チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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231 彼と学祭

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待ちに待った若葉の季節。そこで行われるのは…カレッジの開校記念祭!
今日この日はリッターホルムの総力を挙げ、領都までをも巻きこみそれはもう盛大に開催される。だからこそ多くの領主を招いてもいる。

ゲストの皆様に満足していただくため、学生は思い思いに研究の展示や講演を企画している。
これはある意味将来への布石。ここでの自己アピールが将来への内定につながるためだ。そして領主は有能な人材を手に入れる。

両者、まさに真剣勝負!

そんな中で目玉になるのは以前からの大きな課題、東西をつなぐ遊覧船のプレゼンだ。
これは観光であり運送であり旅客である。東西の距離をグンと縮める大きな事業。当然大貴族ほどそのプレゼンには興味津々!そのため参加希望者には整理券が配布された。


そしてある教室で行われたイベント、それはシグリット姫の企画した子供向け講座。
それを担当するのは、なんと、アルパ君である。因みに監督・脚本はノールさんだ。

彼はあれ以来、お姫様と書簡をやり取りしながらこの日のために頑張ってきた。
とは言えリッターホルムを訪れる貴族の多くはゴリゴリのヴェッティ王派だ。念のためアルパ君の身辺警護をお願いすると、あのビョルンさんが率先して引き受けてくれたのには少し驚いた。



子供たちに将来のお仕事を教えるアルパ君を柱の陰から見守る僕。彼の背後に立つノールさんは緊張のあまり笑顔に見えて目が笑ってない…。ドキドキドキ…


「み、皆さんはこのリッターホルムで読み書きを学ばれましたね。それでは今日は、その、この国の仕組みや産業なども、覚えていきましょう」

「さんぎょーやしくみを覚えたらどうなるのー?」

「えっ?あ、あの…み、皆さんが将来を考えるときに、その、きっと役に立つと…」

「なんで?俺の父ちゃんは洗濯屋で俺も父ちゃんの店を継いで洗濯すんだけど」
「あたしはお母ちゃんを手伝って畑仕事」


俺もー、私もー、と教室の中は大混乱。黙れガキども!そう言って黙らせてやろうかとしたその時、ノールさんは僕を目で止め、黙って首を横に振った。


「両親を尊敬するのは良い事…です。けれど皆さんは両親とは別の、一人の人間です。いつか、大人になって独り立ちするとき、親とは違う道があると知ってるのと知らないのとでは……きっと違う…。だからこの領内にどんなお仕事があって、それになるにはどうしたらいいか、覚えてくださいね」

「父ちゃんの仕事じゃない仕事すんの?父ちゃんに叱られるよ」

「たとえ行く道が違っても…、キチンと話せば…きっとお父様も分かってくださいます」

「じゃぁ俺あの人みたいな従士になりたいな。あの団服すげーカッコいい!」


さされたのはビョルンさんか…確かに彼らはかっこいい。今も昔も制服に包まれた男はカッコいい。

王都で言う騎士団、それが各領でいうところの従士団だ。
従士の方々は常に領内の保安に努め防犯と防災に尽力してくれている。そして領境の見回りをはじめ、領と領の小競り合いや有事の際には腕づくで領を守ってくれる。それがこの世界の従士なのだ。言うなればパトロール警官兼自衛隊員みたいなもんか。


「僕はー、アレクシ様みたいな家令になりたい!アレクシ様は困った事は何でも助けてくれるんだ。父さんもアレクシ様は頼りになるって言ってた!言えば何でもしてくれるって!」


ぶふっ!それじゃぁ便利屋だって…。アレクシさん、あれ程なんでもかんでも手を貸すなって言っといたのに!


「貴族さまなのに気取って無いよね」
「こないだうちの母ちゃんと草むしりしてた」
「ばあちゃんの荷物運んでくれたー!」


アレクシさんの名前に反応したノールさんが、収拾のつかなくなった状況に思わず助け舟を出す。


「領民に寄り添う非常に目線の低い良い家令ですアレクシは。君たちの尊敬の念は彼に伝えておきましょう。さて、ではお屋敷の上級使用人や領都の役人になるために何が必要か、アルパ、説明の続きを」

「は、はい」


アルパ君にとって大変な、でもとても有意義な一日は子供たちの笑い声と共に過ぎて行った。






ノールさんを誘ってさぁ帰ろうかな、と思った馬車止めの近く。その裏のベンチから聞こえてきたのは馴染みのある声。チラっと覗くとそこには座って談笑する親しそうな男が二人…。アレクシさんとビョルンさんだ。

思わす引っ込む僕とノールさん。いや別に声かけても良かったんだけど何となく勢いで…

しかしこれは…。何も聞きたくない。聞きたくないんだけどこの位置で馬車の順番を待ってると勝手に聞こえてくるわけで…、さすがにノールさんも諦めて極力空気になろうとしている。




「…って子供たちが…。アレクシ様、とても慕われているのですね」

「そんな風に言われると…、少し恐縮してしまうね。」
「でも私も同感です。貴族であることを少しも鼻にかけず、アレクシ様は本当に思慮深いお方です」

「ビョルン、君は知らなかったか…。私はもともとスラムの孤児、貴族とは言っても貴族学院すら知らないはぐれ者だ。そんな私が養父の爵位を継ぐなど本来ならとてもおこがましい…。ただあのアデリーナの介入により未熟な私だけが残った。それだけのことだ。」

「アレクシ様…」

「あの立派な養父が生きていればユーリウス様にとっても領民にとってもどれだけ頼りになったか。そしてその亡くなった本当の息子殿もきっと素晴らしい方だったに違いない」

「その立派なお父様のようになりたいと、そう思って従者から家令へと転身なさったのでしたね。私にはその志がすでに立派だと感じられますが…」

「目指すだけなら誰でも目指せる。あの養父の様になりたいなど…身の程知らずな話だ」


ア、アレクシさんのネガティブモードがさく裂してしまった…
オロオロする僕の横では眉を寄せるノールさんが。でも僕達二人の耳には落ち着いた、それでいて凛とした声が届けられた。


「…アレクシ様は母の望みを叶えるためこうして従士となり、いつか叙爵をと願う私を高望みだと笑いますか?」

「まさかそんな!君は立派だビョルン。君が日々どれほど努力しているか、それは皆が知っているとも」

「アレクシ様も同じです。どれほどこの領の為に心を砕いて奔走していらっしゃるか、それは領民の皆が知っています。親しみのある家令…それのどこに問題が?貴族学院を出ないと領民の心は分かりませんか?」

「い、いや…」

「ではもう一つ。アレクシ様はもし私が母の夢を叶えるためにどこかの侯爵令嬢に言われるがまま婿に入ったとして、そしてまんまと爵位を受け継いだらそれを恥ずべきことと軽蔑しますか?」

「いいや。それは一つの手段でしかない。肝腎なのはその後、どのようにして得た爵位を生かしていくかだ。地位にかまけ怠惰に遊興にふけるのか、それとも良く領地を取りまとめ豊かにするのか、本質はそこで問われるのものだ」

「ではその言葉をそっくりアレクシ様にお返しします。しっかりして下さいね。アレクシ様がご自分を否定なされたら庶民の子供は希望を持てません。」



そこには父を亡くし母にたかられ、弟妹の面倒を見るしっかり者の長男がいた。








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