チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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109 彼と赤い実

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エスターたちはパズルの組み立てに大変そうだし、ヴェストさんやアレクシさんは、ユーリの代で行われる初の祝宴、その準備に右往左往だ。見かねた助っ人のオスモさんは大公に応援を要請していた。流石だ…。


そんな中、僕がすることといえば柘榴の考察。
冷やしてみたり、ゆでて見たり、太陽光に当てて見たり、しまいには人肌で温めたりなんかして…
でもどれもこれも…空振りだ。


そもそもこれは普通のザクロではない。何日経っても傷まない、前日につけた傷まで翌日には治っているという珍品。
うむむむむ…糸口が…糸口が掴めない。


樹洞から残らず持ってきた種、それらはフォレストここでこっそり成長させた。あまり人の目には触れさせたくなかったからね。


地下への入り口は北門近く。そして西門近くがここシーズニングフォレスト。
西門にはオスモさんや御者の家もある。作業で疲れたときはあそこで一休みするのが、僕を含めた作業人のいつものパターンだ。
あそこには休暇中の馬たちが何頭も居る。刈り入れた草を干し草にするべく持って行ったり、時には人参あげたりして、いざという時その背に乗せてもらえるよう、馬たちとは着々と親睦を図っている。


「アッシュさま、お疲れ様です。」

「お疲れー。庭木の手入れ?いつも丁寧な仕事ぶりだね。塩分とってちゃんと休むんだよ。」

「はいっ!」


幾人かのヤードボーイくんは庭師にするべく育成中だ。その為のマナー教育にも余念は無い。
ユーリのあらぬ誤解が解けるにつれ少しずつ使用人が増えていく。これはケイン夫妻の尽力もあってのことだ。

少しずつこの公爵邸が変わっていく。

ほんとのところ、実はユーリは余り変化を望んでいない。それでも公爵家として輝かせたいっていうのは僕の我儘なんだけどね…。






そうして翌朝、ついに僕が成人と成る日がやってきた。つまりバースディだ。

いつもと同じように目覚めて、いつもと同じように花壇の手入れをして、一緒にお茶をして、それからフォレストで一仕事して戻ったら…、すでにブーゲンビリアで飾られたパーゴラの下、そこには二人分の食事とシャンパン、そしてナッツ特製の小さなケーキが置いてあった。


「シャンパンは口をつけるだけだよ。また眠ってしまうからね。」

「わぁキャンドルか…雰囲気あるね…」


おしゃべりしながら時間をかけてゆっくりと楽しむ誕生日の晩餐。うん。こういうのも悪くないな。
少しずつ日が沈み暗闇が訪れる中、ケーキのロウソクだけがうっすらと周りを照らしだす。

「そろそろいいかな?アッシュ、成人おめでとう。さぁ、息を吹きかけて。」

「ありがとうユーリ。いくよ。フー…っ」


ロウソクの火が消え周りが真っ暗になった瞬間、…僕とユーリのパーソナルスペースは0距離になった。


…マァの村から帰った後、その、例のキスの後も、…自制心の訓練だけは継続している。いや、むしろ特訓はより頻繁になった。
確かに仕方ない側面はある。あの日、ディープ…ごほん、激しいキスで我を忘れたユーリは自分自身をとても猛省したのだ。自制のきかなかった精神面を。だからこそ繰り返される特訓。自制の為に必要と言われれば必要な事なのだろう。
だけど問題は…

僕の身体の変化だ。いや、変な意味でなくっ!

なんだか最近ユーリとキスをすると…、身体がカァっとして来たり…、頭がボウっとして来たり…、お、おかしい…。なんだこれは…。

「ん、んんー、んっ!」
「…っ、アッシュ…、駄目かい?」

「ダメ!あのキスはダメって言ったでしょ!」
「あれからかなり訓練はしたつもりだ。頭の中で…。未成熟なのは君の魅力の一つだが、実践が伴わなければお互い上達しないじゃないか。そうは思わないのか、君は!」

「じ、実践は大事だけど…へ?お互い?でも…あ、あれは…って、ん⁉ あれはーっ!!」


パーゴラにひっかけてあった実験用ザクロ。その赤い実が…うっすらと黄色になっている!こ、これは…

「あ、アッシュ…」
「ちょちょ、ちょっとユーリどいて!その件は後で!」

「駄目だ。退けと言うなら約束して。私の誕生日、その日はすべて受け入れると!」
「分かった、分かったから!約束するからちょっとどいてっ!」


激しいキスがそんなにしたいのか。まったくエロ男爵どころかエロ公爵め。でも今はそれよりも目の前にあるザクロだ。
黄色い柘榴…、黄金の林檎⁉

一体何が起きた…?これは…熟しているのか…?
ザクロは赤いものだと思ってた。写真だって商品パッケージだって大抵赤い柘榴が描かれていたから。
いや、ざくろには黄色の品種もあったはず…。だけど何故今これだけが?

今までどれほど何したって変わらなかった。そもそも何日置いておいても、干からびることも腐ることも無かった特別な柘榴。今した事なんてユーリとのキスしか…。まさか…ね?

「ユーリ、ちょっとここで待ってて、すぐ戻るから」


僕の仕事部屋から赤い実を持って戻れば、そこにはシャンパンを嗜む美しい横顔。つ、と足を踏み出せば…その一帯には、すっかりユーリのお気に入りになったアロマ、あのイランイランに似た香りが…。さっきは気付かなかったと言うのに、いったん屋敷に戻った事で鼻がリセットされたのか?

「…ユーリ、今日イランイランどこかにつけてる?」
「ふぅ…毎晩つけてたけどね…。残念ながらもう無いよ。最近は何もつけてない」

「え、じゃぁこれどこから…」

クンクン…

「…ユーリの体臭…」
「私から?いや、私は体臭など…。これでもそう言った面も含めて管理はしているんだよ」
「でも今確かに…。まぁいいや、ねぇユーリ、えっと…言いにくいんだけどちょっとキスしてくれない?」

「え…?そういうことなら喜んで」
「ん…」

キスしながら横目でじっと柘榴を見る。変われ…さぁ変われ!あれぇ?おかしいなぁ…

「アッシュ…、集中してくれないとやりがいが無いよ」
「やりがいって…だってそんなの…。ユーリが、」

「分かった。私次第と言うことか。いいよ。おいでアッシュ!」

「え、あっ、んむっ、…ん…」

んー!だから激しいのはダメだって言って、あ、ああ…また頭がぼぅッと…はっ!ザクロ…、あっ、ああー!

「ん、ぷはっ!」

黄色い…。やっぱり少し黄色い…!それにユーリから漂うイランイランがさっきより濃い気がする…。

クンクン…

「やっぱり…」
「何アッシュ、どうかした?」

「ねぇユーリ…、自覚ないみたいだけどなんか漏れ出てる。」
「えっ!」

一瞬にして顔の強張るユーリ。…バカだなぁ…、この状況で毒素の訳無いじゃないか。それよりこれは、なんというか、その…。

「心配いらないよユーリ。これは…多分ユーリの煩悩…。ユーリのエッチ…」
「エッチ…⁉」

呆れたな…。とんでもないよ。だけどそれがこの柘榴を熟させたなら…このスキルは言うなれば…〝熟成”。大公の発酵スキルの従兄弟みたいなものだ。さすが親族。

「〝熟成”か…」

しみじみしながら半分に割った実の中身。それらも黄色く色付いている。試しに一粒…、甘い…。だけど不死的な効果は感じる気がしない…。おかしいなぁ。いけた!と思ったのに…。
そうは言ってもユーリのスキルで変化させられたのは事実なんだ。う~ん、もっと濃い黄色にならないとダメなのか?

「熟成…?そうか。私がアッシュの成熟を望んだから…」

成熟?成長のことだろうか?僕の成長を一緒に願ってくれていたのか…。やっぱり優しいな、ユーリは。
僕の成長を望んで得たスキルがこの柘榴を変化させたと言うなら、もっと色付かせるのにユーリのパワーアップは必須⁉



「あの、ユーリ…。僕の為にそのスキル…もっと磨いておいてくれる?」





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