定する魔力の量によって、人生の大部分が左右されてしまう世界。
そんな世界で、運命の日を迎えたひとりの平凡な少年──リクは、抱いた淡い期待を大きく裏切られる。魔力が前代未聞のゼロと言い渡されたのだ。
深い絶望とともに頭を抱えていたとき、森でポーション屋を営んでいるというくたびれた男が声をかける。路頭に迷っていたリクは、店で手伝いをしてはどうかという彼の誘いを受けることにする。
捨てかけた夢を拾ってもらった少年と、拾った男。ふたりが絆を深めていく、ポーション屋でのお話です。
一人称おじさんくたびれ男性×魔力ゼロ以外平凡青年のBLです。
カクヨムにも載せています。(完結済み)
カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる