チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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149 彼の尻込み

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「さっきハイペリオンで川の位置は確認した、だから最短最速ウォータースライダー!って言いたいとこだけど川の上流は岩が多く川幅も狭いし流れも急だ。下手したら全滅する。」

「アッシュ君、それはちょっと…」

「分かってる、僕も死にたくない。ましてやロビンを危険には晒せない。次善策としてアッシュ道で行く。ここまで全部開いてきたからこれもある意味一本道だ!」

「道が出来たと言っても下山にはある程度の時間がかかるだろう?ロビンはもつのか?ぐったりしてきたんだ、時間が無い…」

「…だから力技だ。アレクシさん、その布でロビンを抱え込むようにくるんで。」



今では僕のなにより頼りになる相棒、それが蔓性植物。もう僕は蔓なしで生きていける気がしない…
だが今からその相棒にはもっと壮大な仕事をしてもらわねば!


「スーハー、最後の大仕事だ。よし!がんばるかっ『種子創造!』」


延々と続くアッシュ道の両サイドに一定間隔で生やしていく白樺。白樺なのに意味はない。ただ視界に入ったからだ。
そしてその木と木を繋ぐようにひたすら伸ばしていく蔓。その蔓はつなのように太くしっかりと編み込まれている。その木と蔓の中央からぶら下がる今度はあみのように編まれたカゴ。…カゴ?袋?


「す、すごいな…、このカゴ…まさか…」
「そのまさかだよ」


出来上がったのは…尋常じゃない長さの………ジップラインだ!


「ぐぬぬ…フリーフォールの次はこれか…、あ”ー…、腹は据わった!行くよアレクシさん!ロビンをお願い!」
「ああ、任せてくれ!」

「ふー…、せーのっ!」






その後の事はちょっと記憶が曖昧だな…。僕は絶叫系マシンが苦手なんだ。富〇急なんてとんでもない。
バンジーもラフティングも、パラグライダーですら一生しないと決めていた。その僕がジップラインをするなんてね。
アッシュ道をとんでもない速度で駆け抜けていくジップラインで僕の精神は崩壊寸前。

その僕とロビンを抱きかかえたアレクシさんの二人は、多分最後の連絡から2時間もしないうちに麓へと到着した。らしい…。
通信の後すぐ麓に待機してくれていたユーリ。
いきなり出現した白樺に驚いたのもつかの間、余りに速い僕たちの下山とその方法に全員口を閉じるのも忘れて驚愕した。らしい…。

そしてそこから後のことだけどね、

蛇や蜂、それから中毒性のある山野草を警戒したユーリはノールさんと協力していろんな血清を精製していた。らしい…。
アレクシさんがバイパーの毒だと特定していたことで、屋敷に運び入れられたロビンには蛇毒に効く血清が迷わず投与されなんとか事なきを得た。らしい…。
それを見て安堵から倒れ込んだのはノールさんで、結果兄弟は仲良く横並びで寝込むことになったらしいとも。

全てがなのは到着から先、曖昧どころか僕は全ての記憶が無いからだ。

最大級スキルを連発した事に加えジップラインの恐怖で僕の気力は限界に達していた。地面を踏んだ瞬間、そのまま顔面からイッタらしい…ふかふかの草のおかげでケガは免れたけど…顔が痛い…。

後で聞いた話だと、アレクシさんはナッツの時に見た蛇の噛み傷、その症状を覚えていたんだとか。だから一目で断言したのか…。ジップラインで血の気が引いて真っ白な顔をしたまま彼はギリなんとか保った正気でそう叫んだらしい。ノールさん良かったね…。

…いいや、全然良くないねっ。一日に2つの絶叫系アトラクション…。僕がこんな目にあったあれもこれも全部、アレクシさんがスキルアップをサボったから…

考えてたら腹がたってきた。特訓だ、特訓!なにが普通だ!アレクシさんだけそのままでいていい訳無いじゃないかーっ!


こうしてリッターホルムの長い長い一日は僕の心の叫びとガス欠を最後にようやく終わりの時を迎えた…。







そして今僕はベッドの上、もうお昼だと言うのにユーリは起きるのを許してはくれない。

戻ってから一昼夜、お風呂にすら入れずドロドロの身体でまさに泥のように眠り続けた僕。と思ったのに…


「目が覚めた?顔は大丈夫かい?アッシュ、きみ前のめりに倒れ込んだんだよ」

「顔?顔…おでこが痛い…鼻…は大丈夫…だと?おかしいな…あれ?身体がきれいだ…」
「何をどうしても起きないから私が浴室まで連れて行ったんだ。それもやはり覚えてないか。全身洗ってあげたんだよ」

「…悪さしてないよね…」
「悪さって?とても丁寧に洗ってあげたのに…心外だ」

「丁寧…」
「綺麗な身体の方が心地よく眠れるだろう?ほら、とても良い匂いだ」

「それもそうだよね。疑ってごめん。それよりもう起きていい?色々聞きたいことがあるんだけど」
「駄目だ。あれ程心配かけたんだ。医者に見せるまではまでこうしているんだ。いいね」


別に僕は怪我人でも病人でもないのに。でも今もなお心配そうにのぞき込む顔。仕方ないか…
だからってこれ以上非生産的な時間を過ごすのは性に合わない。


「でも報告くらいは聞かせてよ。御者はどうなった?」
「…それは今じゃ無いと駄目かい?」

「今だよ。じゃなきゃこうしてても気が休まらない」

「そうか…。…残念ながら重要な証人を一人失った。」

「…予想はしてた。気の毒にね。彼の家族は?」
「つい先ほど侯爵家から早馬が来たよ。奥方は何も知らず侯爵家で平常通りだ。入れ違いで夫の訃報が届く頃だろう。そして娘は3か月ほど前からある子爵家へ侍女として奉公に上がっている。アッシュ、あの御者は5年前、…ビルギッタ嬢からの紹介状をもってコーネイン侯爵家へと来ていたんだ」

「ビルギッタお嬢様…アデリーナのお友達…5年前だって?そんな頃から仕込んでたのか?用意周到だな…」

「私のせいだ…。私がこうしてここに居るから…。毒など無くとも私の存在はそのものが厄災となるのか…ならば私さえ居なければ誰も危険には晒されないのか?ああっ!なのに私の身は滅びない!」

「バカ言わないでよっ!誰のせいって魔女のせいだよ!他に誰のせいだって言うの!」
「だが私が居なければ起きなかった事だ!」

「ユーリだけじゃない!アデリーナは12家の貴族を特に憎んでる!御者の仕込みはそのための保険だ!たまたま今回その駒をユーリに使ったってだけだ!」


ああ…、こうなることを恐れていたんだ。ユーリの片足はいつだって深淵に爪先を濡らしている…。だからこそ本当はユーリに何一つ知らせたくなんかなかった。だけどすべてを知りたいと言ったのはユーリ自身だ。
自分自身の発した言葉。男なら自分の言葉には責任を持たなければならない。それも僕を形作る祖母からの大切な教えの一つ!



「こっち見て!ユーリは自分で戦うって決めたんでしょう?なら負けないで!僕は負けるケンカをする気はさらさらないんだ!」




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