僕はゼッタイユルサナイ

kozzy

文字の大きさ
46 / 81

ランデブー

しおりを挟む
その日、忙しくそれぞれの任務に邁進していた僕たち三人は、手に入れた建設予定地で落ち合っていた。

「見てごらんよ二人とも。ここから僕の表の夢が始まるんだ…」ジィィ…ン…
「嬉しそうですねベル様」
「まあね」

僕は〝エドマンドとみのおう”となって必ずや前世を超えて見せる!

「表の夢ってなんだよ」
「表と言うからには裏があるのですね」

「まあ…」

ただその夢に到達するにはまだ足りないものが色々とあってね…。そう、筋肉とか背丈とか。

「そっちは追々ね」
「そーなのか?」

「知っていますかベル様」
「ん?」
「私にも夢があるのですよ」
「へー?叶うと良いね」
「知りたいとはお思いになりませんか?」

「願い事は人に話すと叶わなくなるんだよ。胸にしまっておきなよ」
「そうなのですね。分かりました。ではその時を静かに待ちましょう」

「ベル様。俺にも夢が出来た」
「ディディエの夢?え?何々?」
「言ったら叶わないんだろ?秘密だよ」

「う…」

しりたーい!

「大それた夢かと思って気が引けてたけど…」
「な!何を言うのディディエ!夢は大きくだよ!」

少年よ、大志を抱けだ!

「ああ。それになんだか無理でも無い気がしてきてさ」

「そうそう!きっと叶うから諦めちゃダメ!応援してる!」

「フフフ…」
「ハハハ…」
「ククク…」

朗らかな午後。



それはさておき…

「ディディエ、大工の手配は」
「集められるだけ集めたけど…あれじゃ足りないだろ?」
「うん。彼らは現場の責任者だ。下っ端人足は他から連れてくる」
「王都の外で集めるんだな?」
「そう。日当は銀貨十五枚。週に一日休みがあって、週に金貨九枚程度を保証する」

「太っ腹だな…」

因みに銀貨十枚で金貨一枚ね。だけど平民街で金貨は使い辛いからだいたい銀貨で支払われる。

参考までに、この国の物価だが、農村部において貨幣収入は限られている。月に金貨二枚も手に入れば御の字だろう。

王都の下位労働者だと、労働の難易度に合わせて月に十五金貨から三十金貨までが平均だ。王都時代のパスカルで月金貨二十枚だとか言っていた。(今は金貨五十枚ね。彼は細工師の筆頭指導者だし)

ああそうそう。衣食住完備の下位使用人に至っては給金など出ないのが当たり前だ。が、僕は二人の従者にキチンと手当てを支払っている。

リオネルはそれを使い投資の訓練をしているようだ。時折相談に来るのがなんとも主人心をくすぐられる。

そしてディディエの分は、一部を除き時機を見て渡すよう主人の責任で貯めてあったりする。

え?何故今渡さないのかって?僕と居る限り使い道というか、お金を持つ必要がないからだよ。悪しからず。

何が言いたいかというと、質素な暮らしなら金貨十五枚程度あればひと月暮らせる庶民層において、これは簡易宿と屋台飯に日々金を使っても、十分仕送りが可能な額面ということである。

「鉄は熱いうちに打て、ってね。僕は成人までに僕の基盤を整えたい」

「アランブールの豊かな領地は基盤ではないのですか?」
「うーん…」

言えない…
成人になったらさっさと良家の嫁と契約婚をして、後継者が出来たらそっちはまだまだ元気であろうおじいさまと領地の家令に任せて、僕は前世からの心残りを叶えるべく王都で事業と衆道に没頭するつもりだとは…

あっあっ!誤解しないでね!
貴族に契約婚なんて普通だから!
アランブールの嫁なんて玉の輿だから!
贅沢三昧だから!
実家への支援も万全だから!

「はーはーはー…」
「どうしました」
「いや別に…」

ちょっと釈明をね。

「となるとあと四年もない。今は人手が最優先事項だ。リオネル、王都の大工にはすぐにでも計画概要を把握させて」
「畏まりました」

「それからディディエは各傘下の領に通達を出して出稼ぎ人を募るんだよ」
「わかった」

この事業は大きな意味を持つ。

人が集まり、宿に、飯に、酒に、金を落とす。これはある種の景気対策。
王都が賑わえば国の税収が増える。財政に余裕のない宮廷もさぞ喜ぶだろう。

本来こういったことは財務省が考えることなのだが、ここで宮廷に貸しを作っておくのも悪くはない。

ふっ。バーリー男爵よ。貸しとはこうしておおっぴらに作るのだよ。

「それからリオネル、傘下の領地を中心に資材を集めて」
「すぐに手配します」

これによってアランブール傘下領にも金が落ちる。誰につけば良い目を見るか、周囲に理解させるのも大事なことだ。

「ではベル様は…、分かりました。イリス夫人の頼まれ事ですね」
「そう。早急になんとかしてあげないと」

彼女は僕が認めた女性。彼女のような人を嫁にもらいたかったよ。いや、ホント。

「リオネル、スパイスと化粧品は…」
「ええ。夫人を説得してうちで全て引き取りましたよ」
「ディディエ、残りの卸先はどうなってる?」
「なんとか半分ほどは掃けたみたいだな」
「そう。後は何とかなるかな」

手を貸し過ぎてもイリス夫人の矜持を傷つけるだろう。

「惜しいよな。ベルナール百貨店の完成後ならそこに店を置いて売れたのにな」

「ふむ…?」

この国にはこうした総合的な店はない。服飾サロンが化粧品を売ったりはしないのだ。
だからこそ画期的だと思ったのだが…

僕は百貨の品を扱うにあたり、衣類、宝飾品、工芸品、全てを自身で手配しなければならないと考えていた。
だっていくら規模が大きかろうと百貨の店は僕の店…

だけどそうか。
何も自分で一から揃えなくとも信用のおける店子を募る…はっ!百貨の店自体をひとつの商店街と考えればいいのか!

家賃収入!

僕は商店街の大家になればいいのか!

もちろん契約店舗は厳選に厳選を重ねるとしても…

こりゃ楽だな!

その時僕には店子の集合店、という概念が生まれていた!

「ディディエ!やるじゃないか!」ガバッ!
「!」

「ディディエの既存に捕らわれない自由な発想が僕は好きだよ!」

「え?え?す…」パクパク…

「ベル様そのくらいで。ディディエの息が止まります」
「あ、ゴメン」

そんなに強くしがみついた覚えはなかったんだけどな…
にしても、主人に褒められて顔を真っ赤にするとか…可愛いい従者だ。

失くさないでくれたまえ、その純情を。

いつまでも…ね。ニヤリ…





しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

【完結】恋ではなくなったとしても

ねるねわかば
恋愛
没落した貴族家の令嬢アリーネは、家族を支えるため王都の社交サロンで同伴者として働いていた。 十一年前、彼女は婚約者イアン・ハイモンドに切り捨てられ、家もまた鉱山問題によって没落の危機に陥った。 時が流れ、社交界で再会した二人は、依頼主と同伴者という関係で再び顔を合わせることになる。 接客のプロとして振る舞おうとするアリーネだが、整理したはずだった感情が騒ぎはじめ、揺れている心を自覚する。 一方イアンは、壮年の男爵に寄り添うアリーネを見て何を思うのか。 諦念、罪悪感、同情。長い年月を経て変質せざるを得なかった二人の想いが、再会によってまたその形を変えていく。 2万字くらいのお話です。

不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しい私の話

あんど もあ
ファンタジー
王太子が真実の愛とか言って婚約破棄を宣言。廃太子と決まりました。おかげで妹の私に王太子になれと言われたのですが、不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しくて政略結婚の役にも立たないと言われていた私がですか?

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【短編】『待つ女』をやめたら、『追われる女』になりました

あまぞらりゅう
恋愛
婚約者の王太子を、いつも待ち続けてきたシャルロッテ侯爵令嬢。 だがある日、彼女は知ってしまう。彼には本命の恋人がいて、自分のことを都合よく放置していただけなのだと。 彼女が待つのをやめた瞬間、追ってきたのは隣国の皇太子だった。 ※覚えやすさや分かりやすさを重視しているので、登場人物の名前は「キャラクター名+身分表記」にしています ★小説家になろう2026/1/29日間総合8位異世界恋愛7位 ★他サイト様にも投稿しています!

氷の死神αと余命宣告五年の悪役令息

ミカン
BL
悪役令息Ωと噂されているミアンが死神と呼ばれる戦狂αと噂されているダリウスに出会う

処理中です...