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32 断罪の基
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王の帰還は前世で言うところのクリスマスごろ。
もちろんイエスキリストの居ないこの世界では、24日も25日もただの12月下旬でしかない。
代わりに年明け1月11日、前世で言う鏡開きの日にルテティア国教のお祝いである神礼祭がある。これはクリスマスとお盆と正月が全部一緒になったような、この国で一番盛大なお祝いである。
あの紙片に書かれていたアーロンの王様への謁見とは一年前のこの日を指す。
神礼祭では国中の国教会から、その教会でその年最も敬虔だった聖職者を一人選定し、主教様が国王との謁見の場に同伴させるのだ。
あの紙片の内容からすると、歴代含め、王は『聖なる力』の神子を探し求めて、敬虔な聖職者を集めていたのだろう。
その機会に見事お眼鏡に叶ったのがアーロンというわけか。
王妃様はそのお祭りに王様凱旋パレードをぶち込んだ。近年まれにみる規模の祝典になるであろうこの催しを、今から誰もが楽しみに待っている。
僕?僕はその日、アシュリーやカイル、騎士たちと一緒に変装して下町へ遊びに出かける予定だ。
ブラッド?はい残念。彼はそのころ西の領地で研修中だ。
「変装と言われましても…。シャノン様、どんな変装をお考えですか?何を着てもシャノン様は目立ってしまわれますよ」
カイルが心配そうに問いかける。だが大丈夫。すでに手は打ってある。
「えーと、アシュリーにメイドさんのお出かけ着を貸りて女装しようかと…」
「何ですって!」
「だって性別が違う時点で僕だとは思われないでしょ?」
「そうですか…?」
「そうだよ。だからカイルも平民の格好してね」
「それはいいですけど…はぁ…」
何その目。心配性だなぁ…。
「あ、でも女性(女装子)一人に男だらけじゃリアルにハーレムだな…。カイルもじょそ」
「嫌です」
にべも無し。
さて、冬期休暇に入り、ジェロームに手紙を書いたり、ブラッドを見送ったりしている間に王城から手紙が届いた。
王様が帰ってきたから会いに来るように、という内容だ。ヤダなぁ…、またお腹が痛くなる…。だから早く断罪されたいんだって!
そして指定された日、渋々支度をしていると、なんと!……コンラッドが馬車で迎えに現れた…。どういう風の吹き回し?
「僕が逃げ出さないよう見張りですか?」
「そうじゃない。アーロンを教会まで送った帰りだ」
「ああ!ついで、ということですね」
「そういうわけではない」
そういうワケしかないっての。でもまぁ、通り道なのに素通りしなかっただけ以前よりはマシってことか。だから何って話だけど。
気まずい車内。口火を切ったのはコンラッドだ。
「君がプリチャード侯を説得したのか」
「何の話です?」
「ブラッドのことだ」
「何か問題が?」
「ブラッドの不在と去就をアーロンが残念がっていてね。彼は良い信徒だったのに、と」
「おや?ブラッドの将来を思えばそこは応援するとこじゃないんですか?」
「そうだ。…もちろんそうだ…」
何を言おうとしているのか…。
「なんだその顔は。彼は5歳から常に一緒にいた私の親友だ。彼の不在を寂しいと思ってはいけないか」
「親友なら尚の事、お互いに自立してなきゃダメでしょうが」
「私がブラッドに寄りかかっていると言うのか」
「何故そう思うんです?僕はブラッドがそうだって言いたかったんですけど…」
「そ、そうか…」
思春期とはとかく難しい…。因みに僕はそんな時期とっくに通り過ぎた。
そうこうするうちに到着したいつもの王城。すでに城内マップは攻略済みである。
カイルとはここでお別れ、いつもより少し仰々しく王の私的な応接室へと通される。こういう時、ああ婚約者なんだなってしみじみ実感…。
「シャノン。私が不在の間、コンラッドが迷惑をかけたようだな」
「迷惑だなんてそんな。もう過ぎたことですから」
ルテティアの王様、ローグ・ルテティア三世はコンラッドによく似た(コンラッドが似ているのか)赤髪の美中年。その佇まいは威厳に満ちている。さすが自ら陣頭指揮を執る戦勝国の王様。どこからどう見ても強そうだ。
コンラッドはパパっ子か。王様を見る目が憧れの人を見るそれになっている。
「あなた。蒸し返すのはおよしになって。ようやく皆落ち着きを取り戻したところなのですから」
冷たく言い放つ王妃様。さ、寒い…。この寒さは12月だから、だけじゃない。
「そうれもそうか。では一言。コンラッドよ。王太子になる身なればもっと精進せよ」
「はい。お見苦しい報告を情けなく思っております」
っていうか、王様の命令と王様の遺伝子が原因じゃね?はっ!全部王様のせいじゃん…って言えたらな。首が飛ぶから(リアルに)言えないけど…
「ところでシャノン、神子アーロンは其方との密な懇談を望んでおるようだが、いかがする」
なにぃ!…ガクガクブルブル…王様まで抱き込んで何を言う!
「…コンラッド様と話は付いております。必要無いです」
「頑なな其方の心を解放したいと、そう申しておったが」
「…僕の心はあれ以来この上なく開放的です。必要無いです」
そりゃもう。パンイチでウロウロするほど。あ、私室限定ね。
「相互理解の機会をと、そう申しておるが」
「必要無いです」
「シャノン…、アーロンの歩み寄りが分からないのか」
うるさいコンラッド!僕の貞操の危機がわからないのか!
「というか、支障がないなら相互理解なんて必要ないとは思いませんか?人と人が全て分かりあえるなんて幻想ですよ?人は皆妥協の中でこのくらいは…って折り合い付けて生きてるんです。ねぇ王妃様?」
「まっ!そ、そうね…、シャノンの言う通りね。あなた。無理強いは止めて頂戴」
「そうですよ。むしろどうしてアーロンはそこまで歩み寄りを望むのですか?普通に考えて僕とアーロンの立場で無理ですから。ねぇ王妃様?」
「…シャノンのいう事はもっともだわ。あなた!この話はもう二度としないでくださいな!」
「だが神子がお望みなのだ」
イラッ「デリカシーの欠如です。ねぇ王妃様?」
「あなた!何度も申し上げておりますでしょう!あれはまだ『神託』を受けてはおりません!一介の侍祭に振り回されてどうするのです!」
「う、うむ…。王妃がそう申すのであればこの話は止そう…」
王妃様!これからも付いてゆきます…
その後、少し遅めのロイヤルランチをご馳走になって(味が分からない…)夕方前には退散したが、なんにしても、今回の呼び出しがアーロンの意を汲んでのものだということはハッキリした。
アーロン、恐ろしい子…、油断一秒怪我致命傷だ。油断せず行こう!
さて、ルテティアの年末年始は神礼祭前ということもあって、厳かかつ静かに過ごす。僕はご招待を受けてリアム君のお家とミーガン嬢のお家に、それぞれ婚約のお祝いも兼ねてお邪魔したのだが、リアム君のお父さん、ハワード伯はどうもカサンドラ様の熱心なファンだったらしく、息子を押し退けて僕の隣をキープするのはどうかと思う。ドン引き…
そしてついに神礼祭当日!
僕はお忍び用の一番地味な馬車に乗り、そのうえモリセット子爵家の裏口から入るという念の入れようでコソコソと下町行きの下準備をはじめようとしていた。
「シャノン様、モリセット子爵はどうされたのでしょう」
「なんか家中がバタバタして…、何かあったのかな?」
執事さんに通された一室には女性ものの庶民服が一式。でもそこに家人はいない。これは一体…
と、そこにノックが。ようやくアシュリーのお出ましかな?
「アシュリー、今日はお世話になります…えっ?」
「やあシャノン。こうして学院の外で会うのは初めてだね」
えー⁉ あ、ああ、アレイスター!!!
もちろんイエスキリストの居ないこの世界では、24日も25日もただの12月下旬でしかない。
代わりに年明け1月11日、前世で言う鏡開きの日にルテティア国教のお祝いである神礼祭がある。これはクリスマスとお盆と正月が全部一緒になったような、この国で一番盛大なお祝いである。
あの紙片に書かれていたアーロンの王様への謁見とは一年前のこの日を指す。
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あの紙片の内容からすると、歴代含め、王は『聖なる力』の神子を探し求めて、敬虔な聖職者を集めていたのだろう。
その機会に見事お眼鏡に叶ったのがアーロンというわけか。
王妃様はそのお祭りに王様凱旋パレードをぶち込んだ。近年まれにみる規模の祝典になるであろうこの催しを、今から誰もが楽しみに待っている。
僕?僕はその日、アシュリーやカイル、騎士たちと一緒に変装して下町へ遊びに出かける予定だ。
ブラッド?はい残念。彼はそのころ西の領地で研修中だ。
「変装と言われましても…。シャノン様、どんな変装をお考えですか?何を着てもシャノン様は目立ってしまわれますよ」
カイルが心配そうに問いかける。だが大丈夫。すでに手は打ってある。
「えーと、アシュリーにメイドさんのお出かけ着を貸りて女装しようかと…」
「何ですって!」
「だって性別が違う時点で僕だとは思われないでしょ?」
「そうですか…?」
「そうだよ。だからカイルも平民の格好してね」
「それはいいですけど…はぁ…」
何その目。心配性だなぁ…。
「あ、でも女性(女装子)一人に男だらけじゃリアルにハーレムだな…。カイルもじょそ」
「嫌です」
にべも無し。
さて、冬期休暇に入り、ジェロームに手紙を書いたり、ブラッドを見送ったりしている間に王城から手紙が届いた。
王様が帰ってきたから会いに来るように、という内容だ。ヤダなぁ…、またお腹が痛くなる…。だから早く断罪されたいんだって!
そして指定された日、渋々支度をしていると、なんと!……コンラッドが馬車で迎えに現れた…。どういう風の吹き回し?
「僕が逃げ出さないよう見張りですか?」
「そうじゃない。アーロンを教会まで送った帰りだ」
「ああ!ついで、ということですね」
「そういうわけではない」
そういうワケしかないっての。でもまぁ、通り道なのに素通りしなかっただけ以前よりはマシってことか。だから何って話だけど。
気まずい車内。口火を切ったのはコンラッドだ。
「君がプリチャード侯を説得したのか」
「何の話です?」
「ブラッドのことだ」
「何か問題が?」
「ブラッドの不在と去就をアーロンが残念がっていてね。彼は良い信徒だったのに、と」
「おや?ブラッドの将来を思えばそこは応援するとこじゃないんですか?」
「そうだ。…もちろんそうだ…」
何を言おうとしているのか…。
「なんだその顔は。彼は5歳から常に一緒にいた私の親友だ。彼の不在を寂しいと思ってはいけないか」
「親友なら尚の事、お互いに自立してなきゃダメでしょうが」
「私がブラッドに寄りかかっていると言うのか」
「何故そう思うんです?僕はブラッドがそうだって言いたかったんですけど…」
「そ、そうか…」
思春期とはとかく難しい…。因みに僕はそんな時期とっくに通り過ぎた。
そうこうするうちに到着したいつもの王城。すでに城内マップは攻略済みである。
カイルとはここでお別れ、いつもより少し仰々しく王の私的な応接室へと通される。こういう時、ああ婚約者なんだなってしみじみ実感…。
「シャノン。私が不在の間、コンラッドが迷惑をかけたようだな」
「迷惑だなんてそんな。もう過ぎたことですから」
ルテティアの王様、ローグ・ルテティア三世はコンラッドによく似た(コンラッドが似ているのか)赤髪の美中年。その佇まいは威厳に満ちている。さすが自ら陣頭指揮を執る戦勝国の王様。どこからどう見ても強そうだ。
コンラッドはパパっ子か。王様を見る目が憧れの人を見るそれになっている。
「あなた。蒸し返すのはおよしになって。ようやく皆落ち着きを取り戻したところなのですから」
冷たく言い放つ王妃様。さ、寒い…。この寒さは12月だから、だけじゃない。
「そうれもそうか。では一言。コンラッドよ。王太子になる身なればもっと精進せよ」
「はい。お見苦しい報告を情けなく思っております」
っていうか、王様の命令と王様の遺伝子が原因じゃね?はっ!全部王様のせいじゃん…って言えたらな。首が飛ぶから(リアルに)言えないけど…
「ところでシャノン、神子アーロンは其方との密な懇談を望んでおるようだが、いかがする」
なにぃ!…ガクガクブルブル…王様まで抱き込んで何を言う!
「…コンラッド様と話は付いております。必要無いです」
「頑なな其方の心を解放したいと、そう申しておったが」
「…僕の心はあれ以来この上なく開放的です。必要無いです」
そりゃもう。パンイチでウロウロするほど。あ、私室限定ね。
「相互理解の機会をと、そう申しておるが」
「必要無いです」
「シャノン…、アーロンの歩み寄りが分からないのか」
うるさいコンラッド!僕の貞操の危機がわからないのか!
「というか、支障がないなら相互理解なんて必要ないとは思いませんか?人と人が全て分かりあえるなんて幻想ですよ?人は皆妥協の中でこのくらいは…って折り合い付けて生きてるんです。ねぇ王妃様?」
「まっ!そ、そうね…、シャノンの言う通りね。あなた。無理強いは止めて頂戴」
「そうですよ。むしろどうしてアーロンはそこまで歩み寄りを望むのですか?普通に考えて僕とアーロンの立場で無理ですから。ねぇ王妃様?」
「…シャノンのいう事はもっともだわ。あなた!この話はもう二度としないでくださいな!」
「だが神子がお望みなのだ」
イラッ「デリカシーの欠如です。ねぇ王妃様?」
「あなた!何度も申し上げておりますでしょう!あれはまだ『神託』を受けてはおりません!一介の侍祭に振り回されてどうするのです!」
「う、うむ…。王妃がそう申すのであればこの話は止そう…」
王妃様!これからも付いてゆきます…
その後、少し遅めのロイヤルランチをご馳走になって(味が分からない…)夕方前には退散したが、なんにしても、今回の呼び出しがアーロンの意を汲んでのものだということはハッキリした。
アーロン、恐ろしい子…、油断一秒怪我致命傷だ。油断せず行こう!
さて、ルテティアの年末年始は神礼祭前ということもあって、厳かかつ静かに過ごす。僕はご招待を受けてリアム君のお家とミーガン嬢のお家に、それぞれ婚約のお祝いも兼ねてお邪魔したのだが、リアム君のお父さん、ハワード伯はどうもカサンドラ様の熱心なファンだったらしく、息子を押し退けて僕の隣をキープするのはどうかと思う。ドン引き…
そしてついに神礼祭当日!
僕はお忍び用の一番地味な馬車に乗り、そのうえモリセット子爵家の裏口から入るという念の入れようでコソコソと下町行きの下準備をはじめようとしていた。
「シャノン様、モリセット子爵はどうされたのでしょう」
「なんか家中がバタバタして…、何かあったのかな?」
執事さんに通された一室には女性ものの庶民服が一式。でもそこに家人はいない。これは一体…
と、そこにノックが。ようやくアシュリーのお出ましかな?
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