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174 断罪の舞台
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学院の大ホールは左右に一段上がった観覧席のある作り。入学式や卒業式なんかを行うためのホールだ。観覧席はいわゆるボックス席仕様。一家一ボックスの割り当てなんだよね。当然プリチャード侯爵家は最前列だ。この辺はノベルゲーでは出てこない初見の部分なのでちょっと新鮮な気分だったりする。
これこそが断罪の舞台。ノベルゲーのスチルに描かれていた背景そのものだ。
そして本日、やはり一段上がった正面には赤いラグが敷き詰めてあり、いつもは置かれていないベロアが張られた豪華な椅子が二脚、ゴージャスな調度品と共に用意されている。この椅子にこの国でもっとも高貴な人物が腰掛けた時、ついにその瞬間がやって来るのだ。
王様王妃様の登場とあって、今日はいつもより護衛の数が多い。学内どころか王城の騎士たちも配置についている。針の穴ほどのスキも無い…断罪現場の完成である。
ここでルテティア王立学院、卒業プロムの流れを説明しておこう。
まず会場だが、大ホールの横には多目的に使える小ホール、そして中ホールと目的に合わせた三つのホールがあり、小さな庭園を突っ切った向こうには独立したカフェテリアがある。今回使用されるのはこの四か所だ。
卒業のお祝いだけに参加者は本年の卒業生とその家族(任意)だが、卒業生のパートナーであれば家族以外の人でも参加が認められる。
なので婚約者が居る者は婚約者と、恋人が居る者は恋人と。そしてそうでないものは意中の人をここぞとばかりに誘ったりして基本カップルで参加するのが慣習だ。
もちろんボッチ参加でも構わない。その場合ダンスを踊る相手を現場で調達しなくちゃならないので、壁の花になる確率がグンと上がる。
ノベルゲーのシャノンはこの頃すでに取り巻きからも見放されていた。だから結局ほとんどの時間をボックス席で従者と過してたんだっけ。思えばその従者こそがカイルだったのかな?
そこへいくと今回は…
ミーガン嬢とリアム君はもちろん連れ立って登場。ミーガン嬢のローズ色のドレスは素晴らしく凝った意匠で、煌びやかな婚約者にリアム君もまぶしそうだ。
そしてブラッドは可憐なマリエッタ嬢をエスコート。彼らは卒業と同時に婚約して、一年後に式を挙げる予定になっている。
そしてここにきてアリソン君ってば、スタウト子爵家のカーティス君からパートナーのお誘い受けちゃったりなんかして…。ちょっとひよこっぽいカーティス君は腐男子的視点で逸材だが、彼のお家はコンラッド派だったから今まで近寄ることが出来なかったんだろう。彼らが交際へと発展するかどうかはまだ未定だが、うっかり推しカプ変しそうになったのは言うまでもない。
さて、そうなると困ったのが僕のパートナーだ。コンラッドと婚約解消した僕にはパートナーが居ない。だから頭数的にもアリソン君と参加する気満々でいたのに。なんてこった!
だからと言って人見知りな僕に、よく知らない人と参加…なんてあまりにもハードル高いし。
…まさかの前回に続き今回もボッチ参加か…ガクリ…と思うじゃん?
実はちょっと前…
「どうしましたロイド様」
「シャノン様、その…プロムのパートナーがお決まりでないとは本当ですか?」
「ま…あ…、そうですね」
「シャノン様はてっきりアレイスター殿下と参加されるのかと…」
「ううん。コンラッドと婚約解消してまだ半年たってないのにいきなり第二王子と参加は…一応声かけたんですけどアレイスターに却下されました」
「そ、そうですか!で、では他のパートナーは?」
「…アリソン君も同じ事言ってカーティス君の申し出受けちゃったから…」シュン…
グッ!「で、で、では、わた、わたし、私がそ、そそそ、その…」
「もしかして…パートナーになってくれるとか?」
「は、はい!」
「えー、助かる~!お願いしちゃってもいいですか?」
「よ、よろこんで!」
というような流れで、今僕の隣にはロイドが居る。ジェロームの王都到着がもう少し早かったらジェロームを誘ったのに…残念無念…
「シャノン様…今日のお召し物もとてもお美しい…」
「ロイド様も見違えました。いつもより三割増しイイ男ですよ。ところでロイド様」
「何でしょう?」
「アレイスターから聞いたんだけど…ジョンのこと」
あの場は一旦棚に置いたが、僕は忘れていなかった。大事なことだ。隊長…ロイド…不可解な二人の接点。
「ジョンは僕が隊長につけた小回りの利く手足です。なのにアレイスターはジョンがマーベリック邸に通ってたって…」
「…ええ…」
神妙な顔のロイド。だが彼はまだ何も言わない。僕の発言を待っている。
「それにもう一つ。ロイド様はいつもほんのり影が薄くて、あっ、ディスってるんじゃありませんよ?これは本心から誉め言葉です。とにかく隊長も目立たない方だって言ってましたよね?これってロイド様と同じ特性です」
「…ええ…」
「もしかして隊長は…」
ゴクリ…。ロイドの息をのむ音。そんなに緊張しなくても…
「影が薄すぎて僕が認識できなかったロイド様の兄弟かなんかですか?」
「ええっ⁉ 」
「あの…もしそうなら今まで失礼しました。全く気が付かないなんて…いくら影が薄いからって反省してます。ゴメンナサイ」
「あ、いえ…」
影が薄いのにも程があるでしょうが!やだなぁ、もっと早く言ってくれたら良かったのに!
「ところでロイド様。それを踏まえてお願いがあるんですけど…」
「なんでしょう…」
「二人いるならマーベリック家からどっちかちょうだ、僕の側近になってもらうことって出来ませんか?どちらかこれからも側に居てくれるとすごく助かるんですけど…」
今回の流れの中でロイド、そして隊長の担った役割は非常に大きい。シェイナとロイド、この二つの頭脳が無ければここまでこれなかっただろう。
そして僕は自自(シェイナ)共に認めるポンコツだ。
今後僕とシェイナが離れ離れで暮らすことになったら…、それを思うと今から不安しかない。ブレーンが…僕には優秀なブレーンがどうしても必要だ。
「…ロイド様?ちょ、なに泣いて…、あっち、とりあえずあっちに行きましょう!」
そんなに嫌がらなくてもいいじゃんか。…凹むわ~…
これこそが断罪の舞台。ノベルゲーのスチルに描かれていた背景そのものだ。
そして本日、やはり一段上がった正面には赤いラグが敷き詰めてあり、いつもは置かれていないベロアが張られた豪華な椅子が二脚、ゴージャスな調度品と共に用意されている。この椅子にこの国でもっとも高貴な人物が腰掛けた時、ついにその瞬間がやって来るのだ。
王様王妃様の登場とあって、今日はいつもより護衛の数が多い。学内どころか王城の騎士たちも配置についている。針の穴ほどのスキも無い…断罪現場の完成である。
ここでルテティア王立学院、卒業プロムの流れを説明しておこう。
まず会場だが、大ホールの横には多目的に使える小ホール、そして中ホールと目的に合わせた三つのホールがあり、小さな庭園を突っ切った向こうには独立したカフェテリアがある。今回使用されるのはこの四か所だ。
卒業のお祝いだけに参加者は本年の卒業生とその家族(任意)だが、卒業生のパートナーであれば家族以外の人でも参加が認められる。
なので婚約者が居る者は婚約者と、恋人が居る者は恋人と。そしてそうでないものは意中の人をここぞとばかりに誘ったりして基本カップルで参加するのが慣習だ。
もちろんボッチ参加でも構わない。その場合ダンスを踊る相手を現場で調達しなくちゃならないので、壁の花になる確率がグンと上がる。
ノベルゲーのシャノンはこの頃すでに取り巻きからも見放されていた。だから結局ほとんどの時間をボックス席で従者と過してたんだっけ。思えばその従者こそがカイルだったのかな?
そこへいくと今回は…
ミーガン嬢とリアム君はもちろん連れ立って登場。ミーガン嬢のローズ色のドレスは素晴らしく凝った意匠で、煌びやかな婚約者にリアム君もまぶしそうだ。
そしてブラッドは可憐なマリエッタ嬢をエスコート。彼らは卒業と同時に婚約して、一年後に式を挙げる予定になっている。
そしてここにきてアリソン君ってば、スタウト子爵家のカーティス君からパートナーのお誘い受けちゃったりなんかして…。ちょっとひよこっぽいカーティス君は腐男子的視点で逸材だが、彼のお家はコンラッド派だったから今まで近寄ることが出来なかったんだろう。彼らが交際へと発展するかどうかはまだ未定だが、うっかり推しカプ変しそうになったのは言うまでもない。
さて、そうなると困ったのが僕のパートナーだ。コンラッドと婚約解消した僕にはパートナーが居ない。だから頭数的にもアリソン君と参加する気満々でいたのに。なんてこった!
だからと言って人見知りな僕に、よく知らない人と参加…なんてあまりにもハードル高いし。
…まさかの前回に続き今回もボッチ参加か…ガクリ…と思うじゃん?
実はちょっと前…
「どうしましたロイド様」
「シャノン様、その…プロムのパートナーがお決まりでないとは本当ですか?」
「ま…あ…、そうですね」
「シャノン様はてっきりアレイスター殿下と参加されるのかと…」
「ううん。コンラッドと婚約解消してまだ半年たってないのにいきなり第二王子と参加は…一応声かけたんですけどアレイスターに却下されました」
「そ、そうですか!で、では他のパートナーは?」
「…アリソン君も同じ事言ってカーティス君の申し出受けちゃったから…」シュン…
グッ!「で、で、では、わた、わたし、私がそ、そそそ、その…」
「もしかして…パートナーになってくれるとか?」
「は、はい!」
「えー、助かる~!お願いしちゃってもいいですか?」
「よ、よろこんで!」
というような流れで、今僕の隣にはロイドが居る。ジェロームの王都到着がもう少し早かったらジェロームを誘ったのに…残念無念…
「シャノン様…今日のお召し物もとてもお美しい…」
「ロイド様も見違えました。いつもより三割増しイイ男ですよ。ところでロイド様」
「何でしょう?」
「アレイスターから聞いたんだけど…ジョンのこと」
あの場は一旦棚に置いたが、僕は忘れていなかった。大事なことだ。隊長…ロイド…不可解な二人の接点。
「ジョンは僕が隊長につけた小回りの利く手足です。なのにアレイスターはジョンがマーベリック邸に通ってたって…」
「…ええ…」
神妙な顔のロイド。だが彼はまだ何も言わない。僕の発言を待っている。
「それにもう一つ。ロイド様はいつもほんのり影が薄くて、あっ、ディスってるんじゃありませんよ?これは本心から誉め言葉です。とにかく隊長も目立たない方だって言ってましたよね?これってロイド様と同じ特性です」
「…ええ…」
「もしかして隊長は…」
ゴクリ…。ロイドの息をのむ音。そんなに緊張しなくても…
「影が薄すぎて僕が認識できなかったロイド様の兄弟かなんかですか?」
「ええっ⁉ 」
「あの…もしそうなら今まで失礼しました。全く気が付かないなんて…いくら影が薄いからって反省してます。ゴメンナサイ」
「あ、いえ…」
影が薄いのにも程があるでしょうが!やだなぁ、もっと早く言ってくれたら良かったのに!
「ところでロイド様。それを踏まえてお願いがあるんですけど…」
「なんでしょう…」
「二人いるならマーベリック家からどっちかちょうだ、僕の側近になってもらうことって出来ませんか?どちらかこれからも側に居てくれるとすごく助かるんですけど…」
今回の流れの中でロイド、そして隊長の担った役割は非常に大きい。シェイナとロイド、この二つの頭脳が無ければここまでこれなかっただろう。
そして僕は自自(シェイナ)共に認めるポンコツだ。
今後僕とシェイナが離れ離れで暮らすことになったら…、それを思うと今から不安しかない。ブレーンが…僕には優秀なブレーンがどうしても必要だ。
「…ロイド様?ちょ、なに泣いて…、あっち、とりあえずあっちに行きましょう!」
そんなに嫌がらなくてもいいじゃんか。…凹むわ~…
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