転生子息は選ばれたい お家のために頑張ります

kozzy

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二次審査開始

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「アンディ、じゃあ行ってくるね」
「ああ。頑張ってこい」ポン

「通知書よし。オリヴィエ・スターリング。入りなさい」


ギィィィガシャン

ここからついに独りぼっちの二次試験が始まる。

アンディが居ない不安と未知への期待、僕は何とも言い難い複雑な気分でまるでお城のように豪奢な建物に眼を見張っていた。

ギュ「きっと大丈夫。オニキスがあるもの…」

アンディがくれた僕の石。アンディの瞳と同じ黒のオニキス。どんな悪意からも僕を護るアンディの黒。

アンディが来てから僕の生活は好転している。使用人も増やせたし、たまったツケを支払ったから商人から物だって買える。お父様は川幅を上手く広げて今年の長雨は耐えられるだろうし…、ロジンアクセサリーが特産品になったらきっと領民の生活だって豊かになる。

僕のオニキスはきっとアンディ。アンディこそが僕の御守り。その彼が言うんだから。

『お前は強い』『お前は選んだんだ。自分の意志で』

だから僕も少しだけ信じよう。僕の石を。僕の意思を。

ペチ「よし!三日間がんばろ!」




さて、案内されたのは同じ下位の貴族子ばかり集められた四人部屋。女性たちは別棟だ。

「二階は高位の方々が滞在する個室となる。安易に立ち入らぬようお気を付け召されよ」

どうやら応募自体は身分を問わなくとも接遇は身分に準じるようだ。二階の個室には各部屋付きのメイドも居ると言う。三階?フロアー全体で五人だって。シビアだね。

でも良かった…むしろ緊張が軽くなったよ…

そんなことを思いながらドアを開ければ真っ先に駆け寄って来たのは赤茶けた髪の快活な青年。

「ハイ!僕はジョーンズ男爵家のヘンリー。今日から三日間よろしくね」
「僕はスターリング子爵家のオリヴィエ。こちらこそよろしく」ホッ

よかった…同室の彼は人当たりの良さそうな人だ。

「うちのひい祖父さんは大昔傭兵だったんだよね」
「そうなの?」

いきなり始まる家族の歴史。話の矛先が見えない…

「なんでもバンクシャー侯爵家の領地争いに参加して手柄をたてたみたい。それで男爵位をもらって騎士に取り立てられたんだよね」
「へ、へえ…」

「そのひい祖父さんの血かな?うちは代々魔法力が強いんだよね」

あ、これ先制攻撃だ…

「それを言うなら僕のおばあ様は傾国の美女と言われたハンプシャー侯爵家の四女。その美貌は代々家系の血に受け継がれていてね」

窓から外を眺めていた彼は、聞き捨てならないとばかりに割って入る。

「どうかな?僕は美女と名高いデボン伯爵家の令嬢にも負けてないと自負してるんだけど…」

「う、うん。とっても綺麗」
「ありがと」

彼、テイラー子爵家のディビッド君は確かに美人だ。気キツそうだけど…

「オリヴィエ、君は?」

彼らが気にしているのは僕のアピールポイントだろう。けどそんなのあるならこっちが知りたいよ!

「ぼ、僕はこれと言ってないかな…」
「ない?」
「呆れた。それでよく受けようと思ったね」

「記念受験とでもいうか…」

初めは「そんなわけないでしょう」「隠さなくってもいいじゃない」といぶかしんでいた彼らだが、僕のスペック、これを社交界デビューにするつもり、という情けない事情を知るとようやく納得したようだ。

「なるほどね。通過者の名前は新聞に全員載るものね。社交界に周知はされるか…」
「二次の通過者からは顔写真もだよ。どこのご当主だって興味深く見守っていらっしゃる」

これもアンディの読み通り。選考会の開催だけでも号外が出るんだから関門ことの結果も記事になるはずって。

「そういうことならまあ…頑張ってね」ポン
「健闘を祈ってるよ」クス

励まされた…、いや?バカにされたのかな?

「それにしたってよくそのスペックで通過したね君」
「ああ!巷の噂ではなんでも平民位から若干名かならず通過させるよう王命があったみたいだよ。オリヴィエもその一環かも」

そういうことか!僕も変だと思ってたんだよね!

彼らは僕をライバルではないと見なしたようだ。
若干のマウント臭を感じないでもないが、彼らの態度が非常に優しくなったので結果オーライとしよう。

部屋は四人部屋。なのにいくら待っても四人目は現れなかった。怖気ついて参加を取りやめたのか…それとも不備(遅刻とか)があって取り消されたのか…

同じような事例は他の部屋でもあったようで、結局フロアー付きの衛兵さんに聞いた参加総数は六十二名。
内訳は高位貴家の令嬢、ご子息が三十五名、平民位の特別枠が五名、残る二十二名が下位貴族、妥当なところだろう。
何だかんだでここから三次審査へ進めるのは四十名。アンディからはこの四十名に残れと厳命されているが…ふー…こればかりは王子次第だからね。


今はそんなことより…


「あの…僕食事に行こうと思って。あなたたちは?」
「僕はいいや。後にする」
「僕も」

「せっかく食べ放題なのに…いかないの?」
「まだ王族の馬車は到着していないじゃない」
「どうせ昼食をとるなら殿下方とご一緒したいもの。様子見だよ」

なるほど…勝負はすでに始まってるってことか。だけど王子の動向は僕にとって実質関係無い。
入室前に受けた説明によると、ここの食事は二十四時間体制のオーダーブッフェ形式となっている。朝食は一応食べてきたけど…予算を気にしてやや控えめにした僕はすでにお腹がグーグーだ。

「じゃあ僕行くね」

「どうぞ」
「ご自由に」

ここに居るのは皆ライバル。どことなく緊張感の漂う不思議な空間…
まあ…サマースクールに来たわけでもないし、敵認定されずに済んだだけでも上出来か。


人気のない男女共有スペース。ここは大学の学食みたいな場所だ。広い空間に四人掛けの丸テーブルが幾つもあって、ダイニングでもありカフェテリアでもあり談話室でもあり読書室でもある。

そして献立表に並んでいるのは国も時代も無視したワールドワイドなメニューの数々。こんなの…テンション爆あがり!ああ…これだけでもここまで来た甲斐があった…


「あのー…すいませーん。ポークチョップくださーい」ワクワク
「お持ちしますので掛けてお待ちください」
「はーい」カタン…

キョロキョロ
チラリホラリと見えるのは静かにティーカップを傾ける数人のご令嬢。ご子息の姿は…ないな。

「お待たせしました」コトリ
「わぁ!」イソイソ

前世ぶりのポークチョップ…ああ美味しそう…

困窮以前のスターリング家では当然お肉も口にしていた。
けどそもそもあんなド田舎、手に入る食材にも限りがある。当時のたんぱく源は主に卵と魚、そしてお父様の狩猟によるキジ肉か鴨肉がほとんど。家畜肉なんてすごく久しぶり。
ましてやここは王家の別荘で、腕を振るうのも王家のシェフ。こんなの絶対美味しいやつじゃん!

あーあ、アンディにも食べさせてあげたいな。この前世っぽい食事メニュー。だってビーフシチューとか絶対喜ぶじゃん。
…よし!最終日に何か容器に詰めて持って帰ろう!…そうと決まれば今は…

シャキーン「いっただっきまーす!」

クス…

どこからか聞こえたのは微かな失笑。

…失笑⁉




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