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107 彼と安住の地
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翌朝…しょげかえり落ち込むユーリになんて言葉をかければ良いのか…どうしていいか分からずオロオロするばかりの僕。
…って言うか、え?ユーリが落ち込むの?それこっちじゃない??なんで僕が慰めてんの???意味が分からない…
「せっかくの機会だったのに何ひとつ実践できないなんて…。あれ程先走るなと言われていたのに私はなんて愚かなんだ!…本当はもっと優しくもっと君が気持ち良くなるよう」
「わーわー!何言ってんのっ!お、お構いなくっ!でも当分は無しね!あれはっ…あれはダメなやつだからっ!」
「分かっている。あれは駄目なやり方だ…。もう少し修練するまで当分自重するとしよう…」
か、かみ合っているようでいない気がするのは…気のせい?
でもこれで約束は果たされたはず。…ふぅ…。しばらくは大人しくしてくれる…よね?…ん?誰に何を言われたって…?要確認だ。
マァの村で過ごす平和な毎日。明けても暮れても同じ毎日。
あの夏至祭の後、アレクシさんはすっかり兄さんと打ち解けてしまった。
それまでは多少の固さがあったのに、いまではタピオ、アレクシと呼び合う仲だ…。
空いた時間を利用しては納屋の増築現場へと顔を出すアレクシさん。大体は僕も一緒だけど、そんな時ユーリは村一番の腕前を持つオラフじいさんと将棋をして過ごしている。
この村の男どもは将棋をたしなむ。それは僕が教えたからだ。ユーリにもちょちょっと教えて見たら簡単に覚えてしまった。さすが僕のユーリ。
そうこうしてるうちに滞在中の僅かな時間で、家の横にはそこそこ立派なログキャビンが出来上がった。
さすが怪力スキルと無限体力スキルの二人だけある。なんてスピード…。理解不能だ…。
僕の描き上げた設計図。『一から頑張るセルフビルド』あれから抜粋した10畳ロフト付きの丸太小屋。
ウッドデッキまで備えたそのキャビンは納屋にするには勿体ない出来栄えだ。
現に兄さんはロフトを自分だけの男の浪漫部屋にしてしまった。
ちなみにロフトへの上り下りは…消防署のポール方式…、つまり丸太だ…。
「アッシュ、しっかりつかんで登らないか。ああそんなにべったり体中くっつけるんじゃない。もっと軽やかに勢いをつけて!」
「枝も節もない丸太なんかすべっちゃうよぉ~」ズズズ…
「片手は後ろ側にまわすんだ。ほらしっかり!」
昔ならここで叫んだはずだ。「木になんか永遠に登らないからいんだよっ!」って。だけどこのスパルタありきで助かったんだ。引きこもったユーリも、誘拐された僕も。ならばこれこそが愛のムチ…
そしてそのキャビンの左横には、木々を伐採してエル字型に広げた空きスペースがある。
丸太組構法の大切なポイントはもうすっかり覚えたようだ。実践で。きっと兄さんは今後も拡張する気でいるのだろう。次の帰省、どれほど大きなキャビンになっているのか今からすでに待ち遠しい。
その片隅に僕はシンボルツリーとしてデーツの木を生やしておいた。
濃厚な甘みのデーツ。これがあればメープルをケチる母さんでも甘味の代わりに出来るかと思って…。
「そんなに甘い実がなるのかい?そのまま食べても良いんでしょ?それはいいねぇ。」
「いい?完熟するまで取らないでね。しわしわが食べごろだから。ネリばあさんぐらい、あ痛!」
「あんたはすぐ余計なこと言って…」
「ははは、まぁまぁ、アッシュ、父さんはつまみになる木がいいな。もう一本!」
何を青汁のCMみたいに言ってんだか。つまみ…、つまみねぇ…。少し考えて父さんにはアーモンドの木をプレゼントしておいた。つまみといえばピーナッツが定番だけど、苗からは手がかかるし…、果樹の方がいいよね?
「8月のおわりくらいになったら実が付くからね。軽く炙って食べてね。それから…酒は飲んでも吞まれるなだよ。分かった?」
「わかったわかった」
そんな風に過ごしていたら、あっという間に帰る日は来てしまった。
「じゃあね母さん、また来るね。ユーリもまた来たいって言ってるし。それより10月のユーリの誕生日。父さんと母さん、それからタピオ兄さんを招待するって言ってたよ。」
「秋は忙しいんだけどねぇ。」
「まぁまぁ母さん。収穫なら俺とタピオで終わらせるから招待があれば行こうじゃないか。リッターホルムの領都か。お前に似合うキレイな色の服とかあるんじゃないか?せっかくなんだ、たくさん買い物して帰ろうか?」
「そうだよ母さん。家にはモーモーだって居るんだし、モーモーの子供だってもう一人前だ。収穫も整地も任せろって。リッターホルムの領都か。あの美味しい干し肉たくさん買って帰んなくちゃな。」
…まったく我が家の男どもときたら…、買い物のことしか考えて無いじゃないか!
「アッシュ、ちょっといいか?」
タピオ兄さんがちょいちょいと僕を手招く。なんだろう?もうやり残したことなんてないはずなんだけど…
「アレクシから聞いたけどお前けっこうやらかしてるんだって?」
「な、何のことかなぁ~」
アレクシさんめ…。あれほど一連の騒動は話しちゃダメだって言っといたのに…。
「大したことは聞いてないよ。まぁ心配かけるから母さん父さんにはナイショにしといてやるけど…、あんま無茶すんなよ。どうしても困ったら兄さんに言え。力になってやるから。いいな、分かったな?約束できるか?」
「…分かった…。約束する。困ったら兄さんに必ず言うから…。ありがとう兄さん。」
いつも僕に笑いながら肉体的な試練を課すどうかしてる兄さんだけど…とっても頼りになる兄さんなんだ。本当に!
頼りになる兄さんと強くてしっかり者の母さん。おおらかで包容力のある父さんに、働き者のモーモー。ここんちの子で良かったな…。今回の帰省で…改めてそう思った…。
ちょっと個性的だった前世の家族に引けを取らないこの世界の家族。最高傑作のユーリに、有能かつ万能で気の置けない仲間達。やり直しのおまけみたいな人生がこんなにも満たされてるなんて…僕はいったいどれほどの徳を前世で積んだと言うのだろうか…。
神様にはいくら感謝してもし足りないよ…。ありがとう神様!南無南無…
「話しは終わったかい?アッシュ。では行こう。お義母様、お義父様、それからお義兄様。次はリッターホルムでお会いしましょう。」
「皆さま、何も心配はいりませんからぜひとも手ぶらでお越しください。秋の訪問をお待ちしておりますね」
こうして…、楽しかった初夏の帰省はたくさんの思い出と収穫を手に入れ、終わりを告げたのだ。
…って言うか、え?ユーリが落ち込むの?それこっちじゃない??なんで僕が慰めてんの???意味が分からない…
「せっかくの機会だったのに何ひとつ実践できないなんて…。あれ程先走るなと言われていたのに私はなんて愚かなんだ!…本当はもっと優しくもっと君が気持ち良くなるよう」
「わーわー!何言ってんのっ!お、お構いなくっ!でも当分は無しね!あれはっ…あれはダメなやつだからっ!」
「分かっている。あれは駄目なやり方だ…。もう少し修練するまで当分自重するとしよう…」
か、かみ合っているようでいない気がするのは…気のせい?
でもこれで約束は果たされたはず。…ふぅ…。しばらくは大人しくしてくれる…よね?…ん?誰に何を言われたって…?要確認だ。
マァの村で過ごす平和な毎日。明けても暮れても同じ毎日。
あの夏至祭の後、アレクシさんはすっかり兄さんと打ち解けてしまった。
それまでは多少の固さがあったのに、いまではタピオ、アレクシと呼び合う仲だ…。
空いた時間を利用しては納屋の増築現場へと顔を出すアレクシさん。大体は僕も一緒だけど、そんな時ユーリは村一番の腕前を持つオラフじいさんと将棋をして過ごしている。
この村の男どもは将棋をたしなむ。それは僕が教えたからだ。ユーリにもちょちょっと教えて見たら簡単に覚えてしまった。さすが僕のユーリ。
そうこうしてるうちに滞在中の僅かな時間で、家の横にはそこそこ立派なログキャビンが出来上がった。
さすが怪力スキルと無限体力スキルの二人だけある。なんてスピード…。理解不能だ…。
僕の描き上げた設計図。『一から頑張るセルフビルド』あれから抜粋した10畳ロフト付きの丸太小屋。
ウッドデッキまで備えたそのキャビンは納屋にするには勿体ない出来栄えだ。
現に兄さんはロフトを自分だけの男の浪漫部屋にしてしまった。
ちなみにロフトへの上り下りは…消防署のポール方式…、つまり丸太だ…。
「アッシュ、しっかりつかんで登らないか。ああそんなにべったり体中くっつけるんじゃない。もっと軽やかに勢いをつけて!」
「枝も節もない丸太なんかすべっちゃうよぉ~」ズズズ…
「片手は後ろ側にまわすんだ。ほらしっかり!」
昔ならここで叫んだはずだ。「木になんか永遠に登らないからいんだよっ!」って。だけどこのスパルタありきで助かったんだ。引きこもったユーリも、誘拐された僕も。ならばこれこそが愛のムチ…
そしてそのキャビンの左横には、木々を伐採してエル字型に広げた空きスペースがある。
丸太組構法の大切なポイントはもうすっかり覚えたようだ。実践で。きっと兄さんは今後も拡張する気でいるのだろう。次の帰省、どれほど大きなキャビンになっているのか今からすでに待ち遠しい。
その片隅に僕はシンボルツリーとしてデーツの木を生やしておいた。
濃厚な甘みのデーツ。これがあればメープルをケチる母さんでも甘味の代わりに出来るかと思って…。
「そんなに甘い実がなるのかい?そのまま食べても良いんでしょ?それはいいねぇ。」
「いい?完熟するまで取らないでね。しわしわが食べごろだから。ネリばあさんぐらい、あ痛!」
「あんたはすぐ余計なこと言って…」
「ははは、まぁまぁ、アッシュ、父さんはつまみになる木がいいな。もう一本!」
何を青汁のCMみたいに言ってんだか。つまみ…、つまみねぇ…。少し考えて父さんにはアーモンドの木をプレゼントしておいた。つまみといえばピーナッツが定番だけど、苗からは手がかかるし…、果樹の方がいいよね?
「8月のおわりくらいになったら実が付くからね。軽く炙って食べてね。それから…酒は飲んでも吞まれるなだよ。分かった?」
「わかったわかった」
そんな風に過ごしていたら、あっという間に帰る日は来てしまった。
「じゃあね母さん、また来るね。ユーリもまた来たいって言ってるし。それより10月のユーリの誕生日。父さんと母さん、それからタピオ兄さんを招待するって言ってたよ。」
「秋は忙しいんだけどねぇ。」
「まぁまぁ母さん。収穫なら俺とタピオで終わらせるから招待があれば行こうじゃないか。リッターホルムの領都か。お前に似合うキレイな色の服とかあるんじゃないか?せっかくなんだ、たくさん買い物して帰ろうか?」
「そうだよ母さん。家にはモーモーだって居るんだし、モーモーの子供だってもう一人前だ。収穫も整地も任せろって。リッターホルムの領都か。あの美味しい干し肉たくさん買って帰んなくちゃな。」
…まったく我が家の男どもときたら…、買い物のことしか考えて無いじゃないか!
「アッシュ、ちょっといいか?」
タピオ兄さんがちょいちょいと僕を手招く。なんだろう?もうやり残したことなんてないはずなんだけど…
「アレクシから聞いたけどお前けっこうやらかしてるんだって?」
「な、何のことかなぁ~」
アレクシさんめ…。あれほど一連の騒動は話しちゃダメだって言っといたのに…。
「大したことは聞いてないよ。まぁ心配かけるから母さん父さんにはナイショにしといてやるけど…、あんま無茶すんなよ。どうしても困ったら兄さんに言え。力になってやるから。いいな、分かったな?約束できるか?」
「…分かった…。約束する。困ったら兄さんに必ず言うから…。ありがとう兄さん。」
いつも僕に笑いながら肉体的な試練を課すどうかしてる兄さんだけど…とっても頼りになる兄さんなんだ。本当に!
頼りになる兄さんと強くてしっかり者の母さん。おおらかで包容力のある父さんに、働き者のモーモー。ここんちの子で良かったな…。今回の帰省で…改めてそう思った…。
ちょっと個性的だった前世の家族に引けを取らないこの世界の家族。最高傑作のユーリに、有能かつ万能で気の置けない仲間達。やり直しのおまけみたいな人生がこんなにも満たされてるなんて…僕はいったいどれほどの徳を前世で積んだと言うのだろうか…。
神様にはいくら感謝してもし足りないよ…。ありがとう神様!南無南無…
「話しは終わったかい?アッシュ。では行こう。お義母様、お義父様、それからお義兄様。次はリッターホルムでお会いしましょう。」
「皆さま、何も心配はいりませんからぜひとも手ぶらでお越しください。秋の訪問をお待ちしておりますね」
こうして…、楽しかった初夏の帰省はたくさんの思い出と収穫を手に入れ、終わりを告げたのだ。
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―――
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