街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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66 15歳 in 執務室

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「『クーザ』って⁉ ヴォルフ!麻薬ってどういう事⁉」
「異変が起き始めたのは一年前だ。諜報の奴らが何かおかしいと気付いた。だが奴らはランカスターには入れない。いや、入れはしても動けまい。顔が知られているからな」

「それでヴォルフとシャリムが行ったんだよね?」

「結論から言うが…、お前の父親は既に重症中毒者だ」
「中毒…」

「お前の父親だけじゃない。近隣いくつかの領主もだ」

これはただ事じゃない。
詳しくは明日改めてクラウス、そしてゴーディも交え話をする必要がある。だけどヴォルフはハッキリと言ったのだ。
全てはエバの仕組んだことである、と。


麻薬『クーザ』とは、通常医療で使われるハーブにゲスマンの何処かで採掘されると言う、ある珍しい魔鉱石の粉を調合して作られる合成麻薬である。

前世の例に漏れずこの世界でも麻薬はご法度、それもかなりの重罪であり、それは使用、密造、そして売買、の順に重くなっていく。

合算方式で取り決められるこの国の刑罰では禁錮五十年を超えると問答無用で死罪となる。
平均寿命が七十歳程のこの世界で禁錮五十年は終わったも同じ、ならば生かしておいても経費の無駄ってことね。

麻薬売買の場合、一人に売れば十年、五人に売れば五十年、かなりの量刑、決して甘くはない。
重罪だからこそ確固たる証拠が必要ではあるが、バレればまず間違いなくあの世行き。
だからこそ金のなる木と分かっていても素人で『クーザ』の売買に手を出す馬鹿はほとんど居ない。それなのに…


「エバ、ここまでバカだったなんて…」
「諜報と手々分けしてここまで探って来たがようやく全容が見えてきた」

「ヴォルフ…」

「あの女は後添えとは言え正式な妻じゃない。それはつまり公爵夫人は名乗れないってことだ。当然使える力も限られる。だから『クーザ』を使った。お前の父を、そして近隣領主を操るために」

「今腑に落ちた。だから父はエバの言いなりになってゴーディーを罷免に…。それにエバが領民からむしり取ってるって話もずっと疑問だったんだ。父は経営の優劣は別として領民に無体を働く人では無かったから…。王侯貴族としての誇りをお持ちの方だったのにどうしてそんな、って…」


どんな事情があれ一応父親だ。親子愛…というものが皆無だとしても、僕が別邸に居を移すまではそれでも共に過ごした親子の時間は確かにあった。
なまじ赤ちゃん時代から記憶があるだけに抱っこされた覚えすらあったりする。
とにかく…、切って捨てられるほど非情にはなれない。それは父も同じだろう。

ウエストエンドへ引きこもると言う僕を、あれほど狂魔力に怯えながら、それでも一度は引き留めてみせた父。
あれが父の精一杯だったとしても、紛れもなく親子の情だ。


「治療を受けさせることは出来るだろうか…。僕の『キュア』で…とか…」
「あの女が側についてる限り無駄なことだ。近隣当主の問題もある」
「エバ…、絶対許さない…!」

全ての謎が解けた気がする。何故父があんな性格の悪い女にあれほど入れ込むのか…

「一体いつから…」

僕の心を折って操り人形にしたゲームのエバ。けれどこの舞台では…
心の折れない僕に代わり、ランカスターを我が物にするため父の精神を折ったのだ。麻薬という、もっとも卑劣な手段によって。

結局その日の夜は悶々として…、僕は一睡も出来なかった…


そして翌日早朝、執務室に集まったのはクラウス、ゴーディ、そしてヴォルフだ。
シャリムは偵察活動に手は貸せても話し合いには不向き。ヴォルフが居れば事足りる。

そこで語られるのはランカスター近隣領主の暴走行為とそこから引き起こされている諸々の問題。
もっとも、それらの領は優秀な家令、もしくは賢妻によってギリギリ持ちこたえているようだが。


「何故他領の当主まで…?」

「そこが不明だったのですがようやくつかめました。あの女狐めはどうやら彼らから借財をしていたようですな」
「借りを帳消しにさせるため薬を使ったのでしょう」

「それだけじゃない。あの女ははなからそいつらを薬漬けにして金づるにするつもりだった。全く恐れ入る」
「ヴォルフ…、それ…」

「シャリムが闇に紛れて聞き込んだ。あの女と薬を調達する売人のな。新たな使用人もそうだ。下位貴族の子弟を雇い入れ縁を持ち…」
「そうか、父親である各当主を新たな客にするつもりだったのだな…」

「『クーザ』がどれほど危険なものか分かっておらんのか、あの女狐は!」

あの女のやり口はいつも姑息だ。相手の精神を支配下に置き言いなりにして操る。支配の仕方が変わるだけだ。色仕掛けか…、虐待か…、そして今度は薬だ…。卑怯者め!

「以前は坊ちゃまの存在がアレを好き勝手させぬ抑止力になっておったのです。坊ちゃまがランカスターをお出になった後はあれよあれよという間に…」

苦々し気なゴーディ。彼は悔やんでいるのだ。何も出来なかった自分自身を。

「ウエストエンドと引き換えに置いて行った運営費は…」
「手に入れた金などあっという間に使い果たしております」
「家令は…」
「領内を荒らすエヴァを諫めるよう閣下に進言し続けた家令は高齢ゆえ日を追うごとに精彩を失い…」
「そうか…」

「まさか『クーザ』を手に入れておったとは!私としたことが何故気づかなかった!くそっ!こうして追い払われてはもう何も出来ない!ランカスターの破滅は目の前だ!」ドガッ!

ひび割れるテーブル。まるで今のランカスター領じゃないか。

「ゴーディ…、エバはランカスターを『クーザ』で栄させる気だろうか?公爵領であるランカスターを『クーザ』で?」
「あれは悪知恵には長けても決して賢いとは言えぬ女です。それがどれほど王家の怒りに触れるか分かっておらぬのですよ…」


僕には不思議でならない。正式な公爵爵夫人でないエバごときに何故近隣当主はお金を貸したのか?
ランカスターは決して豊かな領じゃない。それは社交界でも有名な話だ。なのに、上級使用人さえ逃げ出す今のランカスターにでさえ、子弟を差し出す家は後を絶たないだろうとジェイコブは言うのだ。

「坊ちゃまがお考えになるより〝公爵位”の権力は甘い水なのです」
「張りぼてのランカスターでも?」

「たとえ〝張りぼてのランカスター”でもです。」

「僕がランカスターを放棄すると言った時ハミルトンの叔父様も同じことを仰った…」

日本生まれの日本育ち、合理主義の現代人である僕は、実利を伴わない爵位になんか意味無いって思ってたし今でも思ってる。
なのに腐っても公爵位…名前だけでも十分価値あるってことなのか…

「僕があそこに居さえすれば…」
「これはご自分の立場も考えずあの女狐に心を許した閣下の甘さと弱さが招いた事。坊ちゃまが責任を感じる必要はありませぬ。坊ちゃまはあくまでハミルトン侯爵、ランカスターを継ぐのはあの愚かなパーカーでございます」

「ジェイコブ…」

あの時点で僅か十二歳だった僕が現当主である父に進言したところでどうせ右から左だ。
ましてや僕やコリンがあのままあそこに居たら事はもっとエスカレートしただろう。それほどあの〝エバ”という女は強欲なのだ…。

静まり返る室内。難しい顔で思案する僕に誰も声をかけられないでいる。


果たしてこれはフルスキルフルカンストで何とか出来る問題なのだろうか…?
力技でエバを排除すればいいのか?
…いいや。証拠が無ければ断罪されるのはこちらになる。相手はどれほどカスでも一応貴族。スラムの悪党とは訳が違うのだ。
僕は常に『狂魔力の暴走』という悪名を背負っている。力に頼れば危険視され最悪全ての自由を奪われる…


ここは慎重に考えねばならない。




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