チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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199 彼と空間の管理者

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新たな仲間、スヴァルトさんを加えた3.5人は一旦お屋敷へと戻って行った。
ちなみにサーダさんとナッツは冬空の下で星空散歩。二人っきりでどこかに消えたって。いいなぁ…。


そんな二人を横目に社畜はこれからお仕事の時間…。
ノールさんやエスターも集まって遠距離オンライン会議が始められたのはたったの2時間後、アレクシさんはわずか2時間の休憩で夜通しブラック労働を余儀なくされた。非常に申し訳ない…


そしてスヴァルトさんからは衝撃的な事実が明かされた。


『まずその白い剣だ』

「勇者の剣に何かあるの?」

『その剣はあのドワーフの物だな?それは反転の呪具だ。ずいぶん装飾されているようだが間違いなかろう』
「ちっ、違うよ?装飾はもぎり取られてるんだよ?むしろ元はもっと豪華だったって…」

『いいや。当時のその剣はもっと無骨なものであった。』

「認識しました。その柄と剣先は風合いが違うようです。後年足されたものでしょう」

「そうなの?じゃぁそれが反転の呪具…。え?ええー⁉ならここにある勇者の書は…?」
「あの書があるのか?それはいい。反転の術はドワーフのもつ呪具による特殊な理。その書とこの剣、二つ揃わねば術は発動しない。あの時のドワーフもひとりが書を、そしてもうひとりが剣を手にして私の術を反転、つまり無効化したのだ」



そうだ、WEB小説でも剣を持つ勇者の代わりにあの書は賢者が持ち歩いてた…。そうか、そうだったんだ…って、初耳だよそんな設定!
だ、誰だよ!そんな設定後づけしたの…。ま、まぁいいけど…


「じゃぁその剣をこっちに持って来ないとね…あぁもう…」

「アッシュ様、この剣は雪解けを待ってユーリウス様にお持ちいただきます。魔女を追い込むのであればそれが最善です。」


主人を囮にするとか…、相変わらず絶好調だなヴェストさん。でも冷静に考えてそれが一番効率良いのは確か…


「領内はどうするの?」

「アッシュ様、その件も問題ありません。アッシュ様が伯爵邸に招かれた時からいざという時に備えてノールやアレクシと手を尽くしていました。」


横を見ればアレクシさんも小さく頷いている。

ノールさんが言うには、万が一リッターホルムでアデリーナとの争いがあった時、ユーリの毒や腐食が領民の目に焼き付かないよう、その時は地下にすべて誘導出来ないか思案していたのだと。
ようやくここまで紡いだユーリと領民の絆、それを二度と失わせないように、と、それはヴェストさんからの提案だったのだと。


「あの地下にアッシュ様が以前仰ったような他領からの受け入れまでは今はまだ出来かねます。ですが領民だけであれば何とかなるでしょう。リッターホルムを守るにはそれが…最善です」

って。さすがだよ…、ああ、頼りになる…。


「アレクシは不在ですが差配人はすでに胸襟を開いております。今は子爵もお出でになり、領民への説明は子爵が先ほど請け負ってくださいました。王の勅命、それで領民は納得するでしょう。厨房には既に半年分程度の保存食は確保させました。また地下は冬を過ごすのには最善とは言えませんが良策です。地中は暖かい。」


「それにね、カレッジの事も心配いらないよ。ヴェストからその案を聞いて僕も学生の退避を考えたんだ。幸い彼らは冬の帰省を始めているからね。学舎の修繕箇所が見つかったからと帰省期間を延ばしてもらうよう通達したんだ。ここに戻る時期については追って連絡するって。そしてね、帰省をしない学生、帰省先の無い平民の学生達は、研修の名目で大公領が受け入れてくれる。もう話は済んでる。どうかな?」

「農奴たちにと一部の期間工には良い機会ですので地下の拡張を申し付けてあります。魔女が目にすれば腐蝕を恐れ地下に逃げ込もうとしているように見えるでしょう。そして邸内のものはすでに皆、ユーリウス様とアッシュ様に信頼を寄せております。何を見せられたとしてもいささかの問題もありません。好きなだけ土地を腐食、いえ、熟成ください」


僕とユーリを信頼…、だとしたらそれは全てアレクシさんが、オスモさんが、ノールさんが、それからヴェストさんが示して育て、そう思わせてくれたんだ。


「みんな…」


「私がこのリッターホルムへとやって来た時、迷える私にアッシュ様は言いました。『ヴェストさんにしてもらいたいことはたった一つ。ユーリに最高の環境を』と。私の認識するユーリウス様にとっての最高の環境とは、アッシュ様が隣にいて、友とも呼べるべき仲間がいて、信頼できる使用人が居て、そして肥沃な大地と幸福な領民を抱える、そんなリッターホルムです。ですが私がどれほど最善を尽くしても、今ここにアッシュ様は居ない。それだけは私の力ではどうにも出来ない。早くお戻りください。でなければ最高の環境は整わない。」

「ヴェスト、やはりお前は私にとって申し分ない執事だ。アッシュ聞いたね。彼を困らせてはいけない。君は主人なのだから」

「分かってる、任せてよ。僕は自分の言葉に責任を持つ男だよ?」

「ふふ、頼もしい。ところでアッシュ、私はあの地下に捕らえた悪人共の使い道をようやく見つけた気がするよ」


悪人…居たな、そういえば。あー、もう存在そのものが希薄で…、王子に頼んでユーリの言うことに絶対服従って制約かけてからの放置プレイ…。そう言えばタイミングを見計らって放流するとかなんとか…自分で言ったんだっけ…?


「えーと、誘拐犯の事だよね?で、使い道って?」

「彼らのあの様子…、捕らえた斥候を従わせることは難しそうだ。一体彼女の何が彼らをあそこまで捉えるのだ!」

「王さまみたいなスキルによる洗脳とは違うけどね、要は洗脳だよ。ごく一般的な催眠技術と心理操作、でもね、心の弱った人にはそういうのが効くんだよ。それから…阿片…、違法薬物にどっぷりつからせて支配してたり…、そもそもあの美貌に骨抜きな奴も多いかもね。そんな感じ」

「薬物…、あの狂気的な服従は薬によるものなのか?」

『それが呪術師の常だ。催眠、誘導、そして幻覚を見せるハーブ、そこにあの子のあの美貌があれば、それらは複雑に絡み合い精神を支配する、そしてその従属は容易く解けはしない。』


スヴァルトさんが僕の言葉を後押ししてくれる。それを聞いてユーリも腑に落ちたようだ。

人の心を支配するのに呪力は必要ない。そう、あの時僕が聖王を陥落させたようにテクニックさえあればそれは可能だ。でも付け焼刃な僕の洗脳は解かれてしまった。アデリーナはその道のプロ、僕と違ってきっとその洗脳は強固だ。むしろ彼らはどんどん狂信的になっていくだろう。自分たちが居場所を失えば失うほど盲目的に…。


「…とにかく伯爵夫人に腐食した土地を確認させるためには一旦このリッターホルムへと招き入れなくてはならない。それも最適な機会を以て。だが斥候をうまく使えないなら他の手が必要だろう?彼らを使いこのリッターホルムへと誘導する。」

「いいねそれ。で、誰があの悪人たちを調教するの?」



とても楽しそうなユーリの声がヨルガオからは届けられた。







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