転生子息は選ばれたい お家のために頑張ります

kozzy

文字の大きさ
19 / 86

一次審査通過

しおりを挟む
オリヴィエ・スターリング殿

厳正なる審査の結果、貴殿は次の関門へと進むことが決定した
二次関門は王都近郊にある王家直轄領、ブルーミンスターで行う

実地予定は五月の末日三日間。
この通知持参の上、前日までに王都入りし、当日十時までにブルーミンスターに建つ王家別荘、ブルーモアコテージに参上すること
従者の随行は門前迄、参加者は単身門をくぐられよ

尚、通知を持参でない者、時刻に遅れた者は資質に優れぬとしてその時点で失格とする




「うそぉ…通っちゃった…」

「通るだろ。俺は通ると思ってたよ」
「そんなの友だちの欲目だって!」
「いいや、アンディ君の目に狂いはない」

急遽集合した書斎に居るのは僕とアンディ、そして当主であるお父様だ。
お父様はすでにアンディのことを、有能なコンサルタントとして顔色を窺い始めている…お父様ってば…

「しかしこの選考会をデビュタントの代わりにするとは…アンディ君、君は何と言う策士なのだね」
「まあ…もと広告代理店の営業ですから」
「…?」
「ブローカーみたいなものですよ」
「…知恵者なのだね君は」

ふふ、広告代理店勤務なんて前世でもかなりエリートなんだよって教えてあげたい!アンディは僕の自慢なんだから!

「まさか我が家のオリヴィエが一次選考を通るなど…話しを聞いた時には「愚かな…」と思ったものだが…」

「お父様、たかが書類選考ですからあまり高望みなさらないでくださいね」
「あ、ああ。もちろんだとも。だがねオリヴィエ、たとえ一次とは言えお前の顔写真が高貴なる方々の目に留まった、それは紛れもない事実じゃないか」
「え?か、顔⁉ 」

「他にあるかね?以前からお前は磨けばどの貴公子にも負けず劣らぬ美人だと思っておったが、いやはや、鼻が高い」

これは暗に、家柄、魔法力、経歴(学歴)どれをとってもこれと言って評価ポイントが皆無だという意味だろう。
そのうえ磨かなければ箸にも棒にも引っかからなかったという意味でもある。
総合してこの場合の功労者は奇跡の一枚を作り上げたヒューさんじゃないだろうか。

昨晩お父様は早速お母様に手紙をしたためたようだ。
…書類審査ぐらいですごく恥ずかしい…二次であっさり落ちたらいたたまれないから本気でやめて欲しい。

「そうは言ってもオリー、三次まではなんとか食らい付けよ」

ブツブツと止まらない愚痴に釘を差すのはアンディ。
これは僕の社交界デビューでありスターリング領のプロモーション、真剣勝負には違いない。

二次審査は王子様たちと対面で話す自己PRタイム。魔法や語学、社交力などの才能的な部分が問われるのは三次からになる。だからこそアンディは「うまく関心を引ければニ次は通る」そう主張するんだよね。

フー…「自信はないけど…最善は尽くします!上官!」ビッ
「はははっ、頼んだぞオリヴィエ一等兵!」

今回の二次関門はわずか三日間。ギルドへの専売申請とかもあるのでまたまたアンディとの二人旅だ。
唯一テンションあがったのはそれくらいかな?

「アンディ、ギルドは一緒に行くとして…僕を待つ三日間は宿屋に泊まるの?心配だな…」

この心配はアンディが魔法を使えない事実に対してのもの。うっかり「汗かいたんでお湯ください」なんて言おうものなら…

「安心しろ。お前がそう言うと思ってヒューに泊めてくれるよう頼んである」
「え?で、でも…」
「ヒューには話してある」
「魔法が使えない事?いつ?」
「最近手紙でな」
「ヒューさんなんて?」
「『だから何よ』だとさ」
「ヒューさんらしい…」
「ヒューみたいなのは後でバレる方がうるさいんだよ」

この同性恋愛同性婚の世界においても〝おねぇ”という存在はややマイノリティだ。だからこそ彼らは真の多様性を尊んでいる。つまり他人の事情にいちいち口を挟まない。
きっと後でバレたら「いちいち隠してんじゃないわよボケが!」とか言われそう…

っていうか、いつのまにそれほど信頼関係出来たんだろう?これだからコミュ強って怖い。
 


それはさておき、当座の資金繰りが出来たことで屋敷では下働きの夫婦を、食事の支度と邸内の雑務、そして庭掃除や薪割りなどの外仕事のため新たに雇い入れている。
彼らの住まいは屋敷裏手にある丸太の小屋だ。フレッドが寝起きする厩舎横のグルーム小屋とは隣同士になる。

何しろこの間の出張時ときたら…屋敷に戻った僕とアンディがその惨状を見てどれほど脱力したか!

草ボーボーの荒れ果てた庭は仕方ないにしても…
乱雑に調理器具の置かれた厨房で新たに発見したのは焼け焦げた釜戸。あ、あっぶな…

クリーンの使えるお父様が居るおかげで煤と焦げ臭さは無いものの…水染みの付いたファブリックの類が、多分ウォーターを連発したであろう、お父様のパニックを物語っている。

幸い多少の手持ち(馬車を売ったお金)が出来たことで、ボヤの後は村人に謝礼を与えて食事を頼んでいたらしいが…

「フレッド、今度は前と違って大人の使用人が居るからね。困ったときはお父様じゃなくサムとアンナに聞くんだよ」
「はい」

そのお父様はアンディから領内整備に関し幾つかの任務を与えられていた。うち一つが留守中に着工するよう言われた川幅の拡張。僕が心配していた川の氾濫に対する対策ね。

「ウォーターを上手く使って高圧ジェットに出来れば早そうだな」

十分な寄付によって魔法を得ているお父様は、経年減少があっても未だ僕より多い魔法力をお持ちだ。やる事さえわかっていればきっと可能だろう。

先代亡き後頼る人も無い中、手探りで領主としての生活を二十年ほど続けてきたお父様。こうして今初めて信頼のおける助言者を得て、貴族の矜持よりも安堵の方が勝っているように見えるのは気のせいなんかじゃない。



こうしてバタバタと迎えた出発のタイムリミット。

「じゃあフレッド、戸締りは頼んだぞ」
「はい」
「それとお前は釜戸禁止な」
「はいスイマセン…」

「お父様行ってきます」
「オリヴィエ、精一杯力を尽くすのだよ」
「ええ」


僕とアンディは一か月ぶりとなる王都に向かってギグに乗り込んだのだ。

 

しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
*あらすじを改稿し、タグを編集する予定です m(_ _)m後からの改稿、追加で申し訳ございません (>_<)  社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  一体なんの話だよ!!  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。  食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていたのだが…… *残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

処理中です...