やり直しの神子は長生きしたい

kozzy

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僕のビックリ発言に場の空気は混乱気味だ。

「ど、どういう事ですの?何故今更…」
「わたくしたちを陥れる算段…ではございませんわね?」

ハー「癒しの神子はそんなことしません。神の使いですよ?」

こっち見んなオスビー!

僕は言った。
王妃エメリンがアルトゥール以外の王子という存在を嫌ったおかげで、この国では王族の数が減少傾向にある。

「幸いリュティガー様がまだ三十代のおかげで頑張れそ、アイタ!…ではありますが、オスビーが僕を娶った以上、枝葉を拡げるためには一人でも多くの王の直系血族が必要です」

痛いなぁオスビー…。あ、この場合の王とは前王リカードのことね。

そしてここ大事だが、彼女らの男児は汚染された王城を離れ一貴族子として過ごしている。
王族教育の必要はあるだろうが、その性根はアルトゥールのように腐っても曲がっても居ないはずだ。

「…わたくしたちの息子を王族として受け入れてくださると、ウルリッヒ様はそう仰るのかしら?」
「ええ。この国が神の血を引く王家のみに受け継がれる以上、王の血は一滴たりとも無駄に出来ませんので」

王家が神の血を引くことはすでに、西神殿に残された古代の記述によりはっきりしている。
そしてここ数代の王家に悪しき気配が漂っていたのは巨神の導きというのも推測ではあるがわかりつつある。

正しく導かれた王子が正しく育つことはオスヴァルトを見れば一目瞭然!問題になるのは遺伝ではなく環境だ!

「その子たちは正式に第三王子、第四王子を名乗るべきです」
「王位継承権は…」
「もちろん与えますとも」

「い、いいのですかそれで!ウルリッヒ様は王の座をいたずらに脅かすおつもりか!」

飛び上がったのは元王弟リュティガー様。ほうほう?リュティガー様にとって傍系王位継承者とは王の地位を脅かす存在…っと。

「リュティガー様は醜い王権争いを見過ぎてしまったんですね…気の毒に…」
「リュティガー殿。私は脅かされるなどとは感じぬよ。むしろ健全な統治を行うにも以外の王位継承者は必要だと考えている」
「だからと言ってオスヴァルト様…」
「あぐらをかいていられる立場など一つとして無い。それを思い知るのは大切なことだ」

ここにきてようやくオスビーには僕の考えが分かったようだ。

そう。僕は今からオスビーの後継者、つまり王位継承者を新たにつくるより、すでに存在するであろう、陰に隠れた王位継承者をひっぱりだせばいいと考えたのだ。そうすればその誰かに連なる王子もまた王位継承者になる。

オスビーにとってはまだ見ぬ異母弟。彼らは側妃方のお里帰り時期から計算すると共にまだ十歳前後のはずだ。
穢れ無き無辜の魂…今からならどんな色にも染められる!いや、染めてみせる!

「フリーデリケ様、アデライデ様、私の弟たちは今どこにいるのかぜひ教えていただきたい」

彼女たちの隠した息子はそれぞれ、王妃エメリンの魔手が届かぬよう王都からは遠く離れた遠縁の屋敷に養子として匿われているらしい。

「正式な養子縁組を?」
「ええもちろん。王の子を手放すのがどれほど不本意で不条理だと感じた事か」
「それでもそこまでしなければ安心などとても出来なかったのです」

ゾフィー夫人と同じだ。命を奪われるくらいなら地位など無くとも生きていてほしい、その一心で彼女らは息子を養子にだしたのだろう。

「わたくしの息子は中央の北よりにある伯爵領におりますの。歳は十一、のびやかに暮らしておりますわ」
「わたくしの息子は東部西寄りの親族、母方の侯爵家に四男として迎え入れられました。歳は八つになるところでございます」

「よかろう。それぞれ通達を送るように」
「なんと送ればよろしいのでしょう」

「養子縁組を解消し二人を西のサンクトリウムへ届けるように、と」

オスビーはそこで王の名のもと王子印を以て二人に王子としての地位を与えるのだろう。

ここまできたら勘のいいオスビーにはバレてる気がするのだが、僕は〝辺境伯令嬢の夫”という非常に光栄な立場を二人のうちのどちらかにお任せするつもりだ。

辺境伯が王家の嫁にと願っているのは未婚の三女。歳は十六。北でお会いしたが大変可愛らしいお嬢さんだ。
年上女房など、契約婚の多いこのアードラスヘルム社交界では普通の事。何も問題はない。

辺境伯にとっては王家との盤石な縁となり、また王族として不慣れな王子にとってももってこいの後ろ盾となる。


元側妃方にとってこれは渡りに船の申し出。断る理由はない。
場の雰囲気はいきなり和気あいあいとなごみ始めた。

「ところでどうやって助産師の目を盗んだのだい?容易では無かったろうに」

当然の疑問。それは僕も知りたかったやつだ。このゴシップ王の僕に知らないことがあるなんて…それなんて箝口令!


通常王宮での妊娠や出産は王宮付きの特別な助産師により全て管理される。
助産師は男児を産むための手ほどき、妊娠前から食事や処方薬など様々な助言を与える専門家で、なんならエッチなことの内容まで決めるそうだ…(恐ろしい…)

助産師を付ければ男児の可能性は格段に上がる。ばかばかしい…と思わなくもないが、少なくとも宮廷ではそう信じられている。

そして妊娠したらしたで、母体は『お産室』と呼ばれる部屋に完全隔離される。
そこは母体とお腹の赤ちゃんのために用意される特別な部屋で、リンデン家でいう養育棟みたいなもの。
携わるのはお産の管理人でもある助産師と母体が選んだ信用のおける付き添い侍女のみ。王であってもお産が済むまで立ち入りは禁止される。

徹底した衛生管理のため全ては付き添い侍女を介し、掃除夫ですらそこには入れない。
養育棟と同じ、つまり『お産室』は宮廷から完全に分離しているのだ。
要するに問題は助産師のみ!

「わたくしの初めての妊娠は助産師の手引きで流されました。あの女は王妃に懐柔されていたのです」
「え…?そ、それはまた…」

ご、極悪非道…

「フリーデリケ様、なんと労しい…。アデライデ様、あなたの初めの子はよく逃れられたな…」
「わたくしの初めての子、第一王女は入宮前に産まれた子でしたの。あの方はご存じなかったのですわ」

へー、つまり姫が産まれたから娶った…と。

「わたくしたちはあの酷い出来事以後、互いに助産師の助けを辞退したのです。エメリン王妃はその事に異を唱えませんでした」
「当然ですわね。助産師を入れぬということは男児を産まぬと宣言しているも同然ですもの」

「周りの重鎮貴族から文句は出ませんでしたか?」
「すでにアルトゥール王子がおりましたし…当時はエメリン妃が二子三子を産むと考えられていたのでしょう」

結局アルトゥール以外に子供は出来なかったんだから…これも神の采配か。


彼女たちは妊娠に気が付くとお腹が目立ちだすギリギリまで誰にも言わず、『お里帰り』をするとこっそり生家での出産を強行した。
そして生まれた子が男児であれば秘密裏に養子へ出し、女児であればあたかも「実家で妊娠に気が付きましたわ」みたいな顔で詰め物をして宮殿に戻り、数か月後、心配で駆けつけた風の母親から赤子を受け取り、信用のおけるごく少数の侍女と共に王女の誕生を装ったのだとか。

「エメリン妃は気付いていたかもしれません。ですが連れ帰るのが女児であればどうでも良かったのでしょう」

フー…「今僕は自分で自分を褒めてあげたいです」

この国にとってもっとも有益な清掃活動をしたな…って。





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