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176 断罪! ①
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イヤダ!断罪されたいとは言ったが首を跳ねられたいといった覚えはない!
チラリと横をみればボックス席からコクリと頷くシェイナとお父様。お父様のOKサイン…、言っていいってこと?ならすでに奴が来ているのか…
このプロムに際して、僕はお父様を通じ二つのお願いをした。一つはフレッチャーの監視をその日は甘くしろ、ということだ。
そうすればフレッチャーは王様の威光にぶら下がろうと、何が何でも抜け出し王様にコンタクトをとろうとするだろう。
となれば王城へ出入りできない以上、フレッチャーは絶対プロムの場にやって来るはずだ。プロムの場であれば王城よりは敷居が低い。フレッチャーは学院長に顔が利くし、息の掛かった騎士が一人でも居れば侵入するのは不可能じゃない。
もしかしてすでに接触済みとか?…どうする?
…一か八かだ。少し予定とは違うがやるしかない。シェイナ、行くよ!
「その藪とは…、時は遥か彼方、マーグ王の王太子時代へと遡ります」
「尊敬すべき我が祖父であるか」
「ええ。王陛下にとっておじい様は次々と敵国を討ち負かし国土を拡げた尊敬すべき英雄だったのでしょう。ですがマーグ王は己の欲望を抑えきれない未熟な王子でもあったのです」
「なんと申すか!」ドンッ!
ビクッ‼ いいや負けるか!これくらいで負けてたまるもんか!
「本当です。ですが単なる未熟な自我で終わるはずだった王子の未来を、王家の闇にまで底上げしたのはある野心家の邪気です」
「どういうことだ」
「その野心家は王子の願いを叶え続けた。それこそどんな手段を使っても。それだから王子はその男を手放せなくなり…結果、一人の女性を、いいえ、一つの血筋を歴史から根こそぎ消した」
「その血筋とは何だ!野心家とは誰のことだ!」
「そ、それはここでは言えません…」
こ、公衆の面前でそれを言わせて断罪…とか?慎重に行こう…
「良い!王である私が許す。口にするがいい!」
「でも…」
「言わぬか!」ドンッ!
い、いちいちドンドンするのヤメテよね!くっそう…
「…じゃあ言います。消えた血筋の名はロアン侯爵家。ロアンの呪いと呼ばれる原因となった家門です」
ザワザワ…
一気にざわつくホール内部。名前ぐらいは知ってる人も居たんだろう。観覧席の方からはドサリと失神者の気配がする。
「…シャノン、続きを申せ」
「ロアン家を消したのは…その野心家の名は…、フレッチャー侯爵家の祖先であるフレッチャー伯爵です!」
ザワザワザワ…
さっきとはザワザワの種類が違う気がする。これはもっとゴシップに群がるパパラッチ的な…
「フレッチャー候の祖先がその野心家だという証拠はあるのか」
「しいて言うなら僕を消そうとしたのが大きな証拠です。ですがそれよりもっといい方法がある!」
「それは何だ」
良しここだ!行くよ相棒!出番だぜ!
「シェイナのウィジャボードです!シェイナは過去の声を聴ける!信じられないならロアンの当主本人に聞けばいい!」
「止めろーーーー!!!」
僕の背後から絶叫にも近い声をあげたのは言うまでもないフレッチャーだ。バカだな。わざわざ変装までして入り込んだのに水の泡じゃないか。それほどロアンの呪いを恐れてるってことか…
「陛下!教会の聖職者でも無いものが死者の声を聴くなどと…あってはならないことでありますぞ!これは国教に背く行為。お咎めくだされ!」
「いいえ!シェイナは神子の欠片を持つ者、神子とは神の言葉を聞く存在です。死者の声を聴いたって何もおかしくない!」
「陛下!私は従順な臣下でありましたぞ!私とその生意気な青二才どちらをお信じになるか!」
「王様!人の道徳心に年齢なんか関係ない!僕とフレッチャー候、どちらが正義かお分かりでしょう!」
「陛下!」
「王様!」
あー!王様が目を瞑って現実逃避してる!ええい!そんな本妻と愛人の板挟み…みたいな顔したってダメなんだからね!
「我が祖先が何をしたと言うのだ!どんな証拠がある!不埒な戯言ばかり言いよって…例え『神託』でも目に余るわ!」
「だから殺そうとしたんですか?はっ!残念でした。僕には神様がついてる。簡単になんて死ぬもんか!」
「あれは私の与り知らぬ事だ!先走った身内が勝手にしたことよ。それもいずれ明らかになる。不用意な発言は控えるがいい!」
「へー?じゃあアーロンの母親の件も自分は関係ないとそう言うつもりで?」
「知らんな!何も知らん!」
「知らぬ存ぜぬで逃げ切れると思ってるのか、この〇〇〇〇め!」
おっといけないNGワードが…
「代わろうシャノン。フレッチャー候!実に巧妙に隠していたものだが王都の憲兵は優秀でね。あなたの庶子は歓楽街の娼婦殺しですでに捕えている」
聞くに堪えない僕の暴言に思わず席を立ちフレッチャーの通り道を塞いだのはお父様だ。周囲には何名かの憲兵も居るけど屋敷に連れ戻して終わりじゃないからね。だってこれこそ僕が頼んだ二つ目のお願い。
生き証人の登場だ!
「なんのことだ!私に庶子などおらん!おおかたその者の虚言だろう。首を跳ねるでもなんでもすきにするがいい!庶民の戯言を本気にするとはプリチャード候も随分と無垢なお方だ」
ムカチャッカインフェルォォォォ!!!
人の父親をバカにするとは許すまじー!
「聞いたか君。君の父上は君を息子とは認めぬらしい。それでも君はまだあの男を父と慕い庇うつもりか」
身を小さくしてそこにいたのは両手に枷のはまった一人の男。男は信じられない…とでも言うような顔で、ただただ己の前方に居るフレッチャーをガン見している。
身なりの良さを見るに、男はフレッチャーから十分な養育を受けていたのだろう。それが恩を売り利用するためなのか、親子の情から来るものなのかは測りかねるところだが…
「どうにも口を割らぬか。では仕方ない。全ては過去の声でわかる事だ!」
お父様からの合図。シェイナ!今度こそ!
…と、シェイナがウィジャ盤を抱えた途端、それを無視して一歩前に出たのはまさかの…
アーロン⁉
チラリと横をみればボックス席からコクリと頷くシェイナとお父様。お父様のOKサイン…、言っていいってこと?ならすでに奴が来ているのか…
このプロムに際して、僕はお父様を通じ二つのお願いをした。一つはフレッチャーの監視をその日は甘くしろ、ということだ。
そうすればフレッチャーは王様の威光にぶら下がろうと、何が何でも抜け出し王様にコンタクトをとろうとするだろう。
となれば王城へ出入りできない以上、フレッチャーは絶対プロムの場にやって来るはずだ。プロムの場であれば王城よりは敷居が低い。フレッチャーは学院長に顔が利くし、息の掛かった騎士が一人でも居れば侵入するのは不可能じゃない。
もしかしてすでに接触済みとか?…どうする?
…一か八かだ。少し予定とは違うがやるしかない。シェイナ、行くよ!
「その藪とは…、時は遥か彼方、マーグ王の王太子時代へと遡ります」
「尊敬すべき我が祖父であるか」
「ええ。王陛下にとっておじい様は次々と敵国を討ち負かし国土を拡げた尊敬すべき英雄だったのでしょう。ですがマーグ王は己の欲望を抑えきれない未熟な王子でもあったのです」
「なんと申すか!」ドンッ!
ビクッ‼ いいや負けるか!これくらいで負けてたまるもんか!
「本当です。ですが単なる未熟な自我で終わるはずだった王子の未来を、王家の闇にまで底上げしたのはある野心家の邪気です」
「どういうことだ」
「その野心家は王子の願いを叶え続けた。それこそどんな手段を使っても。それだから王子はその男を手放せなくなり…結果、一人の女性を、いいえ、一つの血筋を歴史から根こそぎ消した」
「その血筋とは何だ!野心家とは誰のことだ!」
「そ、それはここでは言えません…」
こ、公衆の面前でそれを言わせて断罪…とか?慎重に行こう…
「良い!王である私が許す。口にするがいい!」
「でも…」
「言わぬか!」ドンッ!
い、いちいちドンドンするのヤメテよね!くっそう…
「…じゃあ言います。消えた血筋の名はロアン侯爵家。ロアンの呪いと呼ばれる原因となった家門です」
ザワザワ…
一気にざわつくホール内部。名前ぐらいは知ってる人も居たんだろう。観覧席の方からはドサリと失神者の気配がする。
「…シャノン、続きを申せ」
「ロアン家を消したのは…その野心家の名は…、フレッチャー侯爵家の祖先であるフレッチャー伯爵です!」
ザワザワザワ…
さっきとはザワザワの種類が違う気がする。これはもっとゴシップに群がるパパラッチ的な…
「フレッチャー候の祖先がその野心家だという証拠はあるのか」
「しいて言うなら僕を消そうとしたのが大きな証拠です。ですがそれよりもっといい方法がある!」
「それは何だ」
良しここだ!行くよ相棒!出番だぜ!
「シェイナのウィジャボードです!シェイナは過去の声を聴ける!信じられないならロアンの当主本人に聞けばいい!」
「止めろーーーー!!!」
僕の背後から絶叫にも近い声をあげたのは言うまでもないフレッチャーだ。バカだな。わざわざ変装までして入り込んだのに水の泡じゃないか。それほどロアンの呪いを恐れてるってことか…
「陛下!教会の聖職者でも無いものが死者の声を聴くなどと…あってはならないことでありますぞ!これは国教に背く行為。お咎めくだされ!」
「いいえ!シェイナは神子の欠片を持つ者、神子とは神の言葉を聞く存在です。死者の声を聴いたって何もおかしくない!」
「陛下!私は従順な臣下でありましたぞ!私とその生意気な青二才どちらをお信じになるか!」
「王様!人の道徳心に年齢なんか関係ない!僕とフレッチャー候、どちらが正義かお分かりでしょう!」
「陛下!」
「王様!」
あー!王様が目を瞑って現実逃避してる!ええい!そんな本妻と愛人の板挟み…みたいな顔したってダメなんだからね!
「我が祖先が何をしたと言うのだ!どんな証拠がある!不埒な戯言ばかり言いよって…例え『神託』でも目に余るわ!」
「だから殺そうとしたんですか?はっ!残念でした。僕には神様がついてる。簡単になんて死ぬもんか!」
「あれは私の与り知らぬ事だ!先走った身内が勝手にしたことよ。それもいずれ明らかになる。不用意な発言は控えるがいい!」
「へー?じゃあアーロンの母親の件も自分は関係ないとそう言うつもりで?」
「知らんな!何も知らん!」
「知らぬ存ぜぬで逃げ切れると思ってるのか、この〇〇〇〇め!」
おっといけないNGワードが…
「代わろうシャノン。フレッチャー候!実に巧妙に隠していたものだが王都の憲兵は優秀でね。あなたの庶子は歓楽街の娼婦殺しですでに捕えている」
聞くに堪えない僕の暴言に思わず席を立ちフレッチャーの通り道を塞いだのはお父様だ。周囲には何名かの憲兵も居るけど屋敷に連れ戻して終わりじゃないからね。だってこれこそ僕が頼んだ二つ目のお願い。
生き証人の登場だ!
「なんのことだ!私に庶子などおらん!おおかたその者の虚言だろう。首を跳ねるでもなんでもすきにするがいい!庶民の戯言を本気にするとはプリチャード候も随分と無垢なお方だ」
ムカチャッカインフェルォォォォ!!!
人の父親をバカにするとは許すまじー!
「聞いたか君。君の父上は君を息子とは認めぬらしい。それでも君はまだあの男を父と慕い庇うつもりか」
身を小さくしてそこにいたのは両手に枷のはまった一人の男。男は信じられない…とでも言うような顔で、ただただ己の前方に居るフレッチャーをガン見している。
身なりの良さを見るに、男はフレッチャーから十分な養育を受けていたのだろう。それが恩を売り利用するためなのか、親子の情から来るものなのかは測りかねるところだが…
「どうにも口を割らぬか。では仕方ない。全ては過去の声でわかる事だ!」
お父様からの合図。シェイナ!今度こそ!
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アーロン⁉
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