チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
143 / 277
連載

165 彼の予定外

しおりを挟む
うっかりディナーの席で口をすべらせたおかげでこの寒い中リッターホルムへ帰ることになってしまった。僕としたことが…

何をうっかり言っちゃったかというと…


「今頃リッターホルムは降雪か。あそこの冬山ならスキーとか出来そうだなぁ…クロスカントリーとか…場所によってはジャンプも出来そう。今度体力自慢のボーイたちに教えてみようかな。」


「なんだいスキーって」
「なんだスキーとは」

「雪山の中を足に板着けて上から下に滑走するんだよ。楽しいよ?やった事無いけど…」

「滑走…楽しいのかいそれは」
「板…楽しいのかそれは」

「…気が合うね二人とも。すごく楽しい…みたいだよ。私をスキーに連れてってとかゲレンデが溶けるほど恋したいっていうくらいだし、恋人同士なんかはそりゃぁもう!ああ、やたらと雪山でチェイスするスパイムービーもあったっけ」


雪山が舞台の映画を思いつくままつぶやいていたら興味を持ったのはケネスだった。


「チェイス…スパイ…、意味は分からないが面白そうな響きがある。言え!それはなんだ!」

「いちいち上から来るな…。まぁいいや。えーと…、スパイは置いといて、チェイスはこの場合スキーで競う事だよ。追いかけっこ。どっちが先にゴールするか」

「面白そうだ。…幸い年明けしばらく公務は無い…。おいアッシュ、私にそのスキーとやらをやらせろ」


「やらせろ…、王子が言うと違う意味に聞こえる。けどまぁ別にいいけど、それくらいなら。」

「アッシュ、君もそう思うのかい?」
「ん?」
「ゲレンデが溶けるほど恋したいって」
「ユーリ…、僕のユーリへの想いはいつでも融点だから!」


そんなわけで急遽予定を前倒しにして帰路につくことになったのだった。スキーコースの準備のために。





「じゃぁノールさん、大丈夫だとは思うけど一応王城からはあまり出ないでね。じゃぁ子爵と教授の事よろしくね。それからロビンのとこ寄れなくなっちゃって…ごめんねって伝えといて。」

「油断はしない、気を付けるよ。ロビンは少し残念がるだろうけど言い聞かせておくから大丈夫。じゃぁ後は任せて」


隣でうっすらとユーリがほくそ笑んだ気がする…まさか…ね…






「ふぅ~、やっと着いた。陽が落ちる前で良かったよ。コーディーさん、雪の中馬たちにも無理させてごめんね。当分大人しくしてるからしばらくは休んでね。」


無口なコーディーさんは何も言わずに一つ頷いて厩舎の方へと向かって行った。

ケネスが来るとなると仰々しくなるんだよねぇ…お付きの人とか荷物とか…。ボーイたちが大分育ってフットマンへと進化を遂げた今怖いものなんか無いけどね。

玄関でユーリを出迎えるのはアレクシさんとヴェストさん。サーダさんの代わりにセカンドシェフ。数人のフットマンと、断絶した12家、元ペンハイム侯爵の血筋の姪の娘の夫である従士のイングウェイさんだ。

彼は領内に家族を呼び寄せ立身出世を夢見て頑張っている。そこで領都の治安維持を担ってもらっているのだがとても男らしい良い人だ。



「アレクシさんただいま。寒くなる前に色々配給しておいてくれた?」

「ああ勿論。炭、穀物、干し肉、それから君が冬前に作らせた凍み豆腐、肉の代わりだと言っていたね。あの豆もこれからは作るんだろう?」

「うん。来年の年間計画のたたき台作っとくから目を通してね」


「ご無事にお戻り何よりです。ユーリウス様、アッシュ様。ビョルン、何も問題はないか」
「ああ。問題ない」


声を掛けてきたのはイングウェイさんだ。同僚に当たるビョルンさんに王都での確認をしているが…実はやや問題ありました、とは言えないな…。


「ねぇイングウェイさん、それよりあれ作ってくれた?」
「ええもちろん、面白がってボーイたちも手伝ってくれましたしほんの2時間程で出来ましたよ」


帰って早々自分でも元気だと思うが、王子の来訪に備えての指示を出し終えると手を引いてその場所にユーリを誘う。
ケネスはいつの間にかちゃっかり自分の部屋を決めているからお出迎えの準備はヴェストさんが抜かりなく整えるだろう。ここは丸投げだ。

実は帰館を早める報告の手紙に僕も一枚同封したのだ。ささやかなお願いを詳細な指示と共に書き記して。


「ユーリこっちこっち!」
「この雪の中観測所に行くのかい?疲れてはいないの?星は見えないだろうに」

「違うこれこれ、ほらっ!」


そこに現れたのはイグルー。日本で言うところの雪室かまくらだ。


「サプライズだよ。今日はここで二人っきりで過ごそうよ。だって今日は大晦日だよ。かまくらで迎える年越し…、やってみたかったんだよねぇ…」


この国では初詣もカウントダウンパーティーもないからみんな大みそかは御馳走を用意して家族で静かに過ごすのが一般的だ。

僕がリッターホルムに来てからと言うもの何故か毎年タイミングよく年末年始は王都に居たから、実はこうしてここで迎える暮れは初めてだったりする。
そんな記念の大晦日をかまくらでロマンチックに過ごそう、と閃いたのだ。

かまくらの中にはお茶とお菓子、それからセカンドシェフによる軽い夕食が置かれていた。
そろそろ日も暮れ暗闇の中、直径2mほどのその白い世界はいくつかのキャンドルが灯され幻想的かつ情緒的だ。


「アッシュ…、これを私の為に…?」
「ほんとは作るとこも参加したかったけど…、でも今日じゃ無いと意味ないから仕方ない。日が変わるまではここに居ようね。その後は観測所で休め、ング…」


すっかり慣れたユーリからのキス。ようやく加減も程よくなって…良くなって…?


「ぷはっ…、あ、相変わらず…まぁいいや、気に入った?」
「ああとても。おや?綿を入れたガウンもある。だが君のガウンは私だ。ここへお出で」


二人羽織みたいに食べたり飲んだり話したり、とっておきの思い出になったと思う。
今年は色々あったから…やっぱり最後はいい思い出で締めたいよね。


「ハッピーニューイヤー、ユーリ。今年もよろしくね」
「アッシュ、こちらこそ」


ちょっとだけ人に言えないことをしてしまったのは僕にしてみればとんでもない失態だ。だってユーリが言う事聞かないからいけないんだよ…


あくる日からそのイグルーが溶けるまでのしばらくの間、ボーイたちが入れ替わり立ち代わりその場所を楽しんでいることを知って…申し訳なさ過ぎて心底凹んだ…。が、真実は僕の胸だけに仕舞っておく…







しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。 本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました! 心よりお礼申し上げます。 ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。 よければお時間のある時にお楽しみくださいませ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。