チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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90 彼の敵の手口

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王子に連れられやって来たのは大広間。謁見の間とか言う豪奢な部屋。
後ろに下がって僕を見守るのはアレクシさんと…ユーリ!ああ…、青い顔して可哀そうに…今すぐ抱きしめてあげたい…。
ノールさんはアレクシさんの反対側へと並び、ユーリをその両サイドから二人で支えてくれる。ユーリ、ユーリ、あと少しだけ待ってて。悪い鬼はすぐに退治してあげるから。

僕は王様の真正面へ歩を進める。王子は以外にも何も言わず王様の横に静かに並んだ。ここまで何も言わなかったとは…、え?もしかしてノールさんの説教が効いてる…?


「お前がユーリウスの小姓であるか。何とこれは…ううむなんというか、……健康そうな農夫の子であるか。」

聖王お前…、今何て褒めようか迷ったな、さては…。なんだその健康そうな農夫の子って…。普通じゃん!


「多少の調べはついておる。ユーリウスは母親の自死のあと、まともに食事をとることも出来ず、公爵家の専用農地からわざわざお前に新鮮な野菜を運ばせたそうだな。無茶な要求だというに実に勤勉な子であることよ」

…嘘ではない。嘘では…。すごい曲解とは言え、そう言う事になってたのか…。


「そしてそのままユーリウスに引き留められているということか?そのために呼び寄せたと言うことか?お前の意思は尊重されておるのか?まさか軟禁されておるのではあるまいな?なんと不憫な…」


うっわ、わざとらしいほど優し気な声色。正体を知ってるだけにキモイ。それに僕は軟禁どころか自主的にあそこにいるんだ。下衆の勘ぐりはやめてもらおう。


「陛下!な、軟禁など私はっ!」

「ユーリウス!黙らぬか!それより子供よ、家族は寂しがっておるのではないか?こんな幼子が家族の元から引き離され…気の毒にのう…」

両親は志半ばで帰ってくるなと言ってますが?むしろ初帰省の邪魔したのはあんただろうが!


「そう緊張するでない。わしは慈悲深い王として名をはせておる。もっと気を楽にするが良い」


欲深いの間違いじゃないのか?厚かましい…。自分で慈悲深いって言う奴、古今東西ろくなやつはいないんだよ。
見ろ!王子だって「何言ってんだコイツ」みたいな顔じゃないか!

とは言え、なかなかうまいやり方だ。
こうして安心させて徐々に心を開かせるのか。慈悲深く民思いの心の広い聖王様ってか。なるほどね。
さりげなくユーリをディスってくるあたり芸が細かい…。
王家は僕が好き好んであそこにいる事までは知らないんだ。ノールさんが使者に話した〝閣下の慰め”それを真に受けてるってわけか。
だからこうして、ユーリに悪感情を抱くよう誘導してんのか。姑息な真似を…。


「だが王家を愚弄するかの行い、黙って見過ごすわけには行かぬ。たとえ農家の子倅だとしてもな。」

「な、何のことでしょうか…。僕には何のことだかさっぱり…」


おっ?搦め手できたな。上げたら下げて、下げたら上げて、対象者の感情をコントロールしていく。そこにスキルが乗っかってるのか?周囲の従者や護衛の目つきがおかしいのはそのせいなのか?

う~ん…泣くか?ここで涙の一つも見せて油断させておくか?いやまだだ、まだ早い。


「そのような顔をするでない。そうと知らずにした事であれば悪いようにはせん」

「聖王様…」

「だがそれ相応の責めは負ってもらうぞ」

「そ、そんな…」
「陛下!彼は何も含みなど!」

「ユーリウス!黙れと言ったであろう!おお子供よ、震えておるのか。すまぬすまぬ。大声で怖がらせてしまったな。どれ、近こう寄れ。お前に良いものを見せてやろう。王家の金杖であるぞ。このバニチアングラスはどうじゃ。凄いであろう?」

「わぁ…」

無邪気な子供を装う僕。それを胡散臭げに見てくる王子。余計なこと言ったらしめる!


「素晴らしい出来であろう。ああ、そう言えばお前が作ったユーリウスの軟膏。あれもなかなか良い出来であったな。褒めてつかわすぞ」

「そ、それほどでも…」

「だが、ユーリウスの毒はすべて王家の管轄である。勝手に平民ごときに使ってはならぬ。子供と言えど許されぬ。わかるか」


分かったとも、お前が自国民を平民ごときと呼び捨てる愚王だってことがな!そしてそれを堂々と平民である僕の前で口にする、いろいろと残念な王だってこともな!


「わしは心配しておるのだ。お前が無知ゆえユーリウスにいい様にされておるのではないかと。お前が望むならばわしが王命によりその身柄を貰いうけてやろう。ここで楽しく暮らすが良い。そうじゃ、王子の小姓にしてやろう。どうだ。光栄であろう。王子よ、其方も気に入ったのだろう?この子供を」

「父王、格別なご配慮ありがたき幸せ…」


さすが親子だ。言うことが同じとは…。しかし…、どこからどう突っ込めばいいのか…。
でも今はそれよりユーリの悲痛な叫びが僕の胸を締め付ける。

「だ、駄目だ!アッシュ!行っては駄目だ‼陛下!お止めください!彼は私のものだ!」
「黙れユーリウス!これは王命であるぞ!」
「う、うぁぁあ!」


ユーリ!ああユーリ!王のスキルに逆らわないで!あと少しだけ待って!
ユーリの痛ましい声を聞くと僕まで涙が…。

「王様…、お手洗いに行かせてください。少しだけ一人になりたい…、僕っ、僕っ!うっ、うぅ…うわぁぁん」

「子供よ、そう泣くでない。気持ちの整理が必要か?良いだろう。誰か付いていけ!」


従者に連れられユーリの横を通り過ぎるその瞬間、足元に飛ばした一粒の種から、こっそり一輪の花を咲かしていく。彼はその意味に気づくだろうか?
その花の名はブルースター。花言葉は

…信じ合う心…。





階下へ降りた先、そこにはトイレがある。中世だっ、つってんのに水洗なのはご愛敬だ。
この世界に転生して、何より嬉しかったのがこのトイレ事情だ。水回りまで中世のお城が反映されてると詰んじゃうもんね。がばがばの設定万歳だ!窓から投げ捨て方式だったらどうしようかと思ったよ…。
扉の前で見張りが立ってんのが落ち着かないけど、これくらいは許容範囲だ。


それにしても…。

一つ分かった事がある。聖王の支配のスキル。あれは恐らく〝洗脳”に近い。マインドコントロールの基本がきっちり抑えられた、まごう事無き洗脳。飴と鞭ね…。大した飴でも無かったけど…。まぁ大方スキルで底上げされてるんだろう。

だけど惜しむらくは、王子と同じで王様も研鑽を怠ったがために、そのスキルは自分よりも下の者にしか効かないと言う事。下とは地位や身分じゃない。気持ちの持ちよう。相手のマインドが聖王を上位種と認識しなければそのスキルは有効打にはならない。

だけど聖王は国の頂点。ましてやすでに確固たる力を示している。聖王を恐れないものなどこの国には居ない。ユーリだって恐れている。聖王自身も、己を最上位だと思っている。本当にほぼすべての国民が聖王を最上位だと崇めている…。

僕以外は。

はい残念でした。僕は僕以外の人間を上位種などと認めはしない。何故なら僕より知識人などこの世界には存在しないからだ!つまり僕にそのスキルは無効!
そもそも僕がこの頭を下げてもいいと思えるのは、ユーリとビ〇・ゲイツ、ただそれだけだ!


ここからは僕のターン!
舐めるなよ。僕には『騙されないと思う人ほどコロッと騙される 悪魔の心理学』で鍛えたこの舌先三寸がある。


洗脳マスターは善か悪か、二択で追い込み相手の否定感や罪悪感に付け込むのが常套手段。

だからこそ僕に洗脳は通用しない。何故なら僕は三択の男。…めんどくさがりが功を奏して、まいっか、というフィールドが異常に広い。
そのうえいつでも保険を忘れない。転ばぬ先の杖は何本あっても多すぎることは無い。向こう50年の生活費を貯めようと思ったあの習性は伊達では無いのだ。甘言ほど疑ってかかるのは僕の長所だ。




やられる前にやってやる!ここから先は口先勝負だ!





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