イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

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新生活順応編

眠れない夜

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暗くなるまで厩舎で馬と戯れる。

「そうか…ラグーンもお前が…」
「グラナダ様を守ってくれる大切な相棒ですからね。少しの不備も許しませんよ、ふふん」

ムツ〇ロウ降臨!全身くまなく撫でまくり、後ろ足に不調を見つけてちっちゃなヒールをかけてるとその場にいた治癒系の魔術師さんが近づいてきた。

僕が熱感知の魔法をサーモグラフィみたいにして不調部分を探してるって話したらすごく前のめりに食いついてきたよ。
なんか熱く語ってくる…これは…あれだ。医療系のオタクってやつだね。
風魔法で振動を起こして超音波エコーにできないかって考えてたけどこの人に相談してみようか。
3人よればなんとかの知恵って言うもんね。

すっごく不穏な気配を察知して後ろを振り返るとグラナダ様が変なオーラ出してた。はっ!これが瘴気か!
あー、そういえば僕が護符持ってくたびにこんなオーラだしてたなぁ…瘴気だったのか…なんかカッコよさ2割増しにするエフェクトかと思ってた。えへへ。

倒れそうな魔術師さんが気の毒なのでグラナダ様をなだめながらその場を離れた。




邸に戻って、シェフ渾身のディナーをこころゆくまで堪能。
お詫びの印にって、特に張り切ってくれたみたい。
僕が食糧庫から持っていった食材の数々、何を作っていたのか気にしていたから、バイト先で教わった店長直伝、門外不出のオリジナルレシピだけど……もう戻れないからね。今度教えてあげよう。




夜も更けたらここからは夫夫の時間。
色々乗せたワゴンを運び入れるとトマスさんも退出しグラナダ様と二人っきりになった。照れる///


「さて、湯浴みはどうする?」
「僕2番風呂でいいですよ?グラナダ様先どうぞ」
「……そうか、そうだな。一人で行ってくるよ…」

なんで哀愁?

二人して交互にお風呂を済ませいよいよついに赤ちゃんの作り方講座だ。
すごくもったいぶってたけどいったいどんな秘密が…?

「さてアデル。閨の作法を教える前にまずはこれを見せておこう。」
「ネヤ…んっ?真珠色の玉?これは…?」
「これは王都の中央神殿にて夫夫が祈りをささげると祝福をもって賜れる生誕珠と呼ばれるものだ」
「せいたんじゅ…」
「これは、その、…受精行為、んん、をする際にお前に入れるものだ。ここにお互いの…ゴホン、精を溜め同調率が最大まで高まった魔力を注ぎ込むことで受胎する。」

「!!」

これが…これが赤ちゃんに…不思議…すごく異世界…これが核になって…同調魔力と精力…それが血肉になるって事?…すごい…ファンタジーだ…
ん?祈り?

「グ、グラナダ様、僕たち祈り捧げに行ってないですよね?なんでせいたんじゅがここにあるんですか?」
「お前の孕む子は我が甥、皇太子殿下のお子となる。祈りには殿下が行かれ賜った珠をこちらに送って寄こしたのだ」
「え?………何のことそれ?……そんな話…聞いてませんケド…」

地を這うより低い声がでた。怒ったグラナダ様の声より低いかもしれない…

「カ、カマーフィールド卿は聞いてはおらぬのか?この婚姻は、子を生せぬ皇太子夫婦に代わり赤子を生し、引き渡し後継とするためのもの。ひいては王の直系血筋に私の力を移すため、王である我が兄ドノヴァンが…私に無理やり命じたものだ…」
「…聞いてませんよ、そんな話。…渡しませんよ、グラナダ様二世。」
「そ、それは…しかし…」
「僕は、僕は、見知らぬ辺境伯様の赤ちゃんを作るのがお役目って聞かされたときショックでショックで家に帰りたいって思った…」
「あぁ…そうだろうとも…」
「でもグラナダ様のお姿を見た時、赤ちゃんが欲しいって、イケメン親子の2ショット見たいって思って!」
「……それほどまでに…」

信じられない!信じられない!グラナダ様の子を!推しジュニアを!気合と根性でグラナダ様そっくりに産む気マンマンだったのに!

怒りに震える僕をなだめながらグラナダ様が事情を話してくれた。

王様はグラナダ様の強い力を自分の系譜に欲しがっていること。
嫡子の生まれぬ皇太子夫婦のことを貴族たちが口さがなく言いはじめたこと。
焦れた王様が珠とともに勅使を寄越してきたこと。
甥の皇太子は王様のいいなりで哀れにすら思っていること。
そして、そして、
僕が子供を生せなければ、王は僕を離縁し他のものをあてがうだろうということ。



「なんでっ!なんで王様の言うこと聞くの?自分の子だよ?大切じゃないの?」
「アデルッ!わた、私は…違うそうじゃないっ!」
「違わないよ!王様に渡すつもりだったんでしょ?ばかっ!グラナダ様のおおばかっ!」
「聞いてくれ、頼む、お願いだ」
「バカバカバカ!へたれっ!出てって!出てってよーーーーー!」




その大きな体を力任せに無理やり扉から押し出すと僕は怒りのあまり眠れない夜を過ごした。









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