チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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110 彼は準備中

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手に入れた重要なヒント。それはあの赤い実とユーリの〝熟成”。
確認のための毒の抽出、難なくそのスキルは発動した。ならばこれはスキルの派生。自然の力じゃダメだったってことか…。オーパーツみたいなザクロを完熟させるには、特別な力が必要だって事だ。

ならばあとは…、ユーリのスキルがパワーアップするのを待つのみ。どうか…、どうかお姫様が病に倒れる前に、呪いの発動に間に合いますように…。




「へぇ~、それであの酸っぱい赤い実がこんな甘くなったんだ~。美味しいよ?これ~」


相変わらず僕は厨房でだらだらと暇をつぶしている。ナッツの手伝いを快く引き受けながら。


「でしょ?これでレアチーズケーキ作ってよ。ユーリは甘すぎるバントケーキそんなに好きじゃないんだ。」


サーダさんのスキルアップに合わせて大量に買い入れた獣の皮や骨。僕はそこからゼラチンを抽出してもらった。そのかいあってのチーズケーキレシピ。
思ったよりも重宝なスキルだ。料理の幅ががぜん広がったのは言うまでもない。


そんな風に無駄話をしながら二人して大量のオリーブの葉をむしっている。葉っぱ一枚一枚痛まないよう丁寧に。それにしても多いな。お茶ッ葉にでもするんだろうか?


「それで~?どうやって熟成スキル開眼させたって~?」
「うっ!…いや…それは…」

「いいから言いなよ~。ねぇ、どうやったの~?」
「あうぅ…その、…キ、キスで…。…ハゲシイキスで…。」

「はぁぁ?えっ?聞き捨てならない!ちょっと!詳しく!」

ガクガクガク…
「い、いやぁ…ちょ、止めて、ナッツ」


結局強引なナッツに洗いざらい吐かされてしまった…。ユーリが僕の成長を願って、あのイランイランに似たおかしな臭気を醸し出したこと…。その臭気こそが〝熟成”だったこと。
いまいち僕の成長とイランイランの因果関係が理解できていないのだが…、何故だかナッツにはそれが分かったみたいだ。

「なるほどねぇ…。ふぅん、身体がカァっと…、良い事聞いた。マンドラゴラ頼むまで無いや、それがあれば…ブツブツ…アッシュ~、お礼にこれおまけ~。マシュマロの試作品だよ~。」

「…あ、美味しい。やっぱ成長にコラーゲンは必須…」


マ、マンドラゴラ…?怖い単語が聞こえた気がする…。ほくそ笑むナッツの顔…なにか企んでるのは間違いない。けど関わらないのが良策。聞こえない…僕にはなにも聞こえない…あー、マシュマロ美味しいなっ!






裏庭からさらに進んだ東の林。そこには着々と観測所が作られている。
観測所なんて言ったら大げさだが、ここには以前から小さな家屋が建てられていた。先代公爵、つまりユーリのおじいさんがカルロッタさんのために開いた狩猟の会むこさがし、その時用意した狩猟小屋らしい。

それをベースにリノベーションしているのだろう。そのひとつは僕のリクエストを反映した半分屋外の露天風呂。
そのうえユーリは、寝落ち用にしては随分立派な寝台を運び入れた。雑魚寝でも良かったのに…お坊ちゃまめ。




園遊会の準備で領内、特に領都はすいぶん活気が出てきたようだ。出入りの業者は泊まりこみだし、そうすればついでに食事もするし買い物もする。

となれば…、人の多い今のうちに色々領都に並べるか?奥さんへのお土産にコットン製品とか子供へのお土産に木片玩具とか。販促も兼ねて領内にジャンジャンお金を落としていってもらうのはどうかな。…うん、良い考えだ。

あとは…あれだな。
生姜ジンジャー。塩や砂糖、胡椒に並んでとても貴重で需要の有るスパイス。何故需要があるかって?生姜はこの国では余り育たず、だけど風味がよく防腐に向き、尚且つ有効な生薬でもあるからだ。
奥の手にあれを使うか…。


それにしても…、人の印象なんかいい加減なもので、訪問者が増えれば増えるほど釣られて周りも平気になる。そうしてるうちにそれは全体へと波及して、このリッターホルム全体を見る目が変わっていく。

そのうえここに大勢の貴族が、それも高位貴族が友好的にやって来ること。それはユーリに対する評価評判にも関わる訳で…。
領民の心が柔いでいる…、ここが肝心!今がチャンスだ!


ケネスを呼ぶか…。

あんなんだけど一応王太子だし、その王太子様がユーリを祝福にやって来たとなったら…領民からのイメージ回復にはもってこいだ!なんなら練り歩かせても良いし…。
呼び寄せる手段なら…ある。こういう事もあろうかと、例の封蝋環を持ってきたのさ、なんて用意周到な僕。…嘘です、偶然です。

そうとなったら善は急げだ!




準備も佳境に入り、ユーリはここのところ執務室に籠りっきりだ。儀式にあたって色々と準備があるらしい。
ゲストの宿泊施設を整えたり、教会の準備を整えたり、そして衣装を揃えたり…、見てるだけでも目がまわる。


「忙しいところをごめんね。ところでユーリ。園遊会にケネス呼んでもいい?」

「ケネス…誰の事だい?」
「…殿下だよ…」

「殿下?何故殿下を?彼を呼ぶ必要はないだろう。私は彼に好かれていないし彼もわざわざリッターホルムになんて来たくはあるまいよ」


大公領からのワインのリストに目を通しながらつれないユーリ。そう言うと思ってたよ…。けど今日の僕が簡単に引くと思ったら大間違いだ。


「でも今の王家は正直僕に頭が上がらないし、イケるって!特にケネスはチョロ…いや、何でも。」

「しかし…」

「見せかけだけでもいいんだ。ユーリと王家が親しい姿を領民のみんなに見せたいの。この間の王都の件で王家が公爵家に歩み寄ったって噂にはなってるけど、実際のところなんて目にしなきゃ領民にはわかんないよ…」


あれだけの軋轢があった間柄だ。ユーリが渋るのも無理はない…、そう思って言葉尻が消えそうになる僕に思わぬところから援護が入った。アレクシさんだ。

「ユーリウス様。私もその意見には賛成です。領民にとって自分の住まう地の領主が王家と近しい、それだけでどれほど誇らしいか。それは彼らの心の支えとなるのです。…義父がいつも口にしていました。ここリッターホルムの当主は代々畏怖によって領民を従えてきたがいつの日かそれが畏敬へと変わる日が来るはずだ。遠い目をして、何度も何度も…そう…。」

「彼がそんなことを?」

家令がそんなことを?


ほとんどシンクロした言葉。胸に押し寄せる家令の無念。う…うぅ…草葉の陰から見守る彼にもユーリの雄姿を見せてやりたい…。ほら、ユーリウス君はこんなにも立派になりましたよ、って。


「あの当時のリッターホルムでそれは現実的ではなかったでしょう。ですが義父はそう信じていたのです。いや信じたがっていた…。どうかユーリウス様。義父に免じて殿下を招待なさってくださいませんか?もちろん応じていただけるかは分かりませんが…」

「グス…絶対来るよ。ズズ…何が何でも呼び寄せるから!いいよねユーリ!うっ、ズビッ…」

「…分かった。だけどアッシュ。もう二度と殿下には座らないように。」




「ぎくっ!やだなぁ…、そ、そんな不敬…もうしないって…」

さすがにダメだったか…。






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