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66 彼の有意義な毎日
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あの事件から早1か月。もうすぐ僕は15になる。
カルロッタさんの部屋の下、馬止の側のあの大きな木。あの時生やしたどんぐりの木は、待機中の馬たちの憩いの場所となっている。そしてその木の幹には…
2本の筋が入っている…。
ここに来た時、そして去年の誕生日…。もちろん今年も付ける予定だ。
歓喜となるのか、落胆となるのか…。それは非常に繊細な問題だ。だからこそ…、これは誰にも知られてはならない…
「アッシュ君、こんなところで何してるんだい?ユーリウス様がお呼びだ。いいかな?」
ドキー!
「い、いいともー!」
アレクシさんか…、あーびっくりした。
地下に行きたいとお願いしたからその件だろうな。GOサインは出ただろうか…
「アッシュ君は一体何をして…ん?これは…」
「ユーリ、勘定書の整理は終わった?」
「ああ、だからほら、アッシュ、ここへ来て。」
うっ!…隣か…。いや、いいんだよ?いいんだけど…
「さあ、お昼の分の訓練をしよう。」
やっぱりー!ヴェストさんは…、チラッ…無関心か…。そうだよね…
「じゃ、まぁ…」
ん~…んんん…
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。」
「いや~、あ、でも、少しは慣れてきたよ?これだけしてたらさすがに、ねぇ?」
むしろユーリは平気なんだろうか…?毎日毎日僕とキスなんて…。い、いいや!ユーリにとってこれはただの訓練。大切な命綱なんだし、そんな邪な事考えてるわけ…無いよね?
薄目を開けて見たユーリのキス顔、ちょっとだけドキドキするのは絶対秘密。ああ…思春期って煩悩の塊…。
「それで今朝話してた倉庫の件だけど…。」
「あっ、うん。どうかな?あの二人も連れて…」
「何も地下道を使う必要は無いよね?」
「へっ?あっ!」
目から鱗…。まさしく…。
「あの地下通路をアッシュに使わせたくないんだ…。嫌な記憶もあるだろうし、なにより地下にはあの賊たちが居る。アッシュには一日も早く奴らの事を忘れてもらいたい。馬車で行く。それならいいよ。」
「じゃぁユーリは…」
「ここで待っている。領民には会いたくないんだ。…昔みたいに領民の声が気になる訳じゃない。だが、私が気にするんじゃないかと…君が気にするだろう?ノールとエスターと…、それからアレクシも連れていって。用が済んだらすぐ戻る事、いいね。」
「分かった…。用事済ませたらすぐに帰るから。待ってて」
「…君の誕生日の宴を考えながら待ってるよ。」チュッ
………今のは…?
そんなこんなでやって来たのはあの時の倉庫。
初代様…拝んでおこうかな。「先祖は大切になさい」と、祖母もそう言っていたことだし。
足止めしてくれてありがとうございました、っと。
「へぇ、君の居たマァの村ではそうやって拝むのかい?珍しいね。手を開いたまま合わせるなんて」
「ま、まぁね」
ガチャリ
「開いたよ、アッシュ君。さぁ、君からどうぞ。」
「はーい。…ああ、クッションが枯れてる…」
「あの天窓から落下したのか…」
「たっ、高いじゃないかっ!よくとっさにスキルを出せたね、本当に良かった…。もしそのまま床に激突してたら、どうなっていたか…」
「足の骨の一本や二本…いってたかもね。どちらにせよ、身動きが取れなきゃ捕まってひどい目に遭ってたね」
その光景を想像して涙目のノールさん。本当に清く正しく美しい心根だな…。それに引き換えエスターのこの言いぐさ。だけどあの時、寝室のベッドで目が覚めた時、心配そうに眉根を寄せてたの…ちゃんとわかってるからね。
「それで?何を見せたいって?早く帰らないとユーリ君がまた落ち着きをなくすんじゃないか?」
「あー、これこれ。」
エスターに見せたのはある箱に仕舞われた、古い羊皮紙が綴じられた書物の山。この間パラリと見たその感じでは…、本物とフェイク、どちらも混ざっている。
僕は本が好きだ。ネットも好きだ。文字が、画像が、映像が、全てが大好きだ。本当に…手に出来る限りの活字を読んだし、目に出来る限りの知識を詰め込んだ。
だけど、書物の真贋をみきわめられる、そんな才能も経験値も持ってはいない…。それが出来るのは…、子爵と一緒に古美術にまみれて育ったノールさんと、書物の番人エスターだけだ。
「これは…、宝の山か!なんてことだ…なんてことだ…こ、これをどうやって持って帰れば…」
「ウロウロしないでよ。落ち着いてってば!荷馬車でもなんでも…、ああ、じゃあエスターだけ地下道から歩いて帰ったら?好きなだけ本積み込んで荷車かなんか牽いて。」
「いいのかい⁉」
あ、あれ?…冗談のつもりだったのに…
「ねぇアッシュ君、複製したいのってこの書物じゃ無いよね?」
「違うよ。ノールさんに見せたかったのはこっち。壁画だよ」
「壁画…、これは…、王宮の…謁見の間だね。」
「行った事あるの?」
「一度ね。貴族の子女は成人の儀を王宮の夜会で行うから…。その年の成人は全員聖王に謁見するんだよ。一人ずつね。そしてそのあといろんな女性と踊って終わり。つまり男女の顔合わせだね。」
つまり…、王様公認の合コンか…。そうか…。憧れの合コン…。一度は参加して見たかった…合コ…
「それでこれがどうかした?」
はっ!し、しっかりしろ!僕っ!
「どうも何も、見てよここ。王様の横、お付きの持ってるお盆!」
「トレイのこと?何を…、あっ!」
そのお盆には…、例の壷が…乗っているのだ。いくつかの美しいグラスに隠れて、それでも間違いなく、そのガラスの向こうに透けて見えるのはあの…例の壷。
ノールさんが息をのむのが分かった。瞬きもせず、じっとその壁画を網膜に焼き付けている。
王宮…壷…謎の病死…血清…ユーリの毒!
ピースは…揃い始めた…。
カルロッタさんの部屋の下、馬止の側のあの大きな木。あの時生やしたどんぐりの木は、待機中の馬たちの憩いの場所となっている。そしてその木の幹には…
2本の筋が入っている…。
ここに来た時、そして去年の誕生日…。もちろん今年も付ける予定だ。
歓喜となるのか、落胆となるのか…。それは非常に繊細な問題だ。だからこそ…、これは誰にも知られてはならない…
「アッシュ君、こんなところで何してるんだい?ユーリウス様がお呼びだ。いいかな?」
ドキー!
「い、いいともー!」
アレクシさんか…、あーびっくりした。
地下に行きたいとお願いしたからその件だろうな。GOサインは出ただろうか…
「アッシュ君は一体何をして…ん?これは…」
「ユーリ、勘定書の整理は終わった?」
「ああ、だからほら、アッシュ、ここへ来て。」
うっ!…隣か…。いや、いいんだよ?いいんだけど…
「さあ、お昼の分の訓練をしよう。」
やっぱりー!ヴェストさんは…、チラッ…無関心か…。そうだよね…
「じゃ、まぁ…」
ん~…んんん…
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。」
「いや~、あ、でも、少しは慣れてきたよ?これだけしてたらさすがに、ねぇ?」
むしろユーリは平気なんだろうか…?毎日毎日僕とキスなんて…。い、いいや!ユーリにとってこれはただの訓練。大切な命綱なんだし、そんな邪な事考えてるわけ…無いよね?
薄目を開けて見たユーリのキス顔、ちょっとだけドキドキするのは絶対秘密。ああ…思春期って煩悩の塊…。
「それで今朝話してた倉庫の件だけど…。」
「あっ、うん。どうかな?あの二人も連れて…」
「何も地下道を使う必要は無いよね?」
「へっ?あっ!」
目から鱗…。まさしく…。
「あの地下通路をアッシュに使わせたくないんだ…。嫌な記憶もあるだろうし、なにより地下にはあの賊たちが居る。アッシュには一日も早く奴らの事を忘れてもらいたい。馬車で行く。それならいいよ。」
「じゃぁユーリは…」
「ここで待っている。領民には会いたくないんだ。…昔みたいに領民の声が気になる訳じゃない。だが、私が気にするんじゃないかと…君が気にするだろう?ノールとエスターと…、それからアレクシも連れていって。用が済んだらすぐ戻る事、いいね。」
「分かった…。用事済ませたらすぐに帰るから。待ってて」
「…君の誕生日の宴を考えながら待ってるよ。」チュッ
………今のは…?
そんなこんなでやって来たのはあの時の倉庫。
初代様…拝んでおこうかな。「先祖は大切になさい」と、祖母もそう言っていたことだし。
足止めしてくれてありがとうございました、っと。
「へぇ、君の居たマァの村ではそうやって拝むのかい?珍しいね。手を開いたまま合わせるなんて」
「ま、まぁね」
ガチャリ
「開いたよ、アッシュ君。さぁ、君からどうぞ。」
「はーい。…ああ、クッションが枯れてる…」
「あの天窓から落下したのか…」
「たっ、高いじゃないかっ!よくとっさにスキルを出せたね、本当に良かった…。もしそのまま床に激突してたら、どうなっていたか…」
「足の骨の一本や二本…いってたかもね。どちらにせよ、身動きが取れなきゃ捕まってひどい目に遭ってたね」
その光景を想像して涙目のノールさん。本当に清く正しく美しい心根だな…。それに引き換えエスターのこの言いぐさ。だけどあの時、寝室のベッドで目が覚めた時、心配そうに眉根を寄せてたの…ちゃんとわかってるからね。
「それで?何を見せたいって?早く帰らないとユーリ君がまた落ち着きをなくすんじゃないか?」
「あー、これこれ。」
エスターに見せたのはある箱に仕舞われた、古い羊皮紙が綴じられた書物の山。この間パラリと見たその感じでは…、本物とフェイク、どちらも混ざっている。
僕は本が好きだ。ネットも好きだ。文字が、画像が、映像が、全てが大好きだ。本当に…手に出来る限りの活字を読んだし、目に出来る限りの知識を詰め込んだ。
だけど、書物の真贋をみきわめられる、そんな才能も経験値も持ってはいない…。それが出来るのは…、子爵と一緒に古美術にまみれて育ったノールさんと、書物の番人エスターだけだ。
「これは…、宝の山か!なんてことだ…なんてことだ…こ、これをどうやって持って帰れば…」
「ウロウロしないでよ。落ち着いてってば!荷馬車でもなんでも…、ああ、じゃあエスターだけ地下道から歩いて帰ったら?好きなだけ本積み込んで荷車かなんか牽いて。」
「いいのかい⁉」
あ、あれ?…冗談のつもりだったのに…
「ねぇアッシュ君、複製したいのってこの書物じゃ無いよね?」
「違うよ。ノールさんに見せたかったのはこっち。壁画だよ」
「壁画…、これは…、王宮の…謁見の間だね。」
「行った事あるの?」
「一度ね。貴族の子女は成人の儀を王宮の夜会で行うから…。その年の成人は全員聖王に謁見するんだよ。一人ずつね。そしてそのあといろんな女性と踊って終わり。つまり男女の顔合わせだね。」
つまり…、王様公認の合コンか…。そうか…。憧れの合コン…。一度は参加して見たかった…合コ…
「それでこれがどうかした?」
はっ!し、しっかりしろ!僕っ!
「どうも何も、見てよここ。王様の横、お付きの持ってるお盆!」
「トレイのこと?何を…、あっ!」
そのお盆には…、例の壷が…乗っているのだ。いくつかの美しいグラスに隠れて、それでも間違いなく、そのガラスの向こうに透けて見えるのはあの…例の壷。
ノールさんが息をのむのが分かった。瞬きもせず、じっとその壁画を網膜に焼き付けている。
王宮…壷…謎の病死…血清…ユーリの毒!
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