断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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ロイド

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早朝、私は当家自慢の庭園にいた。これはガーデナーのみならず、母が手塩にかけている自慢の花々だ。
そして今日も一輪花を手折る。敬愛すべきシャノン様へと捧げるために。

今日の花はシクラメン。花言葉は『憧れ』。

「口頭でお伝えできればどれだけ良いか…」

だがそんなことは許されない。今の私ではまだ彼の背をコッソリ盗み見る程度がお似合いだ。もっとシャノン様に相応しい…男…いや、友人…まさか、側k…いや、部下…でもない、…しもべとなるために。
だが…頭を下げてお願いしたら聞いて下さるという言葉に勇気をもらい、決死の覚悟で口にした勉強会へのお誘いを、シャノン様はためらいながらも、「いずれそのうち」「いけたら行くね」と仰ってくださった。

「ああ楽しみだ。そのうちとはいつだろうか…」

思えば転機となったあの王城での出来事。私はシャノン様から「送らせてあげる」と命を受けたとき嫌ではなかったのだ。むしろなにか、雷にでも打たれたかのような気持ちになった。これももそうだ。シャノン様に頭を下げる…、私はこの行為に身体が震えてさえいた。もちろん歓喜の震えだ。

そのうえあんな思いがけない機会に恵まれるとは!

給仕のエプロンを腰に巻いてたどたどしい仕草でお茶や焼き菓子を運ぶシャノン様。私に命を下すシャノン様もいいが…

「あれはあれでなかなか…」

苦いはずのコーヒーがあれほど甘く感じるとは…、思わずあのカップを買い取ってしまったが、同じことを考えた輩は存外多かったらしい…。だが、それらも含め、何と素晴らしき毎日!

アーロンに恋焦がれ、報われぬ想いに鬱屈した日々を送っていたのが信じられない。
そうだ。愛とは人を幸せにするもの。想えば想うほど絶望が広がっていくというのがそもそも間違いなのだ。
アーロンを想う時、私は常に言いようのない不安感に襲われた。それが余計にアーロンを切望させた。そしてまた焦燥する。堂々巡りだ。

だがシャノン様を想う時、私は言いようのない歓びに包まれる。たとえその先に想いの成就が無くともだ。シャノン様を想える、それだけのことが私に言いようのない幸福感を与え…私は、私は、シャノン様が私と同じ時代にこうして生きていることがどれほど幸運なことなのかと……、ああ!私は幸せ者だ!!!

…取り乱したが、とにかくあれ以来私はとても充実した日々を送っている。
今日も執行部の朝礼へと向かう道すがら、シャノン様の姿を目にしてそっと柱に身をひそめる。

「何故陛下はアーロンが『聖なる力』の神子だって信じてるんだろう…」

おや?そうか。シャノン様は陛下のお考えを知りたがっているのか。
陛下はお考えをいちいち言葉にはされない方だ。「こうしろ」と命だけを与え、ご自分は戦場の指揮であったり、辺境の視察であったり、年の半分を超えて王城に留まられることは無い。
それは恐らく、王城で妃殿下方の揉め事に巻き込まれるのを厭わしくお思いだからだろう。

妃殿下方が揉めるのは、主に陛下が第三側妃ばかりを寵愛なさるからだ。
第三側妃は陛下が自ら引き入れた側妃。他の方々は家門などのバランスを考え迎え入れた側妃。愛情に差があるのも仕方がないと言えば仕方が無いが…、王妃殿下があれほど気丈で理性的で実利主義でなければ、後宮はもっと醜く争っていたことだろう。

聡明な王妃と奔放な陛下。私はそこにコンラッドの未来を見た。だが…シャノン様は私がお守りする。人知れずそっと、私はいつでもこうして陰からお支えする…

翌日いつものように花を捧げに、誰もいない講義室の、シャノン様がその可憐な指でノートをとられる机に向かう。

「この椅子にシャノン様が…」ギシ…

まだ温もりを感じられる気がする…
ふと見ると、そこには人型に折られた一枚の紙片が。

「誰だ!私のシャノン様に恋文など…、身の程知らずな!」

憤慨してその紙を握りつぶしかけたその時、チラリと見えた紙片には、「いつもありがとう。助かりました。またお願いします。お花の人へ」と書かれていた…

父が王の側近で良かった…これほど父の存在を誇りに思ったことはない。
私はその日、父のために上等のペンを一本買い入れ、「これからも元気で仕事にお励み下さい」と書いた手紙と共に書斎の机に置いておいた。






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