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73.5 小話3題 ユーリウスの愉快な毎日
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「ユーリウス様。本日は外国語、スパイン語の勉強です。お手元の書物をご覧ください。。」
「外国語…、私はリッターホルムを出ることは無い。必要ないとは思わないか?ノール」
「そんなことはございません。公爵家の当主ともあろうお方、どこでどのような社交の機会に恵まれるかもわかりません。どなたに対してもご自分の言葉で対話をなさることは大切です。」
「ならば自己紹介と時事のあいさつ程度で良いだろう。適当に必要なあいさつ文を用意してくれないか。」
「…はぁ…」(仕方ない…、この手は使いたくなかった…邪道だけど、エスターから教えてもらったこの手段で…)
「季節に合わせたいくつかの例文を頼む。すべて覚えてしまうから」
「あー…、そうそう、そういえばアッシュ君が…」
「アッシュがなんだと?」
「ブッケ教授の呪物を探しにいつかミチュペチュに行きたいとか言ってたような…。」
「…ミチュペチュ…」
「ご存じですか?あそこは天空の遺跡と呼ばれるそれはそれはすばらしい場所があって…アッシュ君も死ぬまでに一度は見たい!と…」
ピクッ
「青と緑の織り成すハーモニー。大自然の中をかけるアッシュ君…。それはそれは画になるでしょうね。」
「他には?」
「えっ?」
「他に見どころは?」
「アルピカやリュマといった非常に珍しく、かつ温厚な動物がいるようですよ?アッシュ君が喜びそうな」
「アッシュが喜びそうな…」
「でも、そうなると、多少現地民と話せなくては充分にアッシュ君を楽しませる事など出来ませんね」
「む…」
「あそこはスパイン語が公用語でしたね。確か。」
パラリ
「ノール。授業を始めようか」
「では第4ページをお開き下さい」(悔しい…、上手くいったのに…、負けた気がする。)
「ユーリ君。君アッシュの王都行き渋ってるんだって?」
「エスター…。君とノールも噛んでるんだろう?どうせ。唆すのは止めてもらおう。いくらブッケ教授の御子息とは言え、アッシュを悪の道に引き込むのなら私にも考えが、」
「いやいや。僕は父をここに呼ぶようちゃんと言ったさ。だけどもしかしたら君に必要かと思ってね。王都行きが」
「私に?王都行きが?」
「先日アッシュのお祝いをしていただろう?あいや、誕生日じゃなく。」
「……」
「まぁ、それは置いといて、君もあと一年で成人を迎えることになったわけだ。ところでユーリ君きみ、男同士のそういう事、知ってるのかい?手順とか。」
「!」
「どうせ知らないんだろう?ここにそんなことを教えられる風雅な遊び人などいないだろうしね。どうするの君。君のことだから来年の誕生日を迎えたらその日にって考えてるんだろう?」
「…その状況になれば何とかなるかと…」
「馬鹿言っちゃいけないよ。最初は肝心だよ。そりゃぁとてもね。下手したら、君の手際次第で2度目は無くなるかも…」
「そっ!そんな馬鹿な!アッシュはそんなこと!」
「アッシュがどうとか、公爵だからどうとか、関係ないよね。単純な問題だよ。上手いか下手か」
「上手いか下手か…」サァ…
「傷つくのはアッシュの、おっと僕からは言えないな」
「傷つく…?」サァ…
「顔色悪いよ。どうかしたかい?時にユーリ君、君の社交界の友人、ヘンリック侯爵令息だけどね。」
「彼が何か」
「残念ながら今回の君の誕生日は試験と被って来れなかったが、彼はずいぶんとモテるようだね。男女問わず。」
「男女問わず…」
「なかなかやんちゃな話も聞かせてもらったけどね、彼はノールにその気なんだろう?ならそっち方面も詳しそうだ」
「!」
「僕に言えるのはそれだけさ」
「ヴェスト…、ヘンリックに手紙を出す。用意を。」
「畏まりました」
「ユーリウス様…」
「なんだ」
「いえ…」
「ユーリウス様~。僕お願いあるんですけど~」
「ナッツか。なんだ。後押しならタイミングを見計らって」
「そーなんですけど~、なんかまどろっこしいなって思っちゃって~」
「…」
「昨日イランイランプレゼントで貰ってましたよね~?あれってお高い媚薬ですよね~?」
「それがなんだ。誰が何と言おうと私は」
「いえ、別に持ってるのは良いと僕も思ってて~、備えあればなんとかって言うし~。そうじゃなくて~」
「はっきり言え。回りくどい」
「僕にもその精油分けて下さい。少しで良いから。」
「……お前…、サーダと…。」
「だってこうでもしなきゃ朴念仁のシェフはその気になんてっ!」
「…、ナッツ、お前その…、作法や手順は知っているのか…」
「作法…?なんのこと…、あっ!交わりのっ!」
「馬鹿者ッ!大きな声を出すな!ノールが来たらどうするんだ!まったく。ノールがどれほどうるさいと思ってるんだ…」
「ノールがうるさいのは知ってますけど…。それは良いとして僕だってそんなお作法知りませんよ~。僕はまだ清い身体なんだから…。そうだよ…初めてはシェフにって決めてるのに、シェフは…、シェフはっ!」
「落ち着けナッツ。そうか…、知らないのか…。それで?お前はどうするつもりなんだ。そういうことを知らないで…」
「え~、僕はシェフにお任せだもん。やっぱりこういう事は乗っかる方が男らしくないと~」
「乗っかるっ…」(ナッツに恥じらいは無いのかっ!)
「やっぱり初めてはグイグイリードしてもらいたいし~。」
「グイグイ…男らしく…。…分かったナッツ。精油は分けてやる。ヴェスト、大叔父上に手紙を。急ぎ王都へ行く。」
「畏まりました。」
「ユーリウス様…」
「なんだ」
「いえ…」
「外国語…、私はリッターホルムを出ることは無い。必要ないとは思わないか?ノール」
「そんなことはございません。公爵家の当主ともあろうお方、どこでどのような社交の機会に恵まれるかもわかりません。どなたに対してもご自分の言葉で対話をなさることは大切です。」
「ならば自己紹介と時事のあいさつ程度で良いだろう。適当に必要なあいさつ文を用意してくれないか。」
「…はぁ…」(仕方ない…、この手は使いたくなかった…邪道だけど、エスターから教えてもらったこの手段で…)
「季節に合わせたいくつかの例文を頼む。すべて覚えてしまうから」
「あー…、そうそう、そういえばアッシュ君が…」
「アッシュがなんだと?」
「ブッケ教授の呪物を探しにいつかミチュペチュに行きたいとか言ってたような…。」
「…ミチュペチュ…」
「ご存じですか?あそこは天空の遺跡と呼ばれるそれはそれはすばらしい場所があって…アッシュ君も死ぬまでに一度は見たい!と…」
ピクッ
「青と緑の織り成すハーモニー。大自然の中をかけるアッシュ君…。それはそれは画になるでしょうね。」
「他には?」
「えっ?」
「他に見どころは?」
「アルピカやリュマといった非常に珍しく、かつ温厚な動物がいるようですよ?アッシュ君が喜びそうな」
「アッシュが喜びそうな…」
「でも、そうなると、多少現地民と話せなくては充分にアッシュ君を楽しませる事など出来ませんね」
「む…」
「あそこはスパイン語が公用語でしたね。確か。」
パラリ
「ノール。授業を始めようか」
「では第4ページをお開き下さい」(悔しい…、上手くいったのに…、負けた気がする。)
「ユーリ君。君アッシュの王都行き渋ってるんだって?」
「エスター…。君とノールも噛んでるんだろう?どうせ。唆すのは止めてもらおう。いくらブッケ教授の御子息とは言え、アッシュを悪の道に引き込むのなら私にも考えが、」
「いやいや。僕は父をここに呼ぶようちゃんと言ったさ。だけどもしかしたら君に必要かと思ってね。王都行きが」
「私に?王都行きが?」
「先日アッシュのお祝いをしていただろう?あいや、誕生日じゃなく。」
「……」
「まぁ、それは置いといて、君もあと一年で成人を迎えることになったわけだ。ところでユーリ君きみ、男同士のそういう事、知ってるのかい?手順とか。」
「!」
「どうせ知らないんだろう?ここにそんなことを教えられる風雅な遊び人などいないだろうしね。どうするの君。君のことだから来年の誕生日を迎えたらその日にって考えてるんだろう?」
「…その状況になれば何とかなるかと…」
「馬鹿言っちゃいけないよ。最初は肝心だよ。そりゃぁとてもね。下手したら、君の手際次第で2度目は無くなるかも…」
「そっ!そんな馬鹿な!アッシュはそんなこと!」
「アッシュがどうとか、公爵だからどうとか、関係ないよね。単純な問題だよ。上手いか下手か」
「上手いか下手か…」サァ…
「傷つくのはアッシュの、おっと僕からは言えないな」
「傷つく…?」サァ…
「顔色悪いよ。どうかしたかい?時にユーリ君、君の社交界の友人、ヘンリック侯爵令息だけどね。」
「彼が何か」
「残念ながら今回の君の誕生日は試験と被って来れなかったが、彼はずいぶんとモテるようだね。男女問わず。」
「男女問わず…」
「なかなかやんちゃな話も聞かせてもらったけどね、彼はノールにその気なんだろう?ならそっち方面も詳しそうだ」
「!」
「僕に言えるのはそれだけさ」
「ヴェスト…、ヘンリックに手紙を出す。用意を。」
「畏まりました」
「ユーリウス様…」
「なんだ」
「いえ…」
「ユーリウス様~。僕お願いあるんですけど~」
「ナッツか。なんだ。後押しならタイミングを見計らって」
「そーなんですけど~、なんかまどろっこしいなって思っちゃって~」
「…」
「昨日イランイランプレゼントで貰ってましたよね~?あれってお高い媚薬ですよね~?」
「それがなんだ。誰が何と言おうと私は」
「いえ、別に持ってるのは良いと僕も思ってて~、備えあればなんとかって言うし~。そうじゃなくて~」
「はっきり言え。回りくどい」
「僕にもその精油分けて下さい。少しで良いから。」
「……お前…、サーダと…。」
「だってこうでもしなきゃ朴念仁のシェフはその気になんてっ!」
「…、ナッツ、お前その…、作法や手順は知っているのか…」
「作法…?なんのこと…、あっ!交わりのっ!」
「馬鹿者ッ!大きな声を出すな!ノールが来たらどうするんだ!まったく。ノールがどれほどうるさいと思ってるんだ…」
「ノールがうるさいのは知ってますけど…。それは良いとして僕だってそんなお作法知りませんよ~。僕はまだ清い身体なんだから…。そうだよ…初めてはシェフにって決めてるのに、シェフは…、シェフはっ!」
「落ち着けナッツ。そうか…、知らないのか…。それで?お前はどうするつもりなんだ。そういうことを知らないで…」
「え~、僕はシェフにお任せだもん。やっぱりこういう事は乗っかる方が男らしくないと~」
「乗っかるっ…」(ナッツに恥じらいは無いのかっ!)
「やっぱり初めてはグイグイリードしてもらいたいし~。」
「グイグイ…男らしく…。…分かったナッツ。精油は分けてやる。ヴェスト、大叔父上に手紙を。急ぎ王都へ行く。」
「畏まりました。」
「ユーリウス様…」
「なんだ」
「いえ…」
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