チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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113 彼の…の儀

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そしてその夜、式典前夜。ユーリからは珍しく緊張の色が伝わってくる…。

「大丈夫?心配しなくてもきっとスムーズに最後まで出来るって。」
「本当に最後までやれるだろうか…。全ては私にかかっているんだ。そう思うと緊張しないではいられない…」

「上手くいくって。ユーリはもう一人じゃないんだし!」
「上手くやれなくても怒らないかい?」

「もちろんだよ!失敗したって別にユーリだけのせいじゃ…」
「…その言葉が聞けて良かった。そうだ。二人で力を合わせれば。」

「でも大部分はユーリが頑張らないと。僕は応援するしか出来ないから…」
「あ…、ああ…、そうだとも。私が頑張らないと…。上手くやれるだろうか…」


以下エンドレス…




そうしてやってきた当日。

来賓を運ぶ豪華な馬車が次々と停車していく。厳選したとは言え大勢の高位貴族に王太子様まで揃った豪華なゲスト。そんなすごいメンバーが自領の当主を祝いにやってきたのだ。
初めて見る華々しい光景に、小川の向こうを埋め尽くした領民たちの興奮もマックスだ!。

ショーグレン子爵やロビン君、ブッケ教授までもが到着して、最後、大公閣下がお出ましになれば…、厳かな式典がいま始まる!





こっそり覗き見たユーリの姿。真っ白な衣裳に身を包んだユーリは本当に月の化身みたいだ。
ユーリの銀糸には合わないよって言ったのに、どうしてもアッシュブラウンでって言い張るから、コート類を飾るその刺繍は細く繊細に施された。

その上には重そうで裾の長い、すごく立派な当主の聖ローブ。白地に銀糸のブロケード。なんて綺麗…ため息しか出ない…。

その裾を持つのは畏まったカイとダリ。横に立つのは父親代わりの大公。そうしてユーリは真っすぐに前だけをみて一歩一歩、祭壇へと向かっていく。ああ…、ユーリなんて立派なんだ…。僕はまるで巣立ちを見守る母鳥のような…


「アッシュ様、お早くこちらへ」
「へっ?僕?」


今まさに感動にむせび泣こうとしたその瞬間、いきなり名前を呼ばれたと思ったらヴェストさんに誘導され何故か扉の前へ。

「えっ?えっ?なに?」

「僕が言うとおりにしてね」

「ノールさん!? これどういう…」
「お早く、アッシュ様。」

ぎぃぃぃ…

な、何が何やら…。と、とにかく進めって事かな…。

いわれるがまま恐る恐る祭壇へと近づいてゆく。正面ではユーリが満面の笑みで僕を待っている。
ユーリの一世一代の日。その日を台無しにするわけにはいかない。進めと言われれば進むし、止まれと言われれば止まる。それしか僕に出来ることは…。ノールさん、僕はどうすれば…、あ、ああ。ユーリの横に並ぶのね。

…もしかして一緒に成人の儀式してくれるって事?なるほど!そういうことか。

厳粛な顔で司祭様が祈りを唱える。せっかくの厚意だ。目を瞑りただ黙ってその言葉を噛みしめる。…ほとんど右から左だけど…。
そしてその後、お兄さんのスヴェンさんが聖水?を持ってきて、まずは僕のおでこにチョン。そして次にユーリにチョン。

これで終わったかな?次は誕生日の…おやぁ?司祭様がストラをお取替え。儀式用の高貴な紫のストラからスヴェンさんに手渡された真っ白なストラに。儀式はまだ続くのか…。長いな…。

ノールさんが側に来て曲がった僕のマントを直しながらこっそり耳打ちする。

「アッシュ君、頭を下げて」 フワッ

ユーリと並んで頭を下げるとその頭上には2人で一枚の白いベールがかけられた。それを待って再び司祭様の祈りの言葉が降り注ぐ。

ざわ…

…貴族の皆様方が騒めいている…。ユーリは?…目を瞑り神妙な顔だ…。


「では豊穣の神からの賜りもの、金の小麦で作られたホスティアとカーランツで作られたワインを口にしていただきます」

ざわ…ざわ…

儀式が進むほどざわめきがどこかのギャンブル漫画みたいになっていく…え…?なにこれ?


スヴェンさんの手にしたぽそぽそしたパンとワインというより甘い儀式用のそれ。ユーリの齧った後で僕が齧り、ユーリが飲んだ残りを僕が飲み干す…。あっれぇ…?

何をさせられているのかよく分からない…。よく分からないが、背中を汗が伝うのは何故だろう…。

「本来ここで指輪による誓約となるのですが、お二人は既に指輪による血の聖約を受けておいでですので祝福の祈りとさせていただきます。では。福音第2章…」


指輪の誓いは無し、と。粛々と進む何かの儀式…。でも僕にはこれがアレに思えて仕方ない…。
ノールさんは僕の真横に居る。逐一何をすればいいのか教えてくれる…。これは…もしかしてブライズメイドじゃなかろうか。

なぜもっと早く気が付かなかったんだろう…。『世界の結婚式 伝統と衣装』あれでみた内容と幾つか被ってるじゃないか。


「司祭よ。聖約を交した身とは言え、やはり私は誓約の言葉を聞きたいと思う。進行を妨げて無礼なのは承知だが、駄目だろうか」

「いいえ、あまねく神の子よ。誓いは何度でも祈りはどれほどでも、神は多すぎるなどとはけして言いますまい。よろしいでしょう。では改めまして。」


まさか…あれじゃないよね?あの言葉じゃないよね?違うよね?や、やめて…そんなっ…


「ユーリウス・リッターホルムよ。 あなたはここにいるアッシュを、深い悲しみに支配された時も、喜びに充ちた救済の時も、共に過ごし愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」

「もちろんだ。私ユーリウス・リッターホルムはここに居るアッシュを生涯の伴侶とし、大切にし守り抜くことをここに誓おう!」


はいあれでしたーっっっ!!!何でここだけ前世と同じなんだよっ!

父さん母さん!…はニコニコしながらこっちを見ている。兄さんはっ?…手を振ってる場合じゃないって…。
エスター…、聖書を読んで…るように見せかけて違うよね?その本…。ノールさんは真横で母さん以上に母さんらしくハラハラしながら僕を見守ってるし、アレクシさん…は…どうしてかな?さっきから不自然なほど目が合わない…。


ざわざわ…がやがや…


「皆さまお静かに…。ではアッシュよ。あなたはここにいるユーリウス・リッターホルムを、深い悲しみに支配された時も、喜びに充ちた救済の時も、共に過ごし愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」

「ち、ち、ちち…」

「ちち?」


け…けっこn…なんてことだ。微塵も気付かなかった。僕の知らないところでこんなことが起こっていたなんて…。ユーリ…一体何故?

結婚…。僕がユーリと…?平民の僕が準王族でもあるユーリと結婚?そんなバカな!ああだけど…

仕方が無いのかも知れない…。ユーリは女性嫌いで…、女の人と結婚なんて未来永劫…あり得ないだろうし…。だからって別にユーリは男が好きなわけじゃ…むしろ彼は人間不信に近い…。ユーリが無条件に信じられるのなんて…。

それにそれに、僕ってばほら、けっこうカッコいいし?背は…置いといて、それにしてもこの男前な僕ならユーリがキュンってしても無理はないかも…。す、すごいな僕の魔性…。ユーリがおちるのも当然か…。

うっ!大公がすんごい形相でこっちを見ている。え?何その合図?うなずけ?うなずけって言ってるの?

どどど、どうしよう、僕は?僕はユーリとどうなりたいの…?

だけどふと思い出す…。ユーリと初めて会ったあの暑いマァの村。

ユーリとの出会いは神の啓示のようだった。この子と関わりたい。影響し合いたい。この子を笑顔にしたい!僕が救うべきなのはこの子だ!あの時僕が感じたあの訳のわからない衝動、ドキドキしてまともに顔も見れなかったあの感情、あれは…、あれは…、そうだとも!コバ〇ト文庫で何度も読んだ。あれはまごうこと無き〝一目惚れ” ‼ ‼

そうと気付けばユーリにここで恥をかかせるなんてこと…いや、農家の子ではそれこそユーリの恥にっ!だけど式はもう佳境で!

あー!でも…だけどっ!だからって結婚はっ!身分とか性別とか身分とか、いろいろ差しさわりがっ!

その時どこからか今は亡き(僕だっつーの)、二度と会えない祖母の声が頭の中に響き渡った。「男ならごちゃごちゃ言わずに覚悟を決めなさい!」は、はいっ!


「ち、ち、ちち、父と子と聖霊の名において…誓います!」


…パチパチパチパチ…パチ…パ…


「良かったアッシュ。黙り込むから心配したよ。」

「ご、ごめんユーリ。…なんか良いセリフないかなーって、…考えて…たかもしれない…」
「馬鹿だね君は。「イエス」ただそれだけで十分なのに。でも君らしいよ」


ヤバイ…リッターホルムにまさかの、…奥さま爆誕…




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