チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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73 彼の欲しいもの

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今年のユーリの誕生日…。
何を贈ろうかと日々頭を悩ましていたら、当の本人から欲しいものがあるとお願いされた。

「本当は自分で手に入れたかったのだけど…、アレクシもオスモも、ヴェストでさえこの時期は見つからないと言うものだから…、いっそ君に頼んだ方が早いかと思ってね。」

「ってことは、花か何か?種子創造の出番だね。良いよ。何かな?」

「イランイランの花が欲しいんだ。高位貴族の間では昔から有名な花らしいんだけど、関係の修復を望む夫婦の間で時折使われると…でもあれはなかなか手に入らない花で…、南の果ての小さな島でしか咲かない花だと言うことだけど…、アッシュ知ってるかい?」


アッシュ知ってるかい…、知ってるかい…知って…、おやおや、僕の知識量を舐めてはいけないよ?ユーリ。
頭の中の蔵書検索システムを手早くサーチし、お目当ての本を見つけ出す。『あいうえお順ですぐわかるハーブ辞典』そうそう、これこれ。図鑑はこれくらい見やすくないと。ハーブは300も400もあるっていう話だからね。


「もちろん知ってるに決まってるよ。何ユーリ?ストレスでも溜まってるの?心の安定に効くハーブだよね?良いよ。たくさん生やして花束にしてあげる」

関係の修復かぁ…、夫婦げんかの後の癒し的な?何にせよ貴族さまも大変だと言うことだね。
誕生日だしリボンも忘れずかけてあげよう。

今年の誕生日プレゼントはあっさり決まった。




そして今年の演出…。
豪華さで公爵ユーリには叶わない。ならばこちらは前世の記憶で、というか、一度は参加して見たかった、渋谷の…あれ。


「ユーリ、何の衣裳にした?」
「ああ、ヴェストが用意してくれたこちらの夜会服だ」

「白のタキシード?う~んひねりが無い、まあ、主賓だものね。」
「ところでアッシュのそれは?」

「かぼちゃだけど」

「……ヴェスト、頼んだ」
「畏まりました」
「えっ?えっ、何?ちょ、ヴェストさん!やめっ」



ハロウィンと言ったらかぼちゃでしょうがっ!


結局かぼちゃの衣装は没収されて、白い衣装を手渡された。上下のスーツにリボンタイ。
どうしてヴェストさんがカーネルサン〇ースの衣装を知っていたのか謎ではあるが、…まぁいい。KFCには毎クリスマスごとお世話になった事だし。





燭台の数を少し減らして薄暗くした室内には、所狭しと中身をくりぬいたかぼちゃが並べられている。

ケインさんのとこのカイとダリにも手伝ってもらい、せっせと顔を作ったかぼちゃたち。一つ一つが個性的だ。
ナッツには飴細工で蜘蛛の巣をたくさん作ってもらった。
魔女の帽子と白いお化けはオスモさんにも手伝ってもらい完成させた。
それらを絶妙なバランスで配置し…

完璧だ…。自分のプロデュース能力がこわい…。




オスモさんには裏口に来たヤードボーイたちにお菓子を渡すよう頼んである。今日この日、お菓子を配ることは告知済みだ。
ケインさん一家、特にカイとダリがボーイ見習いとなった事で、既存のボーイたちもユーリへの恐怖が薄れたようだ。
アレクシさんが言うには捜索騒動も効いたんだろうって。あれを見たら印象が変わって当然だって。



それくらいユーリは必死に僕を探してた…、その事実がとても嬉しい。

そんなことを考えながらサロンの扉を開け放つと、真正面には3段重ねのケーキが鎮座し主役の席にはユーリがすでに着席している。
そしてその周りにはいつもの顔ぶれが…ひきつった笑顔で迎えてくれる。ひきつった笑顔…?


「アッシュ様、こちらへ。ユーリウス様の隣にご着席ください。」

「あー…、アッシュ君、ユーリウス様が君と一緒にケーキをカットすると…。」


妙に申し訳なさそうなアレクシさんと複雑そうなノールさんの前を通り過ぎ、笑いをこらえるナッツと呆れた顔のエスター…はあちら側でワインを手に乾杯の合図を待っている。

祝いの席だって言うのにこれは一体…



「アッシュ、ほらそのナイフの柄を持って」

長いナイフの柄を掴んだ僕の手に被せるようにユーリの手が。
…あれ?なんかこの体勢って…ケー…
「アッシュ様、ケインとマシュー家へのとりわけ分はいかほど?」

「ん?あ、ああ。マシューさんとこはガタイの良い男ばかりだし、ケインさんとこは食べ盛りの子供たちだから多めに持って行ってあげて」


スッ…サク…


「わぁ、おめでとうございます~!」パチパチパチ…
「おめでとうユーリ君」パチパチパチ…

「お、おめでとう…ございます。ユーリウス様。」パチ…パチ…


ともかく、そのケーキにナイフを入れてなにやら非常にご満悦なユーリのもと本日の宴は始まった。




気を取り直して進む祝宴の夜。程よく全員ほろ酔い気分だ。

「どう?ナッツとサーダさんの衣装。僕渾身のフック船長と手下」
「海賊って事?似合ってるよね。ところで僕のこの衣装…、これって修道女だよね?僕は男だよ?」
「だから仮装なんじゃない。大変だったんだよ。ヴェストさんの実家から送ってもらって」

「やぁお二人さん。飲んでるかい?」
「飲んでないよ。だいたいエスターとナッツはいつも飲みすぎだよ。」

「ああそうそう。ユーリ君には今しがた頼んでおいたよ、王都行きの件。快く許可をくれたよ」
「えっ?OK出たの?どうやって…、すごいなエスター…」

「クスッ、エスターのそれ、道化師かい?ふっ、クク、良く似合ってるよ」
「ノール、君ほどじゃないよ。」


僕がおちょくれるのはここまでだ。
さすがにアレクシさんにはおふざけは無しにして、正真正銘の…、ホームズになっているのを本人は知らない…。手にはパイプも持たせておいた。小物は大事だよね。


「アッシュ君、この外套と帽子は脱いじゃいけないのかい?室内だって言うのに変じゃないかい…」
「だめ」


ちなみにそのアレクシさんは、修道女になったノールさんに「その…、とても魅力的だ…」と、誉め言葉だかなんだか分からない事をほざいて、ノールさんをフリーズさせていた。まったく…。




「はいユーリ、これ僕からのプレゼント。リクエスト通りイランイランの花束だよ。これだけあれば十分かなぁ?」

「「「「!!!」」」」

「ああ、ありがとうアッシュ。嬉しいよ。じゃあさっそく、ヴェスト。これを精油にしておいてくれ。」
「畏まりました。」

「あの、ユーリウス様…」
「なんだアレクシ」
「いえ…」


「あー、アッシュ君きみ知って…ううん、何でもない」
「ノールさん?」


何だろうか…、この妙な緊張感は…。本当にいったい今日は何なのか…。
その謎が解けることは無いまま、ユーリ2度目のバースディはハプニングには見舞われること無く、多分和やかに過ぎていった…はず…






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