チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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148 彼の確かな成長

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「アッシュ君、これは?」
「握りつぶした苔だ。…と言う事は多少の水分は摂ってるって事か…」

「どういうことだい?」
「苔は水分を含むんだ。それに毒性のある場所に苔は生えない。最悪何も無ければ握りつぶして飲めって言った。」

「男らしいな…」
「だけどそれは湧き水は見つけられなかったってことでもある…」

「それに…少し陽が落ちてきた。早くしないと…」




-----------------------------------


残念ながら湧き水は見つからなかった。道々に生える苔によって口を湿らす事は辛うじて出来たけど。
ああ…お腹が空いた…。アッシュさんが教えてくれた珍しい恵みの数々。白スグリは甘いけど小さくて物足りなかった。だけどその後見つけた緑の果実。教えてもらったばかりの〝幻の珍果”を、まさかこんなところで見つけるなんて私はどれほど幸運なんだろう。
だから、…だからきっと助けは来る…


「陽が落ちてきた…。風を凌げる適度な樹木に身体を横たえられる平らな場所、アッシュさんが言った通りの条件、ここを避難場所にしよう」


暗くなる前に火を起さなくては。針葉樹の葉、白樺の樹皮、焚き木になる乾いた枝に摩擦を起こすための硬い枝、これで出来るだろうか?

しばらく回転を続けるとうっすらと煙が立ち始めた。小さな赤い火種で針葉樹の葉を燃やし、その火を消さないよう今度は乾いた枝へと移していく。


「はあぁ…やっと点いた。明るくて、そして暖かい…」


火を確保した事が大きな安堵へとつながる。これが無かったら真っ暗な山中で凍えなければならなかった。それを思うとどれ程感謝してもし足りない…。

だけど疲れた…身体を休めたい…。あの布と麻袋で寒さは凌げるだろうか?それに途中で火が消えたら?
押し寄せる不安はなかなか私を休ませてくれない。もう少しだけ焚き木を集めておこうか…


「痛っ!何っ⁉」


足首に感じた鋭い痛み。何かに噛まれた!
蛇?ムカデ?
大変だ…!彼は何かに噛まれたら清潔な水で洗い流せと言った。そしてきつ過ぎない程度に縛っておけと。だけどここには洗い流す水どころか飲み水すら無い…。

どうしよう、どうしよう、どうしよう…

時間とともに増していく痛み。腫れた足は自分のものじゃないみたいだ。怖い、怖くて仕方ない。兄さん…、会いたい兄さん…

アッシュさん助けて!こんなところで死にたくないよ!


「あっ!あれは‼」





------------------------------------



いくら初夏の陽が長いと言っても限界はとうに越えている…。
だけどこの酸素の薄さは頂上までの近さを示しているわけで…、滑落場所から体感で数時間…1時間が300としてこの山の標高は1500…ここまでくれば…いけるか?いけるのか?

いいや!イケる!気合さえあれば!気合を出せ!気合!気合!気合いだー!


「『種子創造、ハイペリオン!』」
「うわっ!」

「『スイカズラ』」
「な、なんだっ!」


「ア、アッシュ君!」
「時間が無い!手っ取り早くいくよっ!しっかり捕まってっ!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!」


伸びろ!世界で一番高い木、それがセコイヤその名もハイペリオン!
どこの合体ロボかと思ったら…何のことは無い、ギリシャ神話の巨神から名前を頂戴した巨木の名前だったとは。

そのハイペリオンのてっぺんに、今ぼくとアレクシさんは蔦で固定されセミの様に捕まっている。カッコ悪い…
カッコいいことしてるはずなのにその姿は実にカッコ悪い…。見せられないな、特にロビンには…。


ズボッ!


「よし抜けた!さぁ探してアレクシさん!ロビンは何処 !?」

「あ、ああ。」


ロビンロビンロビンロビン…どこだっ!


「あれだ!アッシュ君!煙が上がっている!」
「ナイスロビン!よし!じゃぁアレクシさん転移だ!」

「無理だ!私は転移のスキルを持っているというだけでほとんどそのスキルを使ってこなかった。人を転移させるのは簡単じゃない。ましてやいきなり2人の人間をそれもこの距離運ぶなど到底無理だ!」

「なっ!」


え?ア、アレクシさん…自信満々に何言って…、え?え?ウソでしょ?え?

ガーン…なんてことだ、当てにして上ったのに。いや、降りるのは簡単だよ?簡単だけど…くっ、くそぅ、仕方ない…。

いつまでもこうしてるわけにはいかないし…、はぁ…すごく気は乗らないけど…


「しょうがない降りるよ。覚悟はいい?」

「え?うっ!っーーーーーっ!」


ズ…ズン…ン…


「ひぃひぃ…はぁ、と、到着…、…大丈夫?」
「な、なんとか…」

「ひっこめるときのほうが怖いんだよね。フリーフォール…、サイテー…」
「声もでないとはこのことだ…」

「さ、ロビンのとこに行こう!」






暗闇に響く鈴の音。こんな山中に人工音?ってことはつまり…


「ア…シさ…ん…アッ…さぁ…ん…!」

「あそこだ!」
「ロビン!」

「アッシュさん!あの木、あのてっぺんにアッシュさんが見えました!探しに来てくれたんですね!ああ、やっぱり…。信じてました!きっと来てくれるってずっと信じてました!」


大声で泣き叫びながら鈴を鳴らして手を振るロビン。
なのに立ち上がりもしないとは…どういうことだ?


「アレクシさん、多分だけどロビンどこか怪我してる。先行って!」
「ああ!君はゆっくり来るといい」


くっ、くそぅ…、リーチの差が憎い…






「アッシュ君大変だ!あの噛み口はバイパーだ!ロビンはバイパーに噛まれている!」

「バイパー⁉マムシか!大丈夫ロビン?いつから?噛まれてからどれくらいたった?」

「多分半刻ほど…痛くて…うぅ…もう立てない…情けない…」


アレクシさんが手持ちの水で洗浄した赤黒く腫れたロビンの足…
こんな状態で居ながらロビンはなんて気丈なんだ。
毒蛇…抗毒素の軟膏。ああ…けどあれはもう一年半も前、薬はすでに使用人や領都の治療院で使ってしまった。それにユーリはあれから幸せ過ぎて毒素を吐いては居ない…



「アレクシさん、僕の声を転送して!ユーリと直接話す!」
「声…、そ、そんなことが出来るのか⁉」

「出来るかできないかじゃない!やるんだ!事は一刻を争う!ロビンを助けるため、それに仲の良いノールさんの為にもやって見せてっ!無茶を言っている自覚はあるよ。でも男にはやらなきゃならない時がある。アレクシさんはそれが今だ!」


僕の言葉に一つ息をのんで力強くうなづいたアレクシさん。そこには決意を秘めた男がいた。


「ちょうどいい、このヨルガオを使おう。いい?糸電話のイメージだ。強くイメージして。このヨルガオを一つユーリに送って。そしたらこっちの花に向かって僕が話す。アレクシさんはもう一つのヨルガオとこの花を繋ぐ糸になるんだ!」
「糸?」


「そういうつもりってこと!を転移させるんだ!いい、行くよ?」






-----------------------------------


『ユ…リ…、ユーリ…、聞…える…聞こえ…ら返事…て…』

「アッシュ!」


いきなり手元に現れたヨルガオの花。その花からは聞きなれたアッシュの声が!
一体これは…、だがそれを聞くのは後だ!

「聞こえる。聞こえている。アッシュどうしたんだ。何かあったんだろう?ロビンは?」

「そのロビンが大変なんだ。ユーリお願い!どうにかして毒素を吐いて!黒いキャンディーが必要なの!抗毒素の軟膏が必要なんだ!大至急戻って作らなくちゃ!お願い何とかして!王様の事思い出すとか…」


抗毒素…!やはり…
いくらアッシュの知恵があっても防ぎきれないものがある。蜂や蛇などの生物だ。彼らはこちらの思うようには動いてはくれまい。
最悪の事態…、その可能性はけして少なくは無いと思っていた。


「アッシュ、血清は私とノールで今まさに用意しているところだ。安心していい。急いで戻るんだね?どうするかは知らないが気を付けて。山の麓で待っているよ。さあ、急いで!」






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