チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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ごく普通な農家の息子は勘当息子を溺愛する?⑥

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「父さん、母さん、タピオ兄さん、ただいまー!」

「アッシュ!いきなりどうしたの?公爵様は?」
「えっとね、今ケネスの結婚式の前乗りで王都に来てて、それで王家の森にある泉から、ううん、何でもない。ところで兄さんは?」
「タピオなら隣の納屋に居るわよ。カミーユと一緒に。」

「出た、カミーユ…。兄さんに纏わりつくストーカー…」
「馬鹿言ってんじゃないの!良い子なんだから変なこと言わないのよ。」

「良い子なの…?」
「とっても良い子よ。…役には立たないけど…」

「役に立たないのか…」
「絵は上手いのよ。教会に飾ってあるから見て来なさい、上手だから。…他は一切役に立たないけど…」
「一切…」





ある日珍しく兄さんが頼みごとをしてきたと思ったら、それは王都で拾った絵描きに仕事はないかっていう話だった。

どういうことかと思って詳しく聞いてみれば何と言っていいのか…。

ようするに絵を生業にしたいどこかのボンボンが、親から勘当されたうえ騙されて全財産奪われたあげく、ようやく稼いだ小銭まで盗まれ、結果高熱だして寝込んでる、っていう…。災難のカルテット…気の毒すぎて言葉もない…。

僕のタピオ兄さんがそんな気の毒な人を放っておけないのは当然だ。ならば兄さんの弟として僕も力にならなくては。そう思ったのに…

なのにケネスのお祝いの事で連絡を入れた時、兄さんの口から明かされたのは驚愕の事実っ!

「あの絵描きさんどうなったの?」
「ああ。なんか俺のお婿さんになるとか言って押しかけて来た。面白い奴だよな」

全然面白くないからそれ!





「にいさーん!タピオ兄さーん!」
「アッシュか?どうしたんだいきなり?」

「兄さんがおかしなこと言うから確認に来たんじゃない!それも直通通路で!」
「泉の道か。って言うか何のことだ、おかしなことって」

「僕の大事な兄さんに押しかけ女房が居るとか居ないとか!」
「はは、カミーユのことか」


「タピオさん僕の名前を呼びましたか?誰と話して…、あれ?その小さな方は誰ですか?」
「ちっ!小さくない!」


きぃぃぃぃ!初対面でなんて失礼なんだ!だいたい自分だってそれほど大きくないじゃないか!


「怒るなアッシュ。カミーユ、これは俺の弟、アッシュだ。アッシュ、こっちがカミーユ。俺の…自称奥さんらしい、はは」

「兄さん!かっこ笑い、じゃないからね!どういう事!と、とにかく説明!説明を要求する!」
「タピオさん…弟さんが怖いです…」

「お黙り!この泥棒ネコ!」
「ひぅっ!」
「アッシュお前…ノリノリだな…」

「…一回言ってみたくて。」




兄さんの話によればどうにも手のかかる彼をほっとけなくて面倒見ている間にこうなったのだとか。

目の前にいる、どこかの子爵家次男だと言う彼は、少し話してみたところリッターホルムで出会った貴族たちとは違う、どこからどう見ても頼りない、だけどとぉぉぉっても覚えのあるような人だ…。あっ…!投稿者の『名前を言ってはいけないあの人』に似ているんだ…!会ったことはないけど、なにかこう、ダメ人間臭が…

オタ趣味に関しては偏執的に頑固なくせに、どこはかとなく漂う気の弱さで墓穴を掘ったり貧乏くじを引いたり、でも情にもろくて気の良い彼は、なんだかんだ言っていつも投稿仲間に可愛がられる良い奴だった。だけどなぁ…

両親と暮らすあの彼はいい歳こいて自分のパンツの場所さえ知らないと言っていた…。お米の炊き方…洗濯機の使い方さえも分からない…、母親が居なければ朝起きられないとも…
その彼と同じ臭いがする…。うわっ…


「兄さんなんだってまた…。」

「アッシュさんも思ってたのと違いますね。ちっちゃ」
「やかましい!もうちょっとこう…他にいるでしょ!ましなのが…」

「ん?なんだかな~。たまにお前といるように思えてな。ほら今も。紙とパステルを離さない。紙とペン持って暇さえあればいつも何か書いてたお前と同じだろ?」

「ぼ、僕はこんなダメ人間じゃない!」
「はは。そりゃお前は賢いし器用だから。けどな、カミーユを見てると兄さん兄さんって後を付いてきた昔のお前を思い出すんだよ。タピオさんタピオさんって、ついて回って。可愛いだろ?子犬みたいで」


そういえば兄さん、昔から犬を飼いたいって言ってた気がする…。そうか子犬みたいなもんか……え?僕も?


「僕そんなについて回ってたかなぁ…」
「まあな。おかげで右手が寂しくてな」
「右手?」

「いつも繋いでやったろ?「兄さん置いてかないで」ってベソかくから。カミーユは初めてあった時手を繋いでほしいって言ったんだよ。ベソかきながら「置いてかないで」って。懐かしくてな。おかげで兄さんの右手も寂しくなくなった」

「兄さん…」
「タピオさん…」


ガーン…、何てことだ。この世間知らずなお坊ちゃんは兄さんの庇護欲にジャストミートしたってのか…?いや、まさかな…犬って言ったし、うん?



ズイッ!「ぼ、僕がついてますからね!僕はタピオさんに寂しい想いなんてさせませんから!ずっと僕の面倒見ていいですよ!」
「ぐ、そう言われちゃ仕方ない、末永く兄さんに面倒見てもらって…、なんて殊勝なことを言うと思ったのか!この僕がっ!」

「ひっ!豹変!」
「なにが面倒見て下さいだ!奥さんだって言い張るなら家事全般、腕前のほど見せてもらおう!」

「やめろアッシュ」
「止めないで兄さん!」
「違う。それは母さんから禁止令が出てる」
「か、母さんから…。マジか…。一体何やったのカミーユ君…」

「え、えへへ…」


問いただしたところ、家じゅうの食器を割ったのだとか…、え…?


「それだけじゃないな。カミーユは母さんの漬けたピクルスも台無しにしたし」
「あの…、すこし甘みを足そうかと…まさかお塩だなんて…」
「布団叩きすぎて破いたし」
「ほ、埃がいつまでも無くならなくて…止め時が…」
「父さんの植えたルッコラも引っこ抜いたしな」
「雑草じゃなかったんですね…」
「そういえばモーモーのミルクを絞ってたはずがそのまま飲んで腹壊してた。プッ」
「美味しそうだったから…」

「…母さん…父さん…うぅ…気の毒に…」

「そんな訳でカミーユには絵を描く以外、何もするなって言ってある。家族の総意だ」
「あー…そう…」


想像以上のダメっぷり…。あの「働かざる者食うべからず!」な母さんを以てして何もするなと言わせるなんて…カミーユ、恐るべし…。

「やる気はあるんだけどな」
「えへへ…」

「ま、まぁいいや。そういう事なら気を取り直して絵でも観に行くか…」
「絵ですか?」

「母さんも兄さんも上手いって言うから気になって」
「絵ならここにもありますよ。ほら、タピオさんです」

「だ、誰だこれ!…5割増し…あ…うん。分かったから教会に行こうか」


なるほど。兄さんラブなのは十分伝わった。カミーユ君には兄さんが白馬の騎士に見えてるのか…ぷぷ…





「こ、これは…」


描かれていたのはまるで写真のように写実的な、とてもパステルで描かれたとは思えない、若葉を揺らす風さえ感じられる、そんな風景画の数々だった…


「す、スゴイ…」
「な?上手いだろ」

「兄さんと母さんのボキャブラリーが乏しすぎてここまでとは思わなかったよ。そうか…、紙一重の天才の方か…」

「そんな…、ただ僕には『色彩』のスキルがあって…」


それで人より再現率が高いのか…。本当に、これは絵というよりまるで写真だ…。ん?写真…?


「カミーユ君、お願いがあるんだけど…」






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