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232 彼は思い悩む
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「いやぁ、びっくりしたね。ビョルンさんがあんなにビシッと言うなんて。そう言えばユーリもビョルンさんはああ見えて意欲的なタイプだって言ってたよ。一見優し気なのに…」
「だけどそうなのかもしれない。彼はオーケソン家へ下働きじゃなく給金の高いフットマンとして奉公にあがってたよね。それって自分の容姿が武器になることを分かって志願したって事でしょう?どこかの侯爵令嬢ってビルギッタ嬢のことだよね?オーケソン家には嫡男が居たから実際は婿に入っても爵位は継げなかったけどね」
「例え話でも恐ろしい…、あんなのに言い寄られてたのか。気の毒に。」
馬車の中では今しがた耳にした会話に関心を隠せない。しかし驚いたな。涼し気な顔した子供たちの憧れる従士は僕たちが思うより中身は軟じゃないらしい。
そのしっかりものの息子を萎えさせるんだから彼の母親は一体…ブルル…
それにしても…同じ長男でもノールさんとはタイプが違う。タピオ兄さんの物理的な強さとも違う…。何が違う…あっ!
ショーグレン家も僕んちも、子供想いの優しい、そして時に厳しい両親が揃っている。けどビョルンさんの父親は早逝し母親は寄生虫だ…。強いんじゃなくて強くなったのか。弟妹の為に…
そこへいくとショーグレン家の弟はなんならお兄ちゃんよりしっかりしたロビンだし?タピオ兄さんの弟はこんなにチャーミングで賢い僕だし。つまり何が言いたいかと言うとうちの兄さんは果報者。だよね?そうだよね?間違って無いよねー?あれぇ?
「それにしても学院か…アレクシがあんなことを気にしてたなんて…」
「ゴホゴホ…、ユーリだって行ってないのに」
「ユーリウス様は事情がおありだったから。普通貴族家の子は余程の事情がない限り入学するのが通例だからね。あそこは勉強をするだけじゃない、社交の場でもあるんだよ。そうじゃないと将来につながる人脈が出来ないでしょう?」
「でも勉強はここで受けてたんだし、社交はその…、夜会とかに行くだけじゃダメなの?」
「駄目じゃないけど、夜会への招待だって名前も知らない人をそう簡単に招待したりはしないんだよ。夜会はね、情報の交換とか、知人同士を紹介し合って、既に出来上がった人脈を広げる場所と思った方が…」
なるほど。言われて見ればそういう下地をアレクシさんは持っていない。彼は長い間ユーリに付きっきりだったから。
貴族のはぐれ者…、あの意味は自分を卑下して言ってただけじゃないって事か。アレクシさんにはリッターホルム以外に貴族の知り合いがいない。
ヘンリックさんとケネス以外には………
「いやいや、筆頭侯爵家と王子が友人なら十分じゃない?十分すぎるって!」
「確かに…」
それでもノールさんは自分の知人に少しずつ引き合わせるとブツブツ言いながら自室へと戻って行った。
そして僕はと言えば…
「アレクシさんがモテている…。ナッツにアレクシさん…みんなモテモテだ。僕のモテ期はどこに…?」
「アッシュ、君と話がしたいとユングリング家のトールバルトが来ている。それだけじゃない。コルトバ侯からの使いも来ている…。造船事業の話をしたいらしい。ようやく君が戻ったというのにまったく邪魔な…」
「えっ?そうなの?」
「アッシュ様、たった今ファークランツ家のオトマール様が到着いたしました。先ほどの発表について詳しく聞きたいと仰っております」
「ヴェストさん、ちょっと相手しててくれる?」
「アッシュ様、コーネイン侯爵からお手紙が届いています。」
「ありがとうダリ、何々…、造船の事業は黙って進めるな…、あーもう!そんな一斉に来られたって…」
「ですがアッシュ様、これはアッシュ様の言われた『モテモテ』です」
認識されていたのか…。でも違うんだってば…これは…
急遽ファークランツ侯爵家のオトマールさんやユングリング侯爵家のトールバルトさんが夕食を共にすることになりサーダさんの気合も十分だ。
昼間の話も記憶に新しい。チャンスとばかりにアレクシさんも同席してもらったその日のディナーは和やかかつ賑やかに話が弾んでいた。
その後サロンに場所を移しお酒を飲みながら談笑するイケメン4人を、ミルクとお砂糖たっぷりのカフェオレを飲みながら見物する僕。うんうん、とても良い雰囲気で交流できてるじゃないの。
既婚の彼らはコイバナを通り越して子供の話をしている。この二人はユーリより年上だ。アレクシさんと同じくらいか…。だからかな?ユーリは少し控えめに参加しているようだ。
「それで殿下の正妃には誰が候補にあがってるんだ。側妃は3人も居るというのに…おかしいだろう」
「ですが先日殿下はまだまだ自由で居たいと…」
「はあ…未だそのような事を。アレクシ、親しい君から殿下に進言できないかい。後継の問題もある。いつまでもこのままというわけには」
2人はヘンリックさんと共に王子の側近でもあるんだよね。ぷぷ、ケネスもそろそろ年貢の納め時…あれ?
やっぱりユーリは、…何か考え事をしている…
ユーリのあんな表情を見てしまっては胸のつかえがとれやしない。
明日迄持ち越すくらいなら…、ここは兄さんに倣って直球だ!
「ねぇユーリ、最近時々考え事してるよね。悩みがあるなら話してほしい…。僕はユーリの奥さんなんだから。」
「いや、だがこれは…」
「もしかしてアルパ君の事?今日も開校祭来なかったよね。」
「え?ああいいや。アルパのことはまた別の、」
「彼がここに居るのホントは不愉快だったりするの?」
「そうじゃない。だが妙な気分になるのは事実だ。」
このリッターホルムにおいて、マテアスを父親とは認めない。それは共通認識なわけだけど、でも実際遺伝子学上は嫌でも親子な訳で…それはつまり、アルパ君はユーリの異母兄弟ってことで…
「彼に対して恨みも憎しみもない。だが胸襟を開くことは難しい」
複雑なんだろうな。ユーリの立場からしたら…。
「アッシュ、私はアルパなど眼中にない。今考えているのは後継の問題だ」
「えっ!」
ムムムっ!そればかりは前世の知識があってもどうにもならない。さすがの僕にも妊娠は出来ない訳で…
「私は私の代でこの公爵家が潰える事ばかりを考えてきた。後継の問題など関係ないとばかり…。だがこうして君が私に未来をくれた。繁栄するリッターホルム。君と私のオーロラの国。ならば私もその先を考えなくてはならない。これは当主としての務めでもある」
「ユ、ユーリ!ぼ、僕は…そんな…、捨てられちゃうの?」
「何を馬鹿な事を!浮気は許さないって言ったのは君じゃないか。他にあるだろう?養子とか」
「あ、ああそっちか。良かった…」
「どうしたものかと考えあぐねているだけだ。大叔父上に子が居れば良かったものを。だが大叔父自身も遠縁から養子を貰っているのでね。大叔父上は万が一を考えて自分の血は残さぬとそう決められていたんだよ」
だから大公は奥さんを貰わなかったのか…。いいや!今からでも遅くない!せめて元王妃と幸せな余生を過ごして欲しい…
「だから君は何も心配しなくていい。これは私が考えるべき課題…なんとかしてみせる…」
「だけどそうなのかもしれない。彼はオーケソン家へ下働きじゃなく給金の高いフットマンとして奉公にあがってたよね。それって自分の容姿が武器になることを分かって志願したって事でしょう?どこかの侯爵令嬢ってビルギッタ嬢のことだよね?オーケソン家には嫡男が居たから実際は婿に入っても爵位は継げなかったけどね」
「例え話でも恐ろしい…、あんなのに言い寄られてたのか。気の毒に。」
馬車の中では今しがた耳にした会話に関心を隠せない。しかし驚いたな。涼し気な顔した子供たちの憧れる従士は僕たちが思うより中身は軟じゃないらしい。
そのしっかりものの息子を萎えさせるんだから彼の母親は一体…ブルル…
それにしても…同じ長男でもノールさんとはタイプが違う。タピオ兄さんの物理的な強さとも違う…。何が違う…あっ!
ショーグレン家も僕んちも、子供想いの優しい、そして時に厳しい両親が揃っている。けどビョルンさんの父親は早逝し母親は寄生虫だ…。強いんじゃなくて強くなったのか。弟妹の為に…
そこへいくとショーグレン家の弟はなんならお兄ちゃんよりしっかりしたロビンだし?タピオ兄さんの弟はこんなにチャーミングで賢い僕だし。つまり何が言いたいかと言うとうちの兄さんは果報者。だよね?そうだよね?間違って無いよねー?あれぇ?
「それにしても学院か…アレクシがあんなことを気にしてたなんて…」
「ゴホゴホ…、ユーリだって行ってないのに」
「ユーリウス様は事情がおありだったから。普通貴族家の子は余程の事情がない限り入学するのが通例だからね。あそこは勉強をするだけじゃない、社交の場でもあるんだよ。そうじゃないと将来につながる人脈が出来ないでしょう?」
「でも勉強はここで受けてたんだし、社交はその…、夜会とかに行くだけじゃダメなの?」
「駄目じゃないけど、夜会への招待だって名前も知らない人をそう簡単に招待したりはしないんだよ。夜会はね、情報の交換とか、知人同士を紹介し合って、既に出来上がった人脈を広げる場所と思った方が…」
なるほど。言われて見ればそういう下地をアレクシさんは持っていない。彼は長い間ユーリに付きっきりだったから。
貴族のはぐれ者…、あの意味は自分を卑下して言ってただけじゃないって事か。アレクシさんにはリッターホルム以外に貴族の知り合いがいない。
ヘンリックさんとケネス以外には………
「いやいや、筆頭侯爵家と王子が友人なら十分じゃない?十分すぎるって!」
「確かに…」
それでもノールさんは自分の知人に少しずつ引き合わせるとブツブツ言いながら自室へと戻って行った。
そして僕はと言えば…
「アレクシさんがモテている…。ナッツにアレクシさん…みんなモテモテだ。僕のモテ期はどこに…?」
「アッシュ、君と話がしたいとユングリング家のトールバルトが来ている。それだけじゃない。コルトバ侯からの使いも来ている…。造船事業の話をしたいらしい。ようやく君が戻ったというのにまったく邪魔な…」
「えっ?そうなの?」
「アッシュ様、たった今ファークランツ家のオトマール様が到着いたしました。先ほどの発表について詳しく聞きたいと仰っております」
「ヴェストさん、ちょっと相手しててくれる?」
「アッシュ様、コーネイン侯爵からお手紙が届いています。」
「ありがとうダリ、何々…、造船の事業は黙って進めるな…、あーもう!そんな一斉に来られたって…」
「ですがアッシュ様、これはアッシュ様の言われた『モテモテ』です」
認識されていたのか…。でも違うんだってば…これは…
急遽ファークランツ侯爵家のオトマールさんやユングリング侯爵家のトールバルトさんが夕食を共にすることになりサーダさんの気合も十分だ。
昼間の話も記憶に新しい。チャンスとばかりにアレクシさんも同席してもらったその日のディナーは和やかかつ賑やかに話が弾んでいた。
その後サロンに場所を移しお酒を飲みながら談笑するイケメン4人を、ミルクとお砂糖たっぷりのカフェオレを飲みながら見物する僕。うんうん、とても良い雰囲気で交流できてるじゃないの。
既婚の彼らはコイバナを通り越して子供の話をしている。この二人はユーリより年上だ。アレクシさんと同じくらいか…。だからかな?ユーリは少し控えめに参加しているようだ。
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「はあ…未だそのような事を。アレクシ、親しい君から殿下に進言できないかい。後継の問題もある。いつまでもこのままというわけには」
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ユーリのあんな表情を見てしまっては胸のつかえがとれやしない。
明日迄持ち越すくらいなら…、ここは兄さんに倣って直球だ!
「ねぇユーリ、最近時々考え事してるよね。悩みがあるなら話してほしい…。僕はユーリの奥さんなんだから。」
「いや、だがこれは…」
「もしかしてアルパ君の事?今日も開校祭来なかったよね。」
「え?ああいいや。アルパのことはまた別の、」
「彼がここに居るのホントは不愉快だったりするの?」
「そうじゃない。だが妙な気分になるのは事実だ。」
このリッターホルムにおいて、マテアスを父親とは認めない。それは共通認識なわけだけど、でも実際遺伝子学上は嫌でも親子な訳で…それはつまり、アルパ君はユーリの異母兄弟ってことで…
「彼に対して恨みも憎しみもない。だが胸襟を開くことは難しい」
複雑なんだろうな。ユーリの立場からしたら…。
「アッシュ、私はアルパなど眼中にない。今考えているのは後継の問題だ」
「えっ!」
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「ユ、ユーリ!ぼ、僕は…そんな…、捨てられちゃうの?」
「何を馬鹿な事を!浮気は許さないって言ったのは君じゃないか。他にあるだろう?養子とか」
「あ、ああそっちか。良かった…」
「どうしたものかと考えあぐねているだけだ。大叔父上に子が居れば良かったものを。だが大叔父自身も遠縁から養子を貰っているのでね。大叔父上は万が一を考えて自分の血は残さぬとそう決められていたんだよ」
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