チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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91 彼の為の戦い

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「うん?それは何だ?」

「申し訳ございません。私の胸ポケットから滑り落ちたスカーフにございます。すぐに拾います故、ご容赦を。」


謁見の間を出て行こうとするアッシュ君が足元に咲かしていった一輪の花。
私はそれを気付かれないよう素早く隠し、近衛の目を盗んで手折るとユーリウス様に手渡した。

「ユーリウス様これを。彼の心です」
「この花は…」
「ブルースター。花言葉をご存じですか?」
「ああ…。」

「公爵閣下、従者殿、陛下の御前ゆえお静かに」


「アッシュ、信じている…。信じているとも…」

ユーリウス様は固く目を瞑り、まるで祈りをささげるかのようにそれを両手で包み込んだ。










トイレから戻った僕。扉を開ける前に一つ大きく深呼吸。ここからはやるかやられるか。

スーハー

いざ尋常に、勝負だ!


「聖王様。心は決まりました。解毒剤についてお話しします。ですが…、どうかお人払いを。ここから先は王族意外には聞かせることは出来ません。」

「む、なにを偉そうに。お前ごとき平民が聖王様に不敬であるぞ!」

「よせ。構わぬ、ユーリウスと介助の者を残し皆下がれ!」
「聖王様!しかし!」

「ユーリウスは言うに及ばず、このような子供一人に何が出来るか。ここには王子もいる。護衛に囲まれておる方が見縊られると言うものだ。構わぬと言っておる。込み入った話になるであろう。よいから下がれ!」


へぇ、ユーリはこの場に残すんだ。はは~ん、分かった。僕を奪うところを見せつけるつもりだな。それであわよくば、何かの交渉材料にするつもりか。まったくいちいち性格の悪い…。これ以上ユーリに何をさせるつもりだ!


「ふむ、では聞こうか。あの解毒剤、いったいどうやって作った。あれはどれほどの効き目だ。聞き及んだところ蛇の毒と蜘蛛の毒を打ち消したようだな。あれは…特別な症例にも効いたりするのか。」


やっぱりな。…お姫様に、あいや、まだ王様は王妃と姫、どちらが発症するか知らないんだった。でもその時を案じて手段を模索してるってことだ。勇者の旅立ちも、そしてあの悪趣味な、今から始めようとしている実験も含めて…全てがその為の悪あがき…。

その情を少しでもユーリに持ってくれたら…、そうしたら僕だってもっと好意的に協力したのに。





「ふぅぅぅぅ……、やれやれ、言っておきますが勇者は帰ってきませんよ。彼は何も得ることは出来ない。石板の予言は破られた」

様子の変わった僕を凝視しているであろうユーリ。その視線の圧に背中が破れそうだ。

だけど様子が一変したのは僕だけじゃない。聖王もだ。〝高貴なる王”の皮を脱ぎ捨て、その本性をむき出しにする。低い声、狡猾な目つき。その威圧感に怯み、王子は一歩後退する。


「小僧…何故、何故お前がそれを知っている!石板あれは限られたものしか知らぬ事。どこから知った!もしやブッケか!奴はユーリウスに慕われておったな!答えよユーリウス‼」

「お止めください、教授は何も…」
「大声を出すのは止めてもらおうか!ユーリもブッケ教授も関係無い。何故ならあの石板は僕が与えた!」

「なにをふざけたことを!」

いや事実だから。正確には僕ら投稿者全員が、だけど。まぁこれで信じるならだれも苦労はしないよね。


「石板など見る必要もない。…僕は全てを知るもの。知識の番人ミーミルの化身。王家の呪いも、そして今から呪いに倒れる姫のことも、全てが僕の入力に委ねられた…」


おっと王子は知らなかったのか。いったい何の話かと狼狽え王様に問いただしている。
こんな話すら共有しないほど王子の事を見縊ってるって事か…王子も気の毒に…。


「な、何故それを!ええい、王子よ控えよ!それより人を呼べ!だれか、」
「だまれ!この単細胞め…。人を呼んだ瞬間、姫は救いを失うっていうのが分からないのか!」

「ま、まさか…!その方法を知っているというのか…呪いを破くその方法を…」

「我は神なれば…」

「馬鹿な…。そんな言葉を真に受けると思うのか。しかし…、いやそんなことがあるものかっ!こんな子供になど!だが真実であったら…ああ…」


ほほう…。人を人とも思わない冷血漢の聖王にも人の血が流れていたか。最愛を失うのだけは辛いらしい。
初めて見る王様の姿、王子は驚きに目を見はっている。


「この仮初の姿で呪いを破ることは出来ない。だが呪病の進行を止めることは出来ると断言しよう。」

「それはまことか…?ううむ、お前の言葉を鵜呑みには出来ん。信ずるに足る情報を寄越せ!病を止めるための情報をだ!」

「神の叡智には対価が必要だ。それを支払う覚悟はあるか」

「何を小癪な…。ユーリウスよ!ここへ来るのだ!」
「なにをする気だ!」

王様のスキルに逆らい続けフラフラのユーリ。両脇を二人に支えられながら、それでも王子の右隣を強要される。
くっ!王子の横だと?ユーリが立っていいのは僕の隣だけだ!

「ユーリウスよ跪け!さあ王子よ、その剣を首にあてがうのだ!」
「うぅ…」

「ち、父王、それは…」
「早くせよ!」

ユーリッ‼僕のユーリに何するんだ!ああ!高貴なユーリを跪かせるなんて…、お前が土下座しろ!
おのれ、おのれおのれおのれ!許すまじ、聖王!


「陛下!何をなさるおつもりか!」
「黙れ!従者ごときが不敬であるぞ!」

「子供よ!ユーリウスの命が惜しければまずは全て話して見せよ!!」


「いけないアッシュ!私のことは放っておくんだ!」
「黙らぬかユーリウス!すべてを話すか、それともユーリウスと共に死にたいか!」



ユーリを盾に、なりふり構わずただひたすら僕への洗脳を試みる聖王。それが分かるだけに…不愉快だ!
僕は誰にも支配されない。なぜなら僕は既に知識の奴隷だからだ!


ああ、ダメだ。これ以上ユーリを苦しませる事は出来ないっ…!



「やれやれ…聖王、ユーリの命をベットするのはまずい手だ。それをしたら…命を失うのはお姫様だ。猿芝居はやめましょうよ。知ってるはずだ。ユーリは死なない。あなたにユーリが殺せるもんか!だから歴代の王家は代わりに公爵家を利用することにしたんだ。いいですよ。僕とお姫様、一蓮托生といきましょうか?二人そろってさよならだ。」

「アッシュ!やめるんだ!駄目だアッシュ!」

悲痛なユーリの声。うぅぅ…、後で謝る…後で土下座して謝るからっ!だけど今ははったりでもなんでも、ここで引くわけにはいかないんだ!


「僕は死ぬことなんか怖くない!だけどあなたは怖いはずだ!大切な姫を失う事が!」

「ほう…。死ぬことは怖くないか、小僧。死んでも構わぬと言うのだな」

「無論!」

「王子よ制約をかけよ!同意は得た!死んでも構わぬと!」


なっ!し、しまった!王子お前っ!

フイッ

目逸らしてんじゃない!


「やめてくれ!アッシュ!アッシュ!」

「せ、〝制約”全て隠さず言葉にせよ!その誓いを破りし時、その鼓動は時を止める!」

「で、殿下…殿下!お止めください!ああっ!」
「アッシュ君!」


くぅぅっ!……ん?あれ?これ…って…。


「さあ答えよ子供!姫を救いしその方法とやらを!」

「…ただでは答えない。そう言ったでしょ」


チクリともズキンともしないんだけど…。


「なっ!王子よ!スキルはどうしたのだ!」
「す、スキルは発動させました。おかしいっ、こんなはず…」

何度も何度もそのスキルを発動させるバカ王子。…しっかし…危ないところだった。ほらね、こいつは信用できないと思ったんだ。

それにしてもこれはどういう事だ。聖王の洗脳と違って王子のスキルに〝同意”以外の縛りは…


「ええい!この無能めが!」


それは同感だがお前が言うな!


「父王これは…、わかりました!この子供にはすでに誓いがかけられています!私の制約よりも、それどころか誓約よりも強い、最も強い聖約が!そのためすべての下位スキルは弾かれるのです!」

「なんだと!」
なんだって!!

僕に聖約…?いつの間にそんな…?え?何??…疑問は残るが…ともかく形勢逆転だ!





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