チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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アデリーナ

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おかしい…。

メイドたちに確認は取らせた。残った6家、そのどの屋敷にも〝郷愁”は飾られている。なのにどこからも病の知らせが聞こえてこない…

ユールの祭りは始まっている…、ユールボックビアの献納は行われたはずだ…ならば何故…

このわたくしとマテアスを夜会に招待する侯爵家など多くはない。
公爵夫人を追いやった後妻など夜会に呼べぬと言う家門の矜持か、あの6家だけではない。元老院に籍を置く家門から招待状は届かない。

…それとも全てがあの小僧の差し金か?

何にしても確認が要る…。そうとも、あの呪いの壁画はどうなった?

だがわたくしがリッターホルムの地を踏むことは容易ではない。
皮肉なものね…。わたくしの持つ一番大きな武器であるこの美貌こそがわたくしの行動を常に妨げるとは…。

かと言ってわたくしに下女の真似など出来はすまい…。
あれはあの人がいたから出来たこと。それでも結局は勘づかれてしまったでは無いの。





の残滓が残るあの壷を用いた呪い…。その呪いの基となるあの壷は北の地の閉ざされた煉瓦の小屋、その中の古びた祭壇に封じられた。

考えた末わたくしはあの人に叙爵の場面を描くよう熱心に勧めた。
そしてあの人はわたくしの望むまま、12枚のキャンバスとそしてその壁に同じ画を描きあげた…。
再び戻れぬ故郷…、自分を大切にしてくれた家族たち…、大恩ある高貴なる一族、その思いを筆に乗せ丁寧に丁寧に描き上げた…。わたくしがそれをどうするつもりかなど露ほども気付かずに…。
そうして描き上がったその画から、あの人には知られぬようほんの少しだけ塗りつぶした。

あの人は知らなかったのだ。あの壺に何が刻まれ…、そしてあの絵画で…わたくしが何をしようとしているか…

豊穣を約束する術、その言葉を信じあの人は壺を厨房に運び入れることさえやってくれた。
12家の相次ぐ不幸にもしかしたら何か感じ取っていたかもしれないけれど…

そうしてあの日、あの人は〝転移”を用い、壺に残る呪いを全て壁画に移してくれた。そしてその壁画から12枚の絵画へとスキルの道をつなげてくれた。
わたくしを疑いながらも…わたくしの気持ち、それを慰めるためだけに…。

あの人がいたからこそ、私はそれを〝郷愁”に移すことが出来たのだ…。呪力を封じられたこの身でありながら…。

けれど、それをしたことによってわたくしはあの人の心を深く残酷に傷つけてしまった…。
だからこそわたくしは…

あれらの絵が12家の、サロンに、ホールに、書斎に、廊下に、飾られたのを見届けたあと、あの人の言うままに他国へと赴いた。
もう二度とこの国には戻らぬ、恨みは忘れる、そう固く約束をして…。


それからの一世紀はわたくしの生の中でもっとも幸せな時間だった…
隠れ澄んだ森の中であの人と過ごす穏やかで静かな時間…、そして二人の結晶…

そうしてあの人を見送り…息子を見送り…娘を見送り…最後には100年生きたトカゲのキューイまでをも見送った…

ああ…何も無い空虚の中で一体どれくらいの時間を過ごしたのだろう…。
終わりのないな孤独と時の中で、わたくしはとうに狂ってしまったのだ。

そうしてわたくしは戻って来た。この地に…、全てを終わらせるために。

愚かな事だと、知ればあの人はきっと悲しむだろう…。
だがわたくしに残されたものは高貴なる一族への怨嗟、それ以外にもう何も無いのだ…






考えねばならないわね。どうやってあの壁画に近づくか…。

そうか。あれがいる。王家が頼り、みじめなユーリウスが縋った呪力の見えるブッケ。
欲も見栄も無くただ呪物にしか興味が無いと言う変わり者。呪物ね…、これはいい。



わたくしの根幹をなすもの…それならばやりようがある。





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