断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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69 断罪の気付き

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「ジェローム、今日のランチはガゼボに用意してもらいます。外で気楽にたべましょうね」
「お気遣いいただきありがとうございます」

今日のデートは約束通りシェイナご同伴である。アノンは病み上がりなのでお外は禁止。また今度ね。

そのシェイナは日除けのついたおしゃれなリヤカー?に乗せられている。
それを押すのは僕。隣にはジェローム。これってまるで新婚。むふ♡予行練習みたいじゃない?
二人で庭園を散策しながら僕は少し舞い上がっていた。

三度目ともなればジェロームの緊張もかなりほぐれている。ましてや今日はギャラリーも居ない、正真正銘の二人きり。んん?カイルとシェイナ?ノーカンで。

今日のランチはシェフに頼んで作ってもらったクロックムッシュ。それを器用に切り分けながらジェロームは僕に話しかける。

「…山に入った事を責めないのですね」

責める…?ああ!僕が待っててっていったのに山に入って琥珀を見つけたことか。

「責めたりなんか…、良いものが見つけられて良かったです」

琥珀がなくっちゃ旅行費用も捻出出来なかっただろうし。

「これもシャノン様の助言あればこそです」

ん?琥珀の発見に僕はノータッチだけど…

「僕は何も知りませんよ?琥珀が見つかってラッキーでしたね」

「やはりそう仰るのですね。実にあなたらしい。ですがおかげで借財もなんとかなりそうです」
「ええっ?借財って大金だったんじゃ…」

いやいやいや、琥珀で返済とか無理じゃない?だから僕は春に今年分の予算(お小遣い)をお父様から貰った時、いっそ砂金を待たずに返しちゃおうか…?とさえ考えたのに…

「会頭殿が肩代わりしてくださったのですよ。下手に借財を残していては横槍が入りそうだからと」

「ああ!宝石商の店主は琥珀を独り占めしたかったんですね?」
「そういうことです」

オタクの買い占めか…。まあ、握手券のためにCD一千万円分買うドルオタとかいたらしいし…富豪って怖いわー。
それにしても、そっか…。すでに借金は無くなった、と。…ってことは、あとは生活のクオリティ、それでこのルートは安泰となる。
う~ん…、ジェロームにならそろそろ言っても良いよね?

「えっと…、ジェローム。今からすごく大事な話をします。すごくすごく大事な話です」
「私が聞いてもよいのですか?」

「むしろジェロームだから話すんです。いいですか、コナーと川の下流を調べて下さい。未来への夢と希望はそこにあります」
「…!…」

「ジェロームならきっと僕の望みを正しく理解してくれるでしょう。でも一つ約束して欲しいんです」
「…何でしょうか」

「今は国に知られるわけにいきません。時が来るまで隠すように。コナーにもそう伝えてください」

断罪前にエンブリーが裕福な領になったら嫁ぎ先が変わっちゃうからね。ルート確定まではオフレコで。

「時が来るまで…。分かりました。その信頼を裏切ることは決していたしません」

これでよし。

「じゃあこの話はここまでで。そう言えば義弟が二三日中に戻ります。その際はぜひ夕食をご一緒に」
「ありがたく」

はい!約束ゲットー!

「ふふ、彼は良い男になりましたか」
「まだまだですね。先は…長いです。ジェロームみたいになってくれたら言うことないんですケド…」チラッ

「私のようなどと…、さえない男になってしまいますよ」
「何を言うんですか!ジェロームはすごくステキです!い、いえそんな…、あの、その…」モジモジ…

本音が漏れてしまった…。恥ずかしい…。うん?シェイナがアプアプ言ってる…、これは…「激しく同意」かな?

「ですが威勢の良い第一王子殿下はもっと素敵ではないですか」

ば、ばかな!見ろ!シェイナまで嫌そうな顔してるじゃないか…
ジェロームに僕がコンラッドを好きとか誤解されるほど不愉快な事があるだろうか?いや無い!
これはコンラッドとの関係性についてトコトン説明しておく必要がある。

ポイントとしてはナチュラルに点数を稼ぎながらコンラッドの株を下げること。なーに、僕の手にかかれば造作もない。ニヤリ…


「…というわけで、コンラッド様が講義をバックレ…さぼるたびに僕の課題が増えたんですよ。すごく迷惑です」

うわっ、シェイナ、そんなに頷いたら首もげちゃうよ?

「優雅どころか、こっちは軟禁状態で課題をこなしてたっていうのに、どっかの王子様は、母上がシャノンばかり可愛がって自分を構ってくれない~とか思ってて…」

「プ?…アプ…?」
「なにシェイナ?今いいとこだから後でね」

ヤキモチだか何だかしらないけど、その結果がアレですよアレ。

「で、それを咎めると余計に責めたてたんです。人の事を高圧的とか冷血とか好き勝手言って。特大ブーメランですよ、全く。どうせ王妃様を取られたとか思って拗ねてたんですよ?僕と王妃様のお茶会がどうとか言ってたし」

「アウ…?バププ?」
「さっきからどうしたの?よしよしシェイナちょっと待ってね」

コンラッドの威勢はハリボテだ。むしろ女々しい。僕は爽やかで男らしい人が好きだ。ジェロームみたいな…キャッ♡

「そのお茶会だってはじまりは王妃様による息子のフォローですよ?ね?やっぱり原因は自分じゃないですか。なのにあのマザコン。気色ばってこう叫んだんですよ「母上が望むのはいつもシャノンだ!」って。だから言ってやりました。「誰が好き好んで!」って」

しつこくツンツンされてそちらを見ると、シェイナが複雑そうな顔をして僕を見上げていた。うーん、どういう感情?でも今話したことは僕でなくシェイナの身に起きていたことだし、色々思い出してムカついているんだろうか?
任せとけって相棒!シェイナの分まで僕が言ってやったから!

「…つまり幼いころから誤解とすれ違いを繰り返してきたのですね」

「すれ違い…?擦れ合ってもいないのに?これは悪質な思い込みです。彼は母親を僕に取られたと思い込んで、まるで悲劇のヒロイン気分で僕に冷たく当たったんです。全てが理不尽です。これアーロンとか関係ないですからね?考えが浅すぎて王子の風上にもおけな、おっと、今のは聞かなかったことに」

「え、ええ」

いっけなーい、不敬不敬。

「とにかく今更何も無かった事にして仲良くなんて無理です。なので、僕たちは表向き婚約関係を継続させる約束をしましたがそういう仲じゃないです」

これくらい言っとけばジェロームの誤解もきっと解けただろう。あっ、そうだ。

「シェイナ、ぐぅの音も出ないぐらい言ってやったから安心して。あ、あれ?」

ギョッとした顔で僕を見るシェイナ。向こうでジェロームまで驚きに目を見開いている。
…ぐぅも不敬とか?

「殿下はその…」

「赤子の手をひねるようなものです。コンラッド様はダブルスタンダードですから。まあ…いわゆる論破っていうんですか? ふっ、相手にもなりませんでしたよ。アーh」

ハッハッハッ…という邪悪な高笑いは封印、っと。

「おいでシェイナ」

ヨイショっと抱き上げるまだまだ軽いシェイナの身体。やり直しのシャノンに僕を選んだシェイナは勝者だ。

「完膚なきまでに凹ませといたからね。あー、ゴホン。そういうわけで、彼は今頃猛省の日々を送っているでしょう」

僕のウインク(出来てない)に、シェイナはようやく可笑しそうな声をあげた。




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