僕はゼッタイユルサナイ

kozzy

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青写真の完成

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いずれにしても、今のミレイユはまだ自分磨きの最中、今度こそ社交界に君臨するため、機が熟すまで表には出てこないだろう。
相手が動くまでは手のうちようもない。僕は男爵の動向に目を光らせながらも当面は気にしないことにした。

そして百貨の店、実現のため、僕は構想を練る日々を送っていた。

前世と同じ地廻りの基盤はすでに出来ている。
アランブールは大貴族で付き合いも多く、かつ、例のあの投資事件による借財の肩代わり、代替取引などによって、多くの当主や嫡男(ほとんどは下位の若手だが)を便利な取引先として傘下にいれている。

「それぞれの領から様々な品を集めて…」
「ベル様、あれらの小さな領地はこれといった特産など持たぬのが普通ですよ。どうされるのです?」

「そんなの…」

なければ作るまでよ。
僕はディディエにそれらの領地について、そこがどんな風土でどんな特徴があるのか、こと細かに調べるよう命を出した。

これはディディエの執事教育でもある。(執事は主家と関わりのある領地のことも知ってなきゃいけないんだよ)
一石二鳥、僕の好きな言葉だ。



そして一か月後。

「ディディエ、この西の小さな男爵領では何が採れる?」
「え、えーと…大したものは。ああけど山にはオークの木が多い」
「じゃこっちの南西にある子爵領は?」
「そこは岩山の多い使い勝手の悪い土地だ。だからあんな投資話に食いついたんだろ」

「岩山…。リオネル、シーモアを呼んで」
「ただいますぐに」

やってきたシーモア君。もちろん彼はその〝岩山の多い子爵領”についても良く知っていた。

「あそこはいろんな石が採れるのですよ。ですが大して有用なものは…」
「そうなの?」ガッカリ…

「あ、あのそうですね…、しいて言うなら玄昌石でしょうか。屋根材などに使われる…」

屋根材…
そうか。何も宝石だけが石ではない。建築石材、その手があるか。

「シーモア、他にはどんな建築用の石が採れるかわかる?」
「建築用の石ですか?それでしたらむしろこの夏避暑に行かれた海沿いのバリエ男爵領のほうが」

へー、あそこで建築石材が採れるのか。

何しろ僕は江戸万戸の男。秋島津の国はほとんどが木造家屋だ。城でさえ。
だがこのコーニンレイク、および周辺各国は石造家屋が多い。
それは恐らく湿度の問題だろう。木材は湿気を吸収するが石材は結露する。その問題さえなければ石造りの方が耐久性はある。
また、もしかしたら地震とも関係するのかもしれない。
切り出した石を重ねて作り上げる石材建築は、多分だが揺れに弱い。
秋島津で時折感じた地面の揺れ、それを今世では一度も感じていないのだ。

何が言いたいかというと、僕はこの国の建築工法にまで詳しくはないと言うこと。悪しからず。

「あの男爵領では石灰岩が採れるのですよ。もちろん多くはありませんが」
「建物の壁面に使われる主建材ですよ」

フラン君が補足する。


建物、建物か…、そうだ。百貨の品を売るならそれに見合った建物が要る。
大きな一つの建物の中に百の品々を集めて…

そこでは物を買うだけでなく、屋外で木々や花々を眺め憩いの時間を過ごしたり、また屋上では縁日のように家族が手を繋いで訪れたり、また各領地の物産を集め、人々は王都に居ながら遠い地のことを知ることも出来るのだ。
ああそうだ。上階には美術品を集めよう。自身では手の届かない美術品。だがあれらは見ているだけでも心が豊かになる。それらを鑑賞することで明日の活力になればいい。

様々なピースが揃うことで、今までぼんやりとしていた未来像がここにきてはっきりしてきた気がする。

「シーモア、僕の息がかかった領内で建築資材のありそうなところリストアップしてくれる?」
「え?ええ。よろしいですよ」
「リオネル、傘下一覧を」
「畏まりました」

傘下の領にこだわるのは、そこからなら三割ほど安く仕入れが出来るからだ。
だが僕はガメツイばかりじゃない。
大きな、そう、まるで城ほど大きな建物。そしてそこに置く調度品。切り出し、加工、運搬、そこには多くの雇用が発生する。彼らにとっても利は大きいはずだ。商売とは皆で儲けないと!

「それからディディエ」
「はい」
「長屋の伝手で鳶や大工、それから左官を集めてくれる?人数は多ければ多いほどいい」
「と、とび?あ、ああはい。なんとなく言いたいことはわかった。すぐに集めます」

「リオネル。僕は今まで誰も考え付かなかったような、大きな大きな総合商店をこの王都に建てるつもりだよ」
「…百貨の店ですね」

「そう。場所は…そうだな。商業地区じゃなくて公共地区」
「公共地区…ですか」

だってこれは文化事業みたいなもんだからね。

「あそこの端に手付かずで残ってる大きな敷地があるね。あれをなんとか手に入れる」
「…このアランブールの敷地よりも大きな敷地ですが…」
「足りないぐらいだよ。だから建物は三階建てにする」
「三階…途方もない規模ですね」
「おや?弱気?」
「いいえ」

そう言うと思った。リオネルならね。

「すぐに予算編成の叩き台をだして。僕がチェックする」
「畏まりました」

その後シーモア君からの助言も得ながら絵の上手なフランの手を借り、僕が十二歳の誕生日を迎えるころ、その青写真は大まかにだけど描き上がった。


その全貌をご覧あれ。



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