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推し活満喫編
アデルの真実③グラナダ視点
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離宮へと続く道、気を失ったアデルを運んだ時にはうっそうと草木が生い茂っていたはず。
いつの間にこんなに整然と整備されていたのか。
入り口前も足を踏み入れる場所などなかったはずが…ハーブに…や、野菜?…あ、あぁ、一応花もあるのか。
いろんな種類の植物が乱雑に植えられおかしなことになっていた。
外から見た建物はいつの間にか真っ白に輝いており長年放置されていたとは思えないほどの優美さだ。
中に入ると磨き上げられた廊下に調度品。カーテンの埃臭さや部屋に染み付いたカビ臭さもすっかり無くなっている。
厨は寸前まで使われていたのだろう、調理されるのを待っていた果実や野菜が水分を失った状態で残っていた。
キチンと整理されたスパイスや道具類。自分で調理しているというのは本当だったらしい。
そしておそらく生活スペースとして使っていたであろう部屋に入ると私は驚愕に震える事になる。
「な、なんだこれは…」
「………旦那様の肖像画でございますね。これは…炭でしょうか?上手いものですな」
「か、閣下…その…こちらへ…」
「こ、これは…私か?」
「ほほう!布を縫い合わせて綿を詰めてあるのですな。これはまた芸の細かい…」
「器用ですね」
そこかしこに私を模した人形が飾ってある。その衣装はどれもこれも身に着けた覚えのあるものだ。
炭で描いた肖像画は画家の描く絵画に比べずいぶん簡略化されたもののようだが、どれもこれも一目で私とわかるものだ。
言葉が出ない。何故だ?アデルは入水するほど私を忌み嫌っていたのではなかったのか?
これでは、これではまるで…
「閣下、差し出がましくも口をはさむのをお許しください。私の眼にはいつも、奥方様は閣下に懸想しているようにしか見えませんでした」
「な、何を?」
「私はいつも奥方様と執務室の前で閣下が出てくるのをお待ちしておりましたが、…閣下のお出ましを待つ奥方様はいつも頬を染め熱の籠った眼差しでただ一心に扉を見つめておいででした。扉が開くのを今か今かと…それはもう嬉しそうに、幸せそうに…」
「…………」
「旦那様、僭越ながら言わせていただくと、旦那様のお姿を一目、いや一目では済みませんでしたが、一目見ようとあちらへ追いかけこちらへ追いかけ…直接お渡しすることもかなわぬのにそれでもせっせと護符をお持ちになられる奥方様を…私も健気なものだと思っておりました。」
「だ、だが!」
「何故旦那様はそうまで頑なにアデル様を嫌っておいでだったのですか?」
「私ではない!アデルが、そうアデルのほうが私を嫌っているのだ!」
「いえですが、閣下!私にはあの姿が演技とは思えません」
「メイドが言ったのだ!付き添いのメイドが!アデルは私に嫁ぐのを嘆いて輿入れの道中、湖に身を投げたと」
しばし逡巡した後、珍しく険しい顔でトマスが問うた。
「旦那様、それは本当に事実なのですかな?確認はなさったのですかな?」
「い、いや、だがしかしトマスお前も見ただろう。私の顔を見て慄き気を失うアデルを…」
「私には落雷に驚いて失神したように見受けられましたが」
「私を見るアデルの顔はいつも強張っていた!」
「好意をもった相手と話す場合緊張して強張ることもあるかと」
「握りしめた手も唇もいつも震えていた…」
「恥ずかしがっていたんですよ閣下」
「では、ではアデルは私の事を…本当に?」
私の手の中では小さな私が片方の唇をあげてにやりと笑っていた。
いつの間にこんなに整然と整備されていたのか。
入り口前も足を踏み入れる場所などなかったはずが…ハーブに…や、野菜?…あ、あぁ、一応花もあるのか。
いろんな種類の植物が乱雑に植えられおかしなことになっていた。
外から見た建物はいつの間にか真っ白に輝いており長年放置されていたとは思えないほどの優美さだ。
中に入ると磨き上げられた廊下に調度品。カーテンの埃臭さや部屋に染み付いたカビ臭さもすっかり無くなっている。
厨は寸前まで使われていたのだろう、調理されるのを待っていた果実や野菜が水分を失った状態で残っていた。
キチンと整理されたスパイスや道具類。自分で調理しているというのは本当だったらしい。
そしておそらく生活スペースとして使っていたであろう部屋に入ると私は驚愕に震える事になる。
「な、なんだこれは…」
「………旦那様の肖像画でございますね。これは…炭でしょうか?上手いものですな」
「か、閣下…その…こちらへ…」
「こ、これは…私か?」
「ほほう!布を縫い合わせて綿を詰めてあるのですな。これはまた芸の細かい…」
「器用ですね」
そこかしこに私を模した人形が飾ってある。その衣装はどれもこれも身に着けた覚えのあるものだ。
炭で描いた肖像画は画家の描く絵画に比べずいぶん簡略化されたもののようだが、どれもこれも一目で私とわかるものだ。
言葉が出ない。何故だ?アデルは入水するほど私を忌み嫌っていたのではなかったのか?
これでは、これではまるで…
「閣下、差し出がましくも口をはさむのをお許しください。私の眼にはいつも、奥方様は閣下に懸想しているようにしか見えませんでした」
「な、何を?」
「私はいつも奥方様と執務室の前で閣下が出てくるのをお待ちしておりましたが、…閣下のお出ましを待つ奥方様はいつも頬を染め熱の籠った眼差しでただ一心に扉を見つめておいででした。扉が開くのを今か今かと…それはもう嬉しそうに、幸せそうに…」
「…………」
「旦那様、僭越ながら言わせていただくと、旦那様のお姿を一目、いや一目では済みませんでしたが、一目見ようとあちらへ追いかけこちらへ追いかけ…直接お渡しすることもかなわぬのにそれでもせっせと護符をお持ちになられる奥方様を…私も健気なものだと思っておりました。」
「だ、だが!」
「何故旦那様はそうまで頑なにアデル様を嫌っておいでだったのですか?」
「私ではない!アデルが、そうアデルのほうが私を嫌っているのだ!」
「いえですが、閣下!私にはあの姿が演技とは思えません」
「メイドが言ったのだ!付き添いのメイドが!アデルは私に嫁ぐのを嘆いて輿入れの道中、湖に身を投げたと」
しばし逡巡した後、珍しく険しい顔でトマスが問うた。
「旦那様、それは本当に事実なのですかな?確認はなさったのですかな?」
「い、いや、だがしかしトマスお前も見ただろう。私の顔を見て慄き気を失うアデルを…」
「私には落雷に驚いて失神したように見受けられましたが」
「私を見るアデルの顔はいつも強張っていた!」
「好意をもった相手と話す場合緊張して強張ることもあるかと」
「握りしめた手も唇もいつも震えていた…」
「恥ずかしがっていたんですよ閣下」
「では、ではアデルは私の事を…本当に?」
私の手の中では小さな私が片方の唇をあげてにやりと笑っていた。
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