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213 彼とアレクシ ②
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「『スイカズ…』違うっ!『銀杏!』」
蔓を飛ばそうとしたした瞬間!泣きながら離れるノールさんに向かって夫人の侍女が火種をとばしたのが見えた!
くそっ!させるかっ!
「子供!な、何故ここに!生きていたのね!性懲りもなく…」
「それはこっちの台詞だ!性懲りもなくユーリをつけ狙って、今度はアレクシさんまで!もうお前はここから出られない!諦めろ!」
奴らの目の前にそびえ立った何本もの銀杏の木、火種も視界も遮られた中、やぐらの上に立った僕だけがアデリーナの視線にさらされる!最悪だ!
「ユーリはお前の呪具じゃない!『スイカズラ!』」
「はっ!あれが呪具でなくて何だというの!里の呪力により歪められた末子の肝。そこから滴り落ちるあの呪われた毒は誰にも消せないわ!アレが人並みに幸せになどなれるものですか!」
僕の放ったやけくそぎみの蔓はアデリーナのナイフによりあっさりと切り捨てられた。
あー!だから死角まで誘導したかったのに…
「ユーリウス!聞こえているのでしょう?お前の毒は人々に災いを振り撒く!お前が人として生きる事など…、未来永劫あり得ないのよ‼選びなさいな!その呪いを子孫に譲り渡すか…、それとも絶望を供に孤独のまま生き続けるのか!そのどちらも選べないなら…わたくしが今すぐ救って差上げるわ!」
「うるさい!自分がそうだからって八つ当たりすんな!災いを振り撒くのも人として生きられないのも、全部お前自身の事だ!ユーリの浮気は許さない!僕が居るからユーリは孤独じゃない!その時点でとっくにお前の救いなんかお呼びじゃない!未来永劫絶望を味わうのはお前の方だ!」
「お。お黙り!わたくしにだってあの人が居れば今頃…、いいえ!居るわ!ここに居る!あの人はここに居る!わたくしの希望となるために舞い戻った!あの人は生まれ変わって再びわたくしに出会ったのよ!」
「アレクシさんはお前のあの人じゃない!」
「いいえ!あの顔、あのスキル、そして末子の従者…、何が違うというの!彼はあの人よ!」
「アレクシさんはアレクシさんだ!アレクシさんの人生は彼だけのものだ!お前の好きになんか絶対させない!アレクシさんを放せ!」
「何とでもお言い!彼さえ手に入れればこちらのものよ。あなた!もうここにいるのは嫌だわ!行きましょう!あなた…?」
アデリーナは叫びながらも憎々し気に僕を見ていた。僕もアデリーナからただの一度も視線を逸らさなかった。
だから気が付かなかったのだ…
アレクシさんがいつの間にかあの銀の小瓶を奪い取っていた事に…。
「あっ、あなたいつの間に!な、何をするの!毒を奪ったところでわたくしには効かないのよ!」
「何をする…か、私がお前の希望であると言うなら一筋たりとも与えるものか‼ 私の人生は私のもの、こうするんだ!」
「なっ、何を!や、止めてっ!」
「アレクシさん!やめっ」
「飲んでは駄目!いやぁぁぁ!」
「アレクシ!」
「アレクシー!」
「あああ!アレクシ!アレクシ!」
銀杏の木を抜けて駆け寄るユーリと王子、それに服を脱ぎ捨てたノールさん、その叫びは絶叫に近い…!
ふっ、ふっざけんな!アレクシさんは大バカか!こんなにも心配してくれる人が、大切に思ってくれる人が、泣きながら駆け付けてくれる仲間が居るのに!いっぱい居るのに!よりにもよってなんでこんな選択…、冗談じゃない!
こんなの許さない!
「ユーリ!白い剣を掲げて!」
「アッシュ!だがアレクシが」
「あれは灰色の毒だ!まだ間に合う!早くー‼」
WEB小説の最終章…、勇者の周りには4人のパーティーが居て、そして、…そして毒公爵の周りには誰もいなかった。
あの緊迫した場面、仲間に囲まれた勇者は揺らがぬ心でその魔法を詠唱し、そして反転の魔法は毒を撒き散らす毒公爵に向かって真っすぐに放たれた。
全ての毒を無効化された毒公爵は白兵戦を余儀なくされ、…そして勇者の持つ勝利の剣、その剣に胸を貫かれて崩れ落ちた…。
毒公爵はたった独りで…
家令のアンダースさんも、執事のオスモさんも、御者のコーディーさんも、それから、それから、…従者のアレクシさんも、そのそばには誰も居ない。ただ独り…。
公爵の身体から零れる毒、それはいつだって涙の代わり…
「馬鹿アレクシっ!しっかりしてアレクシ!お願い死なないで!」
「う…」
そんな世界なんか僕は認めない!ユーリの傍らにはアレクシさんが必要なんだ!
「毒薬変じて薬となれ!天の理よ!『反転‼』」
陽が沈み闇に包まれた村の中。篝火は今か今かと火を待っている。その組木は魔女を封じるナナカマド。そして今日は新月、全てを清める浄化の月…。
ユーリの持つ白い剣からは僕の詠唱により白夜と見紛う程の神々しい光が、条理を書き換える強い光が発せられた。
これが『反転』、ドワーフの秘術…。
白い剣から発される光に瞠目するユーリ。
視界の隅では王子もその光景に呆けていた。
いつの間にか集まった村の皆は事の成り行きを固唾を飲んで見守っている。
ノールさんはアレクシさんを強く抱きしめ、アレクシさんの瞼は徐々に薄く開かれていく…
そして魔女は…、アデリーナは…
「生意気な子供め!篝火へと落ちるがいいわ!」
「奥様!松明ならここに!」
震えるその手にしっかりと、…僕から伸びる蔓を握りしめていた…
蔓を飛ばそうとしたした瞬間!泣きながら離れるノールさんに向かって夫人の侍女が火種をとばしたのが見えた!
くそっ!させるかっ!
「子供!な、何故ここに!生きていたのね!性懲りもなく…」
「それはこっちの台詞だ!性懲りもなくユーリをつけ狙って、今度はアレクシさんまで!もうお前はここから出られない!諦めろ!」
奴らの目の前にそびえ立った何本もの銀杏の木、火種も視界も遮られた中、やぐらの上に立った僕だけがアデリーナの視線にさらされる!最悪だ!
「ユーリはお前の呪具じゃない!『スイカズラ!』」
「はっ!あれが呪具でなくて何だというの!里の呪力により歪められた末子の肝。そこから滴り落ちるあの呪われた毒は誰にも消せないわ!アレが人並みに幸せになどなれるものですか!」
僕の放ったやけくそぎみの蔓はアデリーナのナイフによりあっさりと切り捨てられた。
あー!だから死角まで誘導したかったのに…
「ユーリウス!聞こえているのでしょう?お前の毒は人々に災いを振り撒く!お前が人として生きる事など…、未来永劫あり得ないのよ‼選びなさいな!その呪いを子孫に譲り渡すか…、それとも絶望を供に孤独のまま生き続けるのか!そのどちらも選べないなら…わたくしが今すぐ救って差上げるわ!」
「うるさい!自分がそうだからって八つ当たりすんな!災いを振り撒くのも人として生きられないのも、全部お前自身の事だ!ユーリの浮気は許さない!僕が居るからユーリは孤独じゃない!その時点でとっくにお前の救いなんかお呼びじゃない!未来永劫絶望を味わうのはお前の方だ!」
「お。お黙り!わたくしにだってあの人が居れば今頃…、いいえ!居るわ!ここに居る!あの人はここに居る!わたくしの希望となるために舞い戻った!あの人は生まれ変わって再びわたくしに出会ったのよ!」
「アレクシさんはお前のあの人じゃない!」
「いいえ!あの顔、あのスキル、そして末子の従者…、何が違うというの!彼はあの人よ!」
「アレクシさんはアレクシさんだ!アレクシさんの人生は彼だけのものだ!お前の好きになんか絶対させない!アレクシさんを放せ!」
「何とでもお言い!彼さえ手に入れればこちらのものよ。あなた!もうここにいるのは嫌だわ!行きましょう!あなた…?」
アデリーナは叫びながらも憎々し気に僕を見ていた。僕もアデリーナからただの一度も視線を逸らさなかった。
だから気が付かなかったのだ…
アレクシさんがいつの間にかあの銀の小瓶を奪い取っていた事に…。
「あっ、あなたいつの間に!な、何をするの!毒を奪ったところでわたくしには効かないのよ!」
「何をする…か、私がお前の希望であると言うなら一筋たりとも与えるものか‼ 私の人生は私のもの、こうするんだ!」
「なっ、何を!や、止めてっ!」
「アレクシさん!やめっ」
「飲んでは駄目!いやぁぁぁ!」
「アレクシ!」
「アレクシー!」
「あああ!アレクシ!アレクシ!」
銀杏の木を抜けて駆け寄るユーリと王子、それに服を脱ぎ捨てたノールさん、その叫びは絶叫に近い…!
ふっ、ふっざけんな!アレクシさんは大バカか!こんなにも心配してくれる人が、大切に思ってくれる人が、泣きながら駆け付けてくれる仲間が居るのに!いっぱい居るのに!よりにもよってなんでこんな選択…、冗談じゃない!
こんなの許さない!
「ユーリ!白い剣を掲げて!」
「アッシュ!だがアレクシが」
「あれは灰色の毒だ!まだ間に合う!早くー‼」
WEB小説の最終章…、勇者の周りには4人のパーティーが居て、そして、…そして毒公爵の周りには誰もいなかった。
あの緊迫した場面、仲間に囲まれた勇者は揺らがぬ心でその魔法を詠唱し、そして反転の魔法は毒を撒き散らす毒公爵に向かって真っすぐに放たれた。
全ての毒を無効化された毒公爵は白兵戦を余儀なくされ、…そして勇者の持つ勝利の剣、その剣に胸を貫かれて崩れ落ちた…。
毒公爵はたった独りで…
家令のアンダースさんも、執事のオスモさんも、御者のコーディーさんも、それから、それから、…従者のアレクシさんも、そのそばには誰も居ない。ただ独り…。
公爵の身体から零れる毒、それはいつだって涙の代わり…
「馬鹿アレクシっ!しっかりしてアレクシ!お願い死なないで!」
「う…」
そんな世界なんか僕は認めない!ユーリの傍らにはアレクシさんが必要なんだ!
「毒薬変じて薬となれ!天の理よ!『反転‼』」
陽が沈み闇に包まれた村の中。篝火は今か今かと火を待っている。その組木は魔女を封じるナナカマド。そして今日は新月、全てを清める浄化の月…。
ユーリの持つ白い剣からは僕の詠唱により白夜と見紛う程の神々しい光が、条理を書き換える強い光が発せられた。
これが『反転』、ドワーフの秘術…。
白い剣から発される光に瞠目するユーリ。
視界の隅では王子もその光景に呆けていた。
いつの間にか集まった村の皆は事の成り行きを固唾を飲んで見守っている。
ノールさんはアレクシさんを強く抱きしめ、アレクシさんの瞼は徐々に薄く開かれていく…
そして魔女は…、アデリーナは…
「生意気な子供め!篝火へと落ちるがいいわ!」
「奥様!松明ならここに!」
震えるその手にしっかりと、…僕から伸びる蔓を握りしめていた…
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