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18 断罪へ至る日常
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今僕はシャノン専用個室にて取り巻きたちと昼食中だ。
午前一講義、午後一講義の間にあるランチタイムは二時間半というゆったり仕様。食事プラス食後のお茶プラス午後の準備のためにこうなっている。貴族は食事を10分で掻っ込んだりしないのだ…。
記念すべき初めての高校生活一日目。秋期初日から普通に授業の有る学院で午前の講義を無難にこなした僕は、終了の合図とともに楽しみにしていた人生初の学食に足を向けていた。
常時開放のカフェテリアには大勢の学生がいる。初・体・験…
「おい、あれ…」
「嘘だろう…、なんでシャノン様が…」
僕の姿に騒めく学食内。良いじゃん来たって。なんならこれは今日のメインイベント。そのためにお弁当も持って来なかったんだから。
「あの、すみません」
「へっ?お、俺、いえ、私ですか?」
「僕、学食って初めてで…その、オ」
「いけませんシャノン様!」
「いやオーd」
「カフェテリアで何をなさっておいでですか?」
「だから注m」
「アーロンなど放っておくのが一番です!さあこちらへ!」
「あ、ちょ」
どこで注文するのかな?とウロウロしていたところ、何かを誤解したであろう三人の取り巻きに、シャノン専用のサロンへと引っ張って来られたのが只今の僕である。
どうやら王族には専用の個室があるらしい。なにそのセレブな語感。
今現在学院で学ぶ王族はコンラッドとアレイスターなのだが、何故かコンラッドの婚約者であるシャノンにもフライングで個室が与えられている。
ノベル内で大きな役割をもつ『サロン』それがこの個室のことか…
継ぎはぎの情報を総合すると、なんでもコンラッドが「陛下の命」を盾に、個室にアーロンを招き入れていると知った王妃が、シャノンの立場を慮って学長に用意させたのだとか。王妃…グッジョブ!
学食は残念だったが、これからいくらでも機会はあるだろう。
それよりサロンはノベルでも頻繁に出てきた舞台。ここにアーロンをお茶に誘って恥をかかせたり、ここにアーロンを勉強会の名目で呼びつけ教科書をビリビリに破いたり…。その舞台となる記念すべき場所。僕は不思議な感動に浸っていた。
そして分かったことだが、僕の昼食は常に取り巻きの誰かが用意してくれているらしい。あー、だからお弁当はいらないって言った僕に、シェフがあっさり頷いたのか。
学院内に従者は伴えない。代りにサロン専用メイドが一人付く。そのメイドさんがキレイにテーブルの上を整える。
そして黙食…、それが本日の僕にとっての、もっとも正しい昼食の作法である。
どうやらシャノンは元々無口な性質らしい。僕が身バレ警戒で黙っていても、周りは特に気にしないでおしゃべりに花を咲かせている。そのおかげでこうして空気のように聞き役に徹しているのだが…オタクの特技、人間観察。これはこれで情報収集にはいいかもしれない。
おかげで脳内の人物相関図に新たなる情報が書き込まれていく。
どの辺がコンラッド支持層でどの辺がシャノン支持層で、…そしてここにもアレイスター派閥は出てこない…
「それにしても先ほどの授業…、レイトン教授もすっかり舌を巻いておりましたね。素晴らしいですシャノン様」
「それより午前中は少し落ち着かないご様子でしたが…、ようやく調子を取り戻されましたか?」
「サロンに来られてからは何だか嬉しそうですね」
おっといけない。顔に出てたか…。問いかけてきたのはアリソン君。チキンのパイ詰めを持って来てくれたご令息だ。
「こうしてここでランチを出来る喜びに浸っていまして…。アリソン様のお弁当はどれもこれも美味しくて…ほっぺが落ちそうです」
やばっ、顔がにやける…
「そ、そのようにおっしゃっていただけるとは…当家のシェフも喜ぶでしょう…」
「シャノン様…、なんだか雰囲気が変わられましたわね。近寄り難さが無くなったというか…」
「先ほどからどこか楽しそうで…良いことでもありましたか?」
「リアム様!」
「あ…、し、失礼しました、こんな時に」
「いいえ。何も問題ないです」
「シャノン様…」
そう。何も問題は無い。思いのほか全てが順調に進んでいる。
取り巻きたちとの交流もこうして無事果たせたし、授業の内容も問題なく理解できた。
なんかチラチラそこら中から見られるのがうっとおしいっちゃうっとおしいけど、教授回診で研修医の大群に囲まれることの多かった僕は、ジロジロ見られるのにも、ヒソヒソ何か(病状とか?)言われるのにも慣れている。
むしろ初日だと言うのに、文学の授業に中世ファンタジーの登竜門、バッタもんの騎士物語『オーサー王伝説』が出てきたもんだから、思わず僕なりの解釈を1時間ものあいだ熱く語ってしまったのは少しやりすぎたと反省している。
でもそれも含めて何一つ問題は無い。
僕のシャノンとしての学院ライフは薔薇色の予感!
午前一講義、午後一講義の間にあるランチタイムは二時間半というゆったり仕様。食事プラス食後のお茶プラス午後の準備のためにこうなっている。貴族は食事を10分で掻っ込んだりしないのだ…。
記念すべき初めての高校生活一日目。秋期初日から普通に授業の有る学院で午前の講義を無難にこなした僕は、終了の合図とともに楽しみにしていた人生初の学食に足を向けていた。
常時開放のカフェテリアには大勢の学生がいる。初・体・験…
「おい、あれ…」
「嘘だろう…、なんでシャノン様が…」
僕の姿に騒めく学食内。良いじゃん来たって。なんならこれは今日のメインイベント。そのためにお弁当も持って来なかったんだから。
「あの、すみません」
「へっ?お、俺、いえ、私ですか?」
「僕、学食って初めてで…その、オ」
「いけませんシャノン様!」
「いやオーd」
「カフェテリアで何をなさっておいでですか?」
「だから注m」
「アーロンなど放っておくのが一番です!さあこちらへ!」
「あ、ちょ」
どこで注文するのかな?とウロウロしていたところ、何かを誤解したであろう三人の取り巻きに、シャノン専用のサロンへと引っ張って来られたのが只今の僕である。
どうやら王族には専用の個室があるらしい。なにそのセレブな語感。
今現在学院で学ぶ王族はコンラッドとアレイスターなのだが、何故かコンラッドの婚約者であるシャノンにもフライングで個室が与えられている。
ノベル内で大きな役割をもつ『サロン』それがこの個室のことか…
継ぎはぎの情報を総合すると、なんでもコンラッドが「陛下の命」を盾に、個室にアーロンを招き入れていると知った王妃が、シャノンの立場を慮って学長に用意させたのだとか。王妃…グッジョブ!
学食は残念だったが、これからいくらでも機会はあるだろう。
それよりサロンはノベルでも頻繁に出てきた舞台。ここにアーロンをお茶に誘って恥をかかせたり、ここにアーロンを勉強会の名目で呼びつけ教科書をビリビリに破いたり…。その舞台となる記念すべき場所。僕は不思議な感動に浸っていた。
そして分かったことだが、僕の昼食は常に取り巻きの誰かが用意してくれているらしい。あー、だからお弁当はいらないって言った僕に、シェフがあっさり頷いたのか。
学院内に従者は伴えない。代りにサロン専用メイドが一人付く。そのメイドさんがキレイにテーブルの上を整える。
そして黙食…、それが本日の僕にとっての、もっとも正しい昼食の作法である。
どうやらシャノンは元々無口な性質らしい。僕が身バレ警戒で黙っていても、周りは特に気にしないでおしゃべりに花を咲かせている。そのおかげでこうして空気のように聞き役に徹しているのだが…オタクの特技、人間観察。これはこれで情報収集にはいいかもしれない。
おかげで脳内の人物相関図に新たなる情報が書き込まれていく。
どの辺がコンラッド支持層でどの辺がシャノン支持層で、…そしてここにもアレイスター派閥は出てこない…
「それにしても先ほどの授業…、レイトン教授もすっかり舌を巻いておりましたね。素晴らしいですシャノン様」
「それより午前中は少し落ち着かないご様子でしたが…、ようやく調子を取り戻されましたか?」
「サロンに来られてからは何だか嬉しそうですね」
おっといけない。顔に出てたか…。問いかけてきたのはアリソン君。チキンのパイ詰めを持って来てくれたご令息だ。
「こうしてここでランチを出来る喜びに浸っていまして…。アリソン様のお弁当はどれもこれも美味しくて…ほっぺが落ちそうです」
やばっ、顔がにやける…
「そ、そのようにおっしゃっていただけるとは…当家のシェフも喜ぶでしょう…」
「シャノン様…、なんだか雰囲気が変わられましたわね。近寄り難さが無くなったというか…」
「先ほどからどこか楽しそうで…良いことでもありましたか?」
「リアム様!」
「あ…、し、失礼しました、こんな時に」
「いいえ。何も問題ないです」
「シャノン様…」
そう。何も問題は無い。思いのほか全てが順調に進んでいる。
取り巻きたちとの交流もこうして無事果たせたし、授業の内容も問題なく理解できた。
なんかチラチラそこら中から見られるのがうっとおしいっちゃうっとおしいけど、教授回診で研修医の大群に囲まれることの多かった僕は、ジロジロ見られるのにも、ヒソヒソ何か(病状とか?)言われるのにも慣れている。
むしろ初日だと言うのに、文学の授業に中世ファンタジーの登竜門、バッタもんの騎士物語『オーサー王伝説』が出てきたもんだから、思わず僕なりの解釈を1時間ものあいだ熱く語ってしまったのは少しやりすぎたと反省している。
でもそれも含めて何一つ問題は無い。
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