断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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42 断罪の改悪 ②

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全滅…だ…と…?ひぃぃぃぃい!

「ふふ…」

こっち見んなアーロン!『愛は光の向こう側』はBLファンタジーであってホラーゲーじゃない!

「そんなに警戒しないでくださいシャノン様」
「な、何したの!みんなに何したの!」

これが警戒しないでいられるかっっての!

「少しお眠りいただいただけです。シャノン様とじっくりお話がしたくて…。一時間ほどで目は覚めます」

一時間あれば十分じゃないのー!あんなことやこんなもー!

「警戒の理由は胸に手をあてたら分かるんじゃないかなっ!」

「シャノン様の胸にですか?」

きょえーーーーっ!んなワケあるかい!

「ち、近寄らないで!話があるなら聞いたげるから、半径3メートル以内に入らないで!」

指一本でも触れたら相討ち覚悟で、やったる!

「つれないのですね…。ですがそれもまた抑圧ゆえでしょう…」

「何が言いたいの…」

「シャノン様、あなたこそ僕が見つけた逸材。あなたはカマ神の教義を受けるべき器です」

ひぃぃ…目がイッちゃっててコワイ…。何こいつ!ホントなんなん⁉

「ア、ア、アア、アーロンには、コ、ココ、コンラッドが…」

恐怖のあまり敬称が抜けた…

「コンラッド…、ええ。確かに彼も程よく空虚な気…おさまりの良い器ですね」

おさまり…アーロンお前…、コンラッドまで受けに…、受けにする気だったとか…総責めかー!!!

「ですがあれはスペアでいい」

スペア⁉ 天下の王子様をスペア…

「所詮あなたのもつには敵わない。僕には一目見た時から分かりました」

「バカ言うな!僕は18には手を出してない!」

僕は規則を守る男だ!

「いいえ、あなたほど満たされぬ人に僕は会ったことがない。ふふ、僕が満たして差し上げましょうか?」
「はぁ?僕は今この上なく充実してる!人のことを勝手に決めつけないで!」

何を根拠に言い切ったか知らないけど、僕はアーロンに言ってやった。僕が毎日をどれほど謳歌しているのか。
そう、友人とダベりカフェに立ち寄るなんてことない日常。時に退屈な学院生活。そして…家族が揃って笑いあえる当たり前の日々、それらを過ごせる健康な身体に、今の僕がどれほど感謝していることか!

「それで代わりになりますか?あなたはいつも愛を欲していたのに」
「愛なら取り巻きたちが毎日補充してくれる!」

主に脳内妄想だけど!王道のリア×ミーだけでなくアリ×リアの禁断の恋と嫉妬する令嬢!ミーガン嬢ゴメン!!!

「シャノン様、カマの教えに罪悪は存在しません。愛欲に身を委ねることは人生を楽しむことなのです。言うなれば芸術鑑賞と同じですよ」

あかんて!ザックりしすぎだろ!BL本とアダルト本は似て非なるものだ!

「全てを受け入れ博愛の名のもと僕と一つになるのですシャノン様。そうすれば僕の物はあなたのもの。…欲しくて欲しくて仕方の無かったコンラッドもあなたのもの。ああそうそう。ブラッドも、ブラッドの持つ全てもあなたのものです」

それはどっかで聞いた事のある…、あー!ジャ〇アン理論ー!!!

「同担は断固拒否する!そもそもコンラッドなんか欲しいと思ったことはない!ブラッドとはすでに共有してる!最も大事な弟妹たからものを!」

「ブラッド…、そうですか…」
「それよりなんで僕?僕の何がそんなに気にいったの?」

「僕では足りないものがあなたにはある。あなたは白薔薇のように美しく、氷のように冷ややかで…劣情の対極にいる人、それがあなたです。だからこそ人々は、あなたの乱れる姿に惹き付けられる…」

いわゆるギャップ!分かるけど…いや、分かるかいっ!そんな目で僕を見るな!この真正エロ!

「僕とアーロンでは住む世界が違うみたい…」

「シャノン様。僕とあなたの何が違います?僕ほど貴方を理解できる者はいない。今までどうにもならない定めの中で、どれほどのことを我慢してどれほど多くの感情を捨ててきたのです?僕とあなたは同じです…」

い、いい、一緒にすんなー!!!僕はファンタジーに生きる男だ!

「もう何も我慢など必要ない。どれほど精進しようが人は欲望を捨てられはしない。シャノン様、僕だけがあなたを自由にできる」

現在進行形で我慢の限界ー!

「どうにもならない運命さだめ?どうして僕が不自由だって思った?むしろ僕は運命さだめを受け入れたからこそ、心だけは誰より自由に生きてきたのに!」

そりゃもう、どうせ残り僅かな人生だからと、一般病院関係者やご年配の入院患者による、生暖か~い視線も気にせず、心のタガを外して好きなだけ萌え散らかしたのに!

「(治療を)辛いと思った事なんか一度も無い!その向こうには尊い世界(注射と聴診器)と白く輝く光(白衣)があった!」

担当の先生と実習の医学生にアカン妄想をしたのはここだけの秘密だ!

「シャノン様、考えをお改め下さい。僕は貴方を排除したくはない…」
「え…?」

そういや前もなんかそんなことを…

「カマ神の教えは排除でなく受容。ですが貴方が僕の障害となるなら…取り除かなくては」ジリ…

取り除くだと?ええい!断罪は後回しだ!これは殺るか殺られるかの真剣勝負…やってやろうじゃないか!

「住む世界が違う…。そう…あくまで僕との共鳴を拒むのですね」

「むしろどうして共鳴すると思った?そんな要素…一ミリもない!」
「ふっ、そうですか…」

割れたティーカップを粉々に踏みつぶしながら近づくアーロン。その姿は…まるで13日の金曜日…、はっ!今日じゃん!

「あっ!」

素早く僕のカップを手にしたアーロンは、おもむろにそのお茶を自分自身にぶっかけた。これってつまり…

「ここまで知られてそのままに出来ると思いますか?…ああひどい、シャノン様。まさか僕にお茶をおかけになるなんて…。いいですか?この事はコンラッドにお話させていただきます。コンラッドは陛下に報告なさるでしょうね」
「……」
「シャノン様、……実に残念です…」パタン

ウソだろ?まさかの本人によって…第二関門クリアーだよ…、っていうか、もうそれどころじゃない…

扉の閉まる音と同時に起き上がったのはブラッド。タイミング良いのか悪いのか…

「行きましたか?」
「へ?お、起きてたの?」

「ええ。寝たふりをしていたのです。色々と確認したく思いまして。もちろん危険があれば取り押える気でいましたが、あの場は語らせるのがいいと判断しました」

「実は私もです」
「ヘクター様!」

「わたくしもですわ」
「ミーガン嬢!」

「な…」

ど、どういうこと?あ、あれ…?

「ブラッド…、なんか…泣いてた?あ、あれ?ミーガン様も…」

「いえ、これは違います」
「わたくしもですわ」

言えないか…。アーロンの恐怖に泣くほどビビッてた、とは…

「アーロンの正体には驚きましたが、おかげで興味深い言葉を聞けました。尊い世界…白く輝く光…ですか」

ドッキー!な、なな、ヘクターさんが僕の性癖に気付いただと⁉

「ヘクター様、何に気付いたか知りませんが、誰にも何も言わないでください。いいですね」

こ、個人情報の拡散はNGですからね!



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