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108 彼との日常
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リッターホルムに戻ってからのありふれた日々。
サーダさんとの賭け。あれは厳密にどっちとは断言できずドローとなった。当然だ。どっちが先などと…その証明は困難を極める。僕の証人はユーリだし、サーダさんの証人はナッツだ。話にならない。その事に不満が爆発したのは他でもないナッツだ。…一体なにをお願いする気でいたのか…ほんとにもう。
そしてユーリは何故かヘンリックさんへと手紙をしたためていた。渋い顔して…。
そしてほぼ同時にエスターもノールさんも帰宅して、相変わらずの日常が戻って来た!かと思いきや…
とびきりビッグなお土産を持って来てくれた。これは…思いもよらぬ幸運!
「割符…、これが、このコマ切れがあの寓話の補完部分…。…はぁ…上級者向けのジグゾーパズルみたいになってるんだけど…」
「ジグゾー?なんだいそれ?」
「おや?ジグゾーを御存じでない?エスターはともかくノールさんはハマりそうな気がする。完成された一枚の絵をバラバラのピースにして、で、改めて組み立てる知的な遊びだよ」
「ああなるほど、欠片同士を元に戻して一枚の絵を完成させるのか。」
「面白そうだね、それ。子供向けの教材になりそうだ。」
子供向けというよりむしろ大人向けだけどね。
ちまちましたドールハウス作りが趣味だった前世の母は、同じくボトルシップ作りが趣味だった祖父と一緒に、10000ピースもの巨大な『最後の審判』、2年もかけて完成させてたっけ…。あれにはプラモデル製作が趣味の父さえうんざりしてた。自室から出てあの壁のようなジグゾーの完成品を目にした時どれほどビビった事か…。いずれにしてもあり得ない根気だ…。
でもこれを木片で作ってリッターホルムの特産品にしても良いかもしれない。ここには木々だけはやたら多いから…。
計画ならいくらでもあるんだ。でも、それもこれもユーリの平民レベルでの評判を回復してからの話だ。
ここリッターホルムは古代王家から続く取り決めで王家に治める税はほとんど免除となっている。…まぁ代わりに毒を搾取されていたんだが、まったく。あんないびつな関係が代々続いていたなんて…。
けど、だからこそ領民たちが領主に納める税率も下げられてるわけだから複雑な心境だ。
領内は、領主邸、そして荘園が広がる広々したエリアと住居や商業施設の密集した領都とにざっくり分かれている。
その間には細く穏やかな小川がチロチロ流れていてその境界を隔てている。
人々は川向こうの領都側で日々の生活を営んでいて、農作業の時間しかこちら側には来ない、来たがらなかったのだが例外が共同区域だ。
小川の荘園側、川に面した一角には領民の共同区域があり、そこには鍛冶場や共用の焼き窯などが点在している。要は燃料の節約だね。
その共同区域の中にあって、ひときわ立派な建物が教会。とは言え、ここリッターホルムは今、常駐の神父様は残念ながら不在である。多分ユーリの毒を怖がってたんだろうけど…、神の使いにあるまじきことだ。
その共同区域を挟んだ両サイドには、過去の親類縁者が住まっていたのだろうか…?今では使われなくなったいくつかのお屋敷が長い間放置されている。
そんなリッターホルムのこの立地。広大な領地とは言うものの、王国の中でも作物の育ちにくい北側に位置し収穫量はそれほど多くない。そのうえ広大な荘園といっても、その多くは山々、森林地帯が大部分を占め開拓を進めなければあまり使い道がない…。
それなのに!毒公爵、リッターホルムを忌避するあまり、ここはそれほど領民が多くは無いのだ。問題山詰みだ…。
そんなわけだからこそ他の貴族たちから不平も不満もあまり出なかったって話だけどね。良いのか悪いのか…。
ものは考えようだ。何故なら収穫を増やす手立てはある。…僕のスキルと、なによりこの頭の中に!
無事領民の信頼を得られたら、領民の流入が増えたら…その時こそ、いろんな産業を立ち上げここを本当の意味で栄えた領地にすればいい。そう土地ならあるんだ。土地なら…。ウッシッシ。
その為にもまずは目の前の困難に立ち向かわねばなるまい。困難…困難な作業だ…。
「…参った…この割符を全部繋げるのか…。めんどくさい…」
「アッシュ君は意外に面倒臭がりだよね。こんなに博識なのに……浅慮だし…」
「意外でもないさ。面倒臭がりというよりは大雑把なんだよ。だから僕やヴェストとも上手くやれる。それに彼はね、何でも分かった気になってるから却って深く考えないのさ」
二人がかりでディスられた気がするのは気のせいだろうか?きっと気のせいだろう。こんなにマメで常に深い考えに基づき行動する僕がなんだって?
「大雑把とは失礼な。豪胆と言って欲しいな。仕方ない。ぼちぼちやってくか。ノールさんが中心となって…。」
「えっ?僕?良いけど…、二人も手伝ってよね」
パズルさえ完成すればあとはすでに攻略済みだ。果たしてそこには知りたかった残りが記されているだろうか?
それにしてもここ最近、屋敷全体が落ち着かないのは何故だろうか…。
「ヴェストさん。これ、なんでこんなに落ち着かないの?みんな何バタバタしてるの?」
「アッシュ様。これはお二人のけ」
「ユーリウス様の誕生日の為だよ。思いがけず元老院の御歴々と和解しただろう?だがユーリウス様は王宮で行われる成人の会にはご出席されない意向だ。あそこにはマテウス…、ペルクリット伯も息子と後妻を伴い来るだろうから。代わりに幾人かの貴族家を招待してここでやることに急遽決まったんだ。成人の儀を兼ねた祝宴、大わらわだよ。」
「あっアレクシさん、そうかここで。元一族の貴族家たちとせっかく和解したしたことだしね。それは盛大にしなくちゃ。ユーリが取り仕切る初めての祝宴かぁ。忙しいのも当然だ。じゃぁ僕の誕生日はもう何もしなくていいよ。ナッツにケーキだけ頼んでくれれば」
「駄目だアッシュ、そんな事…。アッシュの誕生日を祝えないくらいなら私の祝宴など必要ない!招待客もマァの家族だけで充分だ!」
おぉーっと、背後からユーリ参戦。
ユーリってば未だに僕の14の誕生日をスルーしたこと悔やんでて…義理難いな…。けど僕の誕生日とユーリの成人の儀を天秤にかけるわけにはいくまい!
「じゃぁさ、祝ってくれるのはユーリだけでいいよ。裏庭に設置したパーゴラ、その頃なら色とりどりのブーゲンビリアが咲き乱れる。その下で二人でお祝いしよう?ね?」
「ブーゲンビリア…、赤いブーゲンビリア!君があの時飾ってくれた…」
「覚えてた?そう。あのブーゲンビリアの下で、二人っきりで」
「ああ…もちろんだ。二人きりで、それなら…」
僕の16歳の誕生日。
前世で迎えることの出来なかった成人年齢。それをここで迎えることになるとは…。16とはいえ。
でもこれで正真正銘大人の仲間入り。あんなことやこんなことも…、大手を振って解禁だ!
サーダさんとの賭け。あれは厳密にどっちとは断言できずドローとなった。当然だ。どっちが先などと…その証明は困難を極める。僕の証人はユーリだし、サーダさんの証人はナッツだ。話にならない。その事に不満が爆発したのは他でもないナッツだ。…一体なにをお願いする気でいたのか…ほんとにもう。
そしてユーリは何故かヘンリックさんへと手紙をしたためていた。渋い顔して…。
そしてほぼ同時にエスターもノールさんも帰宅して、相変わらずの日常が戻って来た!かと思いきや…
とびきりビッグなお土産を持って来てくれた。これは…思いもよらぬ幸運!
「割符…、これが、このコマ切れがあの寓話の補完部分…。…はぁ…上級者向けのジグゾーパズルみたいになってるんだけど…」
「ジグゾー?なんだいそれ?」
「おや?ジグゾーを御存じでない?エスターはともかくノールさんはハマりそうな気がする。完成された一枚の絵をバラバラのピースにして、で、改めて組み立てる知的な遊びだよ」
「ああなるほど、欠片同士を元に戻して一枚の絵を完成させるのか。」
「面白そうだね、それ。子供向けの教材になりそうだ。」
子供向けというよりむしろ大人向けだけどね。
ちまちましたドールハウス作りが趣味だった前世の母は、同じくボトルシップ作りが趣味だった祖父と一緒に、10000ピースもの巨大な『最後の審判』、2年もかけて完成させてたっけ…。あれにはプラモデル製作が趣味の父さえうんざりしてた。自室から出てあの壁のようなジグゾーの完成品を目にした時どれほどビビった事か…。いずれにしてもあり得ない根気だ…。
でもこれを木片で作ってリッターホルムの特産品にしても良いかもしれない。ここには木々だけはやたら多いから…。
計画ならいくらでもあるんだ。でも、それもこれもユーリの平民レベルでの評判を回復してからの話だ。
ここリッターホルムは古代王家から続く取り決めで王家に治める税はほとんど免除となっている。…まぁ代わりに毒を搾取されていたんだが、まったく。あんないびつな関係が代々続いていたなんて…。
けど、だからこそ領民たちが領主に納める税率も下げられてるわけだから複雑な心境だ。
領内は、領主邸、そして荘園が広がる広々したエリアと住居や商業施設の密集した領都とにざっくり分かれている。
その間には細く穏やかな小川がチロチロ流れていてその境界を隔てている。
人々は川向こうの領都側で日々の生活を営んでいて、農作業の時間しかこちら側には来ない、来たがらなかったのだが例外が共同区域だ。
小川の荘園側、川に面した一角には領民の共同区域があり、そこには鍛冶場や共用の焼き窯などが点在している。要は燃料の節約だね。
その共同区域の中にあって、ひときわ立派な建物が教会。とは言え、ここリッターホルムは今、常駐の神父様は残念ながら不在である。多分ユーリの毒を怖がってたんだろうけど…、神の使いにあるまじきことだ。
その共同区域を挟んだ両サイドには、過去の親類縁者が住まっていたのだろうか…?今では使われなくなったいくつかのお屋敷が長い間放置されている。
そんなリッターホルムのこの立地。広大な領地とは言うものの、王国の中でも作物の育ちにくい北側に位置し収穫量はそれほど多くない。そのうえ広大な荘園といっても、その多くは山々、森林地帯が大部分を占め開拓を進めなければあまり使い道がない…。
それなのに!毒公爵、リッターホルムを忌避するあまり、ここはそれほど領民が多くは無いのだ。問題山詰みだ…。
そんなわけだからこそ他の貴族たちから不平も不満もあまり出なかったって話だけどね。良いのか悪いのか…。
ものは考えようだ。何故なら収穫を増やす手立てはある。…僕のスキルと、なによりこの頭の中に!
無事領民の信頼を得られたら、領民の流入が増えたら…その時こそ、いろんな産業を立ち上げここを本当の意味で栄えた領地にすればいい。そう土地ならあるんだ。土地なら…。ウッシッシ。
その為にもまずは目の前の困難に立ち向かわねばなるまい。困難…困難な作業だ…。
「…参った…この割符を全部繋げるのか…。めんどくさい…」
「アッシュ君は意外に面倒臭がりだよね。こんなに博識なのに……浅慮だし…」
「意外でもないさ。面倒臭がりというよりは大雑把なんだよ。だから僕やヴェストとも上手くやれる。それに彼はね、何でも分かった気になってるから却って深く考えないのさ」
二人がかりでディスられた気がするのは気のせいだろうか?きっと気のせいだろう。こんなにマメで常に深い考えに基づき行動する僕がなんだって?
「大雑把とは失礼な。豪胆と言って欲しいな。仕方ない。ぼちぼちやってくか。ノールさんが中心となって…。」
「えっ?僕?良いけど…、二人も手伝ってよね」
パズルさえ完成すればあとはすでに攻略済みだ。果たしてそこには知りたかった残りが記されているだろうか?
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「ヴェストさん。これ、なんでこんなに落ち着かないの?みんな何バタバタしてるの?」
「アッシュ様。これはお二人のけ」
「ユーリウス様の誕生日の為だよ。思いがけず元老院の御歴々と和解しただろう?だがユーリウス様は王宮で行われる成人の会にはご出席されない意向だ。あそこにはマテウス…、ペルクリット伯も息子と後妻を伴い来るだろうから。代わりに幾人かの貴族家を招待してここでやることに急遽決まったんだ。成人の儀を兼ねた祝宴、大わらわだよ。」
「あっアレクシさん、そうかここで。元一族の貴族家たちとせっかく和解したしたことだしね。それは盛大にしなくちゃ。ユーリが取り仕切る初めての祝宴かぁ。忙しいのも当然だ。じゃぁ僕の誕生日はもう何もしなくていいよ。ナッツにケーキだけ頼んでくれれば」
「駄目だアッシュ、そんな事…。アッシュの誕生日を祝えないくらいなら私の祝宴など必要ない!招待客もマァの家族だけで充分だ!」
おぉーっと、背後からユーリ参戦。
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「じゃぁさ、祝ってくれるのはユーリだけでいいよ。裏庭に設置したパーゴラ、その頃なら色とりどりのブーゲンビリアが咲き乱れる。その下で二人でお祝いしよう?ね?」
「ブーゲンビリア…、赤いブーゲンビリア!君があの時飾ってくれた…」
「覚えてた?そう。あのブーゲンビリアの下で、二人っきりで」
「ああ…もちろんだ。二人きりで、それなら…」
僕の16歳の誕生日。
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